ぎゃー!なんでウンチ食べちゃうの!?「食糞」する様々な原因と、それぞれに合った『やめさせる方法』をプロが解説!
国際的なドッグトレーナーライセンスを取得している大久保羽純さんに、愛ブヒと固い信頼関係を築く方法を学ぶこの特集。今回は、悩んでいる方も多い“食糞”について。その原因から対策までをレクチャーします!
目次
あぁまたウンチを食べているの? やめてー!
皆さんは、犬たちの食糞という行動をご存知ですか?
食糞とは字の通り、ウンチを食べてしまうこと。
愛ブヒが自身のウンチを食べることもあれば、他の犬や猫のウンチを食べるブヒもいます。
「まだ子犬だしそのうち直るでしょ…」なんて思っていたら、成犬になっても食糞が直らない。
そんなオーナーさんも少なくありません。
今回は愛ブヒの食糞について、原因と解決方法を学んでいきましょう。
食糞なんてありえない!?
まずはじめに、「ウンチを食べるなんてありえない!」と、叫び出したいほど嫌悪感がある方へお伝えしたいことがあります。
それは、動物がウンチを食べること自体は、決して“ありえないこと”ではないということ。
例えばウサギは、栄養の再吸収のために毎日食糞します。他の動物でもよくあることなんです。
ちなみに犬たちは、自分の巣穴をお掃除するために食糞することもあります。
例えば母犬は、子犬の糞を食べて巣穴の清潔さを保ちますし、子犬たちも自分や他の子犬の糞を食べることもあります。
巣穴にウンチが放置されていると衛生上よくありませんから、食糞をしてお掃除をする犬たちはキレイ好きと言えるかも知れません。
人間にとって、ウンチは汚い物の代名詞ですが、犬たちにとってのウンチはもっと身近な存在。
お散歩で、他の犬のウンチの匂いを入念にチェックしませんか?
もしウンチを汚いと感じていたら顔を近づけて嗅がないでしょう。
何が言いたいかと言うと、「食糞をする犬なんてありえない!」ではなく、「少なからず食糞をする犬はいる」という現実を受け止めてほしいわけです。
とはいえ、けして「食糞をさせましょう」というわけではありません。
食糞を放っておいて良いかと言うと、そうとも言えないからです。
ウンチが歯の裏についたままになってしまったり、他の犬や猫の不衛生なウンチを口にして病気になる可能性もあります。
食糞の原因とは?まずは医学的な側面からアプローチ
食糞が良くないことなら、さっさとやめさせたいですよね。
インターネットなどでは、食糞をやめさせると謳っているスプレーやサプリが売っているようです。
しかしちょっと待ってください。そんな効果があるか怪しいものを使う前に、まずは動物病院に相談しましょう。
なぜなら、食糞には以下のような健康問題が隠れている可能性があるからです。
<食糞の原因となる健康問題>
・体内に寄生虫がいて食欲が増している。
・消化器官の機能低下で栄養の吸収がうまく出来ておらず、便に出てしまっている。
・なにかしらの疾患で、耐えられない空腹を感じている。
・食事内容の問題。
つまり食糞をすることが、体調不良のサインであることも少なくありません。
食糞という“行動”を変えることだけに焦点を当ててしまうと、愛ブヒからの“助けてサイン”を見逃してしまうかもしれないのです。
実際、私が食糞のお悩み相談を受けてお伺いしたお宅のワンちゃんが、ガリガリに痩せていたということがありました。
このお宅では給餌量が足りておらず、ワンちゃんがいつもお腹をすかせていたためウンチを食べていたのです。
優しいオーナーさんでしたが、オーナーさんは毎日ワンちゃんを見ているので、痩せていっていることに気づけなかったのです。
動物病院で検査をした上で、食事を十分に与えたところ、食糞をしなくなりました。
オーナーさんは愛犬に涙を流しながら「たくさん叱ってごめんな…腹が減ってたんだな。お父さんが悪かった。許してくれ」とおっしゃっていました。
アイテムを使って食糞対策を試みるのは、動物病院で診てもらってからでも間に合います。
愛ブヒの「助けてサイン」を見逃さないように、まずは獣医さんに相談して、健康面での問題がないかを診てもらいましょう。
食糞の原因とは? 行動面からもアプローチ
では、健康には問題がなさそうな場合、行動面で食糞をする原因として考えられることは何でしょうか?
例えば、
・サークル内で留守番をしているときに、暇だったからウンチで遊んだ
・ウンチを片付けるために食べた
・ウンチを食べたときのオーナーさんたちのリアクションが良かった
・ウンチを嗅ごうとしていたところオーナーさんに盗まれた経験から、盗られないように口に入れた
・猫のウンチが美味しく感じた
などなど、きっかけは色々あるでしょう。
愛ブヒに本当の理由を聞くことは出来ませんから、原因探しには限度があります。
しかし対処法ならあります。
それは“愛ブヒが、ウンチにアクセスしない仕組みを作ること”です。
家の中なら、以下の手順で実践してみましょう。
<ウンチをしたら、ウンチから離れたところでご褒美がもらえるシステム>
(1)まず大好きな食べ物を小さくちぎって準備します。ブヒの爪くらいの大きさで、50粒以上は準備しましょう。
(2)ウンチをしたら、ウンチから2m離れた床に、準備しておいた食べ物の半分をばらまきます。節分のように床に散らばせて。
※このタイミングで焦ってウンチを拾ってはいけません! 「僕のウンチに手を出すなー!」と駆けつけてくるブヒもいるからです。こうなったら逆効果!
(3)食べ物の半分を食べ終わる頃に、もう半分の食べ物をウンチから4m離れたところにばらまきます。
愛ブヒがウンチを気にせず食べ続けていたら、静かにウンチを拾います。
愛ブヒがご褒美を優先してウンチへの興味を失うまで、繰り返し練習していきます。
ウンチをするたびに何度も何度も根気強く練習をしないと、食糞の歴史が長い子ほど、ウンチの方を優先してしまうでしょう。
また、どうしてもウンチの方に向かっていってしまうのなら、それはご褒美の魅力が低いか、量が少ないかです。
愛ブヒに対して「ダメ!」とか「コラ!」とか言っていないで、ウンチに勝つような大好物を用意してくださいね。
外で食糞をする子の場合
外で他の犬や猫のウンチを食べるなら、オーナーさんが目を光らせ、ウンチに近づけないように散歩をしましょう。
それでもウンチを見つけてしまった愛ブヒ、そして外でも自分のウンチを食べようとする愛ブヒに対しては、散歩中にも家の中同様、ご褒美をばらまきましょう。
ウンチから離れた場所にご褒美をばらまき、「ウンチを発見したら、私のそばでご褒美をあげるよ作戦(だからウンチは見つけるだけで近づかないでね作戦)」を実践します。
ウンチから離れてオーナーさんの方に来ることで、ご褒美が発生するシステムが出来上がればGOOD!
ウンチをしたあと、ウンチに向かわずオーナーさんに向かってくるはずです。
犬の顔をウンチに近づけて、怒れば治るという都市伝説
トレーニングの方法は先述のもの以外にも、有効なものがたくさんあります。
しかし、絶対にやってはいけない方法もあります。
それは“犬の顔をウンチに近づけて叱る方法”です。これはダメ、絶対!
冒頭でお話したとおり、犬たちは、ウンチ自体に嫌悪感を抱いていません。そのため、ウンチに顔を近づけることは罰にはなりません。
しかし、オーナーさんに“無理やり頭を押さえつけられたこと”は、罰になってしまいます。
“食糞を怒られている”なんて、わかるわけもなく、ただただオーナーさんの手やオーナーさん自体を嫌いになってしまうのです。
その結果、オーナーさんから隠れて排泄をするようになったり、オーナーさんの手を怖がったり、噛むようになったりした話は、枚挙に暇がありません。
こんなときは、専門科に相談
食糞の問題といっても、愛ブヒのウンチへの執着度合いは千差万別。
そんなに長い期間もかからず、安全に対処できるケースもありますが、ウンチを拾おうとすると噛みつこうとしてくる場合や、威嚇してくることもあります。
さらに、留守番中だと愛ブヒがウンチにアクセスできないようにするのが難しいケースも有ることでしょう。
この場合は、オーナーさんが出かける前にウンチをするように食事時間を調整したり、ペットシッターを使うなど、臨機応変に多角的なトレーニング方法で進めていく必要があります。
たかが食糞と思わずに、まずは動物病院に相談をしましょう。
そして、トレーニングをするなら、プロのサポートを受けながら進めるのも一つの案。皆さんのトレーニングがスムーズに進むはずです。
ドッグトレーナーに依頼をする場合も、複数人と面談するようにしましょう。
そして、そのトレーナーが、生活環境の設定に関しての知識と豊富な経験を持っているか、学術的、科学的知識をもって動物福祉と動物への倫理に基づいた指導を安全に行える人材かどうか、オーナーさんが確認をするようにしましょう。
PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純
PERRO株式会社 代表取締役
SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純
米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー
日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。
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