【新型コロナウイルス】ペット先進国アメリカの先を見据えた取り組みと、保護犬が減った一筋の光
アメリカ在住ライター・Ayaがおくる、ペット先進国アメリカならではのペット事情。今回は、アメリカでのペットと新型コロナウイルスをめぐる現状をお伝えします。ペット先進国がとった“ペットのための”新型コロナウイルス対策とは?
目次
動物のコロナウイルス感染状況…犬への感染は?
CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は、アメリカ国内において少数ではあるものの、犬や猫を含むペットが新型コロナウイルス(COVID-19)に感染していることがわかっていると報告しました。
こうしたニュースを受けて、ペットの感染を心配しているオーナーさんは多いでしょう。しかし、犬に関していえば、過剰に不安になる必要はないといわれています。
アメリカ国内で新型コロナウイルスに最初に感染したのが発覚したのは、ニューヨーク市内にある動物園のトラでした。
その後、ニューヨーク州で飼い猫2匹の感染が認められました。その猫たちは軽度の呼吸器症状を示したため、検査を受けたところ陽性であることが判明。
猫のオーナーもまた感染が確認されており、おそらく人から猫へ感染したものとみられています。
現段階では、犬よりも猫のほうが新型コロナウイルスに感染しやすいとの見解が示されているようです。
『ペットの感染』は一体どこから?
WHOが言及しているように、ペットから人間への感染を示すエビデンスは未だ出てきていません。
2020年5月14日に発表された研究では、『人から犬への感染はありうるが、犬から犬への感染は考えにくい』という見解が示されました。
アメリカ国内では、オーナーがペット自身の感染を心配するあまり、ペットにマスクやフェイスカバーを付けて屋外を散歩させている様子が時々みられます。
しかし、こうした状況に獣医師らは警告を発しています。
現段階で、ペットからペットへの感染は起こらないと考えられている一方で、マスクやフェイスカバーをして散歩することは、ペット自身の呼吸や体温調節を妨げることにつながり、そちらのほうがペットの体調に影響を及ぼすと懸念されているからです。
ペットの感染を防ぐために、オーナーができること
CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は、ペットが感染するリスクがゼロではないことから、人間と同様にペットもソーシャル・ディスタンスをとることが推奨されると説明しています。
CDCは、過剰に心配する必要はないとした上で、ペットオーナーに対して次のような生活上の注意点を紹介しています。
・家族以外の人間や動物との接触をできるだけ避けること。
・犬の外出時にはリードを用い、家族以外の人間や動物との距離を2メートル程度保つこと。
・ドッグランや混み合う場所を避けること。
・もし飼い主の体調がすぐれない時には、ペットとの密接な接触を避けること。しかし、その人がペットの世話をしなければならない状況ならば、マスクなど顔を覆うものを着用し、ペットとの接触の前後に手を洗うこと。
ペットがいる家庭で、家族の感染を防ぐために
もし家族の誰かがコロナウイルス感染している場合、ペットへの接触を通じて他の家族が感染する可能性があることが指摘されています。
つまり、ペット自身は大丈夫でも、家族間のウイルス感染を動物の毛が媒介する場合があるのです。
素材によるものの、ウイルスは物の表面で、数時間から最大で7日間もの間、感染力を保つことができると明らかになっています。
理論上、ペットの毛に付着したウイルスも感染力を維持することが考えられるため、ペットに触れた後は手を洗うことが推奨されています。
しかし、過剰にペットを洗うことは勧められていませんので、あくまでも人間側がペットに触った後に手洗いを行うことで感染を防ぎましょう。
先を見据えたペット先進国の取り組み
ペット先進国アメリカでは、コロナウイルスの影響で懸念されるペット関連の問題にも早い段階から対策が練られています。
連邦政府、大学、民間とが、それぞれペットオーナーに対する情報発信をし、正しい情報を速やかに届けることでオーナーへの不安を払拭しようと努めています。
動物に関連する新型コロナウイルスの最新情報、感染対策、動物の感染に関する学術研究の紹介から家での過ごし方まで、発信内容はさまざまです。
情報をより広く伝えられるように、情報の発信方法も工夫されています。
例えばイリノイ州立大学の獣医学部では、ポッドキャストを利用して、オーナーが心配しそうな問題に対して、専門家から情報を伝える番組を配信しています。
コロナ禍で予想される、ペットの社会問題とは?
アメリカで予想されているペット関連の社会問題は多岐にわたっています。
例えば以下のような問題が挙げられています。
・ペットがウイルスを媒介するかもしれないと恐れるあまりペットの飼育を放棄するオーナーが現れる。
・ペットを飼育する人が感染して入院した場合に世話をする人がいなくなる。
・物流の遅れや工場閉鎖の影響を受けて、ペットの餌の供給に影響が及ぶ。
・これまでにペットを飼ったことがない人も、自粛が長引いてペットを飼い始める。
こうした問題に対応するため、コロナ禍でも動物を対象としたサービス業界が適切にペットとそのオーナーにサービスを提供できるように取り決めがされ、オーナーが世話できない状況にあるペットを一時的に保護したり、相談を受け付けてサポートしたりする体制を整えています。
アメリカの対策がもたらした保護犬の里親増加
アメリカ国内では、長期化する外出自粛によってペットを新たに飼い始める人が増えています。
日本以上に自粛生活が長引いているアメリカでは、動物が与える癒しや生活の変化に期待する人が多いようです。
また、健康維持のための散歩が推奨されていることから、犬を飼うことで運動不足を解消しようとする人もいるのでしょう。
アメリカでは、ペットを飼おうと思ったらペットショップで購入するのではなく、ブリーダーから直接購入したりシェルターで保護されている動物を譲り受けたりする方法をとることが一般的です。
そのため、アメリカの徹底した外出禁止令により家にこもることを余儀なくされた人たちがペットを飼い始めた結果、シェルターにいる保護犬や保護猫の数が減少してきています。
例えば、カリフォルニア州北部のベイエリアでは、保護シェルターの犬や猫のほとんどが里親のもとへ引き取られたと報告されています。
コロナ禍の苦境に一筋の光がさすような、こうした喜ばしいニュースの裏には、アメリカ社会がペットを人間同様に大切な存在として扱い、災害や社会的混乱が起こった際には、いち早くペットとそのオーナーをサポートするための努力を行ってきた背景があります。
今回も、ペットとコロナウイルスに関する正しい情報を迅速に発信し、動物の感染に対する人々の懸念を早期に払拭したことが、保護犬や保護猫の大幅な減少につながったと考えられます。
文/Aya
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