フレブルと八ヶ岳での生活。「今を楽しむこと」を 優先してきた
横浜から八ヶ岳に移住し、念願叶ってフレンチブルドッグを迎えることになったご夫婦。 それから14年の月日が流れーー。
目次
暮らしを「今を楽しむこと」を 優先してきた、八ヶ岳での生活
私たち夫婦は2001年に、横浜から八ヶ岳に移住しました。麦との暮らしが始まったのは2004年2月11日。私の31歳の誕生日の前日、30代の自分へのパートナーとして、ちょうど3カ月の頃に群馬の個人繁殖家の方から迎えました。
若い頃から憧れていたフレンチブルドッグとの生活でしたが、夫婦ともに犬を飼うのが初めてで、何もかもわからなくて大変でした。当時はまだフレブル飼いのブログなどの情報も少なくて、数名のフレブル飼いの方のHPを拝見したり本を買ったり……。子育て経験もなく、誰かのために世話を焼いたり尽くしたりすることが人生初の出来事。最初の頃はイライラしたり怒ったりすることもありましたが、ライフサイクルそのものが一変しました。
性格的には興奮スイッチが入りやすくて、「売られた喧嘩は必ず買う!」タイプだったので、他の犬と会わない時間帯や場所で散歩したり、トレーナーさんに相談したりもしました。ですが、環境的に飼い主が気をつければどうにかなる場所だったので、しつけの甘いまま育ててしまいました。洋犬(とくに大型犬)や犬好きの人に対してはとてもフレンドリーだったので、飼い主サイドで常に環境に配慮しながら、麦と楽しく過ごせるようにしてきました。
7歳の頃までは私も勤めていて留守番も多かったのですが、勤務時間帯が夫とずれていたため、長時間の留守番は少なかったと思います。麦が8歳の時に今の家を建てて引っ越したのをきっかけに、私が自宅仕事に切り替えたので、基本的にいつも家に居られるようになりました。本当はもっと働かなくては! と思っているのですが、シニア期に入った麦との時間をついつい優先してしまい、お天気が良い朝にはつい「今日は霧ヶ峰まで行っちゃおうか~?」とドライブに出かけたり。暮らしを、今を楽しむために、18年前に横浜から移住してきたので、可能な限り「今を楽しむこと」を優先して暮らしてきました。
麦が14歳という長寿を迎えられたのは、一番は八ヶ岳という環境だと思います。八ヶ岳では四季がはっきりしていて、冬は寒さが厳しいのですが、夏が涼しくてクーラーなしで暮らせます。暑さに弱い鼻ぺちゃにはきっと快適な環境だと思います。麦は真冬の雪の中でもウサギのようにぴょんぴょんと跳ね回って遊べたので、1年中楽しく過ごせてきたんだと思います。古い別荘地の中にある、自宅周辺の散歩でもほぼ林の中、車でちょっとドライブして、清里や野辺山高原、霧ヶ峰や車山高原など、一般的には避暑地やリゾート地と呼ばれる自然がいっぱいのところに気軽に行けます。パピーの頃からずっとそんな環境の中で走り回って遊んでいました。おかげで15キロのデカブルながらおデブさ加減は全くなくて、立派な筋肉質、手足も大きくてスラッとした、ちょっとフレブルらしからぬ体格に育ちました(笑)。
ほどほどなバランスで、緩いリズムでの暮らしが10歳を超える長生きに繋がった
身体は基本的には丈夫だったと思いますが、5歳ごろから梅雨~夏の終わりの蒸し暑い季節に、手足の指にアレルギーが出るようになり、舐めたりかじったりで、悪化した時は倍くらいに腫れ上がり、カラーをつけて生活するようになりました。ひどい時は首回りの表皮がジュクジュクになるくらい悪化してしまいましたが、ステロイドや抗生物質はどうしてもというときだけ使用して、できるだけ自然療法を取り入れてきました。私の仕事でもあるアロマテラピーやハーブ、そしてイトオテルミーという温熱刺激療法を用いて、試行錯誤しながら数年間つきあってきて、10歳を超えた頃に治っていきました。
我が家のブヒとの暮らしは「ほどほどなバランス」を大切にしてきました。皮膚炎が出だしてから手作りごはんになったのですが、基本は「生馬肉+ごはん+納豆+ヨーグルト+アマニ油」でした。飼い主の気分で野菜などをトッピングしたり、なにもプラスしないときもたくさんありましたね。肉やごはんの量も適当で、麦が残せばちょっと減らす、ガツガツ食べればちょっと増やす、と人のごはんと変わらない扱いで(笑)。あとは麦の体重の増減で調整していました。
フェアリー期は可愛らしくて愛おしくて、1日1日がギフトのような時間
我が家は、飼い主が規則正しいリズムと無縁な生活と性格だったので、食事も散歩も犬にも緩いリズムで暮らしてもらい、それが10歳を超える長生きに繋がってきたと思っています。病気との向き合い方も、基本は自然療法ですが、ときに西洋医学にも頼ります。アロマテラピーの素晴らしさを20年近く学んできていますし、マクロビオティックの良さや、薬の副作用の怖さもそれなりに知っているつもりですが、全ては取り入れるタイミングと常に広い視野を持つことが大切だと考えています。人も動物も、治すのは自分自身の自然治癒力しかないので、麦の自然治癒力を信じて、その能力を最大限に発揮できるような工夫をしてきたつもりです。
シニア期に入って、老化に伴う症状、白内障で右目が見えなくなり左目も徐々に進行してきて、耳が聞こえなくなり、匂いに対しての反応も鈍くなりました。視覚や聴覚が衰えてきたことから、刺激が減ってすっかり穏やかになりましたが、耳が聞こえなくなって叱る声も届かないので、怒ることはなくなりました(笑)。初めてのフェアリー期はパピーの頃よりも可愛らしくて愛おしくて、本当に1日1日がギフトのような時間をもらっていました。
看護の時間は1日半、夫婦の前でお別れをしてくれた、本当に良い子でした
昨年の夏前、急に水を飲む量が増えて背中の脱毛が目立ってきたので、病院で相談した結果、クッシング症候群だろうということに。目立った症状は、多飲多尿、体幹部位の脱毛でしたが、それ以外の異常な食欲や極端な体力減退は見られなかったので、クッシング症候群用に販売されていたハーブパウダーをプラスして、様子を見ながら暮らしました。数か月間の血液検査の結果、数値の悪化は見られなかったので、今年に入ってからは病院へも行かず、イトオテルミーなどで日々のケアをしながら過ごしました。
5月20日の日曜日、一緒に安曇野へのドライブも楽しみ、月曜の夜もいつも通りに布団で就寝したのですが、明け方急に発作を起こしてパニック状態(意識混濁)に。朝になって病院へ行き、四肢が麻痺しているのでステロイドを投与したら、少し落ち着いて寝てしまったので、日中入院になりました。レントゲンを撮ったところ、脊椎数カ所に変形や癒着が見られ、そのせいで麻痺を起こしたとのこと。また、肺が真っ白で肺水腫の状態で、さらに肺に大きな腫瘍があることがわかりました。抗生物質と利尿剤で肺の水を抜くことを優先して、夜は自宅に連れ帰りました。排尿機能が麻痺していて、オシッコをしたくて立ち上がってもがくので、夫が一晩中つきっきりで30分おきにトイレに連れていきました。
朝になり病院へ行き、引き続き利尿剤を注射したのですが、酸欠状態が続いているため、今後の酸素ボンベのレンタルなども相談しつつも一旦帰宅。日中は夫が休んで私が寄り添っていたのですが、徐々に呼吸の辛さも増してきて、夫が起きたところで、早めに病院で酸素ボンベを借りようと決めた矢先、夫の腕の中で不意に麦の呼吸が止まりました。びっくりして叫びながら胸を揺すって呼吸を促して、ほんの数秒だけ戻ってきてくれたのですが、最後には無意識に「もういいよ! もういいんだよ!」と泣き叫んでいました。その後すぐに呼吸も止まり、亡くなってしまいました。
多分、私たちに辛い思いをさせないように、早くに旅立つことを決めたんだと思います。看護の時間は1日半、自宅で、私たち二人が一緒に寄り添って、夫が抱っこしているタイミング、すべては麦が最善を選んでくれたんだと思います。
実は、私の親しい友人はアニマルコミュニケーションができる方で、亡くなる前日の夜も駆けつけてくれて、麦の声を聞いてくれていました。魂はもう少しだけいてくれようとしたのですが、器(身体)がもう限界で抜けていってしまいました。でも、最後まで私がそばにいればそれだけでいい、と言ってくれて、最後の苦しい時でも魂のオーラはとてもきれいで、亡くなった後はさらに輝いている、と教えてくれたので、私も麦も後悔なくやりきったんだね、と思えています。
初めての犬との暮らしで、本当にたくさんのことを麦から学びました。それまで感じたことのなかった感覚や感情、小さな幸せや感謝の気持ち、それはもう語りつくせないほどの幸福の感じ方を教えてもらいました。実は私は集団が苦手で、一度もオフ会に参加したことはないのですが(笑)、昔やっていた麦のブログからつながった友人の存在も本当にありがたく、全ては麦のおかげ、麦が導いてくれた大切なご縁です。
今回のSUMiCOさんの撮影、そしてBUHIの取材……。この夢のような計らいは、全て麦からのギフトだったようです。正直、悲しくて寂しい今、こうして麦のことでやることがあるのは嬉しいです。もうぜ~んぶ麦に仕組まれたとしか思えません(笑)。
5月24日、蓼科のペット霊園で火葬をして、麦は眩しいくらいの青い空へ駆け上がり、大きな八ヶ岳で自由になりました。本当に幸せな14年6カ月でした。最初から最後まで、愛情と悲しみ、生と死、すべてを教えてくれた最高のパートナーで師匠です。
※この記事は「BUHI vol.47」からの転載です。一部加筆・修正をし、公開しています。
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