【取材】16歳になるまで5回の手術!乳癌に前庭疾患…数々の病気を乗り越えて感じる「簡単だけど大切なこと」#61ひめ
10歳を超えても元気なブヒを、憧れと敬意を込めて“レジェンドブヒ”と呼んでいるFrench Bulldog life。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドブヒの肖像』です。今回登場してくれたのは16歳のひめちゃん。今回は、パピー時のチェリーアイに始まり、数々の病気を乗り越えて16歳というスーパーレジェンドになった女の子です。その長生きの秘訣とは?
ひめちゃんプロフィール
年齢&性別
16歳の女の子
体重
12kg(若い時は14kg)
大好きなこと
食べること!
既往歴
・4カ月頃、チェリーアイになり全身麻酔で手術。
・8カ月でヒートになった頃からアトピーに。病院・薬・食事を試行錯誤し、数年かけて改善。
・8歳で子宮蓄膿症になり子宮を摘出。
・10歳で乳癌になり、周辺部も含め切除。その後は再発等なし。
・13歳で前庭疾患に。治りが遅く脳腫瘍が疑われたためMRI検査を受けたが、腫瘍はなかった。
・14歳で痙攣発作。脳の異常も疑われたが、年齢もあり詳しい検査はせず、現在まで薬でコントロールしている。
この外、誤飲で2度手術を行なう。
迎えてすぐに…
あくなき食欲、そして立派な体格とは裏腹に、臆病で知らないところは苦手というひめちゃん。旅行に行っても部屋の隅でプルプルしちゃうような、家好きの女の子です。
オーナー・矢口さんが「いつも病院に行っていた気がします」と仰るくらい、色々な病気を克服してレジェンドに辿り着きました。
まずはその闘病記から伺ってみましょう。
「ウチに迎えてすぐ、年齢は4〜5カ月の頃だと思いますが、チェリーアイになってしまいました。
何だか眼の周りが赤いなと思っていたら、だんだん下まぶたの涙袋がめくれたような感じになってきて。
かかりつけ医が、週1くらいで眼科専門の先生がいらっしゃるところだったので、そこで手術してもらいました。
フレブルは全身麻酔のリスクが高いと聞いていたので不安でしたが、今後のことを考えてお願いしました。
そのままにしておくと、ドライアイになったり、ばい菌が入ったりするということだったので」(矢口さん=以下「」内同)。
迎えてすぐの最高にハッピーな時期に、いきなりのトラブル。さぞ心配されたと思いますが、手術は無事成功し、チェリーアイは完治しました。
因みに、この時に必要性を痛感し、すぐに保険に加入されたそう。この後も病院にかかることが多かったため、結果的にとても良い判断でした。
10年越しでアトピー克服!
一安心したのも束の間、1歳を迎える前にまたもトラブル発生です。
「8カ月くらいで、ちょうどヒートを迎えた頃でした。体を掻いたり、痒がるような仕草があり、病院に連れて行きました。
診断はアトピー性皮膚炎だったのですが、膿皮症や脱毛もあり結構ひどい状態でした。それで良い病院を探したのですが、それからが大変で。
最初に関東の有名な病院に行ってみました。そこでは投薬や薬湯など色々な治療をしていただいたのですが、ひめには合わなかったようでした。
それと治療中に怖がっておしっこやウンチをしてしまい、そのことでひめも私も先生に怒られてしまって。
元々臆病な子なので、治療や先生のことでそんなに怖がらせたら可哀想ということもあり、その病院は数カ月で止めました。
それから2〜3年は病院を転々としながら、食事を病院の療法食にしてみたり、強めのシャンプーで頻繁に洗ってみたり。
色々やってみたのですがあまり効果がなく、最終的に行き着いたのが、手作り食による体質改善でした。
参考にしたのは須﨑先生という東京の獣医さんが書かれた本です。
それで徐々によくなっていき、5〜6歳くらいまでは梅雨時だけ通院していたと思いますが、10歳になる頃にはキレイに治りました」。
何をやってもだめ…から改善できたのは、病院でも薬でもなく手作りのごはん。食は本当に大切なのですね。
ごはんの中身は?
アトピーを改善した奇跡のごはん! というイメージでしたが、その内容はとてもシンプルなものでした。
「基本は水分多めの“おかゆ”です。それに肉やサツマイモ、カボチャなどをトッピングしています。
肉は生の馬肉と茹でたササミがメインで、たまに鹿やウサギの生肉という感じです。生肉は冷凍のものをサイトで買っています。
それから、手作り食だけでは足りてない栄養分があるかもしれないので、朝は市販のフードもあげています。
フードはその時々でひめやもう一頭のフレブル・お花に合うものを探してきたので、半年〜2年くらいで変えてきました。ここ1年くらいは『ブッチ』にしています」。
アトピーを機に、ホリスティックケア(食事も含め、心身を良い状態で保つことを目指した総合的なケア)も勉強されたという矢口さん。
良いフードに出合っても、“もうこれでOK”とは考えず、常にひめちゃんやお花ちゃんに良いものを探し続けています。
お花ちゃん
ひめちゃんの病気克服のお話はまだ続きますが、ここでお花ちゃんのことを少しご紹介。
お花ちゃんはひめちゃんが5歳の頃にやってきた“イケイケ”の女の子です。いつも仔犬のように落ち着きがなく、食の好き嫌いもある、ひめちゃんとは対照的な女の子でした。
「病気の多いひめを見ていて、正直に言うと万一のことがあったときに寂しくて耐えられない気がして…。
それと、私が仕事をしていて留守番も多いので、ひめも寂しくないようにということもありました。
お花を迎えるときは、ひめのことを教訓に、ブリーダーさんに両親の体の大きさやアレルギーの有無などをよく聞いて、ひめとの年齢差も考慮して迎えました。
あまり高齢になった時に元気な若い子が来ると、ひめも相手をするのが大変だろうと思って。
それから、もちろん保険にもすぐ入りました。ですが、お花は保険がもったいないくらい全然病気をしない子でした。
ただ、8歳の時に乳癌になって、それは1年程で完治しましたが、11歳で骨肉腫に罹り、去年亡くなってしまいました。
二頭は、いつも寄り添っているという感じではなく、ごはんもベッドも少し離れたところでそれぞれ、というような関係。
でも、普段は何をされても怒らないひめが、散歩中にお花を守って他の犬に怒ったり、お花が残すごはんを楽しみに待っていたり(笑)。
シニアになって散歩がきつくなってからは、お花につられて頑張って歩いたりもしていました」。
べったりではなくても、かけがえのないパートナーだったお花ちゃん。天国でひめちゃんのレジェンドぶりを見守ってくれていると思います。
5度の手術を乗り越えて
それでは次の病気、子宮蓄膿症と乳癌のお話です。
「8歳で子宮蓄膿症になり、子宮を摘出しました。股間から膿のようなものが出ていたので病院に連れていくと、“すぐに手術を!”と言われて。
結果的にはそこまでひどい状態にはなっておらず、手術で無事回復。
膿が外に出るタイプの症状だったのが不幸中の幸いで、中に溜まってしまうタイプだと、最悪の場合、子宮が破裂して危険な状態になることもあるそうです。
その次が10歳の乳癌です。この時はおっぱいの周りを手術で部分切除しました。
発見したのは胸を触っていた時で、5mmくらいのコロコロしたしこりがあったんです。
病院では、良性か悪性かは手術で組織を取ってみないと判らないこと、手術の決断は早めが良いことを言われました。
というのも、場所が前脚に近く、悪性だったら脇のリンパなどに転移しやすいため、手術するなら早い方が良いとのことでした。
それですぐ手術をお願いしたのですが、術後の検査で悪性と判明したので、すぐに手術して本当に良かったです」。
手術は成功し、再発もなかったため一安心となりました。
3回の手術を無事乗り越えたひめちゃんですが、実はこの外に2回、誤飲による手術もあり、経験した手術は計5回。よく頑張りました!
前庭疾患と痙攣発作
ひめちゃんの闘病記もいよいよ終盤。最後はシニアに多い前庭疾患と痙攣発作です。
「13歳の時に前庭疾患になり、治りが遅いため脳腫瘍かもしれないと、MRI検査もしてもらいました。
結果は脳腫瘍ではなく、少し萎縮などの異常があるとのことでした。その時から痙攣止めの薬を飲んでいたのですが、翌年には痙攣が起きるようになってしまいました。
痙攣は、歯がカチカチ鳴るくらいの軽度のものから、ひどいときはそれが全身の痙攣に移っていくという感じです。
今は普段の薬と、全身の痙攣が起きたとき用の座薬で対応できているので、これくらいならと様子を見ています。
痙攣が起きないようにするには薬を増やすしかないのですが、それはできるだけ避けたいので」。
詳しく脳を調べる選択肢もありましたが、年齢のことも考え、検査は受けないことにしたそうです。
検査や治療、また薬を増やすことで不安は軽減されるかもしれませんが、ひめちゃんの身体に負担がかかることは否めません。
矢口さんは日々のケアで病気と付き合っていく方を選びました。
シニア対応も
長年にわたり病気と付き合ってきたひめちゃんと矢口さん。今は加齢とも折り合いを付けながら暮らしています。
「ここ2年くらいで、足腰の衰えと認知症、それに視力の低下が進んできました。
夜はずっと私と一緒に寝てきたのですが、以前は夜中にトイレに起きても、自分で出て行って帰ってきていました。
でも脚が弱ってからそれができなくなり、しかも認知症で徘徊することもあるので、朝までぐっすり眠れることがなくなりました。
それで別々に寝るようになったのですが、ひめはすっかり慣れて、今では独りの方が快適に眠れるようです。前はあんなに甘えて寝てたのに(笑)」。
矢口さんの腕に包まれ、脇を枕に寝ていたというひめちゃん。矢口さんが反対を向いて寝ていると、チョンチョンと肩を叩いて催促していたそう。可愛過ぎますね。
「ある時期までは、ベッドとソファ周りにも段やマットを置いて上り下りできていましたが、今ではそれでも上れなくなりました。
また、食事中や立ち上がるときの踏ん張りも利かなくなってきたので、元々敷いていた床の滑り止めマットを、リビング全体に広げました。
それから目もほとんど見えずあちこちぶつかってしまうため、あらゆる角とイスの脚などを、コーナーガードやタオル等でカバーしています」。
このほか、長く歩けなくなったひめちゃんのために、カートに乗せて散歩したり、お家の庭で少しだけ歩かせたりといったこともされています。
簡単だけど大切なこと
たくさんの病気や手術を乗り越え、堂々たるレジェンドになったひめちゃん。最後に、その秘訣を伺いました。
「やっぱり、食べること! です。小さい頃から卑しいくらい食欲があって(笑)、今でも全然衰えてないんですよ。
少しでも食べないと病院に連れて行く、というくらい体調のバロメーターにもなっていますし、食欲が生きる意欲、生きる力になっているのは間違いないと思います。
食が大事という意味では、手作りごはんも良かったと思います。ホリスティックケアもですが、もっと早く始めていれば、病気ももっと少なかったのかな。
あとは、一緒に寝ることも。“一緒に寝ている子は長生きする”とどこかで聞いて始めたのですが、留守番も多い中、私にとっても“ずっと一緒に居る”と感じられた気がします。
私たちにできることは限られていますが、一緒に居ることは、一番簡単で、でもとても大切なことだと思います」。
お花ちゃんが亡くなった時、矢口さんの心を占めたのは「もっと一緒に居てあげれば良かった」という想いでした。
簡単なはずなのに、してあげていない大切なこと。きっと皆さんにもあるのではないでしょうか。
“失ってから気付いた”とならないように、矢口さんの言葉を心に留めておきたいですね。
取材・文/橋本文平(メイドイン編集舎)
★「#レジェンドブヒ」で投稿お待ちしています!
フレンチブルドッグライフでは、取材にご協力頂けるレジェンドブヒを探しております!
10歳を超えたブヒたちは、「#レジェンドブヒ」をつけてInstagramに投稿してみてくださいね。
編集部から取材のお声がけをさせて頂くかも!?
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