2020年10月17日9,141 View

「2頭目を迎えるなら、先住犬と会わせて相性を確かめよう」はウソ?ホント?多頭飼いにまつわる噂・謎に対してプロが回答!【Vol.4】

愛ブヒを本当の意味で幸せにするには、オーナーがつねに犬の気持ちに寄り添い、信頼関係をしっかり築くことが何より大切です。
そこで、国際的なドッグトレーナーのライセンスを取得している大久保羽純さんに、“愛ブヒから信頼される方法”を学ぶこの特集。

今回は、“多頭飼いにまつわる都市伝説や噂”について、その真偽を解説するシリーズの第三弾です!

今よりももっと素敵な愛ブヒオーナーになるために、正しい情報を学びましょう。

フレンチブルドッグ,しつけ

2頭目を迎えるとき、先住ブヒとの相性を見るために事前に会わせるのは有効?

フレンチブルドッグ

Jagodka/shutterstock

 

今回の都市伝説は、「子犬を迎えるときに、先住ブヒとの相性を見るためにブリーダーさんのところで会わせるほうがいい」というもの。

 

これもよく聞く話ですが、みなさんはどう思われますか? 

 

この疑問には、以下の2つの要素が含まれています。

 

(1)先住ブヒと子犬の相性を見ることって出来るの? 

(2)子犬と先住ブヒをブリーダーさんのところで会わせるのは有効? 

 

いっぺんに考えるとこじれてしまうので、1つずつ分解して考えてみましょう。

 

(1)先住ブヒと子犬の相性を見ることことって出来るの?

 

結論から言うと、これは難しいかも知れません。

 

ペットショップで「おとなしい犬ですよ〜」なんて言われて迎えた子犬が、一週間もすると激変して大暴れ。

 

「この犬、全然おとなしくないじゃん!(泣)」と家族が叫ぶのは、よくある話ですよね。

 

子犬の性格、行動なんて未知数です。未来を先読みすることなんて誰にも出来ないのです。

 

たとえ先住ブヒが、少しの時間子犬との交流を楽しんでいるように見えても、いざ子犬が家に入ってきたり、長い時間一緒にいたら、トラブルが起きる可能性は十分にあります。

 

要するに、一瞬、相性が良さそうに見えても、その後どうなるかはわかりません。

 

そのため、子犬との相性よりも子犬に対面した時の先住ブヒの様子を観察することがとても大切です。

 

先住ブヒが、もともと他の犬が苦手だったり、子犬を会わせたときに大きなストレスを感じているようであれば、子犬を迎えること自体を考え直したり、先住ブヒを子犬に慣らすための入念な計画を練る必要があるでしょう。

 

性格とか相性は、あくまで人間の思い込み。オーナーさんの感覚をあてにするのはギャンブルです。

 

多頭飼いをする際に大切なのは、この3つ。

 

・先住ブヒが子犬にどう反応するのかを見ること。

・先住ブヒが子犬に慣れる時間を十分に設けること。

・子犬を迎えてから、オーナーさんが先住ブヒと子犬の関係づくりをしていくこと。

 

犬同士をちょっと会わせてみただけで、今後を判断することはできないのです

 

(2)子犬と先住ブヒをブリーダーさんのところで会わせるのは有効? 

フレンチブルドッグ

dasjimen/shutterstock

 

ここまで読んでいただいた方なら、「いきなり子犬を家に連れ帰って、先住犬を驚かせるのは良くなさそう…」と思いますよね? はい、その通り! 

 

まずは家以外の場所で事前に会い、子犬に慣れさせましょう。

 

ただし、それが“ブリーダーさんのところ”である必要はありません。

 

大切なのは、先住ブヒが安心出来ること。

 

先住ブヒにとって完全にアウェイな場所だと緊張するでしょう。

 

逆に、自宅など先住ブヒにとってホームグラウンドだと、よそ者への警戒心が高まってしまうかも知れません。

 

そこで例えば、ブリーダーさんの家の庭に遊びに行き、先住ブヒがその庭に慣れて安心できたら、子犬と会わせるのもおすすめ。

 

海外では、人がいないテニスコートで会わせたり、友人の家の庭を借りて会わせたりと、先住ブヒが快適に感じる場所をチョイスします。

 

もちろん、子犬側にとって安心、安全な場所を選ぶことも重要。

 

開放的で、犬が自由に逃げたり隠れたり出来るスペースでなければいけません

 

でないと、もし先住ブヒや子犬が相手を嫌だと感じたときに距離を取れないからです。

 

とは言え、望ましい初対面のシチュエーションは犬たち次第。

 

オーナーさんは、先住ブヒの様子をよく見つつ、ブリーダーさんとも話し合いながら、みんなでチームとなってお見合いに取り組みましょう。

 

素敵なブリーダーさんなら、犬を大切に扱い、慎重に接したいと頑張るオーナーさんの姿を見たら応援してくれるはずです。

 

いいブリーダーさんであれば、子犬は“商品”ではなく、“大切な子供”。

 

子供を送り出すのに「面倒かけないで、さっさと子犬を連れ帰って!」なんて言うはずもなく、丁寧に子犬の様子を見てくれることでしょう。

 

親身に相談ができ、信頼できるブリーダーさんを探すことも、オーナーさんの役割なのです。

 

忘れないで! 新しい子犬を迎えたときの先住ブヒの立場

フレンチブルドッグ

Tienuskin/shutterstock

 

正しいお見合いの仕方を伝えましたが、その前に忘れてはいけない大切なことがあります。

 

それが、「そもそも先住ブヒにとって、新しく子犬を迎えるってどういうこと?」です。

 

オーナーさんにとっては、2頭目を迎えることは、楽しい未来が待っていると感じワクワクするでしょう。

 

しかし、忘れないで。ほとんどの先住ブヒが“はじめから歓迎するわけでは無い”ことを。

 

自分の状況に置き換えて考えてみましょう。

 

あなたの家に、見ず知らずの人間の3才児が、急に居座り始めたらどうですか?

 

混乱するでしょう? 

 

元気いっぱいな3才児は、あなたのスマホを奪って放り投げます。あなたのベッドをヨダレまみれにします。

 

無視をすると、今度はあなたの頭を叩き、大声を出して大騒ぎ。もちろん、注意しても聞きません。だって子供だもん。

 

家中を駆け回り、興奮はエスカレートする一方です。あなたの落ち着いた日常はどこへやら…。

 

どうですか? ほとんどの人が「なんなのこの子! 誰が勝手に連れてきたのよ!」と怒り心頭になるでしょう。

 

これが、子犬を迎えた時の先住ブヒの気持ちです。

 

もちろん、奇跡的に子犬が大好きな先住ブヒであれば、喜んで育児を楽しむかも知れませんが……。根拠のないことを期待しても、仕方がありません。

 

新しく子犬を迎えたいのは誰ですか? そうです、オーナーさんです。

 

よく、オーナーさんから「うちの子がお友達を欲しがっているから……」なんて声も聞きますが、私は長いこと犬の仕事をする中で、いまだに犬がそう言っているのを聞いたことはありません(汗)。

 

先住ブヒは、小さな怪獣のような子犬が家に侵入してくることと、自分の生活を脅かすことに、ストレスを感じて当然なのです。

 

子犬はまだ、犬同士のコミュニケーションがわかりません。力の加減も、相手が出す「やめて!」のサインも知りません。

 

たとえ、先住ブヒが「しつこい! もう、やだよ!」と唸っても通じません。

 

そんな状況でオーナーさんが犬同士を放置すれば、成犬は、無礼な振る舞いの子犬に大きなストレスを感じ、怪我をさせるほどの攻撃をする可能性だって十分にあります。

 

そうなってしまったとき、悪いのは先住ブヒでも子犬でもありませんよね。

 

困惑する先住ブヒを放置し、子犬を傷つけたのは、オーナーさんの責任です。それは家族全員にとって悲しいことですね。

 

大切なのは、常にオーナーさんが犬の間に介入すること

フレンチブルドッグ

Ivonne Wierink/shutterstock_

 

そうならないために、新しく犬を迎えた際、最もやってはいけないことは“犬任せにして放置する”こと。

 

動物同士ですから、暴力もやむなし。追い詰められたら、自分を守るために子犬に怪我をさせることだってあるのです。

 

だからこそ多頭飼育では、子犬を迎えたときの数ヶ月だけでなく、生涯にわたって犬の間へオーナーさんが介入することが必須。

 

そうでないと、犬同士の体格差や力関係などで、どちらかがご飯を取られてしまったり、おもちゃを奪われてしまったり、寝床から追い出されてしまったりするでしょう。

 

そして大きな喧嘩に発展します。

 

「平等に分け合いなさい!」とか、「先住ブヒを敬いなさい!」とか、そんな高等なことは求めないでくださいね。

 

犬にはそんなルールはありません。

 

そもそもそれは、人間同士だって難しいことなのですから。

 

犬同士に任せるフリをして放置をするのではなく、つねにオーナーさんが介入して、どちらの犬も安心出来る生活を守ってください。

 

イメージとしては、同居するお姑さんとお嫁さんに間に、いつも旦那さんが入るようなもの。

 

嫁姑トラブルが起きる前に間に入り、みんなが仲良く暮らせるようにコーディネートするわけです。

 

当人同士を直接やり合わせて決着を着けさせるなんてもってのほか。溝が深まるだけですよ。

 

犬同士が仲良く出来るかどうかは、オーナーさんのコーディネート次第なのです。

 

こんなときは専門家に相談

フレンチブルドッグ

oriental/shutterstock

 

新しく子犬を迎えてから、犬同士が“多少でも”慣れ始めるまでには、少なくとも1〜2ヶ月はかかります。

 

さらに、子犬の生活環境を整えてトレーニングをしていくには、半年以上がかかります。

 

このときに、どうぞ一人で悩まずに、獣医さんやドッグトレーナーなどの専門家にご相談ください。

 

問題がこじれてからではなく、子犬を迎えてすぐ、予防的にプロのサポートを受けることをおすすめします。皆さんを支えるプロは身近にたくさんいます。

 

ドッグトレーナーに依頼をする場合も、そのトレーナーが行動修正の豊富な経験を持っているか、学術的、科学的知識をもって動物福祉と動物への倫理に基づいた指導を安全に行える人材かどうか、オーナーさんが選抜をするようにしましょう。

 

愛ブヒ研究は一生続きます!

フレンチブルドッグ

Irina Kozorog/shutterstock

 

新しく子犬を迎えるために大切なポイントをお伝えしましたが、人間同様、ブヒたちにだって「こうすれば絶対に成功する!」なんてマニュアルはありません。

 

愛ブヒごとに、そのお家の状況ごとに、好ましい環境設定は異なります。

 

だからこそ、時には失敗もします。

 

それを繰り返さないよう、失敗から学び、愛ブヒにとって好ましい環境を一生かけて模索していってください。

 

愛ブヒの笑顔が輝く環境をセッティング出来るのは、オーナーさんだけですから! 

 

どうか、愛ブヒの様子をよく観察して、愛ブヒの心を最優先する、今の優しい気持ちを持ち続けてくださいね。

 

PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純

PERRO株式会社 代表取締役 
SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純

米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー

日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。

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