「○回やったからもう大丈夫」は無い!正しい社会化のやり方とは 【社会化を学ぶ Vol.2】
国際的なドッグトレーナーライセンスを取得している大久保羽純さんに、愛ブヒを正しく守り、導き、固い信頼関係を築くための方法を学ぶこの特集。実はかなり多くのオーナーさんが勘違いをしている“社会化”について、正しい知識をシリーズでお伝えしています。ぜひVol.1から読んでみてくださいね。
目次
社会化ってどうやるの?

Southworks/shutterstock
今回は、社会化のやり方について『掃除機が苦手』なケースを例に紹介していきます。
ただし社会化のやり方は無限にありますから、あくまで例ということをお忘れなく。
重要なのは、オーナーさんが愛ブヒを引っ張っていき掃除機に近づけるのではなく、愛ブヒが自由に掃除機を調査できるような環境を整えることです。
(1)部屋の角に掃除機を置いて自由に調査させる
ただし置くだけで動かしませんよ! 愛ブヒは気が向いた時に自分のペースで掃除機に近づいたり離れたり匂いを嗅いだりするでしょう。
このときに良い経験を積めるように、大好きな食べ物を掃除機のまわりにバラ撒いておくといいですね。
(2)刺激を増やす
静止した掃除機に慣れてきたら(身体が緩んだ状態で掃除機のそばにいられるようになることが目安です)、掃除機を部屋の別の場所に置いてみたり、10cm程度動かしてみたり、数秒だけスイッチを入れてみたりと、刺激を増やしていきます。
このときも常に食べ物を周囲にばらまいておくと、食べることでの良い印象と社会化させたいものとの印象がセットになって◎。
食べ物を食べなかったり、身体に力が入っていたり、少しでも不快そうなサインが出たらストップして一休み。
動かす距離を縮めるなど、刺激を減らして再チャレンジです。
社会化は24時間起きている

Gorlov Alexander/shutterstock
あえて「コレ」と決めた物に対して社会化をしようとすると、先述のやり方のようなイメージになります。
しかし実は、社会化は日常そのものが大切です。
なぜなら子犬は、電話の音、オーナーさんの足音、近所の子供の声、触られる手など、毎秒毎秒なにかしらの刺激を受けているから。
24時間つねに社会化をしながら成長をしています。
子犬が電話の音に耳をピンと立てているのに気づいたら、「うちの子、電話の音を調査中だな! 良い印象を持ってもらおう」と、すぐにおいしい食べ物を床にばらまいて電話の音を流しておきましょう。
抱っこ散歩で小学校の前を通るとき、子供達の声に反応していたなら、おいしい物を食べさせながら校庭にいる子どもたちを眺めてみましょう。
日常を過ごしながら、愛ブヒが見る世界を良い印象で彩っていくことが社会化なのです。
社会化の失敗例その1:無理やり近づけること

Kristin Pineda/shutterstock
社会化でよくある失敗としては、オーナーさんが社会化をしようと意気込みすぎて、愛ブヒを対象物に無理やり近づけてしまうことです。
愛ブヒが自分のペースで近づいたり離れたりすることがポイントなのに、オーナーさんがリードで引っ張って苦手なものに近づけたり、オーナーさんが手で押さえた状態で他の人に触らせたりしたら逆効果!
残念ながら、“社会化のためにドッグランに子犬を入れたら、他の犬に追いかけ回されてしまって犬が苦手になってしまった”なんて話はあとを絶ちません。
焦らず、無理させず、愛ブヒのペースで気長に見守る心を持ちましょう。
社会化の失敗例その2:「○回やったからもう大丈夫」は無い!

icebergpicture/shutterstock
もうひとつの失敗は、社会化をほんの数回やっただけで「完了」と思ってしまうことです。
「パピークラスに行ったのに社会化できていない」とか「抱っこ散歩をしたのに、犬が苦手」とか、そんな話はありがちですが…。
前回から読んでくださっている皆さんなら、もうおわかりですよね。
パピークラスに数回行ったって、愛ブヒの中で「ワタシはコレ大丈夫!」としっかり思える経験が積み重なっていなければ、社会化にはなりません。
ちなみに海外では、毎週数回のパピークラスに数ヶ月にも渡って参加し続けます。
さらに、優良なブリーダーさんは、生まれた子犬たちを家庭で家族のように社会化しながら育ててくれているため社会化が進んでいます。
しかしそうでないブリーダーさんやペットショップで犬を購入した場合、まったく社会化されていない状態からオーナーさんがすべてを行なわないといけません。
これは日本で犬を迎えるにあたっての大きな問題だと考えられています。
これらの話だけでも、日本では社会化にかける時間や回数が少なすぎるということがおわかりいただけるのではないでしょうか。
大切なのは愛ブヒが自信を持てるまで、安心、安全だった経験を積み重ねることです。
オーナーさん側が「たくさん練習したからもう慣れただろう」と勝手に判断するのは、まったくの無意味。
パソコンのセッティングじゃないのですから、「ハイ、これで社会化の作業完了!」って感じにはなりません。
愛ブヒが安心安全を感じる経験とその回数は、愛ブヒにしかわからないもの。
どんなにオーナーさんが環境設定を頑張っても、生きていれば嫌な経験もしますし、好きだったものが苦手になってしまうこともあります。
社会化にゴールはありません。
愛ブヒがいくつになっても出会う、世界のさまざまな物と良い経験を重ねられるように、生涯にわたりオーナーさんが手助けをし続けないといけないのです。
完璧な社会化もなければ、苦手なものがない犬もいない

OlgaOvcharenko/shutterstock
どんなに社会化を頑張ったとしても、苦手なものは0にはなりません。人間だって、苦手なものが1つもない人なんていませんよね。
“社会化さえしておけば完璧な犬が出来上がる”なんて妄想はゴミ箱に捨てましょう(そもそも完璧な犬って何?って話ですが)。
逆に、社会化が出来ていなかったことを言い訳に、愛ブヒが困っていることを放置するのもやめましょう。
愛ブヒが人生で避けようがないこと(身体を触られることや、動物病院など)を苦手としているならば、専門家に相談をして愛ブヒの笑顔を取り戻しましょう。
もし苦手なものが避けられるもの、避けても愛ブヒの不利益にならないことであれば、オーナーさんが配慮し避けてあげることも大切です。
例えば、初対面の大きな男性になでられるのが苦手であれば、「うちの子は触られるのが苦手なのでごめんなさい」とお断りをすれば良いわけです。
トレーニングは、愛ブヒの人生を助けるためのもの。
人間にとって都合の良い犬を作る手段ではありません。
苦手を見つけたときにトレーニングをするかどうかは、愛ブヒの人生に利益になるかどうかを軸にして考えてくださいね。
PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純
PERRO株式会社 代表取締役
SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純
米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー
日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。
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