2020年7月21日6,572 View

『ごはんは先住犬から』はウソ?ホント?多頭飼いにまつわる噂・謎に対してプロが回答!【Vol.1】

愛ブヒを本当の意味で幸せにするには、オーナーが犬にとって頼れるリーダーになることが何より大切です。
そこで、国際的なドッグトレーナーのライセンスを取得している大久保羽純さんに、“愛ブヒから信頼されるリーダーになる方法”を学ぶのが、この特集。

今回は、“先住犬を立てるべき”など、巷にあふれる多頭飼いの噂について、真偽のほどを解説します!

フレンチブルドッグ,しつけ

巷にあふれる、多頭飼いの都市伝説あれこれ

フレンチブルドッグ

GH Studio/shutterstock

 

皆さんのお家は、1頭飼いですか? 多頭飼いでしょうか? 

 

今は1頭でも、いずれはもう1頭を迎えたいと思っている方もいるかも知れません。

 

私たち人間も、一人っ子か、兄弟のいる子か、どっちが良いということではありませんよね。

 

愛ブヒとの生活も同じで、1頭と暮らす良さもあれば、多頭飼いだから楽しめることもたくさんあります。

 

犬業界には、さまざまな都市伝説や噂がはびこっています。

 

そして、“多頭飼いに関するいろいろな噂”もあるようです。

 

今回は、愛ブヒオーナーさんから寄せられた、いくつかの“多頭飼いの謎あれこれ”を紹介しながら、それがウソなのかホントなのか、紐解いていきましょう。

 

Q:先住犬を立てるために、ごはんは「先住犬に先にあげるべき」ってホント? 

フレンチブルドッグ

Koy_Hipster/shutterstock

 

Q1. 先住犬を立てるために、ごはんをあげるのは先住犬が先ってホント? 

「もう1頭、新しい犬を迎えるときには、先住犬を立てましょう。だから、先住犬の立場を考えて、ごはんを先にあげましょう」。

 

よく聞く話ですが、これってホントなのでしょうか?

 

A1. 

質問の答えを出す前に、まず重要なことがあります。

 

先住犬がいるお家に、もう1頭新しく犬を迎えるときの、大切な心構えとは何だと思いますか? 

 

それは、今いる家族(先住犬)の暮らしを守ることです。

 

2頭目を迎えたいのは、100%人間の都合。先住犬は「家にもう1頭、ブヒがほしいよー」なんて言っていません。

 

だからこそ、そもそも2頭目を迎えるかどうかを考えるときには、

 

・1頭目に、今までと同じ暮らしを提供できるか。

・今までと同じように、時間と手間をかけられるのか

 

を、よく考える必要があります。

フレンチブルドッグ

Kittibowornphatnon/shutterstock

 

オーナーさんの生活状況、金銭面、時間的余裕、家の広さ、家族構成などをよく考えて、自分は何頭の犬と暮らせる状態なのかを、家族全員で考えましょう。

 

無理やり多頭を飼ってしまうと、家族の誰かにシワ寄せがいきます。

 

先住犬に与えられていた、愛情とケアが不十分になってしまう可能性があります。

 

そうすると悲しいことに、先住犬を不安な状況に置いてしまうことになるでしょう。

 

先住犬が、「安心できる生活を奪われた!」と感じてしまったら、どんなにオーナーさんが先住犬に「ごはんを先にあげているのだから、あなたのことを優先しているのよ(気持ち的には)。だから2頭目のことも理解してあげてね」なんて説得しても無駄ですよね。

 

つまり2頭目を迎えるときに大切なのは、

 

×先住犬を立てる

○先住犬の安心感と資源を守る 

 

ということです。

 

「先住犬を立てている」は、あなたの自己満足かも。愛ブヒが本当に望んでいることは…

フレンチブルドッグ

Galina Kovalenko/shutterstock

 

前置きが長くなりましたが、この辺で薄々、質問の答えが分かったオーナーさんもいるのではないでしょうか? 

 

要するに“先住犬を立てる”という、人間目線でのルールが大切な訳ではありません。

 

そもそも、犬に“先輩を立てる”、“配慮する”、“尊敬”などの人間のような概念が存在するなんて、科学的根拠がありません。

 

“オーナーさんが先住犬を立てる”というより、“先住犬が安心して暮らせる(先住犬の資源が奪われない)状況を、オーナーさんが作る”という表現の方が、愛ブヒ目線になれます。

 

 いつもコラムでお伝えしている通り、人間側の意見は一旦置いておいて、優先すべきは、愛ブヒ側の心と体を満たすこと。

 

“オーナーさんが何を思っているのか”より、“愛ブヒ自身がどう感じているのか”の方が重要なのです。

 

オーナーさんが「我が家は、先住犬を優先している!」と思っていたとしても、先住犬自身がそう感じていなきゃ、愛ブヒを幸せには出来ないのです。

 

人間目線ではなく、先住犬目線で、先住犬の権利を守るのだ!  

フレンチブルドッグ

Irina Kozorog/shutterstock

 

ご飯を先にあげたって、おもちゃを先に渡したって、お散歩で先に歩かせたって、それを先住犬が喜んでいるかは、先住犬自身にしかわかりません。

 

例えば愛ブヒは、「僕がイヤなのはそこじゃないし。新参者に僕のベッドを奪われていることが、めっちゃイヤなんですけど!」と思っているかも。

 

または「わたしがいつもオーナーさんのお膝の上を独り占めしていたのに、新参者が一緒に乗っかってきて、すごくつらいよー」なんて思っていたらどうでしょう。

 

オーナーさんが気にしていることと、愛ブヒの要望がズレている可能性は大いにありますよね。

 

何が不快だと感じるかは、その子ごとに異なって当然です。

 

大切なのは、先住犬が今までの生活で守られてきた資源と権利を、オーナーさんが守り続けることなのです! 

 

先住犬が新参犬を歓迎するとは限らない

フレンチブルドッグ

hypersoulz/shutterstock

 

もちろん、愛ブヒの頭数が変われば、生活スタイルも、今までとまったく同じにはならなくて当然です。

 

けれど、それはオーナーさんが選んだ道。

 

先住犬にはなんの責任もありません。

 

先住犬にしたら、はじめは新参者の犬を、“いい迷惑”だと感じるかもしれません(数年経てば、仲良し多頭ファミリーになるかもしれませんが、それまでには時間と努力が必要です)。

 

だからこそ、先住犬が「僕の暮らしが脅かされている! 不安だよ…」と感じないように、まずは先住犬の様子をよく観察。

 

同時に、新しく迎えた犬もハッピーになれるような生活スタイルを作っていきましょう。

 

結論としては、先住犬が不安を感じるような状況を、オーナーさんが作らないことが大切なのです。

 

先住犬へのご提案のひとつとして、“ごはんは先住犬が先”とか、“お散歩でのリード付けは先住犬が先”とか、家庭でルールを決めてやってみても良いでしょう。

 

ただ、先住犬がそれで喜ぶかどうかはわかりません。

 

常に先住犬の目線になって、先住犬が不安を感じないように、先住犬の資源を守ることがオーナーさんの役割なのです。

 

Q:散歩は一緒にしたほうがいい? バラバラにしたほうがいい? 

フレンチブルドッグ,散歩

Tanes Ngamsom,shutterstock

 

Q2. 散歩は一緒にしたほうがいい? バラバラにしたほうがいい? 

忙しい毎日、「お散歩はできれば、一緒にまとめてやりたい」というオーナーさんも多いでしょう。

 

ですが、「バラバラにやったほうがいい」という噂もよく耳にしますよね。どちらが正解なのでしょうか。

 

A2. 

みなさんはどう思いますか? 先述の“A1.”に、ヒントが沢山入っています。

 

さあ、人間目線ではなく愛ブヒ目線で考えてみましょう♪ 

 

そもそも、お散歩の目的って何? 

フレンチブルドッグ,散歩

PolinaBright/shutterstock

 

お散歩は愛ブヒにとって、大切なリフレッシュの時間です。

 

家の中では感じられない匂い、音、さまざまな刺激との出会いがあります。

 

お散歩って、つい日常のマンネリな業務になってしまうときもあるかもしれません。

 

でも本来は“愛ブヒに喜んでもらう、愛ブヒ孝行の時間”だったはずです。

 

だからこそ、お散歩では愛ブヒがハッピーでなきゃいけませんよね。

 

せっかくのお散歩で愛ブヒを不快にさせては、その目的が果たせません。

 

あなたの愛ブヒは、どっちの方が喜んでくれる?

フレンチブルドッグ

Joy Brown/shutterstock

 

さあ、質問への答えです。

 

お散歩に“一緒に行くか”、“バラバラで行くか”は、あなたの“愛ブヒが”どちらを快適に感じるかが答えになるのではないでしょうか。

 

例えば、ペースのぜんぜん違う犬2頭で一緒に散歩に行くと、どちらかを急がせるか、どちらかに合わせてゆっくり歩くことになります。

 

もしも、どちらかの犬が「ペースが合わなくて辛いよー」と感じてしまうなら、バラバラに行く方が良いのかもしれません。

 

人間目線では「家族みんなで行くほうが良い!」と思いがちです。

 

でも、みんなで一緒に行くほうが愛犬につらい思いをさせることだってあるわけです。

 

「バラバラだからダメ」とか「一緒なら良い」とかに縛られないで!  

フレンチブルドッグ

Lapina/shutterstock

 

絶対にこうしなきゃいけない! というルールに飲み込まれてしまうと、大切な愛ブヒの心を置いてきぼりにしがちです。

 

それを考えるために、あるお家の例を紹介します。

 

小林さん(仮名)ご夫婦2人は、2頭のブヒ(先住犬モモちゃん5歳メス、ププくん2歳オス。いずれも仮名)と暮らしています。

 

新しくププくんを迎えてから、家族全員または、ママが2頭を連れて散歩に行っていたそうです。

 

しかし、ププくんが吠えることで静かだったモモちゃんも吠えるようになり、お散歩で大合唱! 

 

さらに、引っ張りも強くなってしまったとのこと。

 

小林さんによく話を聞いてみると、2頭の散歩スタイルはバラバラだったようです。

 

先住犬のモモちゃんは身体が丈夫な方ではなく、匂いをかぎながら、ゆっくり歩いたり立ち止まったりしてお散歩を楽しむ子。

 

それに対して、マッチョなププくんは元気ハツラツ! 歩く速度も速いのなんの。

 

オーナーさんは、このペースの違う2頭を、無理やり一緒に散歩に連れて行くことで、モモちゃんにもププくんにも、楽しくない散歩をしてしまっていたのです。

 

その結果、イライラした2頭はオーナーさんが望まない行動を繰り返していきます。

 

そこで小林さんは、お散歩スタイルを変えてみました。

 

ママ&モモチームで「まったりクンクン散歩」、パパ&ププチームで「ダッシュ&おもちゃ遊び散歩」と分けたのです。

 

ある程度ばらばらでお散歩をして、2頭が落ち着いてきた頃に、最後のほんの少しの帰り道だけ両チームで合流したら、家族全員での穏やかな散歩の時間になったそうです。

 

家族それぞれのスタイルがあって良いのです

フレンチブルドッグ

Natalie Shuttleworth/shutterstock

 

小林さんは、家族みんなで散歩に行くことにこだわった結果、愛ブヒたちを苦しめていたんですね。

 

今では、散歩を終えた2頭が、満足そうな寝顔を見せてくれるそうです。

 

小林さん家の例は、あくまで1つのスタイル。みんなが同じようにして成功するわけではありません。

 

なぜなら、家族構成、愛犬の運動強度、愛犬の散歩の楽しみ方など、さまざまな要因で、お散歩スタイルは異なるからです。

 

だからこそ、人間目線の固定概念に縛られず、オーナーさんが、愛ブヒたちの快適なスタイルを模索し続ける必要があるのです。

 

「お散歩にバラバラに行くと、留守番をする愛ブヒが可哀想……」と思うなら、留守番中の愛ブヒに楽しいこと(知育玩具や、ペットシッターさんなど)を提供して、留守自体を楽しくしましょう。

 

可哀想と言うなら、無理やり引っ張り回される散歩だって、十分愛ブヒは気の毒です。

 

人間目線の「一緒に行かなきゃ!」の固定概念に飲み込まれないこと。

 

「みんなが一緒にいることこそ幸せ」とか、「なんであれ、犬なのだから散歩に行けば嬉しがるでしょ?」とかも、固定概念の罠。

 

愛ブヒが本当に心から快適で、喜んでいるかを確かめるための冷静な目を持ち続けましょう! 

 

新しく犬を迎える前にドッグトレーナーに相談を

フレンチブルドッグ

Kuznetsov Alexey/shutterstock

 

1頭のときには問題がなかったとしても、2頭以上になったら生活はまた大きく変化します。

 

良いことも相乗効果、悪いことも相乗効果で、困ることも出てくることでしょう。

 

お散歩の仕方も、1頭と複数頭では全然違います。

 

出来れば、新しく犬を迎えるときにはその前の段階でドッグトレーナーに相談してください。

 

なぜなら、先住犬と相性のいい新しい犬のマッチング(選び方)の仕方、先住犬と新しい犬との出会わせ方など、やれることがたくさんあるからです。

 

わからないな、困ったなと思ったときは、どうか一人で悩まないでください。

 

獣医さんやプロのドッグトレーナーに相談しましょう。

 

皆さんを支えるプロは、身近にたくさんいます。

 

ドッグトレーナーに依頼をする場合も、そのトレーナーが行動修正の豊富な経験を持っているか、学術的、科学的知識をもって動物福祉と動物への倫理に基づいた指導を安全に行える人材かどうか、オーナーさんが確認をするようにしましょう。

 

まとめ

多頭飼育に関する、これってホント?! という話題は、尽きることがありません。

 

次回も引き続き、愛ブヒオーナーさんたちの、多頭飼いに関する疑問、質問に迫っていきます。 

 

お楽しみに♪

 

PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純

PERRO株式会社 代表取締役 
SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純

米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー

日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。

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