ワガママやガンコじゃない!犬が散歩中「歩かなくなる」「違う方向に行きたがる」原因と対策は?【愛ブヒの本音を知ろう】
愛ブヒを本当の意味で幸せにするには、オーナーが犬にとって頼れるリーダーになることが何より大切です。
そこで、国際的なドッグトレーナーのライセンスを取得している大久保羽純さんに、“愛ブヒから信頼されるリーダーになる方法”を学ぶのが、この特集。
今回は、お散歩中に突然歩かなくなる、違う方向に行きたがるブヒの行動について。ブヒの心の声を交えながら、その対処法についてご紹介します。
目次
ワガママでもガンコでもない! ブヒが急に歩かなくなるワケ
愛ブヒとのお散歩は、オーナーさんにとってもリフレッシュが出来る気持ちの良い時間。
しかしなぜか愛ブヒが急に歩かなくなることや、オーナーさんと違う方向に行きたがることってありませんか?
こんなとき、「ワガママ」とか、「ちゃんと歩かずガンコな子だ」と決めつける声を聞くことがあります。
しかしそれは違います。彼らには、ちゃんとした言い分があるんです。
愛ブヒたち側も、その言い分をオーナーさんに分かってもらえなくて苦しんでいます。
それって悲しいことですよね。
今回は、お散歩中に立ち止まったり、違う方向に行きたがる愛ブヒの言い分と対応について紹介していきます。
愛ブヒが歩かない、違う方向に行きたがる理由とは?
愛ブヒさんたちに、お散歩で止まる、違う方向に行きたがる理由をインタビューしてみました。
<理由(1)ママとペースが合わないの>
ブヒ太くん:「ぼくね、家を出てからすぐ、興奮してダッシュするの。
でもね、10分くらいしたら疲れちゃうから、ゆっくり歩きたいの。道端の匂いも嗅ぎたいし。
でもね、オーナーさんたら、ずーーーっと同じペースで歩くんだよぉ。お散歩に四季を感じる情緒ってもんがないよね」
インタビュアー:「なるほど。でも、ブヒ太くんがオーナーさんのペースに合わせてあげたらどうですか?」
ブヒ太くん:「え〜、すごい人間びいきの意見だね。
だってさ、お散歩以外はほとんどの時間を、オーナーさんの生活に合わせてるよ。
ご飯だってお留守だって、寝る時間だって! その上、歩くスピードまで合わせてって言われたら、息抜きできないよ〜(泣)」
インタビュアー:「そうですよね…、ごめんなさい! ブヒ太くんのおっしゃるとおりです」
【対策】
オーナーさんのペースもあるでしょうが、愛ブヒにも好きなペースがあります。
はじめはダッシュでも後半ゆったり派。行きはのんびり帰り道はダッシュ派。お散歩中盤の道草クンクンじっくり派など。
ブヒごとにお好みの散歩スタイルがあるのです。
さらに、その日の体調や身体に痛みがあったり、天気や温度によっても、オーナーさんのペースについて来られないケースがあります。
お散歩は、人間のための時間ではなく愛ブヒの心身と笑顔のための時間。
愛ブヒと相談して、愛ブヒのリズムを掴むようにしましょう。
<理由(2)そっち、行きたくない!>
インタビュアー:「ブヒ子ちゃんは、オーナーさんがこっちに行こうと誘っても、動かないことがあるそうですね?」
ブヒ子ちゃん:「そうなの。だってその道は、嫌な事があった方面なんだもん。
あの道は、嫌いな犬に吠えられた場所でしょー。
あっちの道は、工事の音が怖かったし。
この道を歩いているときなんて、“カミナリ”の音がして最悪だった! だから行きたくないの!」
インタビュアー:「えっと…言いづらいのですが、カミナリに関しては、道と直接の関係は無いですよ?」
ブヒ子ちゃん:「私ブヒだし、そーゆー理屈わかんない!
とにかく、その道を歩いていた時に嫌なことがあれば、記憶はしっかりするの。
だから怖くてもう行きたくないの。
せっかく立ち止まって嫌だよって伝えてるのに、オーナーったら引っ張るのよ。
もう、おしっこ漏れそうなくらい怖い道なのに!」
【対策】
オーナーさんが覚えていなくても、愛ブヒが嫌だと感じた出来事と道の印象がセットになれば、その方向を避けたくなります。
嫌がるブヒを無理やり連れていけば、オーナーさんの好感度が下がるだけ。
「散歩の道はオーナーが決めないと、犬になめられる」なんて科学的根拠が不明な迷信に惑わされてはいけません。
どうしても嫌がるなら、違う道を進んだって良いのです。
愛ブヒと相談しながら、お互いが笑顔になれるお散歩の道を決めましょう。
<理由(3)あっちに行きたい!>
インタビュアー:「ブヒ美ちゃんとブヒ雄さんは、オーナーさんと違う方向に行こうとするようですね?」
ブヒ美ちゃん:「私って〜、ブヒ友が多いほうじゃない? だから、ブヒ友に会えそうな道に行きたいの。
ドッグランへの道も覚えているから、そっちに向かうし。
オーナーってば、ドッグランへの道を忘れちゃうみたいだから、私がちゃんと引っ張っていかないとね!」
ブヒ雄さん:「ワシにはブヒ美のように、明確な目的地はない。
しかし、その日その日で吹く風が違う。だからワシには、ワシの行きたい道があるのだよ」
【対策】
オーナーさんにも好きな道があるように、愛ブヒも行きたい道や、行きたい場所があります。
安全さえ守れていれば、オーナーさんが道を選ぶばかりではなく、愛ブヒに好きな道を選んでもらったって良いのです。
愛ブヒの希望はわかるにしても、もし「今日はそっちに行けないよ」ということがあれば、美味しいご褒美を渡しながら違う道に誘いましょう。
タダでは動いてくれなくて当然です。
<理由(4)立ち止まって確かめたい!>
インタビュアー:「ブヒ郎くんは、お散歩中に何もないところで急に立ち止まってしまうそうですね?」
ブヒ郎くん:「はい出たー! ニンゲンってすぐ、“何もない”って決めつけるんですけどー!
ブヒからしたら、なぜニンゲンはこの強烈な匂いに気付かないの? この変な音が聞こえないの? って感じなんですけどー!
おかしなものを見つけたら、ニンゲンだって立ち止まって確かめるでしょ。
僕からしたら、道端の情報をスルーしすぎるオーナーさんこそ心配なんですけどー!」
インタビュアー:「なるほど! とはいえ、しょっちゅう立ち止まられたらお散歩にならないとオーナーさんは嘆いていますよ?」
ブヒ郎くん:「ニンゲンって勘違いをしているよね〜。
僕らの望む散歩ってさ、強制的な歩行エクササイズじゃなくって、気分転換なわけよ。
ただ歩けばいいってもんじゃないの。
匂いを嗅いだり、外のいろんな刺激を感じたりが大事。
だから歩かせようと必死にならないで、もっとゆるい感じでヨロシク〜!」
【対策】
人間もお出かけしたら「なんの花だろう?」とか、「あ、このお店初めて見た!」とか、気になるものは確認したいですよね。
愛ブヒにも気になる物があります。そのときに先を急がれてしまうと、愛ブヒは「えぇっ! まだ確認中なのにー!」と立ち止まるでしょう。
お散歩=頑張ってウォーキングをしなきゃと焦ってしまうオーナーさんもいます。
でもお散歩では、愛ブヒとデートするイメージで道草を楽しんで。
愛ブヒの道草が安全なように、周囲を警戒したり、危ない時には愛ブヒを違う場所にエスコートすることこそ、お散歩でのオーナーさんの役割なのです。
<理由(5)痛いよ、苦しいよ>
ブヒ代ちゃん:「私はハーネスが擦れて、痛いときに立ち止まるの。
あと、足の裏にちっちゃい棘が刺さった時も歩けなかったわ。
でもオーナーがそれに気づかなくて、私、怒られちゃった…。
頑張ろうと思っても、痛くて歩けなくて…すごく悲しかった」
ブヒ衛門くん:「オレも呼吸が苦しいときと、足腰がおかしい時があるんだよな〜。
毎日じゃないからガンガン歩ける日もあるんだけど、ダメなときは動けなくなっちゃう。
少し休憩すれば歩けることもあるから、“ガンコな子ね”って言われて…切ないぜ。
半年前までは、問題なく歩けていたんだけどなあ…」
インタビュアー:「そんなオーナーさんはヒドイですね!」
ブヒ代ちゃん:「ヤダ! オーナーさんのことは悪く言わないで! 私の大好きな人なの。
私がもっと、頑張れたらよかったの(号泣)」
ブヒ衛門くん:「オレのオーナーも良い人さ。何度も病院に連れて行ってくれているよ。だけど、検査をしても原因がわからない。
だからオレが歩けない理由を、精神的なものか、身体の問題か理解できないだけなのさ。オーナーも苦しんでいるはずだよ」
【対策】
皆さんも靴擦れが痛くて歩けないときに、「ワガママね!」と言われたら辛いですよね。
実は、立ち止まる原因の多くに、身体的な不具合が隠れています。
心臓病や気管、足腰にトラブルがあるなどで歩けないこともあります。
しかしブヒは私たちに苦痛を伝えられません。病院で調べても、原因がわからない不具合もあります。
少しでも異変を感じたらまずは病院に相談をしましょう。
セカンドオピニオン、サードオピニオンを利用するのも良いでしょう。
愛ブヒの苦痛に一番気付くことが出来るのは、毎日を一緒に過ごすオーナーさんなのです。
<理由(6)行きたくない、帰りたくない>
インタビュアー:「ブヒっちさんは、出掛けと、帰り道で止まってしまうらしいですね?」
ブヒっちさん:「私は、家を出る際の抱っこと、エレベーターに乗ることが苦手でね。
散歩って言われると、いっそ逃げたい気持ちになるよね。
まあ公園まで行っちゃえば最高に楽しいから、散歩自体は好きなんだよ」
インタビュアー:「帰り道には、お地蔵さんのように固まってしまうらしいですね?」
ブヒっちさん:「だってさ、大好きな公園に来たなら満足するまで帰りたくないじゃん?
オーナーさんは、“夕飯を作る時間だから帰るよ”とか言うけど、私にはよくわからない。私的には帰るメリットがないよね。
まあ、美味しいご褒美をもらいながらなら、帰り道を歩いてもいいかな」
【対策】
お散歩に出掛けるときや、帰り道で嫌がるブヒもいます。
オーナーさんの出掛けたい&帰りたいタイミングと、愛ブヒのタイミングが異なることもよくあります。
愛ブヒにとったら、すべてオーナーさんの勝手な都合。愛ブヒ側にも、なにかメリットがないと動きたくありません。
「オヤツなんてねだらなくったって、公園まで行けば楽しく遊ぶのだから、それがご褒美ってことでいいじゃない!」と思う方もいるかも知れません。
でも、それだとちょっと先の話過ぎます。
出際の準備や、帰り道を歩くこと自体も楽しくなるように、小さくちぎった30粒以上の美味しいご褒美を、ちょこちょこ与えながら歩くようにしましょう。
食べ物に制限があるブヒや、ドッグフードが大好きなブヒなら、普段のゴハンを散歩しながら与えたって良いのです。
愛ブヒが歩かないのには、正当な理由がある
いろんなブヒさんの意見を聞いてみました。
どの理由も、「なるほどね。そりゃ立ち止まりたくなるよね」と思えるものだったはずです。
ここに書いた以外にも、愛ブヒの数だけ、歩かないときの言い分があることでしょう。
愛ブヒのすべての行動には、正当な理由があります。その理由がわからないと、人間はブヒの“性格”のせいにしがちです。
しかし、愛ブヒに「頑固だ」とか「ワガママ」だとかレッテルを貼っても、人間側の気休めにしかなりません。
お散歩で立ち止まっているブヒは、オーナーさん以上に困っています。助けを求めています。
愛ブヒのSOSの理由を探して解決することが、我々オーナーの役目なのです。
安全なら、愛ブヒペースで良いじゃない
お散歩というと“人間に寄り添いスッと歩くブヒ”をイメージする方も多いかもしれません。
運動のために「歩かせなきゃ!」と、あせるオーナーさんもいることでしょう。
忙しい日常の中で「早く歩いて!」と思う時もあるかも知れません。よ〜くわかります!
でも、その気持ちは一度捨てましょう。
すべては、人間の勝手なイメージと、勝手な欲望です。
お散歩の1番の目的は、「愛ブヒための、心と身体のリフレッシュ時間」だったはずです。
そう考えると、愛ブヒが歩かないときの見え方が変わりませんか?
目線を変えると「せっかくのお散歩なのに、立ち止まらないでよ」ではなく、
「いま愛ブヒは、どういう状況なのだろう? 助けは必要だろうか?」と、まず愛ブヒの置かれている状況を考えられるはずです。
とはいえ、愛ブヒに好き勝手な散歩をさせようと言っているわけではありません。愛ブヒが事故を起こしては大変です!
お散歩でのオーナーさんの役目は
・愛ブヒと周囲の人の安全を守る管理者
・愛ブヒための心と身体のリフレッシュ時間の総合演出家
です。
たとえば、車の多い道ではリードを短めに持ってササッと通過するとか、苦手な犬や人がいる道は避けるなど、愛ブヒをエスコートしましょう。
愛ブヒと周囲の人の安全も守りながら、その中で、愛ブヒが笑顔になれるお散歩を模索するのです。
だからこそ、安全な状況なら、愛ブヒが何度立ち止まったって良いのです。
そして、愛ブヒが立ち止まったときには、その状況を元に、どう対応したら愛ブヒが快適なのかを考えましょう。
いろんな可能性を考えて、トライ&エラーを繰り返すのです。
忙しい日々の中で忘れてしまいがちな「あなたの笑顔が大好きよ」と言う気持ち。また今日も、愛ブヒの幸せを目指した散歩をしていきましょう!
愛ブヒが「うちのオーナーの散歩は、最高だぜ!」なんて笑顔になってくれたら、最高に嬉しいですよね。
こんなときは専門科に相談
お散歩の問題は、オーナーさんだけでの解決が難しいこともたくさんあります。
「引っ張れば慣れていくはず!」なんて作戦は逆効果。
「犬はみんな、散歩が好き」という先入観も、オーナーさんと愛ブヒの絆を壊してしまいかねません。
どうか一人で悩まないでください。愛ブヒの笑顔を守るために、獣医さんやプロのドッグトレーナーに相談しましょう。皆さんを支えるプロは身近にたくさんいます。
ドッグトレーナーに依頼をする場合も、そのトレーナーが行動修正の豊富な経験を持っているか、学術的、科学的知識をもって動物福祉と動物への倫理に基づいた指導を安全に行える人材かどうか、オーナーさんが確認をするようにしましょう。
PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純
PERRO株式会社 代表取締役
SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純
米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー
日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。
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