2020年11月9日6,880 View

【保護犬を迎えたい人へ】里親になるために…家族みんなでやるべき「事前準備」とは

国際的なドッグトレーナーライセンスを取得している大久保羽純さんに、愛ブヒと固い信頼関係を築く方法を学ぶのがこの特集です。

最近では、犬を迎える時、保護犬を第一選択肢に選ぶ人も増えてきました。そこで今回では、これから保護犬を迎えたいと思っている人、すでに保護犬と一緒に暮らし始めた人に向けて、保護犬と暮らして8年になる大久保さん自身のエピソードを混じえながら、迎えるための準備や心構えについて教えていただきます。

フレンチブルドッグ,しつけ

保護犬をお迎えする前に、家族で準備すること

保護犬シェルター

hedgehog94/shutterstock

 

我が家のかけがえのない家族である、元保護犬の女の子、ぺろちゃん。

 

繁殖業者の夜逃げで放棄された推定2歳のぺろちゃんは、我が家に来て推定10歳になりました。

 

今でこそツーカーの仲で最高のパートナーであるぺろちゃんですが、ここまでにはいろいろな事がありました。

 

私はドッグトレーナー、犬の仕事をしているプロです。

 

「プロなら、どんな犬でも簡単に手なずけちゃうんだろな♪」なんてイメージされる方もいるかも知れませんが、そんなことは決してありません。私も皆さんと同じ。

 

愛犬から信頼してもらうためには、やっつけ仕事じゃダメ。

 

長い時間をかけて、愛犬のための事前準備をして、愛犬のことを学び続ける必要があります。

 

そして保護犬に安心して暮らしてもらえるよう、すべての家族が、迎える前に入念な準備をすることが超重要なのです!

 

それでは早速、我が家が行った事前準備の中のいくつかをお話しましょう。

 

やったことその(1) 余裕のある時間づくり

フレンチブルドッグ,トレーニング

Irina Kozorog/shutterstock

 

まず我が家では、保護犬を迎える以前に時間の余裕を作ることから始めました。

 

我が家は夫婦2人暮らしでフルタイムの共働きでしたが、保護犬の様子次第で対応ができるように、私がまず半年間、仕事をセーブしました。

 

◼やってみてどうだったか? 

これは大変意味のあることでした。

 

現代人が犬のトレーニングや、暮らし方で悩む問題の多くは、忙しくて時間が足りない焦りやストレスから来ています。

 

保護犬の場合、過去にどう生きてきたのか、どんな子なのかもわかりませんから、どれくらい時間がかかるのかも読めません。

 

まず人間がゆとりを作り、自分にも愛犬にも余裕を持って行動できる環境は非常に重要でした。

 

保護犬に限らず、犬と暮らすなら毎日最低4時間以上は犬のためだけに使う時間が必要になります。

 

散歩、ボディケア、遊び、ご飯、お掃除など、犬にかかる時間はたくさん。持病があれば、通院の時間も馬鹿になりません。

 

さらに、新しく犬を迎えたての頃なら、もっと時間が必要です。

 

慣れない環境で体調を壊したり、トイレの練習をしたり、お散歩の練習だって、オーナーさんとワンちゃんのペアで1から練習することに。

 

1日4時間どころか、どれだけあっても足りないくらいです。

 

これは保護犬に限ったことではなく、新しく犬を迎えたなら少なくとも半年〜1年は、新しい暮らしに慣れるための時間が必要です。

 

オーナーさんが忙しいとお世話が苦痛になりかねないので、犬を迎える前には家族みんなで“どれくらいの時間を犬に用意できるのか”を話し合っておく必要があるでしょう。

 

やったことその(2) 家の環境を整える

フレンチブルドッグ

Irina Kozorog/shutterstock

 

これも子犬を迎えるときと同じですが、保護犬の場合も犬の届くところに物を置かないよう、インテリアなどを変更すべきです。

 

なぜなら、どんな犬を家に迎えるのかわかりません。そこで我が家でも、口に入れたら危険なもの、壊されたくないものは徹底的に片付けました。

 

気合を入れて犬グッズも揃えました。

 

◼やってみてどうだったか?

家具のレイアウト変更は、事前にやっておいてよかったです。

 

そうすることで、家の中で保護犬の行動を制御すること無く、安心して家中を散策してもらえました。

 

「ここがあなたの新しいお家ですよ。どうぞ安心できるまで、ご自由に探索してくださいね」というイメージです。

 

ちなみに、「以前飼っていた犬はイタズラしなかったの」という方は要注意!

 

初めは大人しかった犬たちも、家の環境に慣れてくれば、どんどん好奇心を持って遊び始めますよ。

 

物を口に入れたり、かじったりしたときに叱るなんて不毛なことはせずに、事前に片付けておきましょう。

 

また、家の中の環境設定で、脱走への対策は超重要です! 保護犬は、なにかあればドアの隙間や窓から脱走することがあります。

 

そして2度と戻って来られないこともあります。絶対に脱走させないように、玄関にゲートを設置するなど、事前に対策を。

 

ちなみに、買い込んだ犬グッズは半分くらいは無駄になりました。

 

「このオヤツ好きかな?」「こんなおもちゃ好きかな?」と勝手なイメージで購入してみましたが、半分くらいは愛犬の心に響かず…。

 

そりゃそうですよね、まだお互いのことをよく知らないわけですから。

 

生活に必要なもの(サークル、クレート、リード、ハーネス、食べ物など)は事前に準備して、それ以外のものは、保護団体さんからその犬の趣向などアドバイスを貰いつつ、随時準備してもいいかも知れません。

 

やったことその(3) 保護団体さんを探す

シェルター,保護犬

Adil Celebiyev StokPhoto/shutterstock

 

我が家は、民間の保護団体さんから保護犬を譲渡してもらいました。

 

いくつかの譲渡会や、ネットでの保護犬情報も見て、比較をしながら信頼できる保護団体さんと連絡を取りました。

 

「この子を迎えたい」と思う候補の子が決まってからは、団体と面接がありました。

 

我が家の家庭環境や、家族関係、住まいのこと、プライベートなさまざまなこと伝え、無事に面接に通ってから、愛犬が我が家にやって来ることになったのです。

 

◼やってみてどうだったか?

ドキドキしながら面接を受けました。合格をもらうまでには、我が家の不十分な家の中の環境を改善したり、団体さんにアドバイスを貰い、家族会議を開いたりもしました。

 

そうやって十分に犬を迎える環境が整ってから、愛犬が家に来てくれました。

 

面接や譲渡の時間を通し、団体スタッフさんの「今まで散々苦労をしたこのワンちゃんに、これからは絶対に幸せになってもらいたい!」という熱意をひしひしと感じたのを覚えています。

 

保護犬だと「すぐに譲渡してもらえる」と思う方もいるかも知れません。しかし、そんな事はありません。

 

ペットショップならお金を払えばすぐ犬を渡してくれますが、保護犬はほとんどの場合、譲渡の前に面接やトライアル(保護犬を数週間におうちに招いて、家族や先住ペットと相性を見る期間)があります。

 

面接で落ちることだってあります。

 

イメージとしては、保護団体さんが親。保護犬が子供。

 

そして皆さんが「お嬢さん(保護犬)を僕にください。絶対に幸せにしますから!」とお願いする感じでしょうか。

 

ちなみに、保護団体でなくとも、ちゃんとしたブリーダーさんであれば、子犬を譲ってもらうのに面接をされることは珍しくありません。

 

「金を払えばいい」ではなく、「その犬を幸せにできる状況を整えた家族だけが、犬を譲ってもらえる」というわけです。

 

譲る側も、譲られる側も、犬のために真剣! これって素敵な話じゃありませんか? 

 

フレンチブルドッグ

DuxX/shutterstock

 

ちなみに、保護団体ごとに面接やトライアルの基準は異なります。

 

民間運営ですから、その団体ごとの方針があり、どんな基準を満たせば犬の譲渡が成立するのかは一概には言えません。

 

人間がどんなに望んでも、迎えたい保護犬とうまくマッチングしない時もあります。

 

とはいえ、面接やトライアルは、決して保護犬を迎えようというご家族様を邪魔しようというものではありません。

 

ご家族様とその保護犬が、お互い無理なく、気持ちよく暮らしていけるかどうかを、みんなで判断するための大切な時間なのです。

 

今はネットの情報や、各地域での譲渡会など、さまざまな場所で保護犬と出会うことが出来ます。行政でも、保護犬の譲渡がされています。

 

出会いの場はたくさんあります。どうぞあせらずに、半年から1年をかけて、じっくり人生のパートナーを探していきましょう。

 

我が家も保護犬を迎えようと決めて、実際に迎えるまでに約1年がかかっています。

 

PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純

PERRO株式会社 代表取締役 
SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純

米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー

日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。

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