2020年5月18日17,955 View

【取材】迎えたその日から愛を贈り合い、もうすぐ17歳。要介護になったいま待っていたのは宝物のような時間でした。#20 なると

10歳を超えても元気なブヒを、憧れと敬意を込めて“レジェンドブヒ”と呼んでいるFrench Bulldog Life。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドブヒの肖像』です。

今回は、もうすぐ17歳を迎えようとしている超レジェンド・なるとくんの登場です。

いくつもの病気を乗り越え、今は器官にカニューレという管を入れ、その小さな命を懸命に生きているなるとくん。

 

「まだ生きていたい」、「もっと頑張る」。

 

なるとくんにそう思わせているのは、家族への大きな愛なんだ。そう思えるような、素敵なお話が聞けました。

なるとくんのプロフィール

レジェンドブヒ

年齢&性別

16歳の男の子

体重

10kg (一番重い時期は15kg!)

大好きなこと

ドライブ

既往歴

3歳の春にめまいを発症し、中耳炎による前庭障害と診断される。

 

顔面神経麻痺も出たため両耳の手術を受け、めまいは完治。

 

しかし、耳が聞こえにくくなり、左顔面には今も麻痺が残っている。

 

また、麻痺のせいで左目が閉じにくくなったことで角膜炎を発症し、左目がほとんど見えなくなってしまう。

 

10歳頃から時々後脚を引きずるようになり、MRI検査で腰椎ヘルニアが判明。

 

16歳になった去年の8月には、呼吸困難から一時は心肺停止状態に陥ったものの、気管切開術を施して一命を取り留める。

 

東京生まれ香川育ち

フレンチブルドッグ

 

なると君とオーナーの瀬戸さんとの出会いは17年前。

 

当時住んでいた東京のブリーダーから譲り受ける約束をした後、瀬戸さんが香川に引っ越したため、なると君は飛行機で香川へ。

 

迎えに行った空港では、暑さで参っている小さななると君の姿に「今にも死んでしまうんじゃないか」とまで心配したそうですが、家に着いて水を飲むと、なると君は落ち着いてぐっすり。

 

無事に瀬戸家の一員になりました。

 

※現在、短頭種は飛行機に乗せられない場合があります。

検討中の方は、航空会社とかかりつけ医に事前に相談されることをお勧めします。

フレンチブルドッグ,家族

 

その後、なると君はドライブが大好きになります。

 

いつも玄関を出ると真っすぐ車に向かい、助手席のドアの前でお座りして待っていたそうです。

 

本州や九州にも何度も旅行に行き、瀬戸さんご夫妻と楽しい思い出をたくさん作ってきました。

 

最初の飛行機で乗り物嫌いにならなくて良かったですね。

 

大きな体に優しい心

フレンチブルドッグ

 

瀬戸家にやってきた頃は掌に乗るくらい可愛らしかったなると君も、すくすくと成長し、一番重い時期には15kgの立派な体格に。

 

でも性格は穏やかで、人にも犬にも優しい子に育ちました。

 

「しつけは本やネットで情報を調べて、すべて自己流で行ないました。

 

決して上手くできたとは思いませんが、生まれついての性格なのかな」と謙遜する瀬戸さん。

 

ですが、きっと優しく丁寧に、愛情たっぷりに育てられたおかげですね。

フレンチブルドッグ

 

そのことは、瀬戸さんのこんな言葉からも感じられます。

 

「以前知人に“子育てをして初めて人間は一人前になるんだ”と言われたことがあります。

 

私たち夫婦には子どもはいませんが、なるとを育てることを通じて多くのことを学び、人として私たち自身も成長できたような気がします

 

子育てもブヒ育ても、愛情を頼りに試行錯誤を続ける、休みなき挑戦だと思います。

 

ご自身の成長を実感された瀬戸さんご夫妻は、それだけ大変な挑戦を続けてこられたのでしょう。

 

そのすべてが、なると君の立派な体に詰まっています。

 

こだわりすぎないブヒ育て

フレンチブルドッグ

 

ビッグに育ったなると君は、どんなものを食べてきたのでしょうか。

 

「仔犬のころはブリーダーさんが勧めてくださったラム肉ベースのドライフードを与えていました。

 

その後は時々皮膚に発疹が出るようになったため、チキンが主成分のセミモイストタイプのフードをずっと与えています。

 

以前、人間用のおまんじゅうを少し与えたら蕁麻疹が出たことがあったので、それ以来なるべく保存料が入っていないものを与えるようにはしています。

 

ですが、チーズとかアイスクリームとか、人間用の食べものも少しはあげています。

 

あまり神経質にはなっていません」

 

体に合った良いものをずっと与える。

 

一方で、「決めたものだけ」と厳しくしすぎず、ときには食べたがるものもちょっとあげる。

 

そんな適度な緩さや楽しみが、犬にも人間にも必要ですよね。

フレンチブルドッグ

 

「食事以外で気を付けていることも、あまりありません。

 

シャンプーもたまにしかしませんし、若い頃もお散歩は1日1回、短時間だけでした」

 

瀬戸さんは簡単そうに仰いますが、愛犬が可愛ければ可愛いほど、色々なことをやってみたくなるもの。

 

こだわりのないブヒ育ては、そう簡単ではないと思います。

 

そんな自然体の育て方が、ストレスの少ない、健康な暮らしを支えてきたのですね。

 

乗り越えてきた病気たち

フレンチブルドッグ,病院

 

愛情いっぱい、ストレスなく育ってきたなると君ですが、数々の病気を瀬戸さんの看病の下で克服してきました。

 

3歳で中耳炎になったときには、2回の手術で治癒したものの、「元の顔に戻るんだろうか?」と思うほど顔がパンパンに腫れたそう。

 

また、2週間を超える入院で褥瘡(じょくそう。寝たきりなどによって血流が滞り、皮膚がただれたり、傷ができてしまうこと。「床ずれ」ともいう)ができたりと、その後のケアも大変でした。

 

それから腰椎ヘルニアもありました。

 

後ろ脚を引きずるようになり、長い時間歩くと足が傷だらけになるので、外出時にはゴム製の靴を履かせていました。

 

その後も足腰は弱くなり、家の中のちょっとした段差に躓き、転んでしまうこともしばしば。

 

そのため今では、外出するときはバギーに乗っていますが、時々降ろしてみてもすぐに乗りたがるそうです。

 

楽にお出かけできる“なると君専用車”が気に入ったんですね。

フレンチブルドッグ

 

そして去年。急に元気がなくなり、水も食事も摂らなくなって入院することに。

 

喉のひどい腫れから呼吸がしづらくなっていたようで、入院翌日には一時心肺停止状態にまでなります。

 

瀬戸さんも、最悪の事態を覚悟して病院に向かったそう。

 

ですが、病院の迅速な処置もあり、16歳にして全身麻酔での手術を乗り越えたなると君。

 

生還した後、寝たきりになるのではと心配だった瀬戸さんも、術後2日で少し歩けるようになり、おやつも口にしたのでやっと一安心。

 

今でも、気管を切開した場所にカニューレという呼吸を助ける管を入れていて、頻繁に痰を吸引したり、日に一度はカニューレの交換をしたりと、献身的な介護が続いています。

 

因みに、なると君の命を救ってくれたこの病院は、中耳炎のときにかかりつけ医から紹介してもらったそう。

 

やはりかかりつけ医を持つことは大切ですね。

 

感謝と楽しみの介護生活

フレンチブルドッグ

 

今のなると君はどんな状況なのでしょうか。

 

「現在は、おしっこもうんちもすぐに漏らしてしまうため、人間の赤ちゃん用のおむつを履かせています。

 

毎日4、5回は交換しないといけません。また、脚が踏ん張れないので、食事も手から食べさせています」

 

おむつや食事だけでなく、カニューレの交換や痙攣発作への対応など、日々のお世話は本当に大変だと思います。

 

ですが、瀬戸さんが感じているのは感謝と楽しさでした。

フレンチブルドッグ

 

「本当なら昨年の夏に死んでいてもおかしくなかったのに、病院のスタッフの皆さんのご尽力と、幸運にも恵まれて、生還することができました。

 

今生きているのは神様がプレゼントしてくれたボーナスだと思っています。

 

ですから、この先何が起こっても受け入れる覚悟はできているつもりです。

 

つい最近も痙攣の発作が何度かありました。

 

残された時間は決して多くないと感じています。

 

老犬の介護は大変ですが、ここまで長生きしてくれたことに感謝し、楽しみながらお世話をさせてもらっています」

フレンチブルドッグ

 

なると君は、生まれた時から介護を受けている今この時まで、こんなにも愛され続けて、本当に幸せだと思います。

 

そして瀬戸さんも、なると君と居られることを心から幸せだと思われていて、その想いが強く伝わってきます。

 

レジェンド級の長寿は色々なことが積み重なった結果で、まさに神様からの特別なプレゼントかもしれません。

 

でも、お互いに幸せを贈り合うことは、愛犬を迎えた瞬間から誰もが始められる最高のプレゼント。

 

きっと神様も、そんなプレゼント交換を優しく見守ってくれることでしょう。

 

取材・文/橋本文平(メイドイン編集舎)

 

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