2019年8月14日3,934 View

【皮膚】関西屈指の皮膚のスペシャリスト!アトピーなどのアレルギー性皮膚炎に最先端薬で挑む【泉南動物病院・大阪】

フレブルが罹患しやすい病気・ケガの“スペシャリスト”を紹介する特集『もしものときの名医図鑑』。

今回は、フレブルとは切っても切り離せないアトピーや膿皮症といった皮膚疾患のスペシャリスト、泉南動物病院の横井愼一(よこい・しんいち)院長にお話を伺いました。

日本獣医皮膚科学学会の理事長でもある横井先生ですが、今回うかがったお話では、家庭でもトラブル改善のためにできるヒントがいっぱいです!

フレンチブルドッグ,名医,ヘルニア

泉南動物病院 横井愼一(よこい・しんいち)院長

フレンチブルドッグと切っても切り離せない病気といえば、アトピーやアレルギーといった皮膚トラブル。原因がなかなか分からず治りにくい、何度でも再発する、何かの要因をきっかけに突然発症するなど、フレブルを相棒に持つ大半のオーナーが何らかの皮膚病に頭を悩ませた経験があると思います。

 

そこで今回お話を伺ったのが、関西屈指の皮膚科のスペシャリストとして知られる泉南動物病院の横井院長。

院長は25年前の開院当時に参加した、当時動物の皮膚科の先駆者として活躍されていた東京農工大学名誉教授の岩崎利郎先生のセミナーに感銘を受け、同大学の獣医科学内科教室で研修医として皮膚科診療を学ばれました。

 

現在は日本獣医皮膚科学学会の理事長としても活躍し、年間約2,500例もの皮膚病の治療を行っていますが、その多くはフレンチブルドッグや柴犬だそう。

 

「皮膚病は直接生死に関わらなくとも痒みがあることで不快感を感じ、生活の質(QOL)を大幅に低下させます。その不快感を軽減することでペットのみならず、ご家族全員の笑顔や安心に繋げたい、そう願っています」と語る院長に、フレンチブルドッグと皮膚病の関係について伺ってきました。

 

遺伝的要素だけじゃない! 太り過ぎも皮膚トラブルの原因に

Golden House Studio/shutterstock

ーーそもそもフレンチブルドッグに皮膚病が多いのはどういった理由からなのでしょうか。

横井院長:

 皮膚のトラブルで来院される患者さんの多くがアレルギー性皮膚炎で、とりわけアトピー性皮膚炎の率が高いです。

 

フレンチブルドッグは犬種の生まれ持った体質や特異性により、遺伝的にアトピー性皮膚炎やアレルギー体質の子が多く、日によっては患者さんの8割が皮膚病に悩むフレンチブルドッグという時もありますよ。

 

また、フレンチブルドッグが皮膚炎になりやすいのには、遺伝的な要素以外にも肥満が挙げられます。

 

人間でもふくよかな方は動くと肌が擦れ、擦れた箇所に湿疹が出て痒くなることがありますが、これは犬も同様で、“間擦疹(かんさつしん)”と呼ばれるもの。

 

間擦疹は摩擦と皮膚と皮膚の間にこもった湿気があいまって皮膚を軟化させ、皮膚に破綻を生じることで起こるのですが、これによって細菌が繁殖しやすくなり、アトピーやアレルギーによる皮膚炎がさらに悪化することも多々あります。

 

フレンチブルドッグは体に比べて頭部、つまり顔が大きな子が多いので、多少身体が太めでも見た感じのバランスが取れてしまう犬種。

 

それゆえに、うちの子は太っていない、フレブルはこんなものだろうと思い込んでしまうオーナーさんは少なくありません。そのため体重がオーバーしている患者さんには、皮膚治療と並行してダイエットのアドバイスも行います。

 

うちの愛ブヒは食べ物アレルギー? それともアトピー? 見極め方は 

Oleksandr Lysenko/shutterstock_

ーー皮膚トラブルの原因は多岐にわたるかと思いますが、原因をどのように特定するのでしょうか。

横井院長:

まず初診の際に皮膚科専用の問診票にて、どのような症状が気になるか、発症時期、症状が出る時期、生活環境などを細かくご記入いただきます。その問診票を元にしてカウンセリングをするのですが、初診の場合だと大体30分は問診に割きますね。

 

例えば、一般的に年間を通じて症状があるなら食物アレルギーの場合が多く、季節性のある痒みを訴える場合はアトピー性皮膚炎のケースが中心。脇や鼠蹊部といった皮膚が薄い部分に痒みが出るのもアトピー性皮膚炎の特徴と言えるでしょう。

 

一方、食物アレルギーの場合は口周りや食べたものを排泄するお尻周辺などが特に荒れるので、問診、視診、触診を丁寧に行ないながら原因を探っていきます。

 

なお、痒みを伴う皮膚炎の中で、ノミアレルギーやダニが寄生することで起きる疥癬(かいせん)、毛包内にニキビダニが寄生する犬毛包虫症、膿皮症、マラセチアは完治できます。

 

しかし、食物性アレルギーは原因となっている食物の特定が困難であり、アトピー性皮膚炎は完治が難しいために長く付き合っていく必要があります。

 

ただ、アトピー性皮膚炎は生後6ヶ月から3歳の間に発症するケースが多いため、3歳以降または6ヶ月以下の子ならば食物アレルギーを疑いますね。

 

食物アレルギーの場合ならアレルギーの原因の特定に1年近く要することもありますが、診断方法としては病院で処方したフードと水だけを2ヶ月間与えるなどし、原因となる食材を突き止めます。

 

最近は犬のアレルギー検査もメジャーですが、実はこの検査が有効だとされているのは日本でだけなのです。もちろん意味をなさないわけではありませんが、検査結果にのみこだわりすぎるとどんどん食べられるものの種類が減りますし、フード選びも大変になるでしょう。

 

そのためカンガルーのお肉など、過去にその子が食べたことのない新奇(しんき)タンパク源を用いたフードや、加水分解食と呼ばれる、たんぱく質をより細かくすることでアレルゲンとして身体に認識されにくいフードなども試します。

 

実は食物がアレルギーの原因となることはさほど顕著でないのですが、アレルギーそのものは複数の要因が重なって発症していることが多く、食事以外がアレルギーの原因となっている場合でもフードを変えるだけで症状が改善されることもよくあるのですよ。

 

フレンチブルドッグのオーナーさんにはよくオススメのフードを尋ねられるのですが、「AAFCO(Association of American Feed Control Official・米国飼料検査官協会)」の基準に則ったものをお勧めしています。

 

*AAFCO(アフコ)

ペットフードの栄養基準やラベル表示に関する基準を制定しているアメリカの団体が定めた基準で、日本のペットフード公正取引協議会の規約でも平成12年よりAAFCOの栄養基準が採用されている。なお、AAFCOはあくまでも基準を提示している機関であるため、フードの認定や承認は行わず、メーカーがAAFCOの基準を満たしている場合にのみAAFCOの基準をクリアしている旨をラベルなどに表示できる。

 

月に1度の注射で痒みに効く、期待の新薬が発売!

ーーフレンチブルドッグに多いアトピー性皮膚炎の治療はどのように行なっているのでしょうか。

横井院長:

 当院では初診での問診票をベースに、来院時にその都度皮膚状態や痒みの程度を記録することで、長期にわたって個々の患者さんの皮膚状態をモニタリングしています。今現在の痒みの状態がどのレベルなのかによって様々な治療法から最善の方法を選びますが、主な治療法は投薬によるもの。

 

安価かつ即効性の面ではステロイドが一般的ですが、これは長期継続していると皮膚が薄くなるなどの副作用があるために定期的な検査が必要となり、投薬をストップすると再発します。

 

そこで最近は、副作用が少なく長期にわたって投薬が可能なアポキルという飲み薬を用いたり、アレルゲンであるハウスダストマイトから抽出した液を注射して抵抗力をつけたりする減感作療法も選択肢に入っています。

 

 

泉南動物病院にやってきたアトピー性皮膚炎のフレンチブルドッグ。数年前から春から夏にかけての季節性の痒みと脱毛があり、そのたびにステロイド、抗生剤で加療されていた。

アトピーにより、かゆみだけでなく、体中が円形の脱毛斑と鱗屑(皮膚の表面の角質細胞が、細かくはがれ落ちたもの)がある状態。

指間炎も併発。

お腹にもアトピーによるかぶれが

アポキルの投与により、ここまで回復

指の間の赤みも、アポキルでここまでキレイに

顔もこのとおり! 可愛さ倍増です。

なお、まだこの取材時には発売されていないのですが、犬のアトピー性皮膚炎薬として近々「サイトポイント」という薬がリリースされます。これは月に1度動物病院で注射によって体内に入れるお薬で、アポキルと比較しても、よりピンポイントで痒みの元に効果を発揮するため、安全性が高いとされているもの。

 

もちろろんいずれの治療もオーナーさんにメリットとデメリットをお伝えした上で相談しながら進めていきますが、動物の医療界も人間の医療と同じく日進月歩で新たな技術や薬が登場するので、私たち獣医師もそういった新しい動きを学ぶセミナーや勉強会は欠かせません。

 

現在は薬品や治療法ともに選択肢が増えてきたため、今後はより痒みやアレルギーそのもののコントロールがしやすくなる状況になると感じています。

 

綿棒は絶対NG! 命の危険もある内耳炎になる可能性も

Patryk Kosmider/shutterstock

ーー一般外科や内科はもちろん、泉南動物病院では皮膚科以外にも耳科に力を入れられていますが、フレンチブルドッグはどのような耳のトラブルが多いのでしょう。

横井院長:

 実は皮膚トラブル同様にフレブルに多いのが耳の病気。これは他の犬種と比較すると非常にわかりやすいのですが、フレンチブルドッグは耳の中、つまり耳道と呼ばれる部分が非常に狭いのです。

 

マイクロスコープなどを使って撮影した画像を見れば一目瞭然ですが、他犬種の耳の内部は奥までしっかりと見通せるのに対し、フレブルの場合はまるでスリットのような裂け目があるだけで奥まで見ることができません。

この独特な内耳の形状により、耳の病気にかかりやすいのです。

 

代表的なのは鼓膜の手前に生えている毛が奥に落ち込んだりすることで発症する中耳炎などで、悪化すると内耳炎となり、その炎症が脳に影響し命を危険に陥れることもあります

 

よく耳のお手入れ方法に綿棒を使用されている方がいますが、フレブルの場合は絶対にNG。綿棒で掃除することで汚れや抜け毛、異物を奥に落とし込んでいる可能性もあるので、お手入れは外から見える範囲をカット綿などで拭う程度にしておきましょう。

 

なお、内耳は脳に近い場所にあり三半規管を擁するため、ここに炎症が起こると突発性の前庭疾患や眼振、嘔吐などを誘発します。

耳はアレルギーで痒みが出やすい箇所でもあるため、掻くことでさらに耳の炎症が悪化し重症化するケースも。

 

また、フレブルに多い軟口蓋過長症や鼻腔狭窄などは、できるだけ早い段階で手術を行うことをお勧めします。軟口蓋は負担がかかればかかるほど伸びてしまうので、早い段階で手術をする方が効果的と言えるでしょう。

 

フレブルオーナーさんの多くは麻酔のリスクを心配されますが、経験に富んだ獣医師であればまず麻酔によるリスクは心配ありません

 

耳の病気にしろ呼吸器にしろ、症状が進めばいずれも命に関わるものなので、麻酔リスクを理由に躊躇しているのであればそれは間違いです。

 

あと、フレブルに多い指間炎ですが、これも治りにくい病気のひとつ。外用薬や内服薬でも治らない場合、当院では半導体レーザーを照射して患部の細菌を殺菌し、疼痛のコントロールなどをするレーザー治療も取り入れています。

 

家庭でできる皮膚トラブル改善ケア

Margarita Mindebaeva/shutterstock

ーーところで、自宅で取り入れられる皮膚ケアにはどういうものがあるのでしょう。

横井院長:

 ご家庭で日常的にできるのはシャンプーですが、シャンプーそのものを部位によって使い分けるのがポイントです

 

例えば皮膚の水分量を保つ保湿系のシャンプーをメインに使い、顔の周りや指の間など汚れが気になる部分は洗浄力の高いものを使うなど、肌の状態や目的に応じて適したものを使いましょう。

 

よくシャンプーをする最適な頻度を聞かれるのですが、それはその子の皮膚状態によって様々。皮膚状態を見ながら獣医師と相談して決めるのが良いかと思います。

 

また、顔のシワの間などは汚れが溜まりやすく細菌が発生しやすいため、日に1度は洗浄液を使って拭うなどのお手入れを行ってください。

 

なお、アトピー性皮膚炎の主な原因はダニやカビ、花粉なので、日々の生活の中で出来るだけそれらを除去するよう努めるのも効果的でしょう。

 

ただ、シャンプーや掃除など、なんでもこれが良いと聞くと愛犬思いのオーナーさんはつい過剰にしてしまいがちですよね。でもあまり神経質にならず、かかりつけの獣医師に相談しながら長い目でアトピーや痒みと付き合っていくという気持ちが大切です。

 

横井先生がブヒオーナーから支持される理由

院長のお話の中で、「愛犬が痒がって夜も寝られず掻いていると、飼い主さんはどうしてもそれが気になって同じように眠れない。治療によって痒みを抑え、“愛犬がスヤスヤと眠るのを見て私も久しぶりにぐっすり眠れました”と話してくれた患者さんの言葉で、痒みをコントロールすることがいかに飼い主を含めたQOLの向上に役立つのかということを改めて感じた」という言葉がとても印象的でした。

 

確かに私たちの相棒が痒みに悩んでいれば、飼い主である私たちも同じように悩み、少しでもその辛さを軽減しようと努めます。そんな時に、このような先生がいてくれたらどれほど心強いでしょう。

院長プロフィール

横井愼一(よこいしんいち)院長

 

一般社団法人 日本皮膚科学会理事。

一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラム幹事。

大阪府堺市出身。幼少の頃テレビで見たムツゴロウさんに憧れて獣医師を目指す。北里大学を卒業後、堺市内の動物医療センターにて小動物臨床に従事し1995年に泉南動物病院を開院。2019年5月に病院を移転し、屋上ドッグランやトリミングサロンを備えリニューアル。

 

現在はヨークシャーテリアのちくわちゃんと猫を相棒に持ち、同じ地域内にある以前の病院だった建物を今後猫の里親譲渡を行なえる施設にすることを考案されているそう。

 

2019年7月31日にご自身が監修を務めた書籍「専門医に学ぶ長生き猫のダイエット-関節炎、糖尿病、膵炎、ストレス 肥満が起こす多くのリスクを解消-」が発売され、この本の監修者印税の全ては「公益社団法人アニマル・ドネーション」に寄付される。

 

病院DATA

泉南動物病院

大阪府泉南郡熊取町紺屋2-1-3

072-453-0298

受付時間 9:30〜12:30、16:30〜19:30

 

院長の皮膚初診枠は1時間 完全予約制
来院の際には必ず予約をお願いします。

HP http://www.sennan-ah.com/

日曜・祝日は午前中のみの診察

 

取材・文/横田愛子

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