2020年5月11日22,083 View

イタタッ!激しい「甘噛み」どうすればいいの?愛ブヒが噛む理由と正しい対策4つ

愛ブヒを本当の意味で幸せにするには、オーナーが犬にとって頼れるリーダーになることが何より大切です。
そこで、国際的なドッグトレーナーのライセンスを取得している大久保羽純さんに、“愛ブヒから信頼されるリーダーになる方法”を学ぶのが、この特集。

今回は、“甘噛み”について、その理由と対策を教えていただきました。

フレンチブルドッグ,しつけ

ブヒ初心者も、経験者でも悩む「甘噛み」問題

フレンチブルドッグ

Natalie Shuttleworth/shutterstock

 

みなさんの周りに、愛ブヒの甘噛みに悩んでいる人はいませんか? 

 

初めてブヒを迎えた人だけでなく、ブヒ経験者だとしても新たにパピーを迎えたときの、悩ましい問題となるのが甘噛み。

 

始めは「ちょっと、やめて~」なんて悠長に構えていても、だんだん過激になってくる甘噛みに「痛い! もう! いい加減にしてー!(泣)」と言いたくなることもあるでしょう。

 

そこで今回はブヒたちの甘噛みについて、その理由と対策を知っていきましょう。

 

甘噛みってどんなもの? (1)コミュニケーション。

フレンチブルドッグ

Tienuskin/shutterstock

 

ブヒに限らず、犬にとっての口は、人間の“手”のようなもの。

 

犬は口で獲物を捕らえたり、口で引きちぎったり、口で子犬をくわえて運んだりします。

 

遊ぶときには、相手の身体を口で優しく噛んだり、口で引っ張ったりして感情表現をします。

 

人間なら、相手を“手”で叩いたり、つんつんしたりして興味を引こうとしますよね。

 

ブヒたちも同じで、相手とのコミュニケーション方法のひとつとして甘噛みをするのです。

 

そのため、成犬になってもずっと甘噛みをする子はいます。

 

甘噛みは「ねぇ~、ちょっとこっち向いて」とか、「なでてもらって気持ち良いなぁ。ぼくのキモチも伝えるね。ハムハム~(甘噛み)」など、彼らなりのコミュニケーションなのでしょう。

 

甘噛みってどんなもの? (2)噛みたい衝動

French Bulldog

Lee waranyu/shutterstock

 

甘噛みの理由をもう一つ紹介します。

 

人間が手で何かを握ったり、壊したいのと同じで、ブヒたちも“口”で何かを噛みたい欲求があります。

 

パピーたちは特に、歯の生え変わりで歯茎がうずうずしたり、若さと元気さゆえ、いろいろな物を噛みたくて仕方がありません。

 

海外では「パピーを迎えて半年は、新しい家具を買うな(どうせ壊されるから)」なんて話もあるくらいです。

 

犬ゆえに、噛みたい衝動があってもおかしくありません。

 

その噛みたい衝動が、家具に向かうのか、壁に向かうのか、散歩中に見つけた枝に向かうのか、はたまたオーナーさんの手に向かうのか。

 

それは、そのブヒと、ブヒの置かれた状況次第でしょう。

 

甘噛みってさせちゃダメなの? 

French Bulldog

Pierre Aden/shutterstock

 

では、甘噛みは絶対にやめさせなければいけないのでしょうか? 

 

せっかくの愛ブヒからのコミュニケーションですから、全てダメとするのも切ないですよね。

 

考え方を変えて、“甘噛みする力の加減次第”と考えてみましょう。

 

例えば、痛かったり、人の皮膚を傷つけるほどの甘噛みは絶対NG。

 

しかし、優しくハムハムするくらいならOKのお家もあるでしょう。

 

別のお家では、赤ちゃんや高齢者がいるので、歯が少しでも皮膚に当たることを避けたい家族もいるでしょう。

 

お家によって、どこまでの甘噛みならOKとするかは違って当然です。

 

「これくらいの強さまでならOK」とか「歯を当てること自体をNGにしよう」など、家族で相談してルールを決めていきましょう。

 

甘噛み+興奮→けっこう痛い!

French Bulldog

Lee waranyu/shutterstock

 

とはいえ、フレブルの甘噛みは、興奮とともにかなり強くなります。

 

まったり時のラブラブな甘噛みは力の加減をしてくれても、興奮中はそうはいきません。

 

例えば、「来客に飛び跳ねて噛む!」、「遊んでいる間に興奮が高まって噛む」など。

 

フレブルは興奮しやすく、かつ、顎の力も強い犬種です。

 

落ち着いていれば甘噛みの力加減が出来る子でも、興奮してしまうとマジ噛みに変貌してしまう子もたくさんいます。

 

フレブルの甘噛み対策の重要ポイントは、極力、興奮をさせないようにすること。

 

興奮してきたら、いったん休憩しましょう。

フレンチブルドッグ

Viktoriia Bu/shutterstock

 

フレブルに「落ち着いて!」と言っても難しいので、興奮する前に人間が介入したり、興奮の対象物を遠ざけたりと、オーナーさんが愛ブヒを助けましょう。

 

例えば、来客が家に入ってくるとだんだん興奮して、甘噛みが強くなってくるブヒがいます。

 

その場合は、来客と外で会って散歩して、興奮がおさまってから家に入ることも出来ますね。

 

他にも、来客が家に入ってきて興奮しているうちは、来客と違う部屋に愛ブヒを入れ、知育オモチャを楽しんでもらっておくのも手です。

 

遊び疲れてきたところで来客と顔を合わせれば、興奮し過ぎを防ぐこともできるでしょう。

 

興奮し過ぎるのを予防するには、甘噛みをさせる前の段階が大切です。

 

愛ブヒが興奮する要因を、オーナーさんがどうアレンジできるのか考えることで、愛ブヒのココロを守れますね。

 

甘噛み対策をしてみよう! 

<対策その(1)噛んでいいオモチャで遊ぼう!> 

フレンチブルドッグ

Tienuskin/shutterstock

 

甘噛み自体は、犬として当然の衝動です。

 

その衝動を、人間の手ではなくオモチャにぶつけてもらうようにしていきます。

 

つまり、“噛んでもいいもの・ダメなもの”を学んでもらうのです。

 

用意するものは、長くて噛みやすい引っ張りっこオモチャ。

 

長さ1m以上は欲しいですね。なぜなら、短いオモチャだと、引っ張りっこ中にブヒの歯に人の手が当たりやすいため。

 

さらに、オモチャより、オモチャを持つ人の手の動きのほうが目に入るため、オモチャでなく手を狙われやすいのです。

 

オモチャの素材は柔らかく、奥歯で噛み締められる太さのある、ブヒにとって噛みやすい大きさだと、獲物感が出てGOOD。

 

「うちの子、遊ばないんだけど…」と言う方もあきらめないで。

 

オモチャ遊びは、ブヒが勝手に遊ぶことに期待するのではいけません。

 

オーナーさんが、ブヒにとって楽しい環境を作りあげ、愛ブヒをいかに遊びに誘うのかが大切です。

 

「愛ブヒの喜ぶオモチャ探し+動かし方のテクニックの研究」で愛ブヒを魅了しましょう。

 

<対策その(2)手に歯が当たったらタイムアウト!> 

フレンチブルドッグ

Cryptographer/shutterstock

 

オモチャ遊びの間に、ブヒの歯が人の手に当たってしまったら、「痛い(泣)」と言って、オモチャを持って隣の部屋に逃げましょう。

 

10秒程度のタイムアウト(愛ブヒを放っておく時間)後に、部屋に戻って遊びを再開します。

 

この方法は、「手に歯が当たると、遊びは中断になっちゃうよ」と言うのを教えるもの。

 

決して「痛い」と怒って、無視して、反省させようなんてくどい話ではありません。

 

みなさんも小学生のころに、ふざけ合っているうちにお友達の目に手が当たって、友達が「痛い…(ションボリ)」となり、気まずくなる瞬間を味わったこと、一度くらいはありますよね? 

 

あのときの「楽しかった時間が、一気につまらなくなった。次は気をつけよう」という気持ち。

 

それをブヒにも学習してもらうのです。

 

<対策その(3)日頃から手でちょっかいを出さない> 

フレンチブルドッグ

bozsja/shutterstock

 

噛んでいい物としてオモチャを提供するわけですが、もしオモチャより人間の手が面白かったら、手の方を噛んでしまって当然です。

 

ブヒが咬む力を制御できないうちは、手でちょっかいを出したり、遊んだりするのは控えましょう

 

<対策その(4)手は噛むものではなく、見るもの、なでられるもの>

フレンチブルドッグ

bozsja/shutterstock

 

ブヒに「手は噛むものじゃないよ」と言い聞かせてもわからないので、人間の手に別の任務を与えます。

 

“手は見るものだ”と教えるためにおすすめなのが、手でトリック(一芸)の指示を出して、出来たらオヤツがもらえる遊びをすること。

 

トリックは簡単なものでOKです。

 

オスワリだって、お回りだって、なんでもいいのです。

 

手を噛んでいたら、手の指示は見えませんよね。

 

ちゃんと手の動きを見る練習をすることで、“噛む対象”から“見る対象”にシフトしていきます。

 

また、“手はなでられるもの”と教えるために、愛ブヒの身体をなでるときは、ゆっくり優しくなでるようにしましょう。

 

興奮させたり、くすぐるように速くなでると、噛みたくなって当然です。

 

・なでるときは優しく。

・もし手に歯が当たったら、なでることをストップしてタイムアウト。

 

これをしっかり実践してください。

 

こんなときは専門家に相談

フレンチブルドッグ

Irina Kozorog/shutterstock

 

お口の問題は、オーナーさんだけでの改善が難しいことが多々あります。

 

甘噛みの理由として、噛む力の抑制が出来ないとか、興奮の制御が難しいとか、オーナーさんの行動に引き金があるとか、様々な要因が複雑に絡み合っているのです。

 

さらに、オーナーさんは甘噛みだと思っていても、専門家が見ると「これはマジ噛みです」と判断するケースも少なくありません。

 

“甘噛み問題”と言う言葉から受ける印象だと、複雑そうに思えないかも知れません。

 

しかし、どんなことでもオーナーさんだけで悩まずに、専門家に相談しましょう。

 

また、ブヒに噛まれて少しでも皮膚が傷ついたり、血が出る場合は、少しでも早く専門家に相談しましょう。

 

もし、ドッグトレーナーに相談をする場合も、そのトレーナーが行動修正の豊富な経験を持っているか、科学的知識をもって、動物福祉と動物への倫理に基づいた指導を安全に行える人かどうか、オーナーさんが見極めて依頼をするようにしましょう。

 

物事を学ぶには時間が必要

フレンチブルドッグ

bestselect/shutterstock

 

ここまで、いくつかの対策を紹介しましたが、いずれにしても数回だけで愛ブヒが学ぶ方法は存在しません。

 

何度も根気よく繰り返し、望ましい行動を教えていく必要があります。

 

もし愛ブヒが死の恐怖を味わうほどのショックを受ければトラウマになるため、1回で甘噛みをやめるかも知れません。

 

しかし同時に、オーナーさんのことを恐怖の対象に感じたり、手を見ただけで震えたり、人間に攻撃をするブヒになる可能性があります。

 

愛ブヒに罰を与える方法を選択するのは、百害あって一利なし。

 

物事を覚えてもらうには、何度も何度も繰り返し、お願いするしかありません。

 

「人間の手は、これくらい噛まれたら痛いんだよ」「噛みたいなら、こっちのオモチャを噛んだら楽しいよ」と、何百回も繰り返して伝えていきます。

 

私もみなさんも、大人になるまで結構時間がかかっていますよね。

 

ブヒは数年で育ってくれるのですから、立派なものです。

 

トレーニングに一番必要なもの。それは、忍耐なのです。

 

気長に、笑顔で続けていきましょう。

 

PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純

PERRO株式会社 代表取締役 

 

SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純

米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー

日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。

 

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