2020年8月25日10,510 View

犬の車嫌い・車酔いを克服!ドライブ好きなフレブルになってもらうためのトレーニング“7ステップ”!

愛ブヒを本当の意味で幸せにするには、オーナーが犬にとって頼れるリーダーになることが何より大切です。
そこで、国際的なドッグトレーナーのライセンスを取得している大久保羽純さんに、“愛ブヒから信頼されるリーダーになる方法”を学ぶのが、この特集。

今回は、車が苦手なブヒに向けたトレーニング方法を学びます。お出かけできる範囲が広くなるだけでなく、台風や地震などの災害でもし避難を余儀なくされた場合にも、このトレーニングが大いに役立ちます。我が子の命を守るために、ぜひトライを!

 

フレンチブルドッグ,しつけ

車が嫌いなブヒと、一緒にお出かけしたい! 

フレンチブルドッグ

pnsam/shutterstock

 

あなたのお家の愛ブヒは、車に乗ることが好きですか? 苦手ですか? 

 

世の中には、車が大好きで自分から飛び乗るようなブヒもいますし、車が苦手で、車の中でパニックになってしまったり、車に乗る前から不安で落ち着かなくなるブヒもいます。

 

愛ブヒが車を苦手だと、一緒にお出かけを楽しめないだけでなく、病院に連れていきたいときや災害などで避難する必要があるときなど、困る場面もでてきますよね。

 

今回は、あまり車が得意ではない愛ブヒと、より快適に車で移動するための知識を学んでいきましょう。

 

車が苦手なブヒはたくさん!

フレンチブルドッグ

Kittibowornphatnon/shutterstock

 

SNSなどでは、車が大好きで、楽しそうにドライブしているブヒさんたちをよく見かけませんか。

 

そういうブヒを見ていると、「なんでうちの子だけ車が苦手なのだろう…」と不安に感じるかも知れません。

 

しかし、安心してください! 世の中の全ての犬が車好きという訳ではありません。

 

SNSはハッピーなことや、愛ブヒの得意分野をアップすることが多いので、「車で吐いてしまう」とか「車で震える」とか、「怖くて失禁してしまう」などのネガティブな行動が表面化しづらいだけです。

 

実際に、車が苦手で悩んでいるオーナーさんはたくさんいます。

 

では早速、ブヒたちが車を苦手になってしまう理由を探っていきましょう。

 

車が苦手になる理由3つ

車に乗るフレンチブルドッグ

Libraryfairy/shutterstock

 

理由(1)車酔い

人間と同じで、ブヒたちも車酔いをすることがあります。

 

ただ、「酔ったよ、気持ち悪いよ」とは言ってくれませんから、愛ブヒの様子をよく見る必要があります。

 

気持ちが悪いときは、口をクチャクチャさせていたり、ヨダレが出たり、あくびが増えたり、嘔吐することもあります。

 

理由(2)車内の状況に不安を感じる

犬は私達と違って、耳も鼻も良い上に感覚だって人間と違います。

 

初めての場所や、慣れていない状況、安心できる確証が無い環境を、警戒して不安になるのは当たり前のこと。

 

車のニオイやエンジン音、揺れなどで、不安や恐怖を感じるブヒもいるでしょう。

 

理由(3)車と嫌な体験がリンクしている 

車に乗ることと嫌な体験が関連づいてしまうと、“車に乗ること=恐怖と不安の引き金”になる可能性があります。

 

人間だって車内で交通事故に遭ったら、車を見るのも、乗るのも怖くなりますよね。

 

ブヒの場合も、車に乗って苦手な病院に連れて行かれたとか、車に置いてきぼりにされて不安になったなど、ブヒ自身が嫌だと感じる体験をすれば、車が苦手になってしまう可能性があるのです。

 

とはいえ、オーナーさんによっては、「えー、うちの子にそんな嫌な思いをさせた記憶はないし、思い当たらないけど…」と思う方もいるかも知れません。

 

そうなのです。原因が思い当たらないこともあるのです。

 

要するに、人間が気づかないうちに、愛ブヒが「怖い!」と感じる経験をしているかもしれないのです。

 

原因を推測することは出来ても、本当のトラウマの原因なんて、本人(本犬)に聞く以外に分かりようがありません。

 

原因は一生、迷宮入りです。

 

もしも原因がハッキリしているなら、すぐに除去して改善しましょう。

 

しかしもし分からなければ、オーナーさんがやるべきは、“トラウマ探し”に躍起になることではなく、“どう助けたら、愛ブヒが気持ちよく車に乗れるのか”という、未来に向けた研究をすることなのです!

 

車に乗れるようになるにはどうしたらいいの? 

フレンチブルドッグ

Andreea Mihaela Rosca/shutterstock

 

では次に、車に乗るための対策を考えていきましょう。

 

(1)車酔いブヒへの対処

車酔いへの対処法の1つとして、動物病院で酔い止めの薬を処方してもらうことが出来ます。

 

他にも、車内での愛ブヒの居場所選びも大切です。

 

車酔いを経験したことのあるブヒは、車に乗る前から予期不安でソワソワしたり、発進後も落ち着かないことがあります。

 

安心させてあげたくて、オーナーさんが愛ブヒを膝の上で抱っこしていたり、シートに座らせたりすると、身体が揺れやすく、逆に酔わせてしまうこともあります。

 

なるべく揺れづらい足元で寝そべっている方が、楽に感じるブヒも多いでしょう。

 

車内を動き回ると酔いやすくなるため、クレート(ハウス)に入ってもらい、ある程度身体が動かないほうが良いでしょう。

 

事故時の安全のためにも、車内ではクレート待機が推奨されています。

 

ドライバーさんも穏やかな運転を心がけて。

 

愛ブヒが車に慣れてくるまでは、数十分以内に、こまめな休憩を取るようにしましょう。

 

(2)車内の状況に不安を感じるブヒへの対処 &(3)車と嫌な体験がリンクしているブヒへの対処

 

この2つの理由への対処法をお伝えする前に、大事な心構えをお伝えします。

 

それは、不安や恐怖の改善には時間が必要ということ。

 

軽度の車酔いなら、酔い止め薬や車の乗り方で、短期で改善できるかも知れません。

 

しかし中等度以上の車酔いの場合は、心身にも影響が出ている可能性があります。

 

車に悪い印象が付いてしまっている(2)、(3)の場合は心と身体、両方の問題です。

 

改善までには適切なトレーニングと、心と身体のリハビリの時間が必要でしょう。

 

車に乗れるようになるために大切なこと

フレンチブルドッグ

Gorlov Alexander/shutterstock

 

ではさっそく、“愛ブヒと快適に車に乗るトレーニング”のポイントをお伝えしましょう。

 

それは、愛ブヒのペースで、車に良い印象を付けていくことです。

 

主に使うのは大好きな食べ物。

 

美味しいものと、車の印象をリンクさせていきます。

 

このとき、早く慣らせようと焦り、ブヒに無理をさせるのはNG。

 

愛ブヒの身体に少しでも緊張が見られたら、中断するか、必ず1つ前のステップに戻るようにしましょう。

 

愛ブヒと一緒に車に乗るトレーニング “7ステップ”

フレンチブルドッグ

Lee waranyu/shutterstock

 

ステップ1:「車の周辺」に良い印象を持ってもらう。

犬の爪サイズ程度に小さく切った、大好きなご褒美オヤツを食べさせながら、車の周辺を歩きます。

 

1〜3歩(または3秒以内)に1粒以上のハイペースで、オヤツを渡していきます。

 

愛ブヒを強制的に車に近づけるのではなく、美味しいご褒美に誘導されながら、愛ブヒが自分から車に近づくようにしましょう。

 

ブヒがリラックスして車のそばでご褒美を食べ続けていれば、GOOD。

 

車に近づきたくない、止まる、ご褒美を食べなくなる場合は緊張しています。もっと車と離れた場所から始めましょう。

 

食べ物だけでなく、車の周囲でおもちゃ遊びをして、良い印象を持ってもらうのも良いでしょう。

 

ステップ2:「車の出入り」に良い印象を持ってもらう。

フレンチブルドッグ

Aleksandra Baranoff/shutterstock

 

停止している車のドアを全て全開にして、ご褒美のオヤツで車の中に誘導します。

 

車の中にオヤツをバラまいて、車内でオヤツパーティーをしてもGOOD。

 

もし愛ブヒが急に不安になって車から降りたくなったら、すぐに車外に出ましょう。そのためのドア全開です。

 

この段階で扉を締めて閉じ込めると、恐怖心は倍増します。

 

愛ブヒのペースで、車へ出たり入ったりを繰り返しながら、たくさんのご褒美で印象を良くしていきましょう。

 

ステップ3:「車内」に良い印象を持ってもらう。

フレンチブルドッグ

praditkhorn somboonsa/shutterstock

 

ステップ2までは、愛ブヒもまだ車内に不安があるでしょう。

 

車内に居続けずに、車の中と外を出たり入ったりするかも知れません。

 

しかし、だんだんと車内の印象が良くなってくると、車内に留まる時間が増えてきます。

 

そうなったら、オーナーさんも車内の座席に腰を下ろし、ご褒美を与えながら、愛ブヒと一緒にリラックスしてみましょう。

 

愛ブヒの体が緩んでいれば、ゆっくりとドアを閉めましょう。

 

ドアを締めたまま、車内で愛ブヒの体がユルユルにリラックスする状態が目標です。

 

もしドアを閉めたことで、愛ブヒの身体が緊張したら、すぐにステップ2に戻りましょう。

 

エンジンをかける、出たがるブヒをその場に留めようとするなどの愛ブヒへの裏切り行為は絶対にNG。改善どころか悪化します。

 

ステップ4:「エンジン始動」に良い印象を持ってもらう。

愛ブヒが、ドアを締めた車内でリラックス出来るようになったら停車したままの車内で、エンジンを始動します。

 

エンジンを掛けた状態で、車内で美味しいご褒美を食べ続けましょう。

 

ステップ5:「車が動くこと」に良い印象を持ってもらう。

さあ、ついに車が動き始めます。とは言っても、駐車場内を数メートル動くところからはじめます。

 

もちろん、美味しいご褒美を食べながらです。

 

愛ブヒが不安を感じたら、いつでも止まって外に出られる状況を確保しましょう。

 

10セット以上、リラックスしたまま数メートルほど車を動かせたら、家の周囲をショートトリップしてみましょう。

 

このとき、ドライブする時間は3分以内にとどめてください。

 

ステップ6:「車での移動」に良い印象を持ってもらう。

フレンチブルドッグ

Firn/shutterstock

 

片道10分以内で行けるような、愛ブヒが絶対に喜ぶ目的地に行きましょう! 

 

ドッグランなのか、友達ブヒ宅なのか、公園なのか、よく愛ブヒと相談してくださいね。

 

動物病院や見知らぬ場所はおすすめしません。

 

美味しいご褒美を食べながら、絶対に愛ブヒが笑顔になる場所へのお出かけをしましょう。

 

ステップ7:10分以上かかる場所へ行ってみましょう。

 

ここからは、オーナーさんが愛ブヒの様子を見ながら、ステップアップしたり、ダウンしたりを繰り返していきます。

 

前回、10分以内のお出かけができたからって、今回が10分以上のお出かけを出来るとは限りません。

 

トレーニングは、“3歩進んで2歩下がる”。ときには“4歩下がる”こともあります。

 

ここまでトレーニングを積み重ねたオーナーさんなら、愛ブヒのストレスサインには気づけるはず。

 

「多分大丈夫だから、やっちゃえ!」という無謀な気合よりは、「ちょっと不安そうだから、すぐ車を止めて、練習をし直そう」という、愛ブヒに寄り添う慎重さが大切です。

 

トレーニングをするときの注意事項

フレンチブルドッグ

praditkhorn somboonsa/shutterstoc

 

必ず、以下のルールを守って上記のステップを進めるようにしましょう!

 

・もし現在のステップで愛ブヒが緊張していたら、すぐに前のステップに戻りましょう。

 

・1回の練習は1〜3分間程度。

 

1回の練習が長すぎるのはNG。1回終えるごとに数分の休憩を挟んで、繰り返し練習します。

 

ただ、多くても1日に5セットまで。小分けにして日々繰り返すことが大切です。

 

・新しいステップにチャレンジするのは、現在のステップが100%近くできるようになってから。

 

焦ってステップアップするのはNG。新しいステップにチャレンジするとしても、1日1ステップまでにすること。

 

・1ステップに、たくさんの回数がかかってもOK。

 

それだけ、ご褒美と車がセットになり、良い経験の積み重ねになっていると考えて。

 

少なくても、1ステップあたり、10回以上の練習は必要でしょう。

 

・練習始めの1回目は、前日のステップから続けて行うのではなく、必ずステップ1から確認してステップアップしていくこと。

 

・数ヶ月以上の時間をかけて、コツコツ練習するイメージでいましょう。

 

少しでも愛ブヒが、車を快適に感じてくれるように

フレンチブルドッグ

Tatiana Katsai/shutterstock

 

車が苦手なことは、決しておかしいことではありません。

 

生きていれば、人間もブヒも、苦手なものは出てきます。

 

愛ブヒの「怖いよ、嫌だよ」に気付くことが出来た素晴らしいオーナーの皆さんなら、愛ブヒの「これなら出来るよ、こうしてくれれば大丈夫だよ」という声にも気付けるはずです。

 

苦手なものをトレーニングすると言う話題になると、少しでも早く慣らさせたいばかりに、恐怖への対処を浴びせかけるようなプランが出てきがちです。

 

例えば、「犬嫌いなブヒを、犬だらけのドッグランに入れて慣らす」とか、「子供が苦手なブヒを、無理やり子供に抱っこしてもらって慣らす」とか。

 

こんなプランはあまりに非人道的ですし、逆効果。トラウマを深めるだけ。

 

今回の練習でオーナーさんに用意してもらうのは、“美味しい食べ物”と、“気長に見守る忍耐力”。

 

そもそも、恐怖や不安は、気合いなんかで乗り切れるものではありません。

 

恐怖や不安のトレーニングプランは、とても丁寧で慎重に進めるものです。

 

恐怖の対象物を、恐怖を感じない程度の刺激に抑えながら、好きなもの(オヤツなど、愛ブヒの喜ぶ物や事)とセットにする練習を、何度も繰り返す必要があるのです。

 

人間側がどう思うかなんて関係なく、愛ブヒ自身が、何度も安心で安全な体験を積み重ねることで、愛ブヒの中での苦手が大丈夫に変わっていくのです。

 

こんなときは専門家に相談

フレンチブルドッグ

VadosLoginov/shutterstock

 

今回紹介したトレーニングプランは、あくまで一例に過ぎません。

 

愛ブヒそれぞれで、トレーニング方法は異なります。

 

わからないな、困ったなと思ったときには、どうか一人で悩まないでください。

 

獣医さんやプロのドッグトレーナーに相談しましょう。皆さんを支えるプロは、身近にたくさんいます。

 

ドッグトレーナーに依頼をする場合も、そのトレーナーが行動修正の豊富な経験を持っているか、学術的、科学的知識をもって動物福祉と動物への倫理に基づいた指導を安全に行える人材かどうか、オーナーさんが確認をするようにしましょう。

 

PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純

PERRO株式会社 代表取締役 
SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純

米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー

日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。

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