2020年2月28日16,997 View

ペロペロ…犬が「なめる」のはナゼ?愛情表現に病気…重大なサインが隠れているかも【愛ブヒの本音を知ろう】

愛ブヒを本当の意味で幸せにするには、オーナーが犬にとって頼れるリーダーになることが何より大切です。
そこで、国際的なドッグトレーナーのライセンスを取得している大久保羽純さんに、“愛ブヒから信頼されるリーダーになる方法”を学ぶのが、この特集。

 

今回は、フレンチブルドッグがよくやる行動のひとつ、“なめる”に注目しました。

同じ“なめる”でも、状況によって実はいろいろな意味が隠れています。あなたの愛ブヒが、ずっとなめていたら、カラダやメンタルが病気になっているサインかも……。

どうか愛ブヒからのSOSを、見逃さないようにしてください!

フレンチブルドッグ,しつけ

あなたの愛ブヒは、よくなめますか?

フレンチブルドッグ

Alexander Penyushkin/shutterstock

 

あなたの愛ブヒは、「なめる」行動をしますか? 

 

例えば、愛ブヒ自身の前足をなめていたり、オーナーさんの手をなめたり、オーナーさんのお顔をペロペロしたりするでしょうか。

 

可愛い愛ブヒに熱烈なお顔なめなめを繰り出されてしまうと、なかなか断りづらい気持ちになりますよね。

 

今回のコラムでは、ブヒたちが「なめる」行動をする時に、どんなキモチなのかを予想していきます。

 

さあこれから、いろいろなタイプのブヒさんたちに話を聞いてみましょう。

 

皆さんの愛ブヒに似ている子はいるでしょうか。似ている子の気持ちを理解して、少しでも愛ブヒの本音に近付きたいですね! 

 

タイプ(1)オーナーさんの手と顔をなめるのが好きなプッチくん

フレンチブルドッグ

rina Kozorog/shutterstock

 

プッチくん:「ぼくね、オーナーさんをぺろぺろするのが、大好き。

 

やっぱり狙いはお顔かな。親密度高まるじゃない? お顔に届かないときは手をなめるんだよ」

 

インタビュアー:「プッチくんは、オーナーさんをなめることで何を得られるのですか?」

 

プッチくん:「ぼくたちブヒって、なめることもコミュニケーションなの。

 

母犬もぼくをなめてくれたし、子犬同士でもなめ合って育ったよ。

 

“こんにちは”とか、“ご機嫌どう”とか、ちょっとした挨拶なのさ。

 

その時のオーナーさんの匂いや、肌の味も楽しんでいるよ」

 

インタビュアー:「どんなときに、どれくらいなめますか?」

 

プッチくん:「ぼくの場合は、オーナーさんが朝起きた時とか、家に帰ってきたときとかが、大好きなぺろぺろタイムさ。

 

ある程度なめて満足したら、もういいかなと思ってやめるの。ずーっとなめることはしないよ」

 

プッチくんは、なめることでのコミュニケーションが好きなようですね。

 

なめることが好きだったプッチくんと、なめられて喜ぶオーナーさんの組み合わせだったら、なめることは増える一方でしょう。

 

オーナーさんのことをあまりなめないブヒがいても、それはその子のコミュニケーションスタイルですし、生まれ育った環境もあるでしょうから、悲観しないでくださいね。

 

注意点としては、もしプッチくんがず~~~っとオーナーさんをなめ続けて、やめられないようだったら、もしかするとココロかカラダに問題を抱えているのかもしれません。

 

プッチくんの場合はある程度でやめられているので、コミュニケーションの範囲なのでしょう。

 

タイプ(2)自分のカラダをなめてグルーミングするパンちゃん

フレンチブルドッグ

redpip1984/shutterstock

 

パンちゃん:「あたちはキレイ好きだから、毎日カラダをなめてお掃除するのよ」

 

インタビュアー:「身体をなめてグルーミングをするのは、猫の印象があるのですが、パンちゃんもするのですか?」

 

パンちゃん:「犬だってカラダをなめて、キレイにすることもあるわよ。ただ、猫よりはカラダがクネクネしないから、背中とか届かないし、あたちは手や足やお股をなめるかな。

 

猫みたいにまめじゃないから、あたちは、お散歩から帰った後とか、寝る前とか、気が向いた時だけやるわ」

 

インタビュアー:「“なめてキレイにする”って言いますが、そもそもパンちゃんのお口ってキレイなんですか?」

 

パンちゃん:「このヒト、ちょー失礼なんですけど! キレイだし! 

 

舌でカラダに付いたゴミを取ったり、傷が出来たところもなめてケアするのよ。

 

逆に、カラダが汚くてもなめて飲み込んじゃうんだから、あたちのためにも、カラダはキレイに保ってよね」

 

猫だけでなく、犬もグルーミング(毛づくろい)としてカラダをなめる行動をすることがあります。

 

ブヒは自分で手を洗うことが出来ませんから、もし口に入れて欲しくないような汚れが身体に付いている場合は、オーナーさんが洗って清潔に保つようにしましょう。

 

パンちゃんの場合は、カラダをなめることを繰り返して、毛の色が変わったり、傷を作ってしまっているようなことは無いですね。

 

気が向いた時に少しやっている程度なら、過剰ではないと考えて、その行動は尊重しても良いのかも知れません。

 

タイプ(3)カラダの不調!? 自分の足をなめ続けてしまう、ぶん太くん

フレンチブルドッグ

Irina Kozorog/shutterstock

 

ぶん太くん:「ワシは、自分の手と足をなめる衝動が止められないんじゃ。ずっとなめてしもうて、毛の色は変化したし、傷にもなってしもた」

 

インタビュアー:「なぜ、なめるのを止められないのですか?」

 

ぶん太くん:かゆくてたまらんのじゃよ。皮膚の表面もかゆいし、カラダの内側からも、ムズムズかゆみがくるんじゃ。

 

前足はかゆいんじゃが、後ろ膝辺りは関節痛でのう。

 

嫌な感じがするんで、なめるしか気を紛らわす方法が見つからないのじゃよ。つらいのう」

 

インタビュアー:「あれ、おかしいですね。アレルギーはまだ解決していないようなので、お気持ちはわかるのですが、関節痛についてはもう改善したとオーナーさんに聞いていますよ?」

 

ぶん太くん:「確かに痛みは無くなったのだが、なんだか気になってしまうのでのう。なめてしまうんじゃよ」

 

グルーミング目的でカラダを少しだけなめるパンちゃんと、ずっとなめ続けるぶん太くんとは、少し話が違いますね。

 

カラダの不調があっては、なめる衝動が出てしまっても仕方がありません。人間でも、花粉症やアトピーをただじっと我慢するのは無理と言うものです。

 

しかし、ブヒは自分で不調を伝えられませんから、なかなか原因がつかめないことも多いでしょう。

 

オーナーさんがしっかり様子を観察して、動物病院に相談する必要があります。

 

今は犬の皮膚科専門病院なども出てきています。

 

1カ所で改善されなければ数カ所の動物病院に行って、セカンドオピニオン、サードオピニオンも取ってみましょう。

 

関節痛が消えてもなめ続けたぶん太くんの話ですが、軽度の強迫性障害かもしれません。

 

つまり「なめていないと不安」になってしまった可能性があります。

 

病気などの原因を取り除いたのになめ続けるときは、それも含めて動物病院に相談をしてみましょう。

 

タイプ(4)ココロの不調!? 自分の足をなめ続けてしまう、りんごちゃんとゴマくん。

フレンチブルドッグ

Unchalee Khun/shutterstock

 

インタビュアー:「りんごちゃんとゴマくんは、ケガやかゆみがあるわけではないのに、カラダをなめ続けてしまうようですね」

 

りんごちゃん:「わたしは、オーナーさんと離れるのが不安なの。

 

今のおうちも安心できないし、ココロがソワソワして、いてもたってもいられなくなっちゃって…(泣)。

 

獣医さんからは分離不安って言われたわ。

 

オーナーさんには、“なめると傷になるから”って止められるんだけど、でもオーナーさんがいないときにはまたやっちゃうの。

 

だって、恐くて、不安で、どうしようもないんだもん!(号泣)」

 

インタビュアー:「それは辛いですね… 。ゴマくんも、同じ理由ですか?」

 

ゴマくん:「オレはちょっと違うんだよ。オレってば、頭を使ったり、運動したりするのが大好きなのさ。

 

しかしよ、うちのオーナーったら、オレが全然遊びも勉強も足りてないのを分かってないんだよ。

 

おまけに、“先代のブヒは大人しかったのに”なんて言いやがってよ! 

 

オレはそいつじゃねえし、先代って病弱なブヒだったんだぜ!? 健康なオレのポテンシャルをわかってないんだよね。

 

満たされなくて、自分のカラダをなめ壊すしかできないんだよ」

 

インタビュアー:「お二人とも、お辛いココロの内をお話くださり、ありがとうございました。オーナーさんに伝えたいことはありますか?」

 

りんごちゃん:「わたしは、とにかく怖くてたまらない毎日から助けて欲しい

 

24時間ずっと一緒にいて欲しいけれど、それが無理なら、治療して欲しい

 

お願いだから、“気のせいだ”とか“いずれお留守番に慣れる”とか“弱虫だ”とか、言わないで。

 

自傷行為をするまでに追い詰められているの。助けて(号泣)」

 

ゴマくん:「さっきは口汚く文句言っちまって悪かったな…。チェッ、一回しか言わねえぞ…。

 

オレ、オーナーのことすっげぇ好きなんだよ。もっと、オレと遊んでくれよ(照れ)」

 

とてもとても切ないお話でしたね。

 

まずりんごちゃんの話に出てきた分離不安という言葉。

 

オーナーさんと離れることで、「ちょっと寂しい」と言う範囲を超えて、心身に悪影響が起きる場合を指します。

 

不安や恐怖のストレス刺激は、十分に犬の命を脅かします。

 

人間にも精神科があるように、現代では獣医療でも「行動治療」という薬剤を併用したココロの治療方法があります。

 

行動診療を行っている動物病院は、まだどこにでもあるわけではありませんが、日本の各地に存在します。まずは相談をしましょう。

 

そして、“寂しさを埋めるために2頭目を迎えてみる”とか、“罰を与える”などの方法は、絶対に選択しないようにしましょう。

 

エネルギーが高い子は、頭もカラダもしっかり使うことが大切

フレンチブルドッグ

Firn/shutterstock

 

ゴマくんの場合は、彼のポテンシャルを満足させられない飼育環境が原因でしたね。

 

例えば、狩猟で大活躍する作業意欲の高い犬をぼんやりと暮らさせて、頭と体を満足させられないと、皮膚がめくれるまで足をなめ潰すこともあります。痛ましいことです。

 

人間でも、1日4時間仕事をしたら疲れてしまう人もいますし、3時間しか寝ないで働きまくるスーパー社長のような人もいます。

 

労働意欲とそのポテンシャルはブヒそれぞれ。

 

ゴマくんタイプを言えに迎えた方は、「天才過ぎるな~」と苦笑いしながらも、その欲求を満たしてあげるようにしましょう。

 

オーナーさんだけで大変なら、ペットシッターや犬のデイケア施設なども活用してみて下さいね。

 

タイプ(5)カラダの不調!? いろんなものをなめ続けてしまう、梅ちゃん

フレンチブルドッグ

Pau Novell Aran/shutterstock

 

梅ちゃん:「私は、壁とか、ソファとか、オーナーさんとか、自分自身とか、いろんなものをなめますよ」

 

インタビュアー:「それはどうしてなのですか? 」

 

梅ちゃん:「何と言いますか、胃がむかむかして、吐きそうになるんです。そんな時には、ついつい手あたり次第なめてしまうんです」

 

インタビュアー:「それは辛いですね。他に気持ち悪いときのサインはありますか?」

 

梅ちゃん:「なめるだけのときもあれば、あくびが出たり、よだれが出てきたりすることもありますね。それから、目がしょぼしょぼしたり

 

吐くまで行かないから、胃腸の不快感はイマイチ家族に伝わっていなさそうなので、それは悲しいですね」

 

梅ちゃんは、胃腸が不快だったり、吐きそうな時に、なめる行動が多く出るようですね。

 

しょっちゅう吐く場合は、オーナーさんも病院に連れて行くのですが、吐かずに辛いだけの胃もたれの場合は、気付いてあげづらいでしょう。

 

愛ブヒが家でどんな様子なのかを動画に撮って、動物病院に持って行くのもいいかもしれません。

 

正常な「なめる」? 異常な「なめる」? 不調の見分け方とは

フレンチブルドッグ

ViTaMiH/shutterstock

 

それぞれのブヒたちのキモチを聞いてみると、なめる理由もそれぞれでしたね。

 

もちろんここに紹介したものがすべてではありません。ブヒの数だけ、それぞれのブヒの理由があるはずです。

 

オーナーさんにいつも見ていて欲しいのは、愛ブヒが“快適でなめている”のか、“ツラいからなめざるを得ないのか”です。

 

タイプ(1)、(2)のケースでは、不安に駆られてなめている訳ではありません。

 

さらに、なめることによってブヒ自身のカラダを傷つけていません。なめる時間も長くてせいぜい数分程度ではないでしょうか。

 

しかし、もし毛の色が変わったり、傷が付いたり、なめる時間があまりに長いなと感じた場合は、不調のサインかも知れません。

 

“異常になめる”の範囲に入っているようなら、必ず動物病院に相談しましょう。

 

愛ブヒの“なめる”が正常か異常なのかを判断する方法のひとつとして、人間が身体をかく様子をイメージしてみて下さい。

 

数回、腕をポリポリかいたからと言って、異常ではありませんよね。

 

しかし、皮膚が色素沈着するほどかき続けたり、かきむしって傷が出来ていたら、かなり心配になりませんか? なめるも同じことです。

 

その行動が放っておいて良い正常範囲なのか、助けるべき異常さを伴ったものなのかは、オーナーさんがいつも気を付けて観察するようにしましょう。

 

こんなときは専門科に相談

フレンチブルドッグ

Alexander Penyushkin/shutterstock

 

繰り返しになりますが、

 

・なめたところが変色している

・なめたところが傷になっていたり、皮膚が赤く炎症している

・なめる時間や回数が多い

 

といった場合は、すぐに動物病院に相談しましょう。

 

まずはカラダに健康上の問題があるかどうか探ってから、ココロのケアもしていくことになるでしょう。

 

もし暮らしの環境設定を変えていくために、ドッグトレーナーに依頼をする場合は、そのトレーナーが行動修正の豊富な経験を持っているか、科学的知識をもって、動物福祉と動物への倫理に基づいた指導を安全に行える人かどうか、オーナーさんがしっかり見極めて依頼をするようにしましょう。

 

まとめ

フレンチブルドッグ

Amornpant Kookaki/shutterstock

 

いかがだったでしょうか。あなたの愛ブヒに似たタイプの子はいましたか? 

 

幸せそうななめる行動もあれば、少し心配ななめる行動もありましたね。

 

ここに書ききれないブヒたちのなめる行動もたくさんあることでしょう。ブヒの数だけ、ブヒのココロがあるからこそ、面白いのです。

 

あなたの愛ブヒの“なめるココロ”を予想したお話も、ぜひ聞かせてくださいね。

 

「愛ブヒをもっと理解したい」、「心を通じ合わせたい」と願う、愛情にあふれたオーナーの皆さんを、心から応援しています。

 

PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純

PERRO株式会社 代表取締役 
SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純

米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー

日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。

 

 

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