【取材】両目の光を失っても生きる気力は失わない15歳!実姉と奇跡のめぐり逢いで笑顔だらけのブヒ人生に。 #32パフ
10歳を超えても元気なブヒを、憧れと敬意を込めて“レジェンドブヒ”と呼んでいるFrench Bulldog life。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドブヒの肖像』です。
今回は15歳の女の子、パフちゃんの登場です。両目を失明してもなお、生き生きと生きるパフちゃん。その長生きの秘訣は、奇跡的に巡りあえた実の姉ブヒとのストレスフリーで楽しい生活と、パフちゃんのことを楽しませたい、喜ばせたいと願う家族の大きな愛でした。
パフちゃんのプロフィール
年齢&性別
15歳の女の子
体重
11kg
大好きなこと
散歩、人になでてもらうこと!
既往歴
・14歳で血便が出て病院へ。診断は急性腸炎。右目が緑内障になり、点眼治療開始。
・15歳で左目も緑内障になり、視力を失ってしまう。
がっしりボディで病気知らず
手足が大きく、がっしりした体付きで、何とケガも病気もほとんどなかったというパフちゃん。
犬より人が好きで、なでてもらうのが大好きな可愛い女の子です。
オーナーの柳さんと出会ったのは5歳の頃で、元々はご主人や、2018年に亡くなってしまったお姉さんフレブルのイヴちゃんと一緒に暮らしていました。
「パフとは、主人と結婚したことで一緒に暮らし始めたのですが、すぐに懐いてくれて、あまり抵抗はなかったみたいです。私が掃除好きなので、むしろ皮膚の調子が良くなったくらいで(笑)」
小さい頃に少しアトピーがあったそうですが、柳さんとの良い出会いもあって、ますます健康で元気になっていったようです。
「去年から目が悪くなったり、急性腸炎になったりということはありましたが、それ以外はほぼ何もなく健康で、手の掛からない子でした。
性格は活発でしたが、怒ったり吠えたりはしません。イヴはときどきそういうこともありましたが」
性格は少し違っても、大の仲良しだったというイヴちゃん。
パフちゃんより1歳上なので、お姉さんとして暮らしていたそうですが⋯。
「いつもどこかが引っ付いている感じで、互いを労るような仕草もありました。
お留守番のときも独りぼっちじゃないし、とても良い姉妹になってくれたなぁ、なんて嬉しく思っていたんですが…。
なんと血の繋がった実の姉妹だったことに、パフが10歳の頃に気づいたんです!
同じお店から迎えた子ではあったんですけど、ブリーダーさんが違う人だったので気付かなくて。
ある日たまたま血統書を見てたら、ええ〜! って(笑)」
お店の方もご主人も、細かいことに拘らないタイプだったんですね。
まさかの出来事でしたが、パフちゃんたちはきっと「妹だ!」「お姉ちゃんだ!」とすぐに分かって、運命的な再会を喜んだことでしょう。
いつもフリーでストレス知らず
お話から自由な家風が伝わってくる柳さんファミリーですが、パフちゃんへの接し方も、自由がキーワードでした。
「とにかく自由に、好きなようにさせてきました。ケージにも入れたことがなく、ご飯の時間も決めていません。
大好きな散歩も、健康のために毎日必ず行く! とかではなく、パフが行きたくなさそうなときは行かないようにしています。
しつけもあまりしてなくて、トイレくらいですね。
何か覚えたり頑張ったりするのを期待し過ぎず、ストレスフリーで暮らしてほしいと思っていたので」
もちろん、お世話する柳さんの方は色々と気を付けています。
フードは仔犬期からずっと同じ『ブラックウッド』に、ブロッコリーやキュウリ、卵の白身など、体に良さそうなものも少しプラス。
おやつはできるだけ無添加系で、飲み水も人間用のピュアウォーターをあげています。
特に水は、現在の健康に繋がったという実感があるそうです。
また、ご夫婦とも自由業なので、できるだけ時間を融通して、パフちゃん・イヴちゃんと一緒に過ごすことを心掛けてこられました。
愛犬のストレスフリーな笑顔は、オーナーさんの楽しくも一所懸命なお世話の賜物。そう思うと、どの笑顔も一層貴重なものに感じられますね。
目が見えなくなっても
昨年末の右目に続き、今年の夏には左目も緑内障になってしまい、目が見えなくなってしまったパフちゃん。ですが、柳さんも本人もポジティブです。
「水も自分で飲みますし、ご飯も自力で食べます。それに散歩も行くんですよ。
最初は恐る恐るという感じでしたが、今では割と平気でズンズン行きます」
大好きだった散歩に行けなくなるのは可哀想と、近場から少しずつ散歩に連れ出してみたそうです。
すると結果は大成功。すぐに喜んで行くようになりました。
ぶつかりそうな物に気を付けたり、リードに常にテンションをかけて止まれるようにしたりと、注意することは増えましたが、パフちゃんの喜びには変えられません。
そして散歩以外にも、パフちゃんのために色々と工夫されています。
「目が見えなくなったときに、テーブルとイスは危ないので全部捨てました。
人の生活よりパフ優先ということで。私も主人も特にそういうのは気にならなくて(笑)」
人間よりも愛犬優先、という方も多いと思いますが、テーブルもイスも全部とは!
思い切りの良さに脱帽です。両方ないと中々大変ですよね⋯。
また、目が見えない犬のための「ドッグバンパー」も装着して、安全面はばっちり! …のはずだったのですが、実はパフちゃんには合わず、首が締め付けられて、飲食や呼吸が上手くできなくなってしまいました。
「最初は原因が分からなかったため、病院も2カ所まわって診察を受けたところ、内臓や気道には問題がなく、ドッグバンパーで首が締め付けられていたのが原因と分かりました。
この歳なので、このまま弱ってしまうのではと心配しましたが、食事を食べやすいウェットタイプに変えたりして、1カ月くらいでだいぶ快くなりました。驚異の回復力です(笑)」
柳さんは装着後の食べ方や飲み方をよく観察されていたので事なきを得ましたが、新しいことや環境には、十分気を付けてあげたいですね。
それにしてもこの回復力、驚きですね。
そしてもうひとつ驚いたのが、パフちゃんの鼻が、目が見えていた頃よりも利くようになったこと。
弱るどころかまだまだ行くぞ! という体の意気込みを感じます。
愛情たっぷりのお世話を受けて、奔放に生きてきたパフちゃん。
それだけでも十分、長生き体質に仕上がっていると思いますが、ほかにも長寿の秘訣がないか聞いてみました。
「元々丈夫で健康なのだと思いますが、やっぱりご飯とお水は大事だったように思います。パフもイヴも、ずっと同じものを与えてきたので。
それから普段のことでは、よく話しかけるようにしています。
目が見えていたときも見えなくなってからも、いつも話しかけています。
あと、なるべく一緒に居ることでしょうか。でもベタベタし過ぎると分離不安のようになってしまうので、さじ加減には気を付けていました」
このさじ加減は本当に難しいと思います。フレブルには「独りが大好き!」という子は少ないと思いますが、構い過ぎても、ストレスになってしまうケースがあるようです。
愛するが故、そして家族だからこその距離感は、きっと犬にも人間にも必要なのですね。
因みに、イヴちゃんもパフちゃんと同じく若いころから健康で、亡くなる前には大きな手術もありましたが、ほとんど手が掛からなかったそうです。
実の姉妹で、奇跡的に一緒に育った2頭。揃って健康、長寿なのも納得です。
イヴちゃんの方が先に亡くなってはしまいましたが、とても幸運で、幸せな犬生だったと思います。
足周りや口腔ケアも丁寧に
健康な生活に欠かせない、足腰や口腔のケアも心掛けてこられました。
「細かなことですが、足周りのケアは小さい頃からやっていました。
滑らないように肉球の間の毛を刈ったり、段差がある所には小さな犬用階段を付けたり。
それから人間用のベッドに上がることもあるので、高低差をなくすために足を外して使っていました」
どれも足腰の関節を守る効果がありそうですね。そのおかげか、フレブルに多いヘルニア等、関節系のトラブルもなかったそうです。
また、肉球の間の毛を刈った後にはワセリンで保湿するなど、本当に行き届いたケアをされています。
「それから、ここ最近は歯磨きと歯石取りも特に気を付けています。歯垢や歯石のケアに『REDENTA』を使ったり、歯石取りも自分たちでやっています」
口腔ケアは、レジェンドオーナーさんからも獣医さんからも、本当に良く聞く大事なケアです。
ただ、歯石取りは難しいと思いますので、慣れていない方はまず獣医さんに相談してください。
お互いにハッピーに!
そして、大事なことがもう一つありました。
「あとは、そうですね、好きなこと、喜んでくれることをしてあげることでしょうか。
イヴが居たころに一緒に海に連れて行ったりもしましたが、私にとっても良い思い出になりました」
そう振り返る柳さんの笑顔が印象的でした。
愛犬のためにしたことを、ご自分にとっても心から楽しく幸せだったと感じている、そんな様子が伝わってきます。
じつは今回の取材で、シニアや目が見えない子の参考になればと、大変なことや苦労されたことを色々伺ってみましたが、中々思い当たられず、だいぶ悩ませてしまいました。
今思えば、きっと聞き方が悪かったのですね。
「大変」や「苦労」ではなく、「思いやり」や「工夫」をお尋ねすれば、きっとすぐにお答えいただけたと思います。
パフちゃんは、視力を失ってもあまり気にしていないかのように、自力でご飯や水を摂り、散歩にも積極的で、とても前向きに暮らしています。
それはきっと、オーナーの柳さんが悲観的にならず、どうしたら今のパフちゃんが、そして自分たちも、楽しく暮らしていけるかを考える方だからだと思います。
愛犬との付き合い方や距離感を考えるとき、愛犬の気持ちになって考えることは大切ですが、自分がどう感じるか、愛犬とどんな暮らしをしていきたいかを考えることも、同じくらい大事なことではないでしょうか。
取材・文/橋本文平(メイドイン編集舎)
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