【取材】ご長寿ブヒ「14歳の黒い弾丸と、男むきだしの11歳」
フレンチブルドッグのマロンともち丸は、列記としたシニア犬でありながら、まだまだ現役。ボディケアにはニベアやロクシタン(もちろん人間用)を使い、お誕生日にはスシローを食べるという大胆な生活をおくるふたりだが、長生きの秘訣はどうやらそこにもありそうだ。
目次
- 14歳の黒い弾丸と、「男」むきだしの11歳
- ごはんはドライフード、スシローだって食べちゃう
- ニベアとロクシタンでボディーケア
- 1歳まではミルクをあげて1日40分太陽光を浴びせる
- 13歳でガンの手術をして半年で復活
- ちょっとでもおかしいと思ったらすぐに病院へ行く
- 長生きの秘訣はストレスフリーでいること
- あれから…
目次
冬も本番になった12月某日。天候にもめぐまれ、厚手のコートでは汗ばむほどの気温。待ち合わせ場所の葉山公園に行くと、THE・フレンチブルドッグといった感じの、むっちりした2頭がカートに乗って風を感じていた。今回取材をする、マロン(14歳)ともち丸(11歳)だ。シニアとは思えないほど生き生きした表情、そして、それに負けないくらい元気な佐々木みすずさんと、静かで優しそうな旦那さんが笑顔で手を振っている。
「こんにちはー!晴れてよかったですね。今日は富士山が見えているんですよ、こっちこっち!」
笑顔で手招きをするみすずさんの方へ向かうと、雪をまとった富士山が雲の隙間から太陽に照らされ、こっちを見ていた。
14歳の黒い弾丸と、「男」むきだしの11歳
ご夫妻が、カートに乗っていた2頭をおろすと、途端に走りだす11歳のもち丸。14歳のマロンも、負けじとあとを追いかける。シニアであることを一瞬にして忘れさせるほどだった。
「もうビックリでしょー!マロンは調子が悪いときは目が見えないけど、ずっと走っていますよ。もち丸は見ての通り!(笑)」
マロンは昔「黒い弾丸」という異名をもっていたそうで、14歳になった今でもその名残が感じられる。もち丸は、道ゆく人に愛想を振りまき、気に入った女性には何度もお腹を見せ、男としての本能もまだまだ持ち合わせているようだった。その様子を見て、みすずさんが口を開く。
ごはんはドライフード、スシローだって食べちゃう
「こんなに元気だから、どんなことしてるの? なんてよく聞かれますけど、特別なことは一切していないんですよ、ごはんも市販のドッグフードですしね(ロイヤルカナン・アミノペプチドフォーミュラ)。昔は手作り食だったけど、もち丸が消化できなかったり、アレルギーもあって。手作りのオーダーメイドとか、世の中的に“良い”といわれるものは散々試したけど、やっぱりドッグフードが安心だなぁって。トッピングに亜麻仁油を入れたり、R-1ヨーグルト(人間用の無糖)を入れたり、気分がのったら馬肉のトッピングをあげたりしますけどね(笑)」
さらに驚くべき発言が飛び出す。
「スシローの寿司も、さび抜きで食べますよ。6貫くらい!犬には良くないといわれるエビやカニも食べますし。誕生日はスシローですね。あーどうしよう、こんなこと言ったら怒られちゃう!」
発言とは裏腹に、豪快に笑うみすずさん。そんな、何でも食べちゃう(?)マロンともち丸は、足腰が丈夫なだけでなく被毛も艶やかで、しっかりとしていた。犬肌年齢というものがあるならば、5歳前後といったところだろうか。その秘訣もまた、一風変わっている。
ニベアとロクシタンでボディーケア
「シャンプーは犬用を使っていますけど、仕上げはニベアの泡スキン(人間用)とロクシタンのボディーソープです。最後にヒュミラックで保湿をしてからタオルで5分間くるんであげると、ツヤツヤになりますよ。」
これもいろいろ試した結果だという。
そんな自由でダイナミックな佐々木流の育て方は、知識と経験あっての賜物。フードにしろボディーケアにしろ、結果的にそうしているのであって、いろんなことにチャレンジして、試行錯誤をくり返した上で成りたっている。マロンともち丸だけの教科書を、家族がつくりあげたのだ。
さらに、いろいろなことにチャレンジしていることがわかるエピソードがある。
1歳まではミルクをあげて1日40分太陽光を浴びせる
「マロンを迎えた当時は、フレンチブルドッグって今ほど主流ではなかったですし、本当にこれが効くの? という情報もありました。ブリーダーさんにいわれたのは、1歳まではミルク(犬用の、牛肉と粉ミルクを混ぜたサプリのようなもの)をあげた方がいいと言われて、毎日あげていました。脂肪分があるので、獣医さんには太りすぎだっていわれて、もうケンカですよね(笑)」
ブリーダーさんと獣医師の意見の狭間にたった佐々木さんご夫妻。そこは迷わずブリーダーさんの意見を取り入れたという。
「やっぱりフレンチブルドッグをずっと育てている方々ですから。マロンももち丸も、1歳まで指定のミルクをあげていましたね。もち丸は、途中から人間の赤ちゃん用粉ミルクにしたので、ちょっぴり太りましたけど(笑)」
ブリーダーさんからのアドバイスは他にもあったそうだ。
「あとは、1日40分、必ず太陽光を浴びせなさいと。今でこそ、骨をつくるのに良いと言われていますけど、当時はそんな情報を聞いたことがなくて。怪しいよね〜なんて言いながら、主人と交代で毎日ベランダに出て40分太陽光を浴びせていました(笑)でも、ミルクも太陽光も大ピンポン!骨も筋肉もしっかりして、むっちりボディになりました。」
たくさん情報を取り入れ、その中から信頼できるものを選ぶ。そして、つづけながら模索し、我が子の教科書が完成していくのだ。
13歳でガンの手術をして半年で復活
佐々木流のやり方で、元気に育ったマロンだが、半年前に10時間かけてガンの手術をしたそうだ。
「マロンは今年の6月に10時間かけて副腎と胃ガンの手術をしたんです。甲状腺にもあったんだけど、さすがに取りきれないだろうって。13歳(当時)で全身麻酔をするのはどうだろうと思いましたけど、信頼できる先生が大丈夫と言ってくれたのでお願いしました。」
しかし、術後の経過は良好ではなかったという。
「手術が終わってからしばらく回復しなかったんですよ。はじめは動かなかったですし、足腰が立たない、ごはんも食べない。しばらくオムツの生活がつづいて、体重も8kgまで落ちてガリガリになりました。」
みすずさんはつづける。
「13歳で10時間の手術はやっぱり無理があったのかなと思いましたね。もうダメなのかなぁ…って。でもね、手術から一ヶ月後の七夕の日に、ケーキを食べたんですよ。それから徐々に食欲も回復していって、8月の誕生日には今まで通り食べられるようになりましたね。やっぱり犬はすごいなぁ!ってつくづく思いました。」
手術からわずか半年で奇跡の回復をみせたマロン。今回の病気が見つかったのは、佐々木ファミリーが「恥をかかずにやっていること」のおかげだという。
ちょっとでもおかしいと思ったらすぐに病院へ行く
「うちは、少しでもおかしいと思ったらすぐに病院へ行くんですよ。“マロンがなんとなく変”とか、そこは恥をかかずに。多い時で週に一回行くときもありますよ。今回のガンもそのおかげで見つかったようなものです。手術後なんて、毎日病院へ行っていましたから。」
愛犬の様子を毎日観察し、異変に気づくことの重要さがうかがえる言葉だった。
長生きの秘訣はストレスフリーでいること
佐々木さん夫妻は、ふたりとも漫画家のため自宅で仕事をしている。
「うちは24時間、人間といっしょです。とくにもち丸はママが目線にいないとダメな子なので、私が仕事をしているときはテーブルの上にいます(笑)テーブルの上にベッドとクレートを置いて、私の目の前で寝ているんですよ。そのために大きなテーブルを買いました!」
ケージも使ったことがないという。すると、にこにこ笑っていたご主人が口をあける。
「やっぱりね、留守番をさせないことが大切ですよ。寂しがってストレスもたまるし、夏場なんてエアコンが壊れたら死んじゃいますしね…。お勤めをしている人はどうしても仕方がないと思いますけど、できる限りいっしょにいてあげた方がいいと思いますね。」
試行錯誤をくり返し、マロンともち丸の教科書をつくりあげた佐々木ファミリー。いろんな情報がはびこる昨今、「これはいい」「これはダメ」と頭を悩ます飼い主さんも多いことだろう。まずは、信頼できる人の意見をとりいれ、そこから自分流にアレンジしてみると良いのかもしれない。愛ブヒの教科書は、この世でたった一冊、あなたが作るしかないのだから。
※この記事は「BUHI vol.41」からの転載です。一部加筆・修正をし、公開しています。
(photo:inu*maru)
あれから…
取材当時14歳だったマロン・11歳だったもち丸は、あれから1年経った今でも現役を貫いている。15歳と12歳のご長寿きょうだい。まだまだ佐々木家の「愛ブヒ教科書」は厚みを増していきそうだ。
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