2020年7月19日4,810 View

【取材】それはまるで15歳のパピー。すべてを受け入れて、これからも楽しく#24はなこ

10歳を超えても元気なブヒを、憧れと敬意を込めて“レジェンドブヒ”と呼んでいるFrench Bulldog Life。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドブヒの肖像』です。

今回は15歳の女の子、はなこちゃんの登場です。人間が年老いてから赤ちゃん返りをするように、“パピー返り”をした我が子に悩んだ日々もあったというママさん。その悩みが晴れた、あるきっかけとは……。

はなこちゃんプロフィール

フレンチブルドッグ

年齢&性別

15歳の女の子

体重

7kg

好きなこと

食べること。親しい犬友と過ごすこと。

既往歴

2歳のとき、椎間板ヘルニアに。ステロイドで治療し、1週間で回復。

その後、5歳で再びヘルニアになり、同じくステロイドで治療。

13歳で鼻炎に。現在も2週間に1回、注射で治療中。

 

2歳のときに椎間板ヘルニアに

フレンチブルドッグ

 

パピーのころから、おっとりした穏やかな性格だったという女の子・はなこちゃん。

 

オーナーの西井美千代さんご夫妻と関西で暮らす、小柄なブヒです。

 

現在15歳ですが、若い頃に2度のヘルニアを経験。

 

最初は2歳のころ。後ろ足がもつれるので、「少し運動させすぎたかな?」と思いながら病院へ連れて行くと、椎間板ヘルニアでした。

 

レントゲンを撮ると、はなこちゃんは通常より椎間板がひとつ多く、ヘルニアが2カ所あることが判明。

 

2週間のステロイド投薬と安静を言い渡されましたが、1週間後には元気に走り回るまで回復したそうです。

 

その後、5歳のときにヘルニアが再発、再び薬で治療。

 

「手術の選択は、ありませんでした」と西井さんは語ります。

 

実は、はなこちゃんの前の先代フレンチブルドッグ・じんべいくんが、6歳という若さで、ヘルニアの手術中、麻酔が合わずに亡くなるという悲しい経験があったのです。

 

「まだ6歳。早すぎましたね…。その後すぐにはなこが来たので、最初からヘルニアには気をつけていました」

 

階段や段差、ソファに上がるときなどはすべて抱っこで、細心の注意を払ってきたそうです。

 

ヘルニアになってからは、無理をさせて疲れが残らないように、一緒に出かけた翌日は完全な休息日に。

 

10歳からは、暑さが厳しい夏の2カ月間は、長野県軽井沢にある別荘で過ごしているそう。

フレンチブルドッグ

 

「軽井沢は水や空気が美味しく、敷地内ではノーリードで過ごせるので、はなこにとってはストレスもないようです」

 

避暑地に長期滞在できるなんて、暑さに弱いブヒとブヒオーナーにとっては羨ましい限りですね。

 

鼻炎で体重も体力もダウン…

フレンチブルドッグ

 

若いころから、食事は手作り。

 

鶏胸肉や牛肉、ブロッコリー、キャベツ、きのこ類などの野菜、豆腐やおからなど、バランスのいい手作りごはんを食べてきました。

 

ところが13歳のころ、ごはんをあまり食べなくなることが。

 

同時に、鼻水が多量に出始め、息苦しそうにして夜も眠れない日々が続きます。

 

「なんらかの腫瘍や異物があるのでは…」と心配でMRIを撮ると、鼻腔から耳まで粘液が排出できずに溜まっていました。

 

診断は鼻炎。

 

腫瘍ではないことがわかり、ほっと胸をなでおろしたものの、鼻炎は想像以上にはなこちゃんを弱らせていきます。

 

病院で処方された薬を受け付けず、食欲がなくなり痩せ、体力もダウン。

 

「ずっと寝てばかりで自力での排泄が難しくなり、オムツをする生活でした」。

 

体力をつけるために、「まずは食べること!」とムース状の缶詰(犬用流動食:デビブ/カロリーエース)や、粉状の療養食をシリンジや人間用の吸い口を使って、口角から流し入れるように食べさせたそうです。

 

このサポートで、体力が少しずつ回復。

 

「いい形のウンチが出たときは嬉しかったです」。

フレンチブルドッグ

 

今は朝食にカロリーエースや森永乳業の介護食を水で溶いたものを。

 

夜はブッチの柔らかいフードを細かく刻んだものを食べています。

 

「ときどき飲み込みづらいときがあるので、そういう日はミキサーでムース状にしています」

 

しかし、今年に入ってから春にかけ、再び鼻がつまり始めました。

 

そこで現在は飲み薬を止め、2週間に1回、抗生剤を注射して治療を継続しています。

 

13歳で車椅子デビュー! 自慢の車椅子で、散歩中は得意顔に

フレンチブルドッグ

 

ヘルニアで後ろ足の力が弱まっていたこともあり、シニアになってからは長時間の歩行ができなくなってしまいます。

 

13歳の春、後ろ足が震えだしたことを機に車椅子を作りました。

 

これが大成功! 思いのままに動けるようになったはなこちゃん、最初のころは得意になっていたそうです。

 

「お散歩のとき、すれ違う人に、自慢気に“どう?”って見せていました(笑)。

 

一時期でも、自力で思いのままに動ける体を体感できたのは良かったですね」

 

とはいえ、今はなるべく自力での歩行を目指し、車椅子はあまり使っていません。

 

というのも、前足を中心に動く車椅子は、背骨にかかる負担が大きいのです。

 

「体がいちばん辛そうだったときは、前足への負担も大きかったのか、4本の足がペタッと開いてしまうようになって…。それで、しばらくやめることにしたんです」

 

そんなとき出会ったのが、ドッグマッサージ。

 

昨年10月、評判の良いドッグマッサージの先生が千葉県から関西に来ると知り、犬友さんと一緒に試してみることに。

 

「マッサージ後のはなこは、後ろ足がピーンとしっかりと立っていて、すごく効果があったんですよ。

 

マッサージの先生からも、車椅子だけに頼るのは良くないとアドバイスをいただいたので、使用はときどきにしています」

 

しかしママさんは、“はなこちゃんにとっての最善”をいつも考えています。

 

「車椅子には賛否両論あります。しかし今後、必要になったら、また使用するかもしれません」

 

粗相はして当然。シニアで起きた変化をすべて受け止めて

フレンチブルドッグ

「この状態が落ち着くようで、最近はこの状態で足を拭いたり、目薬をさしています」と西井さん。

 

シニアになってからはトイレを粗相するようになり、当初“どうして?”と思い悩みました。

 

しかしある日、粗相をしたあと部屋の隅に小さくなって隠れていたはなこちゃんを発見。

 

「パピーのころも粗相をすると、テーブルや椅子の下に隠れていることがあったな」とハッとしたそう。

 

叱ってもいないのに部屋の片隅で落ち込むその姿に、西井さんも胸が痛くなります。

 

そんな悩みを救ってくれたのが、SNSで交流のある同じシニア犬のオーナーさんたちでした。

 

励まされたり共感し合う中で、「こうあるべきと思っていても、“動物なんだからできるわけないじゃない”と考え方を変えたら、すんなりと粗相を受け入れられました」。

 

まるでパピー返りしたかのようなはなこちゃんのことを、今では「何でも受け止めるつもりです(笑)。私が怒らなくなったので、はなこも今は平気で粗相してますよ」と、大らかに笑う西井さん。

 

“何でも受け止める”。言うは易く行うは難し。深い愛情がなければできないことです。

 

今では目も見えなくなり、耳も聞こえてないようで、1日の大半を寝て過ごしているはなこちゃん。

 

「ですが、ずっと家にいて寝込まないように、朝夕はゆっくり、短時間ですが、毎日散歩に行くようにしています。

 

ご近所の犬たちと触れ合うと、元気になりますね」

 

外のニオイを嗅ぎ、他のわんことご挨拶をする。それが日々刺激になり、ご長寿へとつながっているのかもしれません。

 

阪神淡路大震災の経験から、「もしも」に備えてドッグリュックを購入

フレンチブルドッグ

1995年の阪神淡路大震災を経験している西井さん。

 

この災害経験から、はなこちゃんの足が弱くなってきたときに購入したのが、ドッグリュック。

 

万が一に備え、いつも玄関の近くに置いてあるそう。

 

というのも震災の際、当時住んでいたマンションのエレベーターが使えなくなり、すべて階段という生活がしばらく続いたのだそうです。

 

「また大きな地震が来たら、はなこは階段を自力で降りられません。

 

災害時に避難する際にはほかにも荷物を持つことを考えて、知人に教えてもらったリュックを買ったんです」

 

地震に限らず台風など、災害大国の日本。

 

ごはんやトイレシートの備蓄だけでなく、最悪の場合を想定した備えがあれば、いざというときにも落ち着いて行動できるでしょう。

 

大切なブヒを守るため、見習いたい備えです。

フレンチブルドッグ

 

リュックのみならず、フードや車椅子、マッサージと、そのときそのときで、はなこちゃんにとってベストなものを探し、試行錯誤をしてきた日々。

 

その大きな愛こそ、長生きへとつながっているのではないでしょうか。

 

「こうして、はなことの生活を改めて振り返ってみると、本当に楽しかったなぁと思います。これからも楽しく過ごしたいですね(笑)」

 

 

取材・文/都丸優子

 

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