【取材】病気知らずの16歳!ケガで右目を失うも愛に支えられ自由を謳歌する日々 #39パンチ
10歳を超えても元気なブヒを、憧れと敬意を込めて“レジェンドブヒ”と呼んでいるFrench Bulldog life。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドブヒの肖像』です。
今回はなんと16歳にして、病気もなく元気に過ごすスーパーレジェンド、パンチちゃんが登場。出会った瞬間オーナーさんが「この子に決めた!」と思ったその理由が、16歳まで健やかに過ごせてきた理由のひとつかもしれません。
パンチちゃんプロフィール
年齢&性別
16歳の女の子
体重
12kg
大好きなこと
海で遊ぶこと、子どもと遊ぶこと、他人のボール、ダッシュ
既往歴
・3歳のとき交配を行なったが死産になってしまい、ダメージを受けた子宮を摘出。手術後はすぐに回復。
・14歳のとき同居犬アンちゃんとじゃれていたら右目に傷が入ってしまい、眼球を摘出するも、すぐに走れるまでに回復。
豪邸での出会い
愛するパグを13歳で亡くし、もう2度と犬を迎え入れることはないと思っていた、オーナーの播磨さん。
ところがそれから2年後。ネットで見かけたフレブルが心に留まり、情報を辿ってブリーダーさん宅へと向かいました。
「びっくりするほどの豪邸で、主人と帰ろうかと目を合わせたくらいです。
でも見せていただいた5頭の仔犬が、ヨダレが出る程可愛くて(笑)。
お腹がパンパンで元気な5頭を見て大事にされていると直感し、その中で一番大きい仔犬に、つい決めてしまいました。
決めた瞬間、“こんなに大事にされている仔犬、もっと大事にしないと!”と覚悟も湧きました」
50年近いキャリアを持つブリーダーさんなので、すぐに播磨さんの人柄を見抜いたのでしょう。
「この子を大事にしてくれる方なら」と、良心的な価格で譲ってくれたそうです。
豪邸やブリーダーさんのリッチな様子から、仔犬が高額なのではと心配された播磨さんもホッと一安心。
パンチちゃんはめでたく家族の一員になりました。
因みに、女の子には珍しい「パンチ」という名前は、目にパンチがあったことと、ご主人が野球好きで、漫画『タッチ』に出てくる犬の名前から付けられたそうです。
街でも海でも人気者
お子さんのいない播磨家で、子どものように育てられたパンチちゃん。
やんちゃが過ぎて家具を壊すこともありましたが、元気で何よりと自由に育てられました。
家族はいつも一緒が良いと、買い物や旅行だけでなく、会社にも連れて行っていたそう。
特にご夫妻の趣味であるサーフィンは、毎週末のお楽しみでした。
「毎週金曜と土曜は車で大阪から伊勢・鳥取・和歌山にサーフィンに行き、日曜は神戸で買い物というのが定番でした。
いつもパンチを連れていたのですが、外見に特徴があり、愛想も良い子だったので、どこに行っても声を掛けられました」
丸々した真っ白なショートボディで、尻尾のないお尻には黒いハートマーク。
そして愛想も忘れないパンチちゃんは、どこでも人気者だったそうです。
そんなパンチちゃんの可愛さにやられて、フレブルを家族に迎えたという知人もたくさんいらっしゃるそう! フレブル界への貢献は栄誉賞ものですね。
母としての悲しみ
愛情いっぱいにすくすくと育ったパンチちゃんですが、悲しい出来事にも見舞われます。
「3歳頃に、ブリーダーさんから“この子の血統は残さないと!”と勧められ、交配させることになりました。
交配後は安静にしないといけなかったんですが、やんちゃなパンチはすぐに飛び跳ねてしまいます。
心配はしていましたが、特に体調に変化はなさそうだったため、そのまま様子を見ていました。
それからしばらくたったある日、買い物中にパンチを抱いた主人の胸辺りが、血で真っ赤に染まっていたんです。
慌ててブリーダーさんに相談し、すぐに病院で手術しました。パンチのお腹で2頭の赤ちゃんが亡くなっていて、子宮にもダメージがあったため全摘出になりました。
3時間程の手術を終えて、もう大丈夫とは言われましたが、こんなになるまで気付けなかった私たちはオーナー失格だと思いました」
どれだけ気を配っていても、すべてのことに気付けるわけではありません。
それでもオーナー失格だと思う播磨さんの心持ちは、むしろオーナーさんとして尊いものだと思います。
ブリーダーさんにも励まされ、何とか立ち直った播磨さん。
「これまで以上にパンチを大事にしよう」と固く心に誓ったそうです。
一目惚れ再び
失意の播磨さんを元気にしたのは、やっぱり犬たちでした。
パンチちゃんはすぐに傷も癒え元どおり元気になりましたが、あるときから、大きな象のぬいぐるみをお腹に抱え込み、我が子を抱くような仕草をするようになったそうです。
それを見た播磨さんは涙が止まらず、「パンチに辛い思いをさせ、母の想いだけを残させてしまった」と後悔ばかりが胸に募ります。
そんなパンチちゃんをどうしてあげたら良いのか、ブリーダーさん宅に相談に訪れました。
すると、庭をヨチヨチと歩く小さなブルドッグが。
「母犬が出産時に亡くなってしまったそうで、足がうまく動かないためリハビリをしている子でした。
この子も丸々としていて、尻尾のないレッドのショートボディでした。
じっと見ていた主人が、“この子、連れて帰って良いですか?”と聞くと、ブリーダーさんは“脚が治ったら、播磨さんなら良いですよ”と言ってくださいました」
再びの一目惚れ。アンチョビと名付けられたこの子は、1カ月後に播磨家の一員になります。
パンチ嬢の憂鬱
アンチョビちゃんが来た当初は、“ガン無視”だったというパンチちゃん。
ですが、母親に甘えるように寄ってくるアンチョビちゃんに、パンチちゃんも態度が変わっていきます。
気づけば、お腹にぬいぐるみを抱える仕草もなくなっていました。
アンチョビちゃんは見る見る大きくなり、あっという間にパンチちゃんより大きく成長。
そして一緒に外を歩くようになるとまたパンチちゃんに変化が⋯。
「海でも街でもアンチョビに声が掛かることが増え、パンチのヤキモチが始まりました。
プライドの高いパンチは、アンチョビに声を掛ける人にはお尻を向け、横目で話は聞きながらも絶対に寄っていきません。
アンチョビを迎えたことで、パンチのプライドの高さや、結構執念深い性格だったことがよくわかりました(笑)」
どこに行っても「パンチ嬢」と特別扱いだったパンチちゃん。
娘のように可愛がるアンチョビちゃんでも、そこは譲れません。本当に可愛い性格をしていますね。
因みにアンチョビちゃんの性格はマイペースで、いつも外でのんびり寝そべっているそうです。
播磨家のごはん
この後、アンちゃんというもう1頭のお人好しなブルドッグが加わり、播磨家のブルズは3頭体勢になりました。
パンチちゃんがシニアになっても、アンチョビちゃんがまだまだ遊びたい盛りだったため、アンチョビちゃんが一緒に遊べる若い相棒として迎え入れたそうです。
そんな3頭の食事について伺いました。
「仔犬の頃から、『ロイヤルカナン』のドライフードを少しふやかして、茹でたささみやレバーを足し、食べるときは下向きにならないよう、みんな手で食べさせています。
ドライフードは数年前から低脂肪のものに変えました。
35kgまで増えたアンが、これで5kgのダイエットに成功したので、みんなこれに変えたんですよ。
おやつはブリーダーさんから勧められ『dbf(デビフ)』をあげていましたが、主治医からはおやつは良くないとも言われ、なるべくやらないようにしています。
ですが、ストレスになってもいけないので、ドライのささみや、レバー、いりこなどをあげています。それからサンマとパスタも好きです(笑)。
ささみは筋肉を作るのに良いと聞いてあげていましたが、主治医からパンチには胸肉が良いとのアドバイスがあり、半々であげています」
食事は全員、手で食べさせているだけでなく、パンチちゃんには10歳頃から、水を飲んだ後に抱っこしてトントンし、水が降りていきやすいようにしているそうです。
気道のトラブルが多いブルたちのために、飲み込みやすく、誤嚥などの予防にもなればと始めたそうですが、毎食3頭となると本当に大変な手間。愛情がなくてはできませんね。
それから、関節のケアにと、『アンチノール』や『コンドロフレックス225』といったサプリも与えているそうです。
我が家はドッグラン
食事と並んで大切な、住環境についても伺いました。
「パンチが6歳の頃、マンションの1階で、20畳程のベランダがあるところに引っ越しました。
主人が網戸に潜り戸を付け、リビングとベランダを自由に行き来できるように改造。
それからは365日、窓は開け放しで、網戸だけ閉めている状態です。
引っ越す前は週一でドッグランに行っていましたが、お家で毎日走り回れる環境になり、みんなストレスなく過ごせてきたと思います」
開放的過ぎてドロボウも来ません、と笑ってらっしゃいましたが、冬は部屋でもダウンを着て過ごされているとか。
愛犬のためなら笑顔で我慢! 素敵です。
このほか、パンチちゃんがシニアになってからは、関節ケアのためにお部屋も改造したんだそう。
「14歳の頃、主治医の勧めで、特に病気もなく元気でしたが一度大きな病院で検査してみることになりました。
結果は、体格や皮膚、歯に毛並み等、14歳とは思えないくらい良好と言われ嬉しかったのですが、関節にはやはりダメージがあるとのことで。
階段の上り下りや、飛んだり跳ねたりをよくやっていると、いつか歩けなくなるかもしれないと言われ、愕然としました」
そこで播磨さんは早速関節ケア用のサプリを買って帰り、ご主人がソファやベッドの脚を切って段差を低くしました。
それから、元々足腰のために部屋全体をクッションフロアにしていたのですが、さらにソファやベッド周りにはマットを敷き、低いスツールも設置。
おかげでどこでもあまりジャンプせずに上がれるようになったパンチちゃん、現在も足腰は達者で、まだまだ介護も不要なようです。
人がケアして、犬は自由に!
できるだけストレスがないよう、犬たちの自由に、と心掛けてきた播磨さん。あらためて、レジェンドの秘訣と犬たちへの想いを伺いました。
「ウチは子どももいないので、犬中心の暮らしをしてきました。これからも、なるべく走ったりはしゃいだりさせてあげたいです。
ケアは私たち人間がするから、パンチたちには好きなようにしていてほしい、今は特にそう思います。
それから秘訣とは違うかもしれませんが、ブリーダーさんから譲り受けたとき、お父さん犬やお母さん犬も見せてくれて、元気な子であることがしっかり伝わりました。
お腹がポンポンで目がキラキラして、本当に可愛かったんですよ⋯。
それまで血統には興味がありませんでしたが、どんな両親の子かを知ることは大事だと思いました」
野生ではなく、人間と共に暮らす環境だからこそ、犬たちが自分で自分のケアをすることは難しい。
ではどうするか、と考えたとき、大きなケガや病気をしないよう、犬の行動や暮らしを管理しよう、と思うのが一般的ではないでしょうか。
そしてそのとき、「この子のために良いことをしてあげている」と満足するのは当然ですし、それが悪いこととは思いません。
ですが、自分に置き換えてみると、自分の意思に関わらず「あなたのため」と行動を制限されたら、ストレスには感じてしまいそうです。
どちらが正解ということではないと思いますが、事もなげに「ケアは人間がするから、犬は自由に」と仰る播磨さんには、相当な想いと覚悟を感じました。
そして、最後の言葉にも考えさせられました。
どんな両親から生まれたのか、どれだけ大事な命として生まれてきたのか、迎える側もちゃんと共有して受け入れることができる。
これから生まれてくる仔犬たち、そして迎え入れる家族には、そんな幸せな関係が1組でも増えていくことを切に願います。
取材・文/橋本文平(メイドイン編集舎)
★「#レジェンドブヒ」で投稿お待ちしています!
フレンチブルドッグライフでは、取材にご協力頂けるレジェンドブヒを探しております!
10歳を超えたブヒたちは、「#レジェンドブヒ」をつけてInstagramに投稿してみてくださいね。
編集部から取材のお声がけをさせて頂くかも!?
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