【取材】体質に合わせた手作りごはんと、ルーティーンの「入念なボディチェック」で11歳に #4 たいぞー
10歳を超えても元気なブヒを、憧れと敬意を込めて“レジェンドブヒ”と呼んでいるFrench BulldogLife。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うこの特集、第4回目にご登場いただくのは、11歳にしてまるでパピーのように可愛いたいぞーくん。
たいぞーくんママ曰く、ご長寿の秘訣は“徹底的な甘やかし”だそう。ですが、お話を聞いていると、それよりももっと大きく健康を支えているものが判明しました!
目次
たいぞーくんのプロフィール
・年齢&性別 11歳の男の子(2019年9月14日で11歳)
・体重:6.5㎏
・大好きなこと ロープやタオルを使った引っ張りっこ
・既往歴:6歳で胆泥症を発症。脂が多いものは控えていますが、特に問題はないようです。
8歳で自己免疫疾患が判明し、難治性角膜潰瘍に。不調が目に出やすいので、毎日、注意深く観察しているそう。手術をするような大病はありません。
朝晩のボディーチェックは欠かさず
ぱっちりお目目と、小柄なボディのたいぞーくんは、もうすぐ11歳。パパとママ(上村哲也さん・香織さん)の元に来たパピーのころから小柄で、現在は体重を増やすために“デブエット中”だそうです。
小さいころから体は丈夫だったというたいぞーくんですが、6歳のとき、病院で胆のうがドロドロする胆泥症と診断を受けました。
獣医師によっては、「病気ではない」と判断する先生もいるそうで、主治医の先生からも「特に問題はない」と言われたそう。
しかし、8歳のときに「自己免疫疾患」が判明。
「ある日、目がショボショボして開かなくなってしまい、左目が難治性角膜潰瘍と診断されました。通称ボクサー潰瘍と呼ばれる、角膜がはがれてしまう病気なんです」(ママさん)
たいぞーくんのお家では、イングリッシュ・ブルドッグのチュノンちゃん(10歳の女の子)も一緒に暮らしていますが、2頭がじゃれあったりしないのと、お散歩もキライなこともあり、草むらで目を傷つけるようなこともしていないので、パパさんとママさんは不思議に思っていたそう。
左目が治りかけのときに、今度は右目に不調が出ました。点眼をしてカーラーも付けて生活していたので、おかしいと思い病院で診てもらったところ、「自己免疫疾患が目に出ちゃうようですね」との診断を受けました。
「薬では治せないし、防げるものではないので、日々観察しながらうまく付き合っていくしかないんです」(ママさん)
そこで毎日朝晩に目に力があるか、目ヤニは出ていないか、体のどこかにしこりがないかなど、全身にくまなく触れて入念なボディーチェックをしているそうです。
ある日、ちょっとだけ目ヤニが出ていたのですが、いつもの目ヤニとなにか違うと感じ眼科へ。
診断結果は「初期のぶどう膜炎」。進行が早く、悪化すると失明に至る危険もある病気です。
「こんな初期の状態は初めて見た、と先生も驚いていました。本当にちょっとした変化なんですけど、毎日チェックしているから気づくんです。その少しの変化に気づけるのは、飼い主だからこそですね」(ママさん)
ママとのデート気分で、お散歩のリハビリに成功
お散歩が嫌いなたいぞーくん。オーナーさんのお家に来てから3カ月くらいは、外は1歩も歩かなかったそうです。
「パピーのころはお散歩に行ってましたが、5歳~9歳くらいは、とにかく嫌がるので、ほとんどしませんでした。どこか旅行に連れて行ったときなんかは歩くんですけど、普段は外の世界を怖がっていて」
ずっとお休みしていたお散歩でしたが、去年から再開。
パパさんは「散歩のリハビリですね」と頬をゆるめます。
「歩かないと足腰が弱くなっちゃうし、実はお尻の筋肉がすごく減ってしまったんです。お外のいろいろなにおいを嗅がせて五感を刺激したほうが、ボケ防止にもなるそうです」(ママさん)
チュノンちゃんが10~15分で歩く距離を、たいぞーくんはなんと1時間以上かけてゆっくり、ゆっくり歩きます。
ママさん曰く「亀と同じくらいの速度なんです(笑)」。
スローペースで進む姿に、ご近所さんからは「今ちょっと動いた?」と不思議そうに見られることも。お散歩を再開した当初は、牛歩戦術のようなお散歩を根気強く続けたそうです。
「“ふたりだけのデートだよ♡”って言ってたら、だんだん歩くようになりました。だからチュノンが一緒だと歩かない。“せっかくママとふたりの時間なのに、邪魔すんなよー”って不機嫌になるんです(笑)」(ママさん)
体質に合わないグリーントライプで大失敗!
お家に来たばかりのころは市販のフードをあげていたそうですが、自らも食に関心のあるパパさんが、人間たちの食事にローフードを取り入れたタイミングで、ワンコたちも市販のフードはやめたそう。
お仕事の都合で一時期的に市販のフードに戻したこともありましたが、基本は愛情たっぷりの手作りごはん。
若いころは豚以外の牛、鶏、ラム、マトン、馬、鹿の生肉をメインに、野菜と穀物もあげていたんだとか。
「胆泥症があるので脂身が多いものは控えてはいますけど、基本なんでも食べます。ただし、たいぞーはお米をあげると体調を崩すので、お米は避けてます。太らせたいときにはあげますが」(パパさん)
ところが2年前、グリーントライプがいいと聞いて食べさせてみたところ、体調不良になってしまいました。
「おそらくカンピロバクターの感染症だったみたいで…。それまでは、たとえ病院の先生に勧められたことでも、必ず一度、自分たちで徹底的に調べていたんです。
病院で出される薬でも、“ホントにこれこの症状に必要?”って、学術論文なんかも読むんですよ。
だけど、グリーントライプだけはいいものだと思いこんでしまって……。大失敗でした」(ママさん)
そこでパパさんとママさんは痛感したそうです。
「良いと言われているものは取り入れたいと思うじゃないですか。でも、流されちゃいけない。その子の体質もあるし、守ってあげられるのは飼い主しかいないんですよね」(ママさん)
今はローフードもやめ、お肉には、完全に火を通すようにしているとのこと。漢方の陰陽の考え方に基づき、体質や季節に合わせたごはんを作るのはパパさんの担当です。
「お肉以外だと、ハトムギは余計なものを排出してくれるし、体を温めるショウガも欠かせません。あとは、あまり消化が良くないといわれますけどキノコ類も食べさせています」(パパさん)
とはいえ、調子が良くないときは消化器官への負担を減らすために、与える食材の種類を極力少なくするそうです。
今は顔の周りが肌荒れしているので、ごはんはスプーンで食べさせています。
「小鳥みたいに、あーんと口を開けるんですよ。本当は自分で食べる力がなくなるのはよくないと言われるんですけど、荒れている部分にご飯がついたらかゆそうですから」(ママさん)
ちなみに、たいぞーくんとチュノンちゃんは体質が違うので、ごはんの内容を変えて作っているとのこと。パパさんの努力には頭が下がります。
パパさんが「病気になってからかかる手間のほうが、ずっと大変ですからね」と言うと、隣でママさんもうなずきます。
「病気になってしまったら、病院に連れて行くことと、治療費を出すことと、“がんばれがんばれ”って声を掛けることしかできないので。一緒にいられるうちに手をかけてあげたいんです。この子がいなくなったら困るのは私たちだから」(ママさん)
痩せてしまった意外な原因
たいぞーくんが8歳になったころから、ママさんはたいぞーくんとの生活について、少しずつ考え始めるようになったそうです。
「この子に残された時間は、今まで一緒にいた時間の倍はないんだなって」(ママさん)
ママさんは前々から、たいぞーくんが10歳になったら、会社を辞めると決めていました。
「ずっとお留守番をさせていたぶん、会社をやめて今までの恩返しをしようと思っていました」
そして起業し、自宅で仕事をすることに。「すると、たいちゃんの体重が、一時期6kgまで減ってしまって。“病気になったらさらに痩せちゃうと思うから、今のうちに太らせないと!”とごはんを多めにあげるのに、なかなか太らなくて」(ママさん)
ところが、あることでたいぞーくんの体重が一気に増えたそう。
それが、お留守番の再開でした。ママさんが、仕事の都合で外に構えた事務所で仕事をしなければならなくなり、自宅を不在にする時間が長くなったとたん、体重が戻ったんです。
「たいぞーは、私が家にいると喜ぶんです。だけど、しょっちゅう“ママいるよね?”って確認しに来るので、ゆっくり眠れなかったみたいで」(ママさん)
痩せた原因が、自分が家にいることがストレスになっていたからだと気付き、ハッとしたそう。
「留守番させていることに後ろめたさを感じていたんですけど、外で仕事していたことは悪いことではなかったのかなって思えるようになりました」(ママさん)
目指すのは病気にならない体づくり
今はなるべく薬に頼らない体づくりを目指しているそうです。
「薬は腎臓や肝臓にも負担がかかりますからね。かかりつけの病院の先生も、いざというときは絶対薬が必要だから、ちょっとのことなら使わずにいこうって考え方なんです」(ママさん)
たいぞーくんは、パピーのころからマイペースな性格で、いたずらしたり興奮することもほとんどなかったそうです。
「興奮して心拍数が上がることが少ないから、心臓への負担も少ないんじゃないかと思っています」
いまママが目指すのは、腎臓や肝臓の力をいつまで長く蓄えられるか。「その底力を温存しておきたいんですよね。体重が少ないので、もし病気になったときに勝てるかなぁという心配があって」
また、外が怖いたいぞーくんの筋肉維持のために、今はルームランナーの購入を検討中。
「人間だって、クーラーの効いたスポーツジムで走ってるんだから。常に人間と同じ目線で考えるのは、我が家ならではかもしれません(笑)」
すべてをたいぞーくん中心に考えるママさん。パパさんから見ると「激甘!」だそうです。
「結局、ストレスを与えない。この子のペースで生活する、というのがいちばんの健康法だと思っているので。
うちの旦那が、“おすわり!”って言っただけで、“たいぞーに命令しないで!”って私が怒るみたいな(笑)。激甘ですよね。
私自身、この子に依存しているのを自覚してるんです。でも“依存して何が悪い!”って感じです(笑)。この子のためにできる限りの愛を注ぎたいです。だから、甘やかしてもいいかなって」(ママさん)
ただし、単に甘やかしているだけではありません。パピーのころにはしっかりとトレーニングをしました。
「人さまやほかの犬に迷惑をかけることだけは絶対しないよう、コマンドを徹底して入れるなど、基本的なトレーニングはかなりきっちりしましたね」
普段はママっ子で、とっても甘えん坊なたいぞーくん。本当は恥ずかしがり屋さんでカメラ嫌いなのに、この日はクールに装ったり、チャーミングな表情も見せてくれました。
お留守番させることに後ろめたさを感じるオーナーさんもいらっしゃいますが、愛ブヒの生活スタイルがすでに確立されている場合は、必ずしもかわいそうというわけではないんですね。
そしてなにより、その健康を支えているのが、パパさんとママさんふたりが、獣医師の言葉に耳を傾けつつも、食事や病気について、自分たちでもかなり熱心に勉強されているところ。その姿勢は、見習うべきことがたくさんありそうです。
取材・文/都丸優子
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