【愛犬が「加害者」にならないために】他の犬や人に攻撃をする愛ブヒとの暮らし方【外でのご挨拶編】
愛ブヒを幸せにできるのも、不幸にしてしまうのも、全部は飼い主の行動しだい。
この特集では、国際的なドッグトレーナーのライセンス「CPDT-KA」の認定を取得しているドッグトレーナーの大久保羽純さんが、“愛ブヒを幸せにできるリーダーになる方法”をレクチャーします。
今回のテーマは“ほかの犬に攻撃をしてしまう”ブヒたちを、リーダーとしてどうコントロールしてやるべきか。長年犬を飼っている人もきっとびっくりの最新情報も飛び出します!
目次
興奮しやすいフレンチブルドッグだからこそ、攻撃の事故から守ってあげよう
犬とのお散歩で、他の犬や人に攻撃をしてしまう事故は、全国的に多く発生しています。特に興奮しやすく、他の犬よりも丈夫なアゴを持ったフレンチブルドッグが事故を起こしてしまうことは、大きな怪我につながりやすく、とても悲しい事です。
基本的にフレンチブルドッグをはじめ、犬たちは、優しく平和な動物です。理由がなく、噛んでしまうことは絶対にありません。
相手を噛んでしまうほどに、愛ブヒを追い詰めることがないように、さらに、噛まれてしまうことがないように、フレンチブルドッグの気持ちを知っていきましょう。
嬉しそうに見えたのに、急に咬みついてしまうのはなぜ!? 犬の感情表現、最新ニュース!
噛みつき事故から愛ブヒを守るため、まずは犬たち全般の感情表現の最新情報を知っておきましょう。ベテランの愛犬家も目からウロコの、3つのお話です。
(1)しっぽフリフリ=楽しい! は、間違い。
(2)表情を見たら感情がわかる! は、間違い。
(3)身体がカチカチなのか、ゆるゆるなのか。
(1)しっぽフリフリ=楽しい! は、間違い。
「犬はしっぽを振っていれば、喜んでいる」という話を聞いたことはありませんか? 実はこれ、間違っているのです。
しっぽを振ることは、楽しさではなく、興奮状態を表現しています。
例えば、早くボールを投げて欲しい時にも、しっぽを振ります。郵便屋さんに対して攻撃する前にも、しっぽを振ることがあります。
年間で多くの人が、「犬がしっぽを振っているから、なでても大丈夫だ」と思って手を伸ばしたら、噛まれてしまった…。という事故を経験しているのです。
“しっぽフリフリ=興奮”であり、その場面によって、興奮と一緒に、楽しさ、恐怖、緊張などいろいろな感情が組み合わさっているのです。
(2)表情を見たら感情がわかる! は、間違い。
一見表情が豊かに見える犬たち。しかし、犬の顔だけを考えると、犬の表情筋は、人間よりも、さらに猫よりも少ないと言われています。顔だけを見て、喜んでいるのか、緊張しているのかを見定めることは大変難しいことです。
例えば、眼を細めてまるでうっとりしているような表情の時。もちろん、気持ち良くてリラックスしている時もありますが、極度に緊張している時も目を細めます。
よく病院の診察台の上で、目を細めて遠くを見るような顔をすることがありますが、これは眠いのではなく、緊張しすぎている状態のストレスサインの可能性もあるのです。
顔の表情だけを見ても感情はわかりませんから、体全体で見て判断する必要があるのです。
(3)身体がカチカチなのか、ゆるゆるなのか。
犬の感情を知るための重要なポイントは、身体に力が入っているかどうか。これで、緊張の度合いがわかります。
緊張や興奮している状態だと、筋肉には力が入って、カチカチです。リラックスしていれば、緩んでやわらかい状態です。
例えば、愛ブヒは気になる音を聞いた時に、耳をピーンと上に釣り上げていませんか? 耳の根元の筋肉が緊張しているはずです。
毛の長い犬だとわかりやすいのですが、緊張すると背中に力が入って、背中の毛が馬のたてがみのように上に立つこともあります。
興奮も緊張もしていない、リラックスしている代表的な場面として、のびのびとしたところでお散歩をしている時や、眠い時や疲れている時などがありますが、そんなときはクネクネして、身体がゆるゆるになっているはずです。
いかがでしょうか? 犬の感情表現を把握するために重要なことは、体のどこか1カ所を注視して判断することではなく、体全体のボディランゲージを見て総合的に判断することが必要なのです。
愛犬の緊張や興奮のボディランゲージを見逃してしまい、愛犬のSOSに気付くことが出来ず、他の犬や人に近付いたり、近付かれてしまったときに、不幸な事故が起きてしまうのです。
フレンチブルドッグって、感情が読みづらい!?
ここまでに、犬たちの感情表現を知ってもらいましたが、上記の(1)~(3)を見てもらうと、賢明なフレンチブルドッグオーナーさんたちは、大変なことに気付くはずです。
(1)しっぽフリフリ=楽しい! は、間違い。→ フレブルはそもそもしっぽが短すぎて、振っているのかわからない!
(2)表情を見たら感情がわかる! は、間違い。→ フレブルはそもそも笑っているように見えがち!
(3)身体がカチカチなのか、ゆるゆるなのか。→ フレブルはそもそもマッチョなボディなため、いつもカチカチに見えがち!
いかがでしょうか? 他の犬種にくらべて、フレンチブルドッグは、特殊な顔や体をしています。しっぽが極端に短く、大きな口を開けて笑ったような表情をしています。さらにかなりの筋肉質な体のため、その状態がゆるゆるなのか、カチカチなのかが(フレンチブルドッグなりに)とてもわかりづらいのです。
そのため、フレブル以外の犬のオーナーさんには感情が読み取りづらい犬種です。フレンチブルドッグオーナー同士ですら、愛ブヒが興奮しているのか、楽しいのか、嫌がっているのか、緊張しているのか、判断が難しい時があることでしょう。
だからこそ、フレンチブルドッグオーナーさんは、世界中の誰よりもフレンチブルドッグの感情表現に目を向けて、愛ブヒたちのSOSサインに気付いてあげる必要があるのです。
愛ブヒを守る安全な環境づくり。
愛ブヒの感情に目を配っていただきながら、やっていただくことは2つ。
(1)興奮させっぱなしはNG。
(2)安全な距離を、“オーナーさんが確保する” こと。
(1)興奮させっぱなしはNG。
“興奮=楽しい”のではありません。フレンチブルドッグは、他犬種に比べて、興奮し始めてから興奮のMAXまでがとても早いです。瞬間湯沸かし器です。
フレンチブルドッグの場合、興奮することで呼吸が苦しくなったり、噛みつきたくなる衝動も強まります。興奮することに1つもメリットはありません。
興奮してハアハアしている状態は、一見喜んでいるように見えるかもしれませんが、ただの興奮と緊張状態です。フレンチブルドッグオーナーの愛をもって、興奮する前に止めてあげることこそ、幸せ家族の第一歩です。
例えば、他の犬を見かけて興奮して近づく様子を見て、愛ブヒを喜ばせた気持ちになるかもしれませんが、犬を見つける→興奮する を繰り返すことで、犬を見つけたら興奮する犬の出来上がりです。興奮しながら近づかれた相手の犬も、不快でしかありません。
また、犬同士で遊んでいる間に興奮して取っ組み合いをすることもありますが、もし片方が興奮して一方的に攻め続けていたら、すぐに間に入って中断させましょう。
一人勝ちの遊びは、両者が楽しい遊びではなく、ただのイジメになってしまいます。
(2)安全な距離を、“オーナーさんが確保する” こと。
興奮する犬に、「興奮しちゃだめよ!」と言ったところで、興奮が収まるはずはありません。
以前のコラムにも書きましたが、犬は人間の3歳児くらいです。犬自身に任せるのではなく、オーナーが保護者として守ってあげましょう。
例えば、人や犬に、「フガフガ! ブヒー!」 と興奮しながら近づいてしまう愛ブヒなら、相手と距離を取りましょう。興奮しながら相手に近づくことに成功すると、興奮がさらに高まってしまいます。
興奮しないでも相手と一緒にいられる距離で、まず落ち着いてから、他の犬とあいさつをするとGood。
さらに、挨拶中に少しでも興奮の兆しを見つけたら、すぐに挨拶を中止して、相手と距離を取りましょう。
そもそも散歩中に犬同士の挨拶をするときは、お互いにリードがついています。犬同士で快適な距離を取りたいのに、リードが突っ張ってしまい、逃げたくても逃げられない状況です。
「リードフラストレーション」と言って、犬はリードで拘束されてストレス負荷がかかっている状態での挨拶になる訳ですから、緊張して当然と言えば、当然なのです。
手からリードを離すわけにはいきませんから、リードの距離の代わりに、オーナーさんが、犬同士が緊張しない距離を取ってあげる必要があるのです。
みんなと仲良くして欲しいオーナーと、そうはいかない愛ブヒ
犬同士や、犬と人とのあいさつで起きる事故を予防するためには、愛ブヒの快適な距離感を知り、小さな緊張サインに気付いて、いつでも助けてあげられる状況を作っておくことが大切です。そのためにも、犬や人とのご挨拶の時には、以下の要因を考えましょう。
・犬×犬 の相性。(例:プードルは好きだけれど、パグは苦手)
・犬×人 の相性。(例:基本的に人間は好きだが、帽子をかぶった人は苦手)
・その場所の刺激や雰囲気。(例:スケボーが苦手なのに、ちょうど他の犬とのあいさつ時にスケボーが通ってしまった)
・その日のストレス蓄積レベル。(例:病院で注射されてこの日はイライラが溜まっていた)
・オーナーさんと犬の立ち位置。(例:自分から相手のオーナーさんに近づくのは好きだが、他の犬が自分のオーナーさんに近づくのはイヤ。)
愛犬のその場でのストレス要因の把握は出来ましたか?
その日、その瞬間で、たくさんの要因がからんで事故は起きます。いつも同じという事がないからこそ、オーナーさんがその場での愛ブヒの様子をしっかり見ておく以外、予防法は無いのです。
さらに、愛ブヒだけでなく、相手の犬のストレスサインにも気づく必要があります。愛ブヒのことはわかっていても、相手の犬の細かな事は、わからないものです。
厳しい表現になってしまいますが、もし相手のオーナーさんが「うちの子はフレンドリーだから、誰でも大丈夫よ」と言っていても、安易に信用してはいけません。
相手の発言について信用するに値する、確固たる裏付けがないからです。愛ブヒと、相手の人や犬を守るためにも、慎重に接するに越したことはありません。
相手の犬の表情もよく観察して、その場での選択をできるのが保護者であるオーナーさんの責任と権利なのです。
全員と仲良くなれなくったって、いいじゃない♪
そもそも、犬が得意でないフレンチブルドッグは、たくさんいます。さらに、人が苦手なフレンチブルドッグもたくさんいます。
そんなフレンドリーじゃないフレブル、出会ったことも無いわ! という声も聞きます。それはそうでしょう。
そういった愛ブヒと暮らすオーナーさんは、他の犬や人がいない場所や時間を選んで、お散歩をしているからです。愛ブヒに嫌な思いをさせないように、他の人や犬に出会わないようにしているのですから、見たことが無くてもおかしくありません。
まず一番大切なことは、愛ブヒと家族が一番仲良しであること。その上で、もし気の合う人や犬がいれば、仲良くなったら良いでしょう。
ただ、いつでも誰にでも、愛想よくしていろと言うのは、人間の勝手が過ぎます。皆さんもイライラしている日があったり、地球上に、会いたくないほど苦手な人間の1人や2人はいますよね。そんな人に、挨拶されたり、なでられたいですか?
愛ブヒは自分で断ることが出来ません。もし困難な状況に直面して、オーナーさんに助けてもらえなかったら、追い詰められて、相手に噛みつく手段しか残されていません。
もし愛ブヒにとって、苦手な対象が現れたら、挨拶をお断りしたり、道を変えたりして、愛ブヒの不快な気持ちを事前に回避することが大切です。
人間同士の「挨拶を断るのは、なんだか悪いな」という大人の都合で、愛ブヒを泣かせてしまってはいけません。
愛ブヒのラブリーな笑顔を守ってあげることこそ、フレブルオーナーの使命なのです。
まとめ
愛ブヒと世の中の犬たち、さらに犬を愛する人々の安全を守れるのは、みなさんの観察眼と、愛ブヒのことを学び続ける愛情の姿勢です。
愛ブヒを興奮状態に置かないように、適切な距離を取るようにしましょう。さらに、愛ブヒの趣味趣向を理解して、好きなものとの出会いを推進していきましょう。
PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純
米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー
日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の生活を楽しいものにする活動を行っている。
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