2019年9月19日23,832 View

【家族への噛みつき】追い詰めたのは、アナタかも。叱る前に知ってほしい「噛みつく愛ブヒ」のココロ。

愛ブヒを幸せにできるのも、不幸にしてしまうのも、すべて飼い主しだい。そこで、国際的なドッグトレーナーのライセンスを取得している大久保羽純さんに、“愛ブヒの頼れるリーダーになる方法”を学ぶ、この特集。

今回のテーマは、家族に噛み付くフレブルの気持ちについて教えていただきました。

なぜ愛するパパやママにそんなことをするのか? そのココロを理解するのが、噛みつきをなくす第一歩です。

フレンチブルドッグ,しつけ

噛みつくココロを知って、愛ブヒに寄り添う準備をしよう

フレンチブルドッグ

Pierre Aden/shutterstock

皆さんのお家の愛ブヒや、ブヒ友たちで、人を噛んでしまったことがある子はいますか? 

 

愛ブヒの事はオーナー自身でわかりますが、友達のブヒが家族を噛んだという話を聞くことは、多くないかも知れません。

 

その理由の一つとして、もし愛ブヒが家族を噛んでしまっても、それを他人に「うちの子、噛んだの」と言いづらいからです。なぜなら、天使のように可愛い愛ブヒが、家族を攻撃した現実を認めること、さらに、周りの人から「噛む犬」と呼ばれることは、オーナーさんにはとても悲しいこと。

 

もし人を噛んだことがあるブヒがいても、決して「噛む犬」と呼ばないようにしましょう。人によって噛みついたことへの感じ方は違うでしょうが、愛ブヒの噛みつきはそれだけ、家族にとって深刻な問題なのです。

 

今回のテーマは、大人のブヒの噛みつきの話。子犬の頃の甘噛みではなく、成犬になってからのブヒの噛みつきには、どんな理由があるのでしょうか。

「噛むから悪いブヒだ!」とか、「噛んだらどうブヒを叱るか?」ではなく、まずは愛ブヒたちの心に寄り添って、ブヒの世界のルールや気持ちを知ってみませんか? 

 

このコラムを読んでくださっているブヒ愛にあふれるオーナーのみなさまは、読了後、きっとブヒたちのことが、今以上に愛おしくなるはずです。

 

「噛む犬」も、「噛まない犬」もいない。

フレブル

Ammily CP/shutterstock

さあ問題です。「噛む犬」と「噛まない犬」は、分かれているのでしょうか? 

その答えは、「噛む噛まないは、状況次第」です。この犬は絶対に噛まない、ということもありませんし、あの犬は絶対に噛む、と言うこともないのです。

 

人間でイメージしてください。絶対に人を殴らない人はいませんよね。家族や自分を守るとき、それ以外に方法がない時、どうしようもなければ、攻撃をするしかないときだってあるはずです。

 

ブヒたちも同じです。過去に噛みついたことがあるブヒは、どうしても噛む必要がある状況に追い込まれたから噛んだだけなのです。逆に言えば、噛まないですむ状況さえ私たちで作ってしまえば、ブヒは噛む理由が無くなります。

 

もし今まで噛んだことが一度もないブヒだとしても、ブヒが噛まないといけない窮地に追い込まれてしまうと、噛む可能性はあるでしょう。

 

要は、ブヒたちの噛みつきは、人間で言う「正当防衛」なのです。自分を守るために、他に手段がなければ、闘わざるを得ないということなのです。

 

2種類の噛みつき。「遊びの噛みつき」と、「正当防衛の噛みつき」

フレブル

Natalie Shuttleworth/shutterstock

「噛む」という言葉だけ聞くと、人によってイメージが違ってきますから、整理しましょう。

 

クイズです。同じ「噛む」という行動でも、この2つは全く異なります。どちらが「正当防衛の噛みつき」だと思いますか?

 

① おもちゃ遊びや、かまってほしい時、犬同士で遊んでいる最中にハムハムと手を噛んでくるなどの甘噛み。

② ブヒの食べている食べ物を取り上げたときや、ブヒの体の苦手な部分を無理に触ったとき、苦手な犬とのケンカなどの噛みつき。

 

答えは、② が「正当防衛の噛みつき」です。みなさん、当たりましたか? それぞれの噛みつきの理由を確認していきましょう。

 

「遊びの噛みつき」のキモチ

フレブル

Natalie Shuttleworth/shutterstock

 

おもちゃ遊びや、かまってほしい時、犬同士で遊んでいる最中にハムハムと手を噛んでくるなどの甘噛み。→ これは「遊びの噛みつき」です。

 

甘噛みは、パピーの頃に多いイメージですが、成犬でももちろんします。

 

ブヒたちには、私たちのような「手」がありません。ブヒの「口」は人間で言う手のようなもの。甘噛みは、子供が手で大人の身体を「ねえねえ、遊ぼう! 」ってパンパン叩くイメージなのです。決して相手を攻撃したいわけではありませんね。

 

もちろん、人間の子供も、だんだん興奮してくると「ねえーーーー!!! 」と強くバシバシ叩いてくることもあります。ブヒたちも興奮してきたら、甘噛みが強くなりすぎてしまうこともあります。

 

そもそも興奮しやすい犬種で、さらに顎の力が強いフレブルだからこそ、興奮し過ぎの甘噛みはかなり痛いです。

 

興奮させ過ぎは、お互いのために良くありませんね。興奮しているときは落ち着くまで待ってから遊ぶように、オーナーさんが気を付けるようにしましょう。

 

これらの甘噛みをはじめとする噛みつきは、あくまで「遊びの噛みつき」なのです。

 

「正当防衛の噛みつき」のキモチ。

フレブル

mala_koza/shutterstock

ブヒの食べている食べ物を取り上げたときや、ブヒの体の苦手な部分を触ったとき、嫌いな犬とのケンカなどでの噛みつき。→ これらが「正当防衛の噛みつき」です。

 

もちろん、状況はこれ以外にもたくさんあるでしょう。要は、愛ブヒが「助けて! もうやめて!」と思う状況があれば、正当防衛の噛みつきは発生します。

 

犬は人間の3歳児程度だと言われていますから、オーナーさんが「愛ブヒのためにやってあげた」ことでも、愛ブヒにはわかりません。

 

この「正当防衛の噛みつき」は、ブヒの噛みつきの力加減によりますが、人の皮膚にかする程度でガウッと威嚇するときもあれば、しっかり歯が食い込んで流血することもあります。

 

お互いの幸せのためにも、愛ブヒのキモチを理解して、そういった状況を避けるのが一番大切です。愛ブヒの言い分を理解するために、例題で愛ブヒ側のキモチを考えてみましょう

[例題1]

状況: 落ちていたティッシュを愛ブヒが口に入れた。オーナーさんは飲み込んでは危ないと思って取り出した。1度目はオーナーさんがティッシュを取れたが、次の時からは、手を伸ばすと愛ブヒが噛むようになった。

愛ブヒ談:「せっかく見つけた宝物を盗られた! 人の手はドロボウだ! 今度は絶対にとられないように、なんとしても守るぞ! 噛むしかない!」 

 

[例題2]

状況: 今日はお客さんが来る日。リビングに入ってきた来客の足元を、ブヒはくんくん匂いチェック。そのとき来客が、ブヒをなでようと手を伸ばしたら噛みついた。

 

愛ブヒ談:「ぼくの仲間の家に勝手に侵入してきて嫌だな。匂いをチェックして、何者かを探ろう! あっ、匂いチェック中に動き始めたよ。まだ安全確認していないのに、攻めてきたよ。恐いよ。早く噛まなきゃ、襲われちゃうよ!」 

 

[例題3]

状況: 同居の2ブヒ。オーナーさんには、姉ブヒが妹ブヒを、いつもイジメているように見えた。妹ブヒが、姉ブヒに近づいた時、姉ブヒが妹ブヒに対してうなった。

オーナーは「やめなさい! 」と手で姉ブヒを止めたら、姉ブヒに噛まれた。

 

妹ブヒ談:「私って若くて元気じゃないですか~。暇すぎて遊んで欲しいんだけど、オーナー全然かまってくれないし~。

 

お姉ちゃんにちょっかい出すと、お姉ちゃんはガウッて言ってきて超ウケルるの! 今回なんて、オーナーまで怒りながら入ってきて、マジ事件なんですけど! 

 

暇すぎて、なんでもいいから刺激が欲しいの!」  

 

姉ブヒ談:「私……ずっと、妹ブヒの事が苦手だったんです。のんびりした生活が好きだったのに、寝ていても近づいてくるし、食べるのが遅い私のご飯を狙ってくるし、おもちゃも奪われるし。

 

私は妹なんていらなかったのに、なぜか急に現れたんです。妹ブヒに、「いい加減やめてよ」って言ったら、大好きなオーナーさんにまで怒られて…。

 

もう、噛む以外にどうしようも出来なかったんです」

 

さあ、例題1~3のブヒたちの話を聞いて、どう思われたでしょうか。どれも、愛ブヒたちの追い詰められたキモチが伝わってきます。

 

正当防衛の意味も、分かりますよね。結局は、私たち人間がどう思うかではありません。愛ブヒたちが、どう感じたかなのです。

 

ブヒたちは優しく平和な生き物

フレブル

Liukov/shutterstock

ブヒたちをはじめとする犬たちは、基本的には戦いを好みません。

 

社会性のある犬という種族は、人間の群れの中で暮らせるように、平和な性質を持つように家畜化された動物です。滅多やたらに人を襲って噛むような動物だったら、1万5千年もの長い歴史を、人間と家族として暮らせません。

 

犬たちは、よっぽど追い詰められない限り、その口にあるナイフを人に向けることはないのです。

 

そんな優しい彼らも、命に関わる物を侵略されたら、闘うしかありません。私たち人間は、好きなものを食べて、欲しい物を持ち、自分で人生を選択できます。

 

しかし、ブヒたちは、食べ物を自分で獲得することは出来ませんし、おもちゃを盗られたら次にいつもらえるかわかりません。

 

苦手な他の犬や見知らぬ人が、自分の命を狙うことだってあるかもしれません。

 

宅急便屋さんや来客と言う、未知の敵の侵入を阻止する方法も知りません。ティッシュを飲んだらお腹に詰まってしまうかも知れないなんてわかりません。

すべてブヒ自身の命に関わることだからこそ、ブヒ自身が安心できない限りは、正当防衛をして当然なのです。

 

【まとめ。】

フレブル

Patryk Kosmider/shutterstock

噛みつく愛ブヒ側のココロについて、ここまで読んで下さり、ありがとうございます。噛みつきで悩まれているご家族には、思い出させてしまったり、悲しい気持ちにさせてしまったかもしれません。

 

大切な愛ブヒのために、認めたくないこと、目を背けたくなることに目を向けてくださった皆さんに心から感謝します。

 

たとえ家族だからって、愛ブヒの大切な物を奪う権利はありません。愛ブヒを恐怖に追い込んではいけません。

 

知らなかった、わからなかったから起きてしまった事故なら、悔い改めて行動を変えていきましょう。家族だからこそ、愛ブヒから不安や恐怖を取り除く手伝いができるのです。

 

愛ブヒの最高のパートナーとして、愛ブヒのココロに寄り添い、共に学び、経験し、最高の家族になっていきましょう。

 

噛みつき悩みの中にいる方は、獣医師やドッグトレーナーなど専門家に相談しましょう。専門家もたくさんいますから、セカンドオピニオン、サードオピニオンも聞いて、家族に合うプロのアドバイスを聞きましょう。

 

絶対に、1人で悩まないでください。あなたを手助けする仲間がたくさんいます。

 

愛情にあふれる愛ブヒマニアの皆さんなら、絶対に大丈夫! 皆さんのハッピー愛ブヒライフを心から応援しています。

PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純


PERRO株式会社 代表取締役 
SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純

米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー

日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。

 

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