【眼科】関西の獣医療眼科のパイオニア!【おり動物病院・大阪】
フレンチブルドッグの特徴とも言えるクリクリの大きな目。表情豊かな彼らの瞳は大きなチャームポイントである一方、マズルが短い短頭種ゆえの形姿から目が様々なものに触れやすく、よって傷つきやすいという特徴を備えています。
角膜の傷は放置しておくと様々な眼病を誘発するだけでなく、失明につながる危険も。また、ドライアイやチェリーアイなどもフレンチブルドッグに多く見られる症状で、フレンチブルドッグの場合は6歳以上で高齢化に伴う高齢性白内障が多く見られるとされています。
目や視力は日々を暮らす上で非常に重要な部位であるため、眼科の専門医による治療や診断が欠かせません。
そこで今回は、関西の動物病院の中でも眼科のパイオニアとして知られるおり動物病院の織院長にフレンチブルドッグの目の病気についてお話を伺いました。
目次
おり動物病院 織順一(おりじゅんいち)院長
おり動物病院・織院長は、犬の緑内障治療にレーザー光を応用する治療法を確立させ、現在では多くの獣医科でこの方法が用いられています。
2011年、2012年と連続して「日本獣医師会 学会長賞受賞」を受賞されるなど、その腕は日本でも指折りの名医。そんな織先生に、フレブルが気をつけるべき目の病気についてくわしく伺いました。
北里大学獣医学部で学ばれたのちにアメリカのミシガン州立大学獣医学部でも学ばれていますが、その頃から眼科を専攻されていたのですか?
織院長:
私は、北里大学獣医学部で獣医学を卒業後、日本の開業動物病院で3年間代診として勉強させていただきました。
そして、日本よりも獣医学が進歩していたアメリカに渡り、米国ミシガン州立大学獣医学部でも米国獣医学を2年9ヶ月間学びました。
現在は海外で獣医学を学ぶ獣医師も増えていますが、私たちの時代はまだ少数でしたね。
そして帰国、準備期間を経て開業1981年に開業したのですが、眼科については不得意で、実は開業してから、いわゆる独学で学びました。
丁度その頃に、動物の眼の病気に超音波エコーを使うことで、何らかの異常によって表面に濁りがあって眼内が観察できない異常が可視化できることが話題になったんです。
それがきっかけで眼科に興味を抱き、より深く診ていくようになりました。
そのうち、表面からはわからない眼内の異常が明らかになり、病態が理解できるようになり、診断が可能になって来ました。
眼科に限らず、現在もペット医療に関してはアメリカが先進国ですが、日本獣医師の知識やスキルとアメリカの新しい技術を組み合わせてより良い治療ができないものかと研究し、結果としていくつかの治療法や手術法を確立し、学会などで発表してきました。
いかなる病気も早期発見が大切
フレンチブルドッグが気をつけるべき目の病気について教えてください。
織院長:
“犬が罹りやすい遺伝性の異常を持っている率が高い”など、犬種毎に罹りやすい眼疾病の傾向がありますが、フレンチブルドッグやシーズーなどの短頭種の場合、先天的なものよりも眼が突出しているその形態から角膜に傷がつき易く、結果として角膜炎や角膜潰瘍を患うケースが圧倒的に多い印象があります。
角膜への傷は、散歩中に植え込みの枝葉が目にあたる、他の犬と遊んでいる時にまちがって目に傷がつくなとの理由が挙げられますが、ほかにもフレンチブルの場合、顔の構造上ドライアイになりやすいため、角膜の炎症に繋がることも少なくありません。
なお、眼の角膜は4(5)層からなっており、どの層で炎症が起きているかによって病名が変わるのですが、角膜の表層の炎症は“表層性角膜炎”、より深い層で起きる炎症は“深層性角膜炎”、全層にまでになると“穿孔・破裂”となります。
このように深いものは失明となることが多く、早期に外科的治療が必要となります。
いかなる炎症や異常であっても最も重要なことは、早期発見・早期治療です。
特に緑内障などは視神経に非常に強い障害を起こし、短時間で視覚消失を起こすため、常日頃から愛犬の目の状態に注意を払うことがとても大切です。
早期発見が大事とのことですが、愛犬が目の病気に罹っているか、オーナーが見極めるにはどうすればよいでしょうか。
織院長:
まず見ていただきたいのは、普段より痛そうに瞬きの回数が多かったり、正常な対眼と比較してぱっちり開眼できない、涙がよく出ている、目ヤニ、中でも特に緑色の目ヤニが出ているなどを見てください。
また、角膜の白濁があるかどうか、結膜も赤く充血したりしていないかなども見てほしいポイントです。
もしこれらのようなことが見られたら、すぐに近く動物病院に診せに連れて行っていただき、もし手元にエリザベスカラーがあるのなら即座につけてください。
白内障、緑内障、チェリーアイはどんな病気?
目の病気でよく耳にする、緑内障と白内障、チェリーアイについてもお教えください。
<白内障>
織院長:
まず白内障は、遺伝性でない場合は加齢や糖尿病、外傷、角膜疾患が原因となって起こります。
白内障になった場合は眼の水晶体が白くなって視力障害が起こり、物にぶつかることが増えますね。
白内障は原因によって完全に失明するケースとそうでないものがあります。
治療法は、超音波によって水晶体部分を除き、そのあと人口眼内レンズを入れる方法があります。
また、犬の年齢が7歳以後に起こる、加齢によるレンズの変化もあります。
これはレンズの硬化症(中心部の加齢性変化をいう)と言います。これは白内障と違い、視覚がなくなることはありませんし、治療の必要もありません。
しかし獣医師さんの中には、この両者の区別をされないで、患者さんに当院を紹介するといったケースが多々あります。
よそから紹介されて来た子の中には、硬化症なのに白内障と診断され、点眼を処方されていた子なども。
次に緑内障ですが、これは眼内圧の上昇を特徴とする一連の病気で、視神経に永久的なダメージを与えるものですが、眼内に満たしている液体(眼房水)の増加によって激しい痛みを伴い、緊急の治療を必要とします。
通常、正常な眼球内には房水と呼ばれる液体の流れによって一定の圧力(15〜20mmHg)が保たれているのですが、その液体の循環が機能しなくなり閉塞した状態から眼内圧が急激に上昇し緑内障が起こります。
症状は、急性の場合は、激しい痛みや角膜の白濁、時には元気消失、また食事も取らないほどの痛みを示します。
<緑内障>
織院長:
緑内障は、柴犬などの特定犬種による遺伝性の原発性と、様々な要因によって房水排出路が機能しない続発性に分類されますが、フレンチブルドッグが注意したいのは続発性のほうです。
緑内障の手術はレーザーを用いるのですが、ここで気をつけて欲しいのが、白内障と緑内障のレーザー手術は共に、フレンチブルドッグをはじめとする短頭種に不向きであること。
私の経験上、これらの犬種は他の犬種と比較して眼の形態の違いから手術後に炎症が起こりやすく、長頭種と比較して手術の成功率がかなり低くなります。
そのため私自身はフレンチブルドッグやシーズー犬といった短頭種の犬にはどちらの手術も行ないません。
手術以外にも複数の治療法を提案し、飼い主さんとその子に無理のない方法での治療や投薬を勧めています。
<チェリーアイ>
織院長:
チェリーアイは、生後半年から1年ぐらいまでの若い犬がかかりやすく、角膜炎をきっかけに起こることもあります。
犬は通常上瞼(まぶた)、下瞼以外にも、眼頭の内側に第三眼瞼(瞬膜しゅんまく)と呼ばれる三つ目の瞼を持っており、第三眼瞼にある腺は、涙の約30〜50%を分泌している腺組織とリンパ組織です。
この腺が腫れると、瞼から赤く腫れた組織がとびだしてしまい、チェリーアイと呼ばれる状態になります。
チェリーアイは、点眼や内服の投薬以外にも、眼の裏側に逸脱した腫れた赤い組織部分を包み込んで、出ないように縫合するポケット法という方法で手術を行ないます。
過去には眼瞼腺を切除する方法で治療していましたが、最近ではドライアイになるのでその方法では実施しません。
眼の病気はとにかく治療までのスピードが大切
傷がつきやすい構造のフレンチブルドッグの眼を守るためには、どのような予防法や注意点がありますか?
織院長:
日常的に眼の刺激や傷から守ることが基本で、眼がおかしいと思った時にはエリザベス・カラーのような防護物を付けることが重要です。
しかし、病気でもないのにエリザベスカラーを常時付けるなどは現実的ではありません。
そこでやはり、どれだけ飼い主が注意を払うことができるかにかかっているのではないかと思います。
角膜炎や角膜潰瘍から、より深刻な病気に発展することが多々あるので、角膜炎や角膜潰瘍らしき症状があるなら早期にしっかりと治療することです。
当院に来られる方の中には、「何故ここまで放っておいたのですか?」と注意してしまうような状態になってから来院する方がいます。
しかし、眼の病気はとにかく治療までのスピードが最も大切だということを覚えておいてほしいです。
なお、進行性網膜萎縮(PEA)と呼ばれる遺伝性の網膜疾患を発症しやすい犬種があり、家庭犬ではミニチュア・ダックスフントやトイプードル、ミニチュア・シュナウザーなどが該当します。
また他にも、ミニチュア・ダックスは免役介在性の角膜炎になりやすい犬種です。
このように、犬種によってどのような眼の病気にかかりやすいかを飼い主が知っておくことが重要だと思います。それらの知識があれば、予防もしやすくなりますからね。
フレンチブルドッグは角膜疾患の好発犬種なので、散歩などの日常生活で眼の刺激になることを避けるほか、シャンプー剤が眼に入らないように気をつけることが重要。
また、日常の眼のケアとして、人工の涙液点眼がお薦めです。
私の病院では、飼い主のご希望や経済的などに応じて治療法や手術方法を提案し、それらの中から可能な方法を選択していただきます。
最近は動物病院の数も増えていますが、たとえば眼科や骨整形外科など、得意な診療科を備えた獣医師がいる病院を選択することが、良い治療を受ける上では欠かせなくなってきているといえます。
いまもなお勉強を重ね、模索する研究者
穏やかな語り口と優しい笑顔がとても印象的な織院長は、特に眼科において数多くの研究発表を行ない、日本獣医師会から数々の賞を受けています。
院長が生まれ育った地元で『おり動物病院』を開業してから37年。
これほど長いキャリアがありながら、今もなお、頻繁に学会やセミナーに足を運んだり、海外の専門誌などから最新の動物医療知識を取得し、それをいかに日頃の治療に応用できるかを考えるなど、“より良い治療を模索する研究者”の姿勢を忘れない織院長。
そんな院長の元には、眼科と整形外科をはじめ、さまざまな病気を抱えるペットが通いますが、院長が幼い頃から動物に囲まれて育ったというだけあって、犬、猫のみならず鳥やウサギ、小型哺乳類まで診てもらえます。
また、留学経験で培った語学力を活かし、英語でも対応してもらえるので、日本在住の外国人ペットオーナーにとっても心強い存在になっているようです。
プロフィール
織 順一(おり・じゅんいち)院長
奈良県立医科大学客員講師
医学博士
獣医学博士
北里大学獣医学部獣医学科を卒業後、愛知県豊橋市で開業されていた動物病院に3年間勤務、その後米国ミシガン州立大学獣医学部にて研修し、1982年に『おり動物病院』を開業。
その後も論文や学会発表、講演を精力的に行ないながら獣医学博士号を取得したほか、奈良県立医科大学にて医学博士号も取得。
日本獣医師会の学術奨励賞を3度、日本獣医師会会長賞を2度、大阪府獣医師会中村賞を獲得。
病院DATA
おり動物病院
大阪府八尾市西山本町1-1-50
電話番号:072-999-5030
受付時間 平日 9:00〜12:00, 15:00〜19:00
日曜日 10:00〜12:00、15:00〜17:00
休診 水曜日
HPhttps://www.ori-ah.com/
取材・文/横田愛子
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