【取材】14歳で元気を保つ一番の特効薬は、ノンストレスの気ままライフ!#72犬(ケン)
10才を超えても元気なブヒを、憧れと敬意を込めて“レジェンドブヒ”と呼んでいるFrench Bulldog life。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドブヒの肖像』です。今回登場してくれるのは14歳と5ヶ月になるパイドの男の子、その名も「犬」と書いてケンと呼ぶユニークな名前の持ち主。過去にはステロイドの副作用で危険な状態に陥った時期もあったけれど、大らかな家族の愛に包まれて今日も元気にワガママ気ままな日々を過ごしているのです。
犬(ケン)くんのプロフィール
年齢&性別
14才5ヶ月の男の子(2009年10月28日生まれ)
体重
11.5kg(若い頃も同じくらい)
大好きなこと
食べること。若い頃はお散歩とボール遊び
既往歴
・6歳頃から皮膚の荒れが気になりはじめ通院を開始。その際に治療薬としてステロイドを処方される。
・13歳頃ステロイドの副作用で腹水が溜まり呼吸にも異常が出始めたのをきっかけに転院し、ステロイドの離脱を試みる。
・現在は週に2回の薬浴治療で皮膚のケアを継続
知らずに続けていたステロイド
熊本県で暮らす犬(ケン)は、14年前に知人宅で生まれた4頭のうちの1頭。縁あって島田家の一員として迎えられ、一風変わった名前をもらった。
皮膚トラブルはあるものの食欲旺盛で元気な14歳で、今まで皮膚病を除けば大きな病気の経験はなく、その性格はワガママで頑固。プライドが高く家の中では自分が王様だと思っているそう。
一見病気知らずの犬(ケン)だがこの皮膚病が厄介で、一時は薬の影響で深刻な状態に陥ったこともある。
「6歳頃から皮膚が荒れ始め、夏場になると特に症状が悪化するんです。顔周りに発疹ができてただれるので病院へ通うも原因は不明。
薬を処方され継続して飲ませていましたが、実はそれがステロイドで、そうだと知らずにずっと飲ませていました。
ステロイドは確かに効果があるけれど、長く服用するには副作用が大きい薬。
当時なぜ調べなかったのかと今になって悔やまれますが、その頃は薬の知識もなく、薬で症状が落ち着いたため、疑いを持つこともなく飲ませ続けていました」(島田さん=以下「」内同)。
病院の処方薬だから大丈夫。そう確信していたため、なんの薬を飲ませているかを疑問に思うことなく長年投与を続けた。
しかし12歳頃から目に見えて薬の効果が薄れはじめ、日に日に元気が失われていく。様子がおかしい、そう思いセカンドオピニオンを求めるべく違う病院を受診し、そこで初めてステロイドを飲ませていたと知って衝撃を受けたそう。
「服用を続けると悪影響が出る薬を何年も飲ませていたなんてと、ひどく反省しました。
それでステロイドからの離脱を試みることにしたのですが、長年身体に蓄積した薬害は非常に厄介。腹水が溜まり一時は体重が14kgにまで増えたり、薬の影響で複数の臓器不全も見られました。
現在肝臓は治り、心臓は多少注意が必要な程度にまで回復していますが、一時はご飯も食べず、動かず、震えて発熱を繰り返す日々。
このまま逝ってしまうのではないかと不安でしたが、その時期を乗り越えるとみるみる元気を取り戻してくれたんです。
それ以降は薬に頼ることなく、週に2回の薬浴とアンチノールで体調を維持するようになりました」
わがままを聞いてもらえる環境
犬(ケン)はステロイドの副作用こそあったものの、大きな病気とは無縁。よほど食にもこだわっているのかと尋ねると、意外な答えが返ってきた。
「人間の食べ物はあげないほうが良いと聞きますが、我が家はどれだけ長生きしても20年程度なら好きなものを食べさせてあげたいという考え。
ベースはロイヤルカナンの低分子プロテインフードで、アレルギーの可能性がある鶏肉を避ける以外は人間用の食材やちゅーるをトッピングして、ご飯の回数も決めていません。
欲しがった時に小分けしてあげるので、平均すると日に3食くらい。
とにかく甘やかして育ててしまったから、ご飯が欲しいと要求が通るまで吠え続けます。本当はそこを躾けないといけないのだろうけれど、これもまた個性だとそのままに。
だから家の中では自分が一番偉いと思ってる節があるんです(笑)」
そんな自己主張が激しめの犬(ケン)は、食事以外にもソファーから退いてくれ、ベッドに上げろ、トイレを片付けろなどと要求し、その都度家族はそれを叶えてあげるそう。
そのため、長生きの秘訣は何だと思いますかという質問には、間髪入れず「ノーストレスだから」と答えてくれた。
「むしろ私たちの方がストレスです(笑)。夜中何回も起きてトイレに行きその都度片付けやベッドへ上げろと要求し、嫌なことをされたら容赦なく噛む。
父は先日噛まれて7針縫いましたが、病院では一転してしおらしい。役者なんですよ、犬(ケン)は。
でもワガママは家族の間だけで済んでいるから、それならこのまま好きに生きてほしい。それをさせてあげるのがそう育てた私たちの役目です」
そう言って笑う大らかな島田家。だからこそ犬(ケン)は自由気ままに振る舞うことができ、それを認めてもらえる環境がノーストレスにつながっているのだろう。
熊本地震も乗り越え、深まる絆
最近は加齢で耳も聞こえなくなり、後ろ足が弱りよろめくことも増えた。けれどそんな姿さえ愛おしいのは、長く年月を共にし、色々なことを一緒に乗り越えてきたから。
その顕著な出来事が2016年に起きた熊本地震で、その時は避難所の駐車場で約2週間の車内避難を経験した。
「ペット同伴では避難所に入れなかったので車中泊でしたが、避難時に母が左手に犬(ケン)、右手にドッグフードだけを持って、人間のものはなんとかなると言ったことが印象に残っています。
地震の瞬間咄嗟に抱えるのは、やっぱり犬(ケン)。ワガママで頑固、大好きな父を独占したくて他の家族に対しても嫉妬する子だけど、何より大事な家族です。
犬(ケン)を迎えた当時はフレブルに関する情報も少なく、ステロイドのことも含め知識がないままに飼っていて、今思えば盗み食いでヒヤリとすることもありました。
こんな家族だから犬(ケン)も自分が丈夫でいないとと思ったのか、それが長生きにつながっているのかも。
過ごす時間と比例してフレブルについて色々とわかってきた今もこれからも、このまま犬(ケン)ファーストを貫くつもりです。
現在は後ろ足が弱ってきているのでトイレなどを含め悩む部分も増えましたが、他のオーナーさんのアイデアを参考にしたり、工夫しながらやっていければいいなと家族で話しているんです」
地震以降は雷や大雨を怖がるようになった犬(ケン)だけど、避難時も家族と離れることなく過ごせたのは何より心強かったはず。
普段は抱っこも苦手でお腹を見せることもないけれど、他所に預けるのだけは無理だそう。
「日々の留守番は問題ないですが、旅行となるとダメですね。過去に一度ペットホテルに預けたら血便や嘔吐をしたと聞き、そこからはどこに行くのも一緒。
東京に広島、千葉に静岡と、ドライブが大好きな犬(ケン)を連れて家族であちこちに行っています。
父の運転中に他の家族が後部座席で爆睡していても、犬(ケン)だけは助手席できちんと起きている。そういうしっかり者の一面もあります」
ドライブ好きでしっかり者の犬(ケン)も、1年ほど前から季節の変わり目にめまいのような症状が起き、軽度の脳梗塞が疑われるように。
以降はペットカメラを設置し留守中でも様子の確認は怠らない。年齢を重ねればそれだけ体は衰えてくるが、その命を全うできるよう家族全員でサポートするつもりだ。
「今までと変わらずにどこにでも一緒に行き、年寄り扱いはしない。これ以上はできないと思えるくらいできることを全力でする。
苦楽を共にしてきた大切な存在だから、この先介護が必要になってもしっかりと支え最後まで面倒を見ると決めています。
ワガママで可愛げはないけれど、そこも含めて愛おしい存在なんです」
欲を言えば20歳を目指してほしい。そう話す島田さん母娘の隣で、犬(ケン)は自分のことを話しているのがわかっているかのように、時に二人の顔を見ながら寄り添っている。
取材を終えた数日後のこと。
4月21日の朝、犬(ケン)は大好きなパパさんの腕の中で虹の橋へと旅立ちました。まるで眠るように安らかに。
犬(ケン)ちゃんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。(FRENCH BULLDOG LIFE一同)
取材・文/横田愛子
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