【取材】ともに13歳。色々病気もあるけれど、「こうしなきゃ」のない生活が長寿の秘訣。#10ポルク&ゴメス
10歳を超えても元気なブヒを、憧れと敬意を込めて“レジェンドブヒ”と呼んでいるFrench BulldogLife。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドブヒの肖像』です。
今回は、ともに13歳という2頭のレジェンドを紹介します。最初は大ゲンカばかりだったというポルクちゃんとゴメスくんですが、いっしょに暮らすうち、生死の境から命を救うまでに大きな愛を育むことに……。ブヒ同士の絆の強さを教えてくれる取材でした!
目次
ポルクちゃんのプロフィール
年齢&性別
13歳の女の子(2006年10月8日生まれ)
体重
10kgくらい
大好きなこと
日向ぼっことお昼寝。
既往症
大腸炎、歯茎と口元の腫瘍切除(2回)、太ももの皮膚ガン手術、大腸壊死による手術。
現在は歯茎と口元の腫瘍、慢性皮膚トラブル、脊椎の痛みをそれぞれ経過観察中。
様々な病気と手術を乗り越えてきたポルクちゃんはマイペースな女の子。
家の中に差し込む太陽の光をうまく探してお昼寝を楽しんでいるそうです。
ゴメスくんのプロフィール
年齢&性別
13歳の男の子(2006年6月10日生まれ)
体重
10kgくらい
大好きなこと
お散歩、ポルクちゃん
既往症
手足の衰えでほぼ寝たきり状態。また、角膜炎と心不全の治療をしつつ、シニアライフを満喫中。
喜怒哀楽がはっきりしていて愛敬抜群のゴメスくん。今年の4月頃から足が弱り歩くのが困難になりましたが、今でもお散歩が大好きだそうです。
大腸壊死で生死の境をさまよったこともあるポルクちゃん
13歳のポルクちゃん。感情の起伏が少なく問題行動もない優等生でマイペース型の女の子です。
シニアになったいまも元気に歩き回っていますが、実はたくさんの病気と手術を経験しています。
最初の試練は1歳になる前に患った大腸炎、そしてシニア期に入ってからは様々な病気を患い手術も経験しています。
歯茎と口元の腫瘍切除、太ももの皮膚ガン、大腸壊死による手術の時は生死の境をさまよいました。
「当時通っていた病院ではずっと胃がおかしいと言われて胃の薬をもらっていたので胃だとばかり思っていたのですが……」と語るのは、ママの曽根ゆりかさん。
治療を続けても全く治らないのはなぜだろう。そう不安になっていたところ、吐いたものの臭いがひどくなっていきます。そのことを名古屋で獣医をしているゆりかさんの義理のお兄様に相談したところ、「すぐに連れてきて」と言われたそう。
「兄には事あるごとに相談をしていましたが“すぐに連れて来て”と言われて千葉から名古屋まで車を飛ばしました。そこで胃ではなく大腸が壊死しているということがわかり、夜中の緊急手術になりました」と、パパの曽根健太郎さん。
大腸壊死の原因は発症の半年前にトウモロコシ芯を薄くしたものを飲み込んだこと。
大腸を20センチほど切除し手術は成功したものの、しばらくは予断を許さない状況だったそうです。
「まだまだ若いものには負けないぞ!」気概のあるゴメスくん
感情の起伏が少なく、優等生なポルクちゃんと比べ、喜怒哀楽が激しく感情がわかりやすいというゴメスくんは、お散歩で良く声をかけられるそう。
「表情が豊かで笑っているようなので、人気があります。甘えん坊だし」(ゆりかさん)。
ただ、ゴメスくんには噛み癖があり、気に入らないと飼い主であってもガブッとくるのでうっかり手を出すことは出来ません。
「ごはんを付けたしてあげたい時は脇からポイッと。夜ぐっすり寝ている時に抱きあげてケージに移動しようとすると噛みそうになることがあるので、そういう時はさっとケージに置いて手を離したり。今は慣れたので噛まれません(笑)」(ゆりかさん)
更には飲み込み癖もあり、とにかく何でも飲みこんでしまうのだそう。
「我が家に来て間もない頃に何かを飲み込んでしまったので吐かせたら、前の飼い主さんのところで飲んだと思われるものが大量に出てきました。胃がどれくらいあるのか、と思うくらいの量でした」(ゆりかさん)。
「そこからは物を落とせないという生活です。子供が小さいときはおもちゃがあったので、その時が一番大変でした。咥えたら離さないし噛むので、とにかく置いておかないように気をつけてました」(健太郎さん)。
13歳という年齢になった今でも噛む、何でも飲み込む、というその性質は変わりません。
でも愛敬があるので憎めない。そんな不思議な魅力を持っているのがゴメスくんです。
最初の相性は最悪!? 血を見るほどの争いも
このように性格が正反対とも言えるポルクちゃんとゴメスくんは、4か月違いでゴメスくんのおほうが年上。
でもゴメスくんが曽根家に迎い入れられたのは生後1年1か月の頃だったので、ポルクちゃんの方が先輩です。
「共働きなので1頭では寂しいかなと思ってゴメスを迎えることにしました。ポルクはブリーダーさんからですが、元々保護犬を迎え入れたいと考えていたので、ゴメスは里親として迎えることにしました」(ゆりかさん)。
しかしママさんの気持ちをよそに、迎え入れた当初は血だらけの陣地争いが勃発。
立ち上がって本気で喧嘩をするも、男の子で体格に勝るゴメスくんの方がいつも優勢でした。しかしある時、形勢逆転。
ポルクちゃんがゴメスくんを“本気”で怒ったことで、順位が確定したのです。
「怒らないと思っていたポルクに猛烈な勢いで怒られたのでびっくりしたのでしょうね。今はゴメスがポルクを好き過ぎてうっとうしがられています」(健太郎さん)。
力ずくではなく、迫力勝ちしたポルクちゃん。
そしてその日からゴメスくんはポルクちゃんに一目置くどころか、「好き過ぎる」と言われるほどに心を寄せるようになりました。
「ゴメスは私たちには噛みつくのに、ポルクにだけは噛みつかないんですよ(笑)」(ゆりかさん)。
ゴメスくんの命を救ったポルクちゃんへの「想い」
ゴメスくんの「ポルクちゃん愛」が伝わるエピソードがあります。
それは今から2年前の2017年のこと。
「ゴメスが空咳をしていたので気にしていましたが、体調自体はそれほど悪そうに見えずご飯もガツガツ食べている状態でした。でもある日ぐったりと横になってごはんも食べなくなってしまったので、急遽病院へ行ったら心不全でした」(ゆりかさん)。
「“今日が山”と言われて酸素ボンベ室に入り、数日間その状態でした。意識ももうろうとしていて、獣医さんから安楽死というワードも出てくるほどになってしまいました」(健太郎さん)。
しかし「夜に重要な判断はしないほうが良い」という獣医師のアドバイスを受け、決断は翌日以降に持ち越しすることにします。
「最後にポルクと会わせてあげようと、病院に連れて行ったら首を上げて反応したので、病院食を手で与えてみたら食べたのです」(ゆりかさん)。
そのまま自宅に戻れることになり「今に至ります(笑)」(健太郎さん)。
とは言えその後も危なくなったことは何度かあり、病院に駆け込むこともありました。
けれどその度に復活。現在は薬を強くしたり増やしたりすることもなく徐々に落ち着いてきています。
この復活劇は、ポルクちゃんへの想いがゴメスくんをこの世に引き戻したと言えるのではないでしょうか。
獣医さんとの付き合い方や選び方は病気が教えてくれた
曽根家ではかかりつけ医(近所・往診可)に通常の診察と治療をお願いしつつ、セカンドオピニオンとして義理のお兄様(名古屋の病院)にも相談をしています。
手術はすべて名古屋まで行って執刀してもらっているとのこと。
かかりつけ医はポルクちゃんの大腸壊死の誤診をきっかけに他の病院に変更しました。
とても大変な経験でしたが、それが病院を見直すきっかけになったそうです。
「お医者さんの言うことが100%ではありません。普段の様子を見ているのはこちらなので、お医者さんの言うことに合点がいくのかどうかも考えないといけないと思っています」(健太郎さん)。
親戚に獣医さんがいる、というのはある意味特別ですが、信頼できる(考え方が合う)かかりつけ医とセカンドオピニオンを探すのは私たちにもできること。
自分たちに合っている病院、獣医さんを見つけて、何かあった時に安心して治療を受けられるようにしておきたいものですね。
シニアになったら往診してくれる獣医さんの存在にも助けられると思います。
人も犬も無理しないのが暮らしやすさと生きやすさに繋がっている
必要とあれば夜中に名古屋まで車を飛ばし、獣医の診断を100%鵜呑みにすることなく、自分たちの愛ブヒを見る目を信じている曽根ご夫妻。
それがポルクちゃんとゴメスくんの命を繋いでいることは確かです。
ただ、今回の取材で一番感じた長寿の秘訣は曽根家の“無理しない”ライフスタイルでした。
「もっと遊んであげたほうがいいというような記事も見かけますが、犬たちがそうしたければすればいい、という感覚です。食事も無添加とか手作りとか、そういうことにもあまり神経質になっていません」(ゆりかさん)。
「“こうしなきゃ”はこちらもストレスになると思っています。食べ物も、無理なく食べてくれるものならいいかなと」(健太郎さん)。
人も犬も無理しない。「こうしなきゃ」はなし。ベタベタもせず、好きなように同じ空間にいればいい。
これがとても心地よさそうなのです。
「犬が寄ってこなければ抱っこもしないです。来ればかわいがりますが、ベタベタはしないです。かなりあっさりしていると思います(笑)」(ゆりかさん)。
実はゴメスくんの噛み癖と飲み込み癖は、前の飼い主さんからは聞いていなかったそう。
でもそれを責めることも不満に思うこともなく、そのまま受け入れている曽根ご夫妻。
健太郎さんには動物アレルギーがあるにもかかわらず「薬を飲めば何とかなるから」とふたりで笑う大らかさは本当に素敵です。
今後願うことは穏やかな老後
13歳というフェアリー期のいま、2頭への長寿への想いも“無理をしない”スタンスに。
「若い頃は何かあったら病院で診てもらって手術をしてきましたが、もう13歳ですしこれからは痛みを排除して自然に命を全うさせるという方向かなと思っています」(ゆりかさん)。
「前回病院に入院させていた時も、ビビリなゴメスにこれ以上怖い思いをさせるのはどうかな?と思ったので、穏やかな最期であればと」(健太郎さん)。
曽根ご夫妻にとって大切な家族であるポルクちゃんとゴメスくん。
今後も誰もが無理することなく自然な形のまま穏やかな時間が過ぎていくことでしょう。
撮影・取材・文/Roco
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