【大切なこと】近年若くして旅立つフレブルが増えている現実と向き合う〜交配や体格について〜
実は昨今、わずか3歳や4歳という若さで突然虹の橋を渡ってしまうフレンチブルドッグが増えています。よちよちのパピー期を過ぎてオーナーさんとのコミュニケーションも覚え、さあこれから! という時に突如として失われた命。どうして、なんで? と涙に暮れるけれど、そのことについてFrench Bulldog Lifeなりに調査し、考えられる理由をまとめてみました。是非ともフレブルラバーである皆様にお伝えすべきだと思ったのです。
目次
- 知っておきたい交配のこと
- 犬だって同じ。「近親交配」が招いてしまうこと
- “流行り”によって翻弄されるフレブルたち
- 答えは血統書に中にある
- 迎える前にブリーダーに確認したいこと
- 尊い命。だからこそ、どんな子でも最後まで
- おわりに
目次
知っておきたい交配のこと
みなさんは「近親相姦」と聞いて何を思うでしょうか。
冒頭からいきなり過激なワードを記すことをお許しください。
でも、この言葉を耳にした多くの人は、「タブー」というイメージが思い浮かぶはずです。
タブーであるということは、そこに何か“えも言われぬ悪いこと”が含まれているように感じますよね。
その通り、近親相姦は倫理に反する以外に“互いの持つ劣勢遺伝子が子孫に発現する割合が高い”という科学的根拠があるからです。
意外と知らない「遺伝子」について
劣性遺伝子の反対は優性遺伝子と呼ばれるのですが、まず遺伝子の話をしましょう。
子孫を残すには父と母が必要だけど、その子供には父母それぞれの「より強い」遺伝子が受け継がれます。
この強く現れる遺伝子を優性遺伝子と呼ぶのだけれど、実は優勢と劣勢は呼び名の分類上のことで、実際に優劣を示すものではありません。
ただ、血が濃くなるにつれて似た遺伝子が凝縮されることから、双方の持病が子孫に受け継がれる率も高くなります。
それゆえ奇形や先天的な病を持つ子が増えるため、近親相姦は長年様々な国においてタブーとされてきました。
犬だって同じ。「近親交配」が招いてしまうこと
これは犬界でも同じで、血の近いもの同士を掛け合わせることを犬の場合は「近親交配」と言います。
さて、いわゆる「〇〇犬」と呼ばれる犬種は血統書を持っていますが、血統書とはその犬種の純血種であることを意味します。
純血種でない犬はミックス(雑種)と呼ばれることは皆様ご存知でしょう。
ある犬種がその犬種らしい特徴を継ぐためには、代々同じ特徴を残すために“選択的に交配を繰り返す必要がある”のです。
ただ、それは犬種を守ると同時に、正しく交配しなければ自然摂理に反する場合もあることを知っておいてください。
“流行り”によって翻弄されるフレブルたち
さて「それがフレンチブルドッグとどんな関係があるの?」と思う方がいるかもしれません。
実は最初に述べた「若くしての突然死や遺伝的病気」の多くが、近親交配を含む無理な交配から生まれている可能性が高いと考えられるのです。
フレンチブルドッグは人気犬種ですが、中でもとりわけ欲される毛色があるのも事実。
例えば過去には白黒のパイドが人気だったように、現在はクリームやフォーンが大人気。
人気があるから高い値段がつき、それを目的に特定の毛色が出るように繁殖する業者が後を絶ちません。
フレブルの交配に“適さない”毛色とは
ただ、フレンチブルドッグには交配に適さない毛色があります。
答えを先に言うと、それはブリンドル(黒色)を“掛け合わせない”交配。
例えばクリーム×クリーム、フォーン×クリームなどが該当します。
なぜこういった組み合わせが適さないかといえば、内臓疾患や先天性疾患を持つ子孫が生まれてくる可能性が高いから。
フレブルはブリンドルを掛け合わせることで色素の強い健康な子が誕生します。
そういったセオリーがあるにも関わらず、色素の薄い子同士を交配させる理由。
それは人気のクリームやホワイトといった色素の薄い仔犬が産まれる確率が上がるからです。
“めずらしい毛色”にも要注意
それ以外にも、めずらしい毛色の子を誕生させ、高い価格で販売する業者もいます。
現在JKC(ジャパン・ケネル・クラブ)で認められている毛色は「ブリンドル(黒)、パイド(白黒)、クリーム(白)、フォーン(茶)」の4種類。
近年日本のペットショップでも、ブルーフォーンと呼ばれる青みがかった灰色の子や、体にブチ模様が出ている子を100万円以上で販売しているケースが増えてきました。
店員さんは「めずらしいですよ」と勧めてくるかもしれませんが、そこには理由があることを忘れないようにしてください。
そして、JKCが認めている毛色以外はできる限り選択しないようにするのも大切なことです。
“絶対に”ブリンドルを掛け合わさない交配がダメというわけではない
あえて色素の薄い毛色を作り出すために、本来必須であるはずのブリンドルを交配から外したブリーディングが行われてしまう…。
その結果、生まれながらに体の弱いフレブルが誕生しているという事実は見逃すことができません。
ただ、絶対にブリンドルを掛け合わさない交配はダメなのかと言えば、そういうわけでもありません。
理想は父母のいずれかにブリンドルがいることですが、何代かに1度はブリンドルを含まない交配を行なっても問題はないと考えられています。
父母にブリンドルがいなくても、その祖父母にブリンドルがいればそんなに心配する必要はないと言えます。
ではどうやってそれを調べれば良いのでしょう。
答えは血統書に中にある
フレブルオーナーの皆様は血統書をお持ちだと思います。
でも内容をよく見ずにしまいこんだきりの人も多いはず。
しかし血統書には、愛ブヒにとって見逃せない情報が記されているのです。
そこで、あるフレンチブルドッグの血統書を見てみることに。
※オーナーの了承を得た上で、一部の情報のみ公開しています
これはJKCが発行したもので、記されている内容は下記。
最上部:愛ブヒの登録名
左側 :父と母、および祖父母の情報(登録名や毛色など)
右側 :曾祖父母の情報(登録名や毛色など)
上記の場合、父はパイド(PD)/母はクリーム(CR)とあまり好ましいとは言えません。
しかし、祖父および曽祖父母にはブリンドル(BRDL)がいることから、極めて悪質なわけではないとも考えられます。
注目すべきは毛色の項目
ここで注目してほしいのが、毛色の項目です。
ブリンドルは「BRDL」クリームは「CR」、パイドは「PD」、ホワイトは「WH」などと記載されています。
ここからどんな毛色の子同士を交配させたのかが3代前まで遡って分かる仕組みになっているのです。
これを見れば愛ブヒの先祖がブリンドルを加えて交配されたかどうかが一目瞭然で、それによってブリーダーさんの真意も汲み取れるというわけ。
もし曾祖父母の代まで確認してもブリンドルの表記がない場合、残念だけれどそのブリーダーは良心的とは言えません。
また、親犬に遺伝性疾患があればその子孫にも同様の病気が遺伝する可能性があるため、交配する際は両親のどちらも遺伝病の原因遺伝子を持たないことが重要です。
良いブリーダーさんはそういったことを含めて交配を行うけれど、中には人気の毛色を作り出して高く売れれば犬の健康は二の次だという業者だって、いなくはない。
これはとても悲しく悔しいことですが、私たちオーナー側が交配について知り、フレブルを迎える際にどんな毛色同士を交配させたのか、遺伝性疾患はないかをしっかり業者に確認することも大切。
「健康な仔犬を産ませる意識に欠けた業者からは迎えない」という意思を持つこと。
これが結果的に短命で病気がちなフレブルや悲しむオーナーさんを減らすことに繋がるのです。
血統書の改ざんにも要注意
悲しいことに、中には血統書を改ざんする者がいるのも事実です。
JKCの公式サイトにも『カラーコピー等を用いて改ざんされた血統証明書が流通する事案が発生しています。血統証明書を取得した際は、次の丸い各ロゴが金箔になっているかどうか等、その真贋(しんがん)についてご確認ください。』
と記した上で、正しい血統書の見方として以下を参考にするよう書かれています。
----------
左上:FEDERATION CYNOLOGIQUE INTERNATIONALE
右上:ASIA,AFRICA & OCEANIA SECTION
※ただし、2019年以前発行分は「ASIA KENNEL UNION」
左下:一般社団法人ジャパンケネルクラブ
----------
2020年9月30日時点で、正式な血統書のデザインは以下の通りです。
▼3代祖血統証明書
▼4代祖血統証明書
迎える前にブリーダーに確認したいこと
子犬を迎えるときは、ペットショップではなくできる限りブリーダーから迎えることをお勧めします。
それは、直接ブリーディングに関わっているからこそ、細かい情報を聞き出せるため。
・ブリンドルを含む交配が行われているか
・父母、祖父母に遺伝的疾患はないか
・兄弟の体調はどうなのか
など
気になる子犬がいたら、実際にその子を生んだ父母に会わせてもらうのも大切なこと。
優良なブリーダーさんは、お願いすれば会わせてくれる可能性が高いです。
気になることがあったら、どんなに些細なことでも良いので確認するようにしましょう。
また、保護犬から迎える選択肢も考えていただけると嬉しく思います。
尊い命。だからこそ、どんな子でも最後まで
ペットショップでは、毛色同様に体のサイズを売りにしている業者を見かけます。
「極小」「ミニサイズ」などなど、フレブルに限らず“小さいから飼いやすいですよ、可愛いですよ”といった売り方がなされているのを見るにつけ不安を覚えるのです。
フレンチブルドッグは体格の幅が広い犬種ですが、あえて小さな個体を作出しようと小ぶりのフレブル同士を交配することは珍しくなく、それもまた体の弱い仔犬が生まれる一因。
生き物なので兄弟でも小さい子と大きい子がいるのは当然ですが、あえて小ささを魅力として謳い文句にしている業者ならば、やはり信頼はできないでしょう。
またフレンチブルドッグは、もともと体が強い犬種ではありません。
すでにフレンチブルドッグと暮らしている方もこれから迎える方も、どんなに注意していてもトラブルを起こす可能性は十分にあり得ます。
そこで伝えたいのは、「必ず最後まで面倒をみてほしい」ということ。
どんな子であれ、この世に生まれた尊い命であり、あなたの大切な家族なのですから。
そして、もしあなたの周りにこれからフレンチブルドッグを迎えようとしている方がいるなら、ぜひこれらの事を伝えてあげてください。
世界中のみんなが幸せなフレブルライフをおくるために、私たちオーナーだからこそできることもたくさんあると思うのです。
おわりに
愛ブヒの血統書を見直し、無理な交配が行われていたと知って衝撃を受けているオーナーさんもおられるかもしれません。
でも手遅れではありません。なぜなら備えられるから。
どんなに健康なフレブルも病気のリスクはありますが、もしうちの子はそういうリスクが高いと前もって知っていれば、健康診断の回数を増やしたり獣医さんに先天性疾患の可能性を告げて予防法を学ぶなど、先回りして予防できます。
そしてフレブルオーナーが交配や遺伝疾患について知ることで、今後無理なブリーディングをする業者は淘汰されていくはず。
好みの毛色やスタイルはあれども、どの子もみんな美しい。
だから彼らの自然な美しさを守るために、まず私たちが正しい知識と良い業者を見分ける審美眼を持っていたいですね。
文:横田愛子
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