2021年12月8日10,407 View

【全記録】9歳で脳腫瘍発覚から「4年7ヶ月間」生存したフレンチブルドッグ・桃太郎

9歳で脳腫瘍を発症し、「4年7ヶ月間」生存したフレンチブルドッグの桃太郎。旅立ったときの年齢は13歳11ヶ月。レジェンド級のレジェンドでした。

一般的に「発症から1年生存すれば素晴らしい」とされる脳腫瘍。ここまで長生きをした理由は、桃太郎自身のパワーだけでなくご家族の的確な「情報収集」と「記録」も関係していたように思います。

桃太郎のオーナーである佐藤Kさんが自ら記した「全記録」を公開いたします。

目次

※ご本人の許可を得て掲載しております。

尚、大学病院については「A大学病院」「B大学病院」とし、担当医は「H先生」と表記しております。

 

▼記録の前に、佐藤さんご夫婦の取材記事をぜひご覧ください。

【取材】9歳で脳腫瘍を発症し「4年7ヶ月間」生存。フレンチブルドッグ・桃太郎の奇跡と軌跡

フレンチブルドッグ,脳腫瘍,放射線治療

フレンチブルドッグ・桃太郎

【プロフィール】フレンチブルドッグ・桃太郎

名前

桃太郎(オス) 2007/10/29〜2021/09/27

 

既往歴

肥満細胞腫:2011/11(A大学病院で手術・摘出)

去勢手術 :掲記手術と同時実施

 

脳腫瘍:

2017/04/26(B大学病院でMRI検査、グリオーマとの診断)

 2017/05/18〜2017/06/15(A大学病院で放射線治療 計6回)

 

1.痙攣発作発出から放射線治療まで
(2017/02/10〜2017/06/15)

[1]

何かおかしいと感じたのが、2017年2月9日の夜。ケージに繋げたクレートに入ると、翌朝まで熟睡のパターンが通常であったが、当夜はクレートをこじ開け(それまでは自分で開けて出てくる事はなかった)、不安そうに足許に座っていた。抱っこしているうちに寝息をたてたので再度クレートにいれそのまま就寝。

 

発作が初めて起きた2月10日の朝は、落ち着かなく歩き回っていた。そこで突然、口から顔の痙攣、流涎。意識はあるが体のコントロールが効かないことに戸惑っているようで、失禁 / 脱糞。意識は残っていたのか、脱糞後、トイレのあるケージまで走って行きそこで排便。

 

発作は1〜2分弱程度で治まったが、発作後は落ち着かない様子でウロウロ歩き回り3〜4分位で落ちついた。夜、この発作が間をおかず四回発生、かかりつけ医に連絡してフェノバールを処方してもらい投与、これで当夜の発作は治まった。

 

初めて部分けいれんの発作が起きた時、一時的なものだろうと軽く考え、取り敢えず発作を止めるべく薬を処方してもらった。

 

翌日の診察時に部分発作が起きた際に、「てんかんでなく脳の問題ではないか」と言われたが、犬仲間に(特発性)てんかんの子がいて話を聞いていたこともあり、「てんかん=生涯抗てんかん薬の服薬、脳の問題=一時的な炎症?」との脳内変換がおこり、むしろ「てんかんでなくて良かった」と受け止めていた。

 

[2]

その後、別のクリニックで「脳腫瘍の疑い」と診断され、そこから犬の脳腫瘍とは?とネット情報を調べ始めた。ブログ等を色々参照したが、多くは「麻酔RISKが高い」としてMRIも受けず、ステロイド等の保存的治療を選択しいるケースが多いように感じた。

 

また、放射線治療を選択した場合も、毎回の麻酔RISKや、治療途中で亡くなってしまった、あるいは一年ほどで亡くなってしまった等のnegativeな内容が多く、桃太郎はシニア(9歳半)だし、毎回の麻酔RISKもあるし、万一脳腫瘍との診断ならば保存的治療を選択しようと漠然と考えていた。

 

[3]

B大学病院での診察・診断は「脳腫瘍」であったが、担当のH先生から詳しく説明を受け、更に「経験則では、フレンチブルでの同様なMRI所見をもった症例で放射線治療(+抗がん剤)に良く反応したので、放射線療が良いと思われる」とのアドヴァイスを頂いた事から、積極的に放射線治療を選択する事とした。

 

先生のいうフレブルの事例をネットで探した所、「Long-Term Survival in a Dog with Anaplastic Oligodendroglioma Treated with Radiation Therapy and CCNU」という論文があった。

 

ここで対象となっている犬は「フレンチブルドッグ / オス / 9歳 / 去勢済/ 体重13kg」とプロフィールは桃太郎と同一、診断も「右梨状皮質の神経膠腫(glioma) gradeⅡ」と同じ、(但し、死亡後に乏突起膠腫でも悪性度の高い退形成性乏突起膠腫と判明)」。

 

このケースでは、放射線治療のあと抗がん剤治療を行い910日間生存。この論文の内容の不明点(素人には多々)を先生にメールで照会したところ、折り返し全ての質問に丁寧に答えて頂き、今後の治療への道筋がある程度理解できた事から、脳腫瘍に前向きに対応していく気持ちが固まった。

 

[4]

放射線治療ではMRIと異なり、麻酔をほんの軽くしかかけないことを治療を受けて初めて知った。MRIの場合は、桃太郎を預けてから返却を受けるまで5〜6時間かかり、それでもまだボーッとしていたが、放射線治療の時は、早いと預けてから2時間程で、しっかりと歩いて戻ってくる時もあり、MRIとは随分と異なっていた。

 

この情報(麻酔量が大きく異る)が事前に分かっていたら、放射線治療の回数も週1回の計6回ではなく、週2回の計12回を要望していたかもしれない。(回数が多いほど術後の効果があるとの研究結果は無いようだが、それでも一回当たりの線量をすくなくすればそれだけ晩発障害のRISKを減少させられる筈)

 

[5]

前犬(柴犬)が、予防接種以外は殆ど病院に掛らなかったため、犬の病気には全く疎かった。桃太郎が4歳でA大学病院で肥満細胞腫の手術をした時も「悪性腫瘍なので除去手術が必要」との医師の判断に従うのみであった。ましてや、犬が脳腫瘍になるとは、恥ずかしながら、全く想像すらしたことはなかった。

 

今後でてくるであろう問題・事態に飼い主に求められる判断・決断をするためには医師の説明を的確に理解し、疑問点をクリアできる質問ができるためにも知識の集積が必要と判断し(過去の肥満細胞腫の手術で痛感)、情報収集に努めた。

 

その際、犬の治療も日進月歩で進化しており、例えば放射線治療装置一つとっても色々あり、桃太郎の治療時点では北海道大学の装置が最新且つ治療も最先端と知った(ただ遠く、犬の体力負担勘案、本州からいくのはハードル高い)。

 

最新の情報は、大学病院HP、論文で探すほうが確実と思い、脳腫瘍とは? を解りやすく説明している「脳外科医 澤村豊のホームページ」、「放射線治療外来のご案内—-高精度放射線治療のご案内:北海道大学動物医療センターHP 」等々、大学病院、論文を中心にネットで情報を探した。

 

[6]

脳腫瘍という犬にとっても飼い主にとっても大きな病気の場合には特に、治療についての道筋をおおまかでも事前に描く必要があると痛感している。

 

検査・治療方法についての情報収集・知見の集積により犬に掛かるRISKを飼い主として適切に判断できるよう努める(専門知識は当然病院の先生の方がお持ちだが、気になる点・疑問点等を質問して、自分自身が納得できるように)と共に、積極的な治療には相当額になる費用の概算を心づもりしておくことが肝要。

 

そのさい、直接の放射線治療費用のみならず、その後のフォローアップ検査、必須となる抗てんかん薬など薬によりかなり高額になることから、予め想定することは重要と思う。

 

「MRIを受けるか?→放射線治療を受けるか?→治療回数をどうするか?→フォローアップMRIをうけるか?→抗がん剤治療をうけるか?」

 

★ご参考 : 支払い医療費=¥2,335千円

①B大学病院への支払額(MRI検査費用と薬剤費(2017/04〜2020/09)等)

    =¥1,129千円

 

②A大学病院への支払額(放射線治療費)

=¥376千円

※1回目〜4回目までの放射線治療費(除く、体重別の麻酔費用)は、一回語り43千円、5回目以降は5千円(今の費用は解らない)。

 

③かかりつけ医への支払額

(2020/09〜2021/09までの一年間)

=¥786千円

(2017/02〜2017/94まで)

 =¥  44千円

 

2.放射線治療後けいれん発作の再発まで
(2017/06/16〜2020/03/30)

[1]

かかりつけ医が「自分は脳には詳しくない」との事から、別途神経科を標榜するクリニックで診察を受け、薬を処方して貰った。

 

桃太郎の場合、B大学病院にすでにMRIを予約済みであったことから(セカンドオピニオンを求めたわけではなく)脳に詳しいクリニックで診察し、薬を処方して貰うのが目的だった。

 

しかし振り返ると、標準的な投薬内容ではあったが、結果的にはその処方内容が実質3年間つづいたわけで、やはり最初とはいえ、詳しい病院で診察を受けることが非常に大事と思う。

 

[2]

ゾニサミド(コンセーブ)とイソバイド(グリセリン)の服薬を開始した2017年4月1日から2020年3月30日までの丸3年間、放射線治療の前後を含めて痙攣発作は一回も起きず、全く通常の生活を送ることができた。桃太郎のQOLをしっかりと保つことができたことは大きな喜び。

 

▼この間の投薬は以下の二種類

①コンセーブ:150mg→100→75→50→37.5→25mg

※発作が収まっている事から、最終薬なしをめざして減薬

 

②グリセリン:7ml(2倍希釈液)

 

3.けいれん発作の再発後 発作がでなくなった日まで(2020/03/31〜2021/01/08)

[1]

2020/03/31から2020/04/01にけいれん発作が再発した際、前回の発作から丸3年経過していたので不意を突かれた感があり途方にくれたが、B大学病院に連絡すると「今すぐ来院できれば診察する」とのことで急遽通院。

 

その場でイーケプラ1・1/4錠(312mg)を服薬させ、コンセーブの増薬(25mg→50mg)とイーケプラ3日分を処方。

 

ただこの処方量では、桃太郎の場合効きすぎて傾眠状態となってしまったため、一旦中止後、適切な量と方法(回数、時間)を探る試行錯誤が始まった。

 

[2]

けいれん発作が再発したため、今後の対処方針を決める事が必要となった。

 

原因究明のためのMRI検査ついては、仮にMRIを行い脳腫瘍再発が原因と判明しても、投薬以外の対処策は、再度の放射線治療(前回の治療から一年以上 経過しているので可能な由)か、抗がん剤。

 

桃太郎が桃太郎であるためにも、意識障害を誘発するRISKは回避したい事、また、フレブルとしては高齢(12歳半)である事から、余命を縮めるかもしれない体力を要する治療は出来るだけ回避したい旨相談、投薬治療によりけいれん抑制を図っていく事とした。

 

※MRIも放射線治療も時間の長短はあれど全身麻酔であり、また、その前日の夕飯は抜きで、当日も麻酔後一定時間経過するまで食事ができない。

 

[3]

桃太郎の場合、過去3年コンセーブのみで効果あったが、今後はコンセーブに加え、作用機序が異なるイーケプラを併用、用量は発作の状況と副作用(傾眠)とのバランスを見ながら決めていった。

 

発作の悪化に備え、最新のてんかん治療の情報を収集に努め、H先生に相談する際のメルクマールとして利用を図った。

 

数多の文献(いずれもネット上で検索可能)の中で、非常に参考になり、繰り返し読み返したのが以下。

 

<書籍>

①「ホームドクターが必ず知っておきたいてんかんの正しい診断と治療」

(麻布大学附属動物病院 斎藤弥代子)

 

②「International Veterinary Epilepsy Task Force によるコンセンサス提案: ヨーロッパにおける犬のてんかんの薬物療法」

(監訳 麻布大学附属動物病院 斎藤弥代子・日本獣医生命科学大学 長谷川大輔)

 

③「犬と猫のてんかん読本〜ペットのてんかんとつきあってゆくために 第3版」

(日本獣医生命科学大学 長谷川大輔)

 

などが挙げられるが、その中でも長谷川教授の「犬と猫のてんかん読本」は、基本的に獣医師向けながら、素人の飼い主にも解りやすく、また、第2版から第3版に改定される際、最新情報が相当盛り込まれるなど内容が大幅に増補され,個人的には最も役立った。

 

<文献>

プレスリリース「てんかん発作は冷やすと治る〜てんかん病態悪化の分子メカニズムを解明」:Temperature elevation in epileptogenic foci exacerbates epileptic discharge through TRPV4 activation(群馬大学医学部 医学系研究科)

 

[4]

「てんかん発作中は触らず落ち着いて画像等の記録を取る」などと一般には言われているが、桃太郎の発作中ただ手を拱いているのは相当のストレスであり、また、発作後正常に戻るまで発作の時間が長ければ長いほど回復に時間がかかり、頭、身体を触ると非常に熱っぽくなっていたことから脳へのダメージが心配だった。 

 

※就中、重積発作が起きた場合の備えが心配。素人の場合ジアゼパムの直腸投与が一般的であったが、即効性の観点からは今一つの感。ミタゾラムの経鼻投与が有効策として出てきていたが、医師の扱いが一般的とこれも実行するうえで今一つと考えていた。

 

発作中に飼い主として何か積極的にできないか考えている中で、身体を冷やすという記事をネットで見かけたことを思い出した。そこで、震源地の頭を直に冷やすのはどうだろうかとの疑問をもち調べた所この論文を発見。

 

早速手元に保冷剤(凍結x1、冷蔵x2)を準備し、発作の起き始めに顎の下に凍結分、頭の両側に冷蔵分ですっぽり頭を覆うようにしたところ、部分発作から全般発作に移行する前に発作を止めることができた。

 

これに気を良くし、発作の都度冷却を試みたところ、全般発作への移行を必ずしも止められなくても、発作時間は短くなるケースが多く、また、余り短縮されない時でも発作後正常に回復する時間は大幅に短くなった。

 

保冷剤で頭をすっぽり覆うだけなので、万が一でも噛まれるRISKは低い一方、その効果は非常に大きく、飼い主としても愛犬の発作の負担を軽減している実感を持てた。

 

発作の始まりの兆候を捉え、早く対応すればするほど効果が高かったので、桃太郎の発作のゴールデンタイム=食後の寝入り端(寝入ってから10分経てば発作起きなかった)は、保冷剤をいれた保冷バッグを枕もとにおきすぐ対処できるようにしていた。

 

ただ、この方法の難点は、発作が始まるかどうかの段階で対処すると効果は明らかながら、全般発作が始まって時間がたつと、余り効果がみられないこと。

 

※本件報告に関するH先生の返答

「冷やして発作を止めるというのは実は非常に有効な方法である事が知られていて,人の場合脳内に薄い冷却装置を埋め込むという事が現実的に考えられている。桃太郎のように側頭筋や頭蓋骨が分厚い動物で表皮を冷やしてどれだけ脳が冷えるかと考えると,どれ程の冷却効果があるのかは少々疑問ながら、効果ありとの実感があり、容易にできることであれば,積極的に行って良い」

 

[5]

痙攣発作は、2021/01/08を最後に 虹の橋を渡る日まで出なかった。

 

発作に悩まされた期間は10ヶ月強であるが、その間、薬の効果と副作用のバランスを見ながらのtry & error の日々だった。

 

しかし、最終的に発作が出ない日々が続き、昼夜の逆転や夜泣き等の問題も無く、虹の橋を渡る最後の日まで規則正しい日常の生活サイクルを送らせることができたので飼い主としての責任を果たせたと安堵している。

 

ただ、結果論ではあるが、回り道をせず、例え犬が嫌がっても、その薬の服用指示に従った飲み方が一番効果があると判断され、もっと早い時期に実行できていれば、その段階で発作を止められたかもしれないとの悔いは残る。

 

もっとも、その場合に傾眠状態にならない保証はなく、現実問題として、体力がある間は夜一旦起こして服薬させるのは抵抗が極めて強く実施困難だった。

 

4.けいれん発作が止まった日から虹の橋を渡る日まで2021/01/09〜2021/09/27

2020/10ごろから、体力低下とともに行動変化が見られるようになった為、ステロイド(プレドニゾロン)の投与を開始。その効果は明らかで症状は改善。

 

12月から2月に掛けて、食用減退に伴い体重が激減したため、副作用頼みでステロイドの投与を継続。この影響かはわからないが、右目角膜潰瘍を患い、ヒアレイン目薬で対処。右前足、後ろ足とだんだん弱ってきたので、歩行補助ハーネスを利用。

 

5月中頃には自らを支えることが困難になり、4輪車椅子に移行。7月には、ほぼ寝たきりの状態となった。人でいう筋萎縮性側索硬化症の症状に似ていた。

 

「症状的には、変性性脊髄症(人の筋萎縮性側索硬化症)に近似しているが、この場合各種麻痺は時間を掛けて現れるのが普通で、桃太郎の場合は麻痺の箇所が異なり、また、急激なので変性性脊髄症ではない。桃太郎の場合は脊髄に問題があり、それによる中枢神経麻痺と思う」由。

 

7月頃から嚥下力の低下が始まり食事は一大イベントとなった。介護生活で一番大変だったことは、キチンと食事させる事。以前は、食欲の塊で如何に食べる量を減らすかに腐心していた桃太郎が、嚥下力低下に伴い十分な量と質の食事を摂る事が日々困難になる事態への対処が試行錯誤の毎日であった。

 

“食べれば喜び、ちゃんと出れば喜び”の日々であった。

 

経緯概要

ここからは、さらに詳しく症状および治療について記載します。

 

痙攣発作発出から放射線治療まで
2017/02/10〜2017/06/15

2017/02/10

最初のけいれん

※口をクチャクチャ、顔が痙攣、失禁。脱糞。夜に群発発作(4回)。

←フェノバールを投与。30mg B.I.D

 

2017/02/11

かかりつけ医で診察中に痙攣(咀嚼)発作

「てんかんではなく、恐らく脳に問題、フェノバールの服薬継続、ただし症状が治まれば服薬中止も可」

←多飲・多尿の程度が尋常ではないレベル(2Lを超える量)なので02/14に服薬中止

 

2017/03/26 & 27 

顔面痙攣、流涎

 

2017/03/30

顔面痙攣(咀嚼)発作から、四肢をバタバタする全般発作(強直間代発作)に移行

 

2017/03/31

朝一番で、かかりつけ医に発作時の動画を見てもらうが「脳の問題と思うが詳しくはわからない、大学病院で検査するほうが良い」とのことで、大学病院への紹介を依頼、4歳のときに肥満細胞腫で手術したA大学病院を希望した。

 

「MRIはA大学病院は早くて5月半ば」との事であったが、B大学病院に聞いて頂くと「4月下旬に取れる」とのことで予約を依頼。ただし、念の為A大学病院の予約はそのまま残してもらった。(結果論ながら、これによりMRI の予約を放射線治療に振り替えることができた?)

 

一方、HPで神経科のあるクリニックを探し、そこで診察を受けることの了解を得、(当該クリニックで診察を待っている間に顔面痙攣、流涎の軽い発作)「脳腫瘍の可能性が高い」との診断で、B大学病院での診察までの日数分の薬を処方される。

←ゾニサミド(150mg B.I.D)、イソバイド(7ml B.I.D)、プレドニゾロン(7.5mg)

 

 

2017/04/14

B大学病院を受診

 血液検査・血中濃度測定・神経学的検査を実施

 「異常は認められない。左後脚の反応がやや弱いのは脳ではなく 腰からと思われる」との診断。

← コンセーブ(150mg B.I.D)、グリセリン(7ml B.I.D)を処方。

人間用のゾニサミドではなく、成分はゾニサミドだが動物用として開発されたコンセーブと、飲む際、猛烈に抵抗されるイソバイドに替えグリセリンを処方。

 

2017/04/26

 B大学病院でMRI検査と脳波検査を実施

朝11時に預け、夕方5時半に桃太郎を受 領するもまだ半覚醒状態。受領前にH先生よりMRI画像診断並びに脳波検査の結果説明を受ける。

 

★診断結果

◆画像右下(右扁桃体&海馬部分)に白い部分が腫瘍でグリオーマ。 造影剤を使用するも、造影増強効果は見られず。脳波にも異常が認められる。

 乏突起膠腫(オリゴデンドログリオーマ)乃至 星状膠腫(アストロサイトーマ)のグレードⅡと思われる。 

 

◆原因治療には、①外科手術 ②放射線照射 ③抗がん剤があるが、①は部位からみて困難、③は、②と併用(もしくはその後)することにより効果が見込まれる

 

⇒経験則では、フレンチブルでの同様なMRI所見をもった症例では.放射線治 療(+抗がん剤)に良く反応したので、放射線治療が良いと思われる。

 ←抗がん剤を最初に用いると体力が奪われ、放射線治療が難しくなる恐れがある。

 

◆当病院の放射線装置が現在故障して使用不可なので他大学・病院を紹介するが、希望は?

⇒(当方)A大学病院付属動物病院を希望

 (H先生)M先生に連絡、先生から後日直接連絡とのこと

 

◆画像CD-ROM2枚(一枚はA大学病院用、一枚は我が家用)受領

 

 2017/05/11

A大学病院で放射線治療第一回目実施

①「腫瘍の浸潤が結構あるので、マージンを広くとって行いたい」とM先生。

麻酔回数をなるべく少なくしたいとの当方要望に、一週間に一回を6週間で行う(6gyを6回)ことに。

 

②抗がん剤治療は、副作用・体の負担を考えると、放射線治療後に考慮

 

③治療は、「全般に広がっているので思った以上にマージンを取る必要があったので線量を少し少ない5.5gyで実施。

←「長生きできるかもしれず、其の場合強い線量を掛けないほうが良いとの方針で治療」(M先生)

 

2017/05/18 , 05/25 , 06/01 , 06/08 , 06/15 

放射線治療実施(計6回)

全放射線量=33gy

 

2.放射線治療後けいれん発作の再発まで
2017/06/16〜2020/03/30

 2017/06/23

B大学病院(H先生)で診察と血液検査(全般及びゾニサミドの血中濃度)

 ①血液検査の結果は、白血球の値が少し低い以外は問題なし。

 

 ②抗がん剤治療は、放射線治療の結果を見ながら行う。

 

2017/08/03

B大学病院(H先生)でフォローアップMRI検査

①腫瘍は明らかに縮小。

 

②抗がん剤治療は、希望するなら今始めても良いが、一旦開始すると今後ずっと行うことから、もう少し様子をみても良いと思う。今から3ヶ月後くらいにもう一回MRIをとりそこで改めて決めたい。もちろんその前に症状が出始めたら開始するが、3ヶ月後に症状が出ていなくてもMRIの結果腫瘍が肥大しているようであれば開始する。

 

③頭が傾いているのは右側にできた中耳炎が原因、抗生物質を処方するが、この犬種(フレンチブルドッグ)は治りにくいので、次回診察でうみが溜まっているようであれば抜くことも考えたい。

 

 2017/09/27

B大学病院(H先生)で診察

①右目は外側半分が見えていない。前からの症状のようだし、腫瘍は右側なので直接の関係はないかな?怪我させないように。

 

②抗生物質は効いているようだが、(たとえ炎症が治まっても)首の傾きが完全に戻るかはわからない   

 

2017/10/25

 B大学病院(H先生)でフォローアップMRI検査

①腫瘍は前回と変化なし。

 

②抗がん剤治療は、もう少し様子をみても良い。

MRIは体力を消耗させるので6ヶ月後。ただし、症状(部位からすると痙攣発作)が出始めたらその時に抗がん剤治療を開始。

 

2018/01/19

B大学病院(H先生)で診察

 

2018/03/30

B大学病院(H先生)で診察・血液検査

①血液検査の数値はすべ基準値に収まっている。

 

2018/04/04

B大学病院(H先生)でフォローアップMRI検査

①腫瘍は前回と変化なし、中耳炎は治っている。

 

②次回MRIは6ヶ月後。ただし、症状が出始めたらその時に抗がん剤治療を開始。

 

2018/05/25

B大学病院(H先生)で診察

①耳の状態を皮膚科の先生が診察、「酵母菌の増殖による炎症」との診断で治療。

 

2018/11/09

B大学病院(H先生)で診察

①元気なのでMRIは翌年3月まで延期。

 

2019/03/13

B大学病院(H先生)でフォローアップMRI検査

①腫瘍は一年前と変化なし。

 

②2年間全く痙攣発作なく元気なので、抗けいれん薬(コンセーブ)を125mgから100mgに減薬。

 

2019/06/12

H先生とのメールで「発作が起きず、体調良い」ので抗けいれん薬(コンセ-ブ)を100mgから75mgに減薬。

 

2019/09/05

B大学病院(H先生)で診察と血液検査(全般及びゾニサミドの血中濃度)        

① 血液検査の数値はすべ基準値に収まっている。薬の血中濃度結果は24.3μg。

 

② 減薬後も痙攣なし、元気であり、更に減薬。最終無くすことが目標。75 mgから 50 mg に減薬。

 

2019/12/05

B大学病院(H先生)で診察        

①減薬後も発作なく元気、抗けいれん薬を減薬(50 mgから37.5mg )。

 

2020/01/23

B大学病院(H先生)で診察

①「発作が起きず、体調良い」ので抗けいれん薬を37.5mgから25mgに減薬。

 

2020/03/19

①基準値を若干下回っているが、コンセーブは同量で継続

 

②  高年齢(12歳5ヶ月)なので、フォローアップMRI検査は実施しない。

 

3.けいれん発作の再発後 発作がでなくなった日まで2020/03/31〜2021/01/08

2020/03/31

朝、ケージ内で暴れたような痕。一日中元気なし。

夜、寝るべくクレートに入ったが、横になったまま顔面部分痙攣発生。

 

2020/04/01

午前中二回、かなり激しい二次性全般化発作、余波的な発作らしきものも発生

午後にB大学病院で急遽診察(H先生不在)

 

①コンセーブ増量:25mg→50mg

 

②頓服薬としてイーケプラ:312.5mgを一日3回(T.I.D)

傾眠状態、トイレはすべて失敗

 

2020/04/03

B大学病院・H先生とイーケプラの処方につきメールで相談

→「傾眠」状態ということであればかなり副作用が強くでている。イーケプラとコンセーブの増量が強く作用しているかもしれない。一旦イーケプラの服用を中止して様子を見る。イーケプラは6−12時間で作用しなくなる。使いやすい薬なので、万が一発作が出るようであれば、そのときは1錠(250mg)を服用させる。

 

→《 2020/04/05 》夕方頃に略従来の動きに戻った

 

2020/04/06

朝・夜の二回部分発作。B大学病院 H先生にメールで相談

→コンセーブを50から100mgに増薬、イーケプラは一日2回以上発作が起きたときに一錠(250mg)を頓服

 

2020/04/07

朝・昼の二回部分発作

 

2020/04/11

B大学病院(H先生)で診察・血液検査(全般及びゾニサミドの血中濃度)

①血液検査の数値は問題ない。血中濃度は29μg

 

2020/04/22

朝二次性全般化発作(5分)、余波(50分)

→イーケプラ1錠(250mg)投与16

 

2020/04/25

朝二次性全般化発作(5分)、余波(40分)

→イーケプラ1錠(250mg)投与

 

2020/04/29

昼過ぎ二次性全般化発作(5分)、余波(60分)

→イーケプラ1錠(250mg)投与

→予防として04/30から05/04まで125mg/250mgを投与

 

2020/05/03

コンセーブを増薬:100mg→125mg

 

2020/05/06

昼過ぎ部分発作(1分)、余波(数分)  

→イーケプラ1/4錠(62mg)及び1/2錠(125mg)投与

 

2020/05/08

夜食後部分発作(1分)、余波(数分)  

→イーケプラ1/2錠(125mg)投与

 

2020/05/09

05/13までイーケプラ1/4錠(62mg)を朝夕の食事の際定期的に投与

 

2020/05/15

夜食後二次性全般化発作(5分)、余波(40分)

→イーケプラ1/2錠(125mg)投与

 

※5月15日までは、イーケプラを発作が起きたときの頓服薬として投与してきたが、5月16日から1/4錠(62mg)を朝夕の食事の際に投与。

 

→イーケプラの推奨されている投薬間隔は、その半減期の関係から8時間おきの一日3回とされている。しかしこれだと夜寝入ってから起こして飲ますこととなりストレス大と判断し、朝8時・夜6時の二回とする。発作が起きたときは48時間程度は増薬することに。

 

2020/05/24

朝食前に二次性全般化発作(5分)、余波(40分)

→発作が起きたので増薬し、イーケプラ1/2錠(125mg)投与、夜及び翌日も125mg投与

 

2020/05/29

B大学病院(H先生)で診察。診察のためイーケプラは投与せず。

午後部分・全般発作(1分)

 

※発作が始まってすぐに保冷剤で頭を包むと、全般発作に移行したがすぐに発作が収まり、その後5分ほど冷やし続けるとむっくり起き上がりほんの短時間(1〜2分)で落ち着いた。冷やす効果大と判断、以降発作の起きやすいゴールデンタイムの朝・夕食後の寝入る時間には寝入ってから5分間保冷剤を手元において待機。

 

2020/06/12

午前中に二次性全般化発作(激しく5分)。

いつもと違うタイミングで発作が起きたため、冷やすのが遅れた。

→当日及び翌日は増薬し、イーケプラ1/2錠(125mg)投与。

 

2020/07/06

朝食前に部分発作から二次性全般化発作(3分)。

保冷剤で冷やし、発作時間は短く、回復時間は30分程度

→当日(125mg) 及び翌々日の朝まで(90mg)。

 

2020/07/16

夕食後就寝時に部分発作(1分)、保冷剤で冷やし10分で正常に。

 

2020/08/07

B大学病院(H先生)で診察。これまでの発作・投薬他質疑応答。

 

2020/08/12

朝食後に顔の痙攣、流涎(5分)、保冷剤で冷やし10分で正常に。

 

※2020/08/14から、イーケプラの投与回数を従来の一日2回から3回に変更。ただし、8時間の間隔維持は難しいので、朝6時、夕方4時、夜7時の変則的な間隔。投与量は1/4錠(62mg)。

 

2020/08/18

朝食後に口から大量の泡、二次性全般化発作(2分)、保冷剤で冷やし5分で略落ち着く。

 

※「てんかんの子は、そうでない子に比べ認知機能が衰えやすい」ときいていたので、前に飼っていた柴犬が16歳半ばで頃認知症状が出始めたとき(当時のかかりつけ医が認知症の知見)に服用させて絶大な効果があったメイベットDCの服用を開始(08/21より)。

 

2020/08/29

朝食後に口から泡(3分)、保冷剤で冷やし5分で略落ち着く。

 

2020/09/07

夜就寝後に部分発作、一旦収まった直後二次性全般化発作(5分)。

保冷剤で15分程冷やすと、1分ほどウロウロした後すぐに落ち着いた寝息をたてて寝入った。

 

※09/08からイーケプラの投薬方法を変更、一回1/4錠(62mg)から1/2錠(125mg)とし、これに併せ、投与回数を1日2回 朝6時と夕方4時とした。

 

2020/09/10

朝食後の寝入り端に二次性全般化発作(2〜3分)。保冷剤で10分程冷やし30分後には略正常に戻る。

夕食後の寝入り端に二次性全般化発作(2〜3分)。保冷剤で10分程冷やし30分後には略正常に戻る

 

※09/12からコンセーブを増薬、100mgから125mg。

 

2020/09/21

朝食後の寝入り端に二次性全般化発作(2〜3分)。保冷剤で冷やし続け10分後には略正常に戻る。

 

2020/09/23

朝食後の寝入り端に二次性全般化発作(3分)。保冷剤で冷やし続け10分後には略正常に戻る。

 

2020/09/24

起床後のマッサージ中に二次性全般化発作(3分)、初めて脱糞。冷やすタイミングが遅れたせいか、発作がおさまった後興奮して駆け回る。

 

※09/24からイーケプラを本来の投薬方法に変更、一回1/2錠(125mg)は変わらず、一日3回、朝6時、昼3時、夜9時と推奨されている投薬間隔(8時間)に近づけた。

しかし、夜9時はすでに就寝中であり困難、09/30より夜7時とした。

 

2020/10/12

朝食後の寝入り端に、二次性全般化発作(3分)、すぐに落ち着き寝入る。

←昨晩飲ませたはずのイーケプラ、コンセーブがともに落ちていた=服薬していなかった。

 

※10月前後で体力低下、行動変化がみられるようになった。

ステロイド使用可否につきH先生と相談した結果、プレドニゾロン(10mg)を服用することに。(10/20使用開始)

→10/23夕方から上記の症状が消え始めた、10末には略改善。

 

2020/10/27

夕方、パンティングから、二次性全般化発作、程度は軽く1分程度、保冷剤で5分ほど冷やし略正常に戻る。

 

2020/10/28

夕食後落ち着きなく、寝入り端に部分発作、若干の流涎。2〜3分程保冷剤で冷やし落ち着く。

 

※目の見えを除き、症状は大きく改善したため、11/09よりステロイドを減薬 (10mgから7.5mg) 。ステロイドの長期使用と抗がん剤使用の是非についてH先生と相談する。  

⇒現状、抗がん剤は使用しないほうが良いとの判断。

 

2020/11/13

午後、二次性全般化発作、程度は軽く1〜2分、5分ほど保冷剤で冷やし略正常に戻る。

夕食後の寝入り端、流涎。拭いている途中で二次性全般化発作、5分ほど続く。保冷剤で冷やしている(30分)うちに寝入った。

 

2020/11/14

朝食後の寝入り端、流涎。拭いている途中で二次性全般化発作、脱糞。5分ほど続き、保冷剤で冷やしている(20分)うちに寝入った。

 

※11/14午後の分よりイーケプラを1/2錠(125mg)から3/4錠(188mg)へ増量する。 朝6時、午後2時、夕方6時過ぎの3回。

11/21より、朝6時、午後2時、夜8時半〜9時の3回に。これが最終形。

 

2020/11/26

血尿・頻尿で膀胱炎と診断

→抗生物質(2週間有効なコンベニア)注射、即症状治まる。

 

2020/11/28

夕食後の寝入り端二次性全般化発作。時間は短く(1〜2分)、5分程保冷剤で冷やすと落ち着き寝入った。

←イーケプラ1/4錠が落ちていた(飲まなかったことが判明)。

 

2020/12/03

夕食後の寝入り端、流涎。身体は震えていたが全般発作には至らず

 

2020/12/04

午後のイーケプラを服用させた後、ウロウロした後、頬が震え少量流涎。

保冷剤で頭を冷やす(5分ほど)、身体は震えていたが、全般発作には至らず夕食後落ち着きなくウロウロ。寝入り端、頬が震え少量流涎。即座に保冷剤で冷やすも、その後身体が震え、 収まるまで5分程(全般発作に至らず)、そのまま寝入った。 

 

2020/12/16

朝食後少量流涎、身体の震えは2分で収まりそのまま寝いる。

 

《食欲が減退し体重が漸減》

09/28=12.1kg

10/31=11.2kg

12/04=11.4kg 

12/25=10. kg 

 

2021/01/04

左眼角膜潰瘍の診断 抗生物質と目薬(ヒアルロン酸)で対応

 

2021/01/08

朝食後の寝入り端、流涎。3〜4分後軽い全般発作、1分程度で落ち着く

 

4.けいれん発作が止まった日から虹の橋を渡る日まで2021/01/09〜2021/09/27

2021/02/15:爆弾低気圧通過

朝ケージ内で横になり、眼振を認める。口元に大きな(20cm位)よだれ溜まり、別箇所にもこれより小さな(12cm位)よだれの痕。 

身体が非常に暖かいため、保冷剤で頭を冷やすとしばらくして体温は通常に戻る、眼振と小刻みな上半身の震えやまず。

→前庭疾患の診断、ステロイド注射。翌々日朝までよく寝ていたが、その後正常に戻る。

 

2021/08/28

誤嚥性肺炎の診断。無気肺の疑いあり。

以降17日間毎日抗生物質(ビクタス)と気管支拡張剤を注射、栄養剤輸液も実施。

 

《嚥下力が低下し体重が急減》 

 08/29=8.6kg↓

08/30=8.2kg↓

09/06=7.9kg→

09/16=8.1kg

09/23=7.5kg↓

09/26=6.9kg

 

2021/09/24

09/06頃から食欲は改善(量はそれまでの3/4)していたが、この日の朝から歯を食いしばり、口を開かず舌も動かさない。抗けいれん薬を飲ませるためごく少量のa/dで薬だけは何とか飲ませていた。

毎日かかりつけ医で点滴と強制排尿。

 

2021/09/27

早朝、穏やかに虹の橋を渡った。食事拒否から3日目。前日の診察では心音・呼吸音・血圧に異常は見られなかった。

 

5.介護生活

ここからは、介護生活に突入してからの細かい記録をお届けします。

 

(1)薬

◆「今の発作が次の発作の原因になる」と言われていることから、痙攣再発後は、QOL維持には、痙攣抑制が第一としつつも、とはいえ薬の副作用の傾眠、食欲不振、認知力低下を回避できる投与量、投与方法模索の試行錯誤であった。

 

再発直後の4月、5月こそ発作は頻繁であったが、6月頃からは回数減少。特にイーケプラのメーカー推奨量と投与頻度・間隔にしてからは、体重の減少もあり良く抑えられていた。良いと分かっていても一番実行し難たかったのは、8時間おきに3回投与という投与方法。

 

・イーケプラ 3/4錠(183mg)

一日3回(朝6時、昼2時、夜9時[*])

 

・コンセーブ 11/4錠(125mg)

一日2回(朝6時、夜9時)

 

・チラージン 1錠(100μg)

一日2回   (朝6時、夜9時)

 

・プレドニゾロン1.5錠(7.5mg)

 一日1回(朝6時)

 

・グリセリン 7m

一日2回(朝6時、夜9時)

 

・ヒアレインS(目薬)

一日3回〜5回

 

・メイベットDC(サプリ)1袋

一日1回(夜9時)

 

[*]夕食は夜6時半頃に食べさせていたが、8月末ごろに誤嚥性肺炎になって以降食欲減退とともに寝てしまうケースが増加。

そこで一旦寝かせて9時頃に起こし、食事する形に09/03から変更。

 

(2)食事

◆12月頃から 固形物(流動食になる前は長年hillsの療法食w/d)が食べられなくなってからは、「体力維持の観点からは食べられるものは何でも食べさせる」とのアドバイスに従い、(膵炎に留意しつつ)ともかく高カロリーのものを食べさせた。

 

生肉も細かくゼリー状にすれば食べたので、鹿児島産黒毛和牛または熊本産馬肉のねぎとろを食べさせた。

 

今は療法食としてシリンジで摂取させる事ができるものがそれなりにあり、基本は、hillsのa/dとroyal cananの退院サポート、高タンパク質のTubeDiet / Energy500、飲む点滴と言われる甘酒、生肉、水分としてカルピス、通常のレトルト食品。

 

◆脚が弱ってきてからは、一人が右手で胸を支え、左手で後ろ脚を支えて食べさせた。更に足腰が弱り自力で立つことが難しくなってからは、手で頭と後ろ足を支えると共に太腿の上に桃太郎の胸をのせ3点支持で安定させた。更に首を自分で支えられなくなってからは、右手を喉の部分触れるようにいれて喉の動き=嚥下したことが確認できるようにして、飲み込みを確認してから次の食べ物を口に入れるようにした。立たせて食べさせることに拘ったのは、横になったままでは十分な量の食事を摂ることが困難、且つ、誤嚥しやすいと考えたことによる。

 

食事はボウルから直接食べられなくなってからは、手で口元に運び→口の中に指で入れてやり→舌が余り動かなくなってからは、舌を指で軽くマッサージし舌の上に食事をシリンジで載せた。

 

首を自分で支えられなくなり、且つ、嚥下能力が低下してからの食事は、手指よりも舌に飲食物を確実に載せられるシリンジを使用。

 

(3)散歩 / 睡眠

◆朝は6時頃に起きる。起こすまで大体ぐっすり寝ている。

身体がほとんど動けなくなる2021/07までは、夜はケージ(90cm×180cm)にクレートを連結しクレート内で睡眠、ケージ内にトイレシーツを敷いて夜間はそこでしていた(面白いことに、小をした部分には決して大をしなかった)。

 

 動けなくなってからは、クレート・ケージから出し、褥瘡回避のため低反発絨毯を3段重ねし、そこで食事・散歩の時以外は過ごした。

 

◆子犬の頃から通っている裏山に1時間強カートで散歩に行き、そこの広場で脚力の衰えに伴い①から④の順番で過ごした。

 

①後ろ脚を支える胴輪をつけて支持歩行(体調により時間・距離は加減)

 

②四肢を支える歩行補助具をつけて支持歩行

 

③4輪車椅子で前足を動かし自分で動く

 

④4輪車椅子で立っているだけ

 

◆朝食後から夕方の散歩まで睡眠。途中イーケプラを服用させるため15分〜30分程度起こす。(最後の頃は)食事が3回となり、30分程昼食時に起こした。

 

◆夕方、朝とは違う広場に行って、犬仲間と1時間半程度過ごす。

歩く運動は、朝と同じように歩行補助具→車椅子で過ごした。

 

 ※朝夕の散歩は、亡くなる前日まで雨の日(ガレージで立たせた)を除き毎日行っていた 。

 

◆夕食後(6時半〜7時)から8時半頃まで睡眠。8時半にイーケプラを服用させたあとクレートに入り朝まで睡眠。(最後の頃は)散歩後一旦寝かせ、9時頃に起こし夕食と薬を同時。

 

(4)排泄

 ◆2020/04発作再発時イーケプラ服薬の影響で傾眠状態となり、4日ほどトイレ失敗。その後は、2020/10までは失敗は2〜3回。10月になり失敗(小)が多くなってきたのでおむつを着用、した後はおむつから解放。

 

ステロイド服用により一時足腰のしっかり感が戻り、トイレ事情も改善したが、念の為日中はおむつ着用、寝る時はせず、2021/07月に寝たきりになってからは、病院へ行く時以外はおむつはせず。

 

6.介護生活で役立ったもの

(1)歩行補助具

◆後ろ脚が弱くなり支える必要

→前の犬のときに購入したネオプレーン製の後脚を支える補助具

 

◆前後の脚が弱くなり支える必要

→歩行補助ハーネス(MayChan)

 

◆更に力が弱くなり支えていられない

→4輪車椅子( ポチの車椅子)

 

※車椅子は、事故・病気等で後ろ足が不自由になった子が前足を使い元気に歩き回るイメージが強かったため、介護用に車椅子という発想は全く浮かばなかった。

 

歩行補助ハーネスでは、支える我々の腕が悲鳴をあげるため長時間使用できず、なにか良いものはないかとネットで「老犬 寝たきり」で検索したところ、老犬ホームでの4輪車椅子の活用例を発見。寝たきりになった犬にこそ褥瘡防止、食事補助として4輪車椅子が役立つという内容。

 

制作者が自宅から車で一時間半程度だったので、早速現物を見学、桃太郎の採寸日を予約し、当日は桃太郎を連れ採寸。一時間強で制作後、桃太郎を乗せ微調整して完成。

使用期間は購入後わずか3ヶ月であったが、桃太郎のQOL維持にはものすごく役立ったと高く評価。

 

車椅子を持ち(1.5kgと軽量)、カートで広場に連れていき、車椅子に乗せているだけで、脚に地面がふれ、外の雰囲気を味わえる、他の犬との交流もできる、トイレもできる等々メリットは多々あった。

 

4輪車椅子は、最初2輪で作成し、必要になったら4輪にすることができ本来かなり長く使えるものと注文時に知った。桃太郎も足腰の衰えが目立ち始めた一年前からまず2輪で使い始めれば、ひょっとしたら体力がもっとついたかもとの思いあり。

 

◆手足のスレを防ぐ靴下

ハーネスにしろ車椅子にしろ動かない手足が地面で擦れて傷になる事を防ぐため、靴下が有効だった。但し、犬用の靴下は、おしゃれではあるが高い(毎日なので消耗頻度が上がる)ので、ダイソー等にある椅子の靴下を履かせていた。

 

(2)行動モニター

◆パナソニック ベビーモニター

前足でなんとか立ち上がることができた頃、踏ん張りが効か無いため、勢いで壁、家具等に突進してぶつかっており危なかった(普段は画面をつける必要なく)。対象が動いた時に映像と音で警告 してくれる本機の導入後は、余裕を持って対処できた。感度が良いため(強弱調整可能)全く動けなくなってからは、息づかいの違いで眼を覚ましたことをしらせてくれた(尿意で眼を覚ますこと多し)。

導入後は幸いにも経験しなかったが、痙攣発作が起きたら間違いなく直ちに知らせてくれるスグレモノ(現在は、本来の用途で孫宅で活躍している)。

 

(3)寝具

◆低反発絨毯のニトリNクール

7月以降桃太郎が動けなくなってからは、夜寝るときもケージ・クレートの外に出し、食事・散歩の時以外はリビングに褥瘡防止のため低反発絨毯を3段重ねし,そこで一日中過ごした。褥瘡防止に役立った上に、涼しかったと思う。

 

 ◆ 顎枕として小型折り畳みレジャーマット

子犬の時から顎をクッション等に載せて寝ていたが、自分で身動きできない 状態では、食後は食事の逆流を防ぐため一番折りたたんだ状態(一番高く)、昼寝時は呼吸が楽そうな高さ、寝る時は2〜3段の高さとこまめに調整して顎の下に入れた。

 

(4)HB-101(農業用)&ニオイノンノ

◆脳腫瘍と診断されて以来、(効果は全く不明ながら)HB-101を飲水に混ぜていた(喜んでのんでいた)。

ニオイノンノは同一メーカーの製品、植物原料のニオイ消しで、身体に負担のかかるシャンプーを避け、これで毎日身体を5回拭いていた(効果抜群)。

 

(5)日田天領水

◆シリンジで水分を与えるようになってからは、日田天領水を使用。また、飲水のみならず、桃太郎の顔・身体を拭く時にも使用。2月に耳及び手指が禿げた際これを塗ってキレイになり、また、桃太郎に涙やけが無かったのはこれのおかげ(以前はひどい涙やけだったが、これで拭くことにより解消)。   

 

(6)エアコン

◆細かな湿度調節ができる大容量のエアコン

先生からはともかく暑さには十分注意と繰り返し言われており、人間は寒さ対策をして、湿度は40%前後、7〜8月の室温は一日中22〜23度で過ごさせた。(24度台だとパンティングが始まった。

 

参考になった文献・記事等

1.脳腫瘍

①「Long-Term Survival in a Dog with Anaplastic Oligodendroglioma Treated with Radiation Therapy and CCNU」

(日本獣医生命科学大学 長谷川大輔教授)

 

②「犬の悪性グリオーマにおける術後放射線治療の有用性に関する予備的研究」

(岐阜大学 腫瘍科)

 

③放射線治療外来のご案内 —高精度放射線治療のご案内

(北海道大学動物医療センターHP )

 

④脳外科医 澤村豊のホームページ(人間用)

 

2.てんかん全般

①「犬と猫のてんかん読本〜ペットのてんかんとつきあってゆくために〜第3版」

(日本獣医生命科学大学 長谷川大輔)

 

②「ホームドクターが必ず知っておきたいてんかんの正しい診断と治療」

(監修 麻布大学病院  斎藤弥代子)

 

③プレスリリース「てんかん発作は冷やすと治る〜てんかん病態悪化の分子メカニズムを解明」:Temperature elevation in epileptogenic foci exacerbates epileptic discharge  through TRPV4 activation

(群馬大学医学部 医学系研究科)

 

3.てんかん薬

①「International Veterinary Epilepsy Task Force によるコンセンサス提案:ヨーロッパにおける犬のてんかんの薬物療法

(監訳 麻布大学附属動物病院 斎藤弥代子・日本獣医生命科学大学 長谷川大輔

 

②「痙攣発作の管理College of Veterrinary Medicine , The University of Georgia」

 

③抗てんかん薬個別の薬品情報

コンセーブ

イーケプラ

 

▼桃太郎のオーナー・佐藤さんご夫婦の取材記事はこちら。

【取材】9歳で脳腫瘍を発症し「4年7ヶ月間」生存。フレンチブルドッグ・桃太郎の奇跡と軌跡

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