【インタビュー】横田晴正住職「縁があるから、出会うのです」
フレンチブルドッグを始め、あらゆる動物とともに生活する上で、嫌でも訪れてしまう「お別れ」。それはときに突然やってくるし、またときには飼い主の過失による場合もあります。そんなやりきれない思いを抱えている方に、ペット霊園ソウルメイトの横田ご住職はこうおっしゃいます。
「幸せになるべく、彼らは飼い主さんを選んでやってきたのです。その結末まで全て知ってくるのです」。
目次
- どんなお別れであれ、それは「ご縁」なのです
- ペットロスに陥るのは、周りの人から思わず出た一言
- 人間の過失による死――自責の念は愛があるからゆえ
- 飼い主さんがその後の人生で、花開くように
- 亡くなる瞬間を看取れないのも犬たちの計らい
- 自分達も寿命があるからと諦めずに、犬猫を幸せな財産に
- お骨を納めるか否かも、ゆっくり考えれば良いのです
- 亡くなってからの魂の在り処は、自分の中にあるんです
- どんな人でも、次の子を迎え入れる資格があるのです
- 横田晴正さん
目次
どんなお別れであれ、それは「ご縁」なのです
いろいろな出会いがある中で、「ご縁」は限られます。「出会いの法則」というものがあるんですよ。
それは「出会うべくして出会う。一瞬たりとも遅すぎず、一瞬たりとも早すぎず」。
必ずあの日、あの場所で、あなたとあなたの愛犬は出会う「ご縁」があったのです。
逆に、どんなに犬が欲しいと思って求めて探しても、ピンと来ないときはピンと来ない。それは、まだご縁のある子に出会っていないということなんです。
だから、一緒に生活をし、愛情を注いだということは、どんな結末であれ、彼らと出会うご縁があったのです。
私は、大学を卒業してからペットショップで働いていました。そのときに数々の出会いを見てきまして、身をもってその「ご縁」を感じているわけです。
また、逆に僧侶になってからは、多くの「お別れ」を経験してきました。だから、出会いも、別れも必然なんだと、今は確信しています。
ワンちゃんたちは、どの人とご縁があるか分かっているんです。
例えば、Aさんに気になるワンちゃんがいて、足繁くペットショップに通ってきているとしましょう。
その人と会うときの犬の態度は、他のお客さんのそれとは明らかに違うんです。
また、Bさんが犬を飼う気満々で店に来ても、その犬はウンチをつけちゃって、裏で身体を洗っていてケージにいない。
それで、その犬は売れ残っていく。そして結局、Aさんに引き取られていくのです。
つまり、Bさんとはご縁がなく、Aさんとはあったということ。
そういうのを数え切れないほど見ていると、犬たちが飼い主さんを選び、「ご縁」がまさに存在するのだなというのがよく分かりましたね。
ペットを失ってしまって、悲しみが深いのは、私もいち飼い主として理解できます。ただ、ずっと続く悲しみはないのです。
それが1年という人もいれば、10年という人もいる。
でも、それは自分にとって必要な期間なんですよね。無理することはありません。
人と比べて私は立ち直りが遅いと、競争することでもありません。ゆっくりで良いのですよ。
ペットロスに陥るのは、周りの人から思わず出た一言
中には善意で「落ち込んでちゃダメ」「お骨が目に付くところにあるからダメなんだ」と叱咤激励してくる人も多いでしょう。
しかし私は、その一言にペットロスの原因があると思っています。
例えば、亡くなったのがペットではなく、家族など人間だったとしましょう。
その場合、周りの人はもっと理解してくれるし、言葉選びだってしてくれるはずです。
だから、ヒューマンロスの場合は立ち直りが概ね早い場合が多いのです。
しかし、それがひとたびペットとなると、「また飼えばいいよ」「あと何匹も飼っているじゃないか」という、人間が亡くなったときには絶対にありえない言葉を投げかけてくるのです。
「代わりを探せば」というのがそういう方々の大方の意見ですが、飼い主にとって亡くなった子の代わりはいませんよね。
愛する者を亡くしたということは、人間だろうが動物だろうが「ロス」でしかありません。
今あなたがしているのは、当たり前の行為。当たり前の思い。当たり前の悩み…。
それを理解できない、「命の姿を差別している」という社会に問題があると思います。
外野の声を聞き流せれば良いのですが、そういう言葉は悲しみの心にグサッと刺さってきます。対人不信、引きこもりになる人も出てくるほどです。
ですから、一番良いのは、分かってくれる人と話をすること。話せないなら、人の話を聞くことです。インターネットで人のお別れの話を読むのも良いでしょう。
こういう思いを抱えているのは自分だけじゃないんだと分かるだけで、心はだいぶ楽になるはずです。
何事もひとりじゃ苦しいはずです。でも一緒に乗り越える人がいれば変わってきます。私は一緒に乗り越える、そのひとりになれればと思っています。
人間の過失による死――自責の念は愛があるからゆえ
人間の過失による愛するペットの死。自責の念にかられている飼い主さんも沢山いらっしゃると思います。
でも私はいつもこう言います。「自責の念は愛しているからこそ。愛の裏返しなんですよ」。
自責の気持ちをいろいろな方向から見ると、それは愛でしかないことにいつか気づくはずです。
だから、今は辛いけれど、苦しいけれど、無理に自責の念をひも解くことはありません。
そのまま心に留めて置いて、後の人生でこの自責が意味していたことを知る日がくることでしょうから、その時にひも解くようになっているのです。
それを理解するだけでも、心の在り様がポジティブになると思います。
しかし、「頭では分かっているけれど、心が…」というのもあるでしょう。
それは、頭での「理解」は瞬間的なものですが、心はゆっくりとしかついていけないからなのです。そのギャップに苦しむことがあると思います。
しかも現代社会はとにかく生き急いでいるような環境。だから頭と心のギャップに悩むことが多くなる。心は、もっとゆっくりで良いのですよ。
昔は時間がゆったりと流れていたので、四十九日というと、心を癒すのに十分な期間でした。しかし、今では全く足りませんよね。
だから「もうこんな期間が経つのに」と落ち込むことはなく、自分のペースで、心の声に耳を傾けてあげてください。
飼い主さんがその後の人生で、花開くように
飼い主さんが目を離している間に命を落としてしまったり、過失による亡くなり方をさせてしまった場合。
そんな命の落とし方になってしまい、申し訳ないと思うでしょう。
しかし、それはそのワンちゃんが「普通に別れるより、この別れ方を通じて、あとで飼い主さんに良いことがおこるように」と身をていしているのです。
その「身をていする」というのは、神仏ならではの行為で、その子はその亡くなり方を選んだのです。
例えば放し飼いにしていて交通事故にあってしまった場合。次の子を迎え入れたときには絶対にケージに入れておこうと思いますよね。
そうすると、犬が苦手だった人も、そのお家に寄ってくれるようになる。そこから人生が開けていくこともあるんだということです。
ワンちゃんを亡くしたときは自分をひたすら責めるでしょう。しかし、長い人生を通してものを見ると、その辛い経験が人生をより良くする糧になることは多々あります。
そう、この亡くなったワンちゃんが守護者となって人生を導いてくれているのです。
ペットたちは、その家に迎え入れられる時、どういう結末になるかも分かっています。しかし、それでもそのご縁を求め、家族になってくるのです。
その日に亡くなることはもう決まっていること。そして、その形が事故や過失という形になることで、犬たちが幸せの種を残してくれたわけです。
亡くなる瞬間を看取れないのも犬たちの計らい
亡くなる瞬間、看取れるか、看取れないかというのは、どこのご家庭でも生じます。
誰かは看取れていて、誰かは看取れなかった。もちろんそういうこともあるでしょう。
でも、そうなると同じ思いを抱えるにしても、温度差が出てきてしまうのが事実。
残された家族をギクシャクさせないため犬は、全員がいる、もしくはいないときに亡くなることが多いのです。
また、家族のひとりにベッタリだったなど、絆の結び方が突出している場合、その主人がいるときに亡くなるということもあるし、逆にその瞬間を見せると忘れられなさそうだから、あえて主人のいないときに…という子もいます。
つまり犬猫たちは、タイミングを見計らって亡くなるのです。
例えば、24時間体制で介護をしていても、たまたまトイレに立った5分の間に亡くなっていたというように。
私たちの願いとしては、腕の中で眠るように逝ってほしいということでしょう。でも現実はそうもいきません。
命の最期を感じた彼らは、どう亡くなれば、残された家族たちにとって一番良いのかを考えているのです。
だから、その瞬間を見せてくれる、見せてくれないというのは、彼らが計らってくれていること。
それを温かい気持ちで受け止めることも愛なのだと思います。
自分達も寿命があるからと諦めずに、犬猫を幸せな財産に
よくご老人で、「ずっと犬を飼っていたけど、もう年齢的に飼えない」と寂しそうにしている方がいらっしゃいます。
そんな方に私はいつも言うのです。
「飼ったらどうですか?」
皆さんご自分の年齢を心配しているのですが、新しい子を迎えることで精神的にも肉体的にも元気になって人生を謳歌している方々を知っております。
そういうご老人が亡くなったあと家族に引き取られ、その子の葬儀の際のエピソードでよく聞くのが「親からの遺産はないけど、残してくれたこの犬が最高の財産だった」ということ。
ご老人が亡くなってから、お子さん夫婦に引き取られた犬を世話するうちに、家族が一つになった、家族間の会話が増えた、不良だった息子さんが更生していったなど、様々な温かいお話を聞きますからね。
お骨を納めるか否かも、ゆっくり考えれば良いのです
お骨をどうするのかについては家庭内でも温度差があるのを感じます。手元に置いておきたい人、納めないと成仏しないと思っている人。
また、「お骨があると、それを見てはいつまでも泣いてしまい、仏様が心配するよ」というお坊さんもいます。
しかし、皆さんがどうしたいのかによって、その方法と期間が違うだけで、最終的に台地から借りてきたお骨は大地に帰ります。
孫の代くらいで納骨してもらったとしても、たかだか100年、お墓に入るのが遅れるくらい。地球が生まれて46億年。
そのうちの100年なんて、まばたきのひとつの出来事でしょうから焦る必要はありません。
その間、きちんと供養しているのであれば、誰に何を言われることもありませんから、想い思いの供養をしていってください。
納骨するかどうかなど、焦って気負うことはありません。これも、ゆっくりで良いのです。
亡くなってからの魂の在り処は、自分の中にあるんです
「いつもこうして手を合わせているのです。でもお経をあげていないのが心残りなので、お経をあげてください」と言われることがあります。
私はそのたびに言うのです。
「毎日手を合わせてもらうことが一番の幸せなんですよ。それがお経そのものの行為で、一番功徳があるのです」
そう、形に捉われなくて良いのです。私が修行中に御前様に教えていただいたのは、「仏の道は仏・法・僧」ということ。
まず第一に仏様を大事にしなさいと。
それはつまり、先立った仏様を大事にするのはもちろん、その仏様が大事にしている皆さんのことも大事にするということです。それができてこそのお経なのです。
手を合わせる以上に何かをしてあげたくて、さらにお経をあげる。お経とはそういう存在なのですよね。
どうぞ、あなたの仏様を大切に思う手を合わせる習慣を大事にしてあげてください。
そしてもうひとつよく言われることは、「魂はお骨に宿っているのか? それともお位牌に宿るものなのか?」ということです。「お骨からお位牌に心入れしてほしい」とも。
しかし、お骨にもお位牌にも魂があるわけではありません。これらは、手を合わせるときの拠り所。気持ちの拠り所なんですよね。
そこに魂があるわけではないのでお骨のまま手元に置いておきたいという方は、それで良いでしょう。
では、魂はどこにあるのでしょう?
万物全てにあるという考え方もありますが、私は「あなたの心の中にあります」と説いています。
今までもそこに居場所があり、一緒に暮らしてきたのですから、彼らの魂が帰る場所は、天国やあの世など言われますが、その在り処は私たちの心の中にあるのです。
そして、彼らは私たちの目を通じて見ているし、心を通じて導いてくれているのです。
お経の中の考え方で「姿は消えて見えなくなってしまったとしても、仏様の格を得て側で見守ってくれていて、いつも心と共に人生を歩んでいる」ということですね。
ただ、ひとつ、今までと決定的に違うのは「触れ合えないこと」。だから、私はそれぞれの愛犬たちを触った手の感触を忘れないようにしています。
それを思い出しながら、手を合わせるのです。
それでも、やはり触れ合いたいと思う。
触れ合えないというのは、あちらの世界でも不自由なことなのです。
だからこそ、新たな命の姿と命の時間を授かり、あなたと触れ合いたくて生まれ変わってくるわけです。
どんな人でも、次の子を迎え入れる資格があるのです
では、次に飼う子が、亡くした子の生まれ変わりなのかというと、それは分かりません。でもご縁があるのは確かです。
例えば、犬が好きな人が、なぜか突然猫を飼うこともあるでしょう。
それは、亡くなった子がそばで見守ってくれる仏様として、一緒に暮らせるなら猫でもいいと姿を変えることで、その猫を目にした飼い主さんも何かを感じて迎え入れるというように、縁があるから出会うのです。
特に事故や過失によって、愛するペットを失った人は、次の子を迎え入れるのに大きな抵抗があると思います。
「私にはもうペットを飼う資格はないのではないか」と。
しかし、その資格がないのであれば、そもそも出会っておりません。
「寿命」「天寿」という言葉には、いずれも「寿」という字が入っていますよね。
幸せになるために命の姿を授かったのが「寿命」。幸せになるべく必要な時間を天から授かってきたのが「天寿」。
いずれにせよ、幸せになるべく、あなたに出会うべく、私たちの元に「ご縁」があってやってくるのです。
どんな期間であれ、どんな別れであれ、幸せにしてくれる人を選んでやってきます。
一緒に暮らしたということは、何歳でどんな別れ方になっても、天寿であり、寿命なのです。
だから、幸せになるべく、必要な時間を過ごし、あとは仏様として一緒にいる。
しかし、仏様のままでは触れあえないから、また生まれ変わってくるのです。
横田晴正さん
ペット霊園ソウルメイト長福寺・東京分院 ご住職(新潟県長岡市長福寺在住)。「動物が好きで命を救う獣医師の道を選ぶ者もいれば、動物が好きで最後を看取る(魂を救う)僧侶への道を選ぶ者もいて良いのではないか」そんな思いで僧侶の道へ。火葬・供養はもちろん、ペットロスカウンセリングも行っています。著書に「ありがとう。また逢えるよね。ペットロス心の相談室」(四季社刊¥1,480)。
詳しくはホームページで。http://sourumeito.sakura.ne.jp/
※この記事はBUHI vol.14からの転載記事です。
紹介されたアイテム
-
BUHI 2010年春号 Vol.14
-
ありがとう。また逢えるよね。―ペットロス心の相談室
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