2021年11月27日9,002 View

ブヒにおすすめなのは「ハーネスor首輪」どっち?健康面やメリット・デメリットから選び方を解説

国際的なドッグトレーナーライセンスを取得している大久保羽純さんに、愛ブヒを正しく守り、導き、固い信頼関係を築くための方法を学ぶこの特集。今回は「お散歩には首輪か? ハーネスか?」という疑問に答えます。

フレンチブルドッグ,しつけ

あなたはハーネス派?首輪派?

フレンチブルドッグ

audiznam260921/Shutterstock

 

みなさん散歩の時はハーネスですか? それとも首輪でしょうか?

 

結論から言うと、愛ブヒの健康を願うなら基本的にはハーネスがおすすめです。

 

ただし首輪をオススメする場合もありますので、最後まで読んでくださいね。

 

なぜハーネスがおすすめかと言うと、犬の首への負担が首輪よりも少ないから。

 

犬の首輪の位置には、以下のような大切な器官が密集しています。

 

・リンパ節

・下顎腺

・甲状腺

・動脈

・静脈

・食道

・肩甲骨

・頸椎

など。

 

これらの器官にギューギューと圧力がかかるのは、どう考えても良いことではなですよね。

 

首に圧力を加えることで、眼圧が上昇し目の疾患につながったり、頸椎へダメージを与える可能性もあります。

 

そもそも呼吸の負荷が高いブヒたちの気道は、大切に扱いたいですよね。

 

人間だって、ネクタイをつかんで引っ張り回されたら健康上良くないでしょう(試しにやってみましたが、顔が真っ赤になりました。く、苦しい…!)。

 

もちろん、まるでリードなんて付いていないかのように全く引っ張ることなくヒールウォークをする犬だったら、首輪もハーネスも関係ないのかも知れません。

 

しかし、ほとんどそんな犬はいません。うちの犬だってそうです。

 

ハーネスだって、犬が引っ張ればもちろん身体に負担はかかります。

 

しかし、ハーネスのほうが身体に当たっている面が大きいため負荷が分散されるのと、首というデリケートな部位を避けることが出来ます。

 

「首輪なら言うことを聞く」と言う都市伝説

フレンチブルドッグ

Tikhomirov Sergey/Shutterstock

 

「首輪なら言うことを聞く」という噂、よく聞きますよね。この都市伝説を紐解くために、少し昔の日本のトレーニングを紹介します。

 

かつての犬の訓練では、プロングカラーという“内側に棘の付いた金属の首輪”や、チョークチェーンという“引っ張ると首が締まる金属の首輪”が多用される時代がありました。

 

散歩中に犬が引っ張った時、このチョークチェーンをガツンと引いてショックを与えるのです。

 

すると犬は引っ張るたびに痛かったりビックリするため、次第に歩くときに引っ張らなくなっていきます。

 

チョークチェーンで訓練された犬は、普通の首輪に変更しても、少しでも首元の締りを感じる度に「やばい、ショックが来るかも!」と行動を止めます。

 

すごく雑な言い方をすれば、“引っ張るたびに犬の頭をぶん殴る”のと法則は同じです。人間も、ぶん殴られ続けたら、手を上げた人を見ただけで動きを止めますよね。

 

首輪でも締まれば苦しい

フレンチブルドッグ

Aleksandra Kostina/Shutterstock

 

チョークチェーンを使わず、普通の首輪でも上述と同じ訓練ができます。チェーンだろうが首輪だろうが、チョーク(締める)されたら、犬は苦痛だからです。

 

そのため、この「首輪なら言うことを聞く」と言う都市伝説は、あながち間違ってはいません。

 

しかしそれが、言うことを聞いているのか、恐怖で支配しているのか、皆さんはどちらだと感じますか?

 

散歩中に、もしハーネスでは引っ張るけれど、首輪だったら引っ張らないとしたら…その理由は言わずもがなですね。

※決して首輪のみなさんを責めているわけではありません。私も勉強する前は、犬と言ったら首輪!としか考えていませんでしたから。

 

「犬の首は締まっても大丈夫」は嘘!

フレンチブルドッグ

ivSky/Shutterstock

 

もし首輪をしている犬を引っ張った時、苦しそうにしていなくても、首にかかった負担は蓄積され、健康に影響を与える可能性があります。

 

犬のしっぽを引っ張って良いことがないように、犬の首を締めて良いことなんてひとつもありません。

 

・犬の首は引っ張ったって大丈夫。

・犬は痛みを感じにくいから平気。

・ショックを与えても、その後褒めてあげたら犬は喜ぶ。

 

これらの根拠なき誘惑に、どうか耳を貸されませんように。

 

言うことを聞いて欲しいなら、ムチよりもアメ。恐怖の支配より、愛の絆。

 

日常の引っ張りに悩まされている場合は、罰を使う道具にお金を払うのではなく、愛ブヒとあなたの笑顔を増やす手伝いをしてくれる専門家に相談しましょう。

 

首輪を使うのってどんなとき? 

フレンチブルドッグ

Irina Kozorog/Shutterstock

 

ここまでの話だと、首輪がずいぶん悪役のように聞こえるかも知れません。

 

しかし決してそうではなく、“首が締まると犬の健康に良くない”という話であり、首輪にもちゃんと役目があります。

・名札として活用

いざ迷子になったとき、首輪や迷子札がついていると、保護してくれた方から連絡がもらいやすいですよね。

 

特に日中は庭で過ごしていたり、過去に脱走歴があったりと迷子リスクがあるブヒの場合は首輪に迷子札を付け、常に首輪はつけたままにしておきましょう。マイクロチップもお忘れなく。

 

※愛ブヒが脱走して戻らない場合は、少しでも早く動物愛護センターに連絡を。数日放置すると、飼い主がいない犬として処分対象になってしまうことがあります。県境の家は、隣接する都道府県にも連絡をするようにしましょう。

・ファッションとして

愛ブヒに好きなデザインの首輪をつけたいと思う方もいるでしょう。皮膚などにトラブルがなければ、おしゃれを楽しむのも良いですね。

・ハーネスを着ける際、うなったり噛もうとする場合

愛ブヒが身体を触られたり、ハーネスに足を通すことが苦手な場合は、無理をせずに首輪にしましょう。オーナーさんが怪我をしたり、愛ブヒが極度のストレスを感じてしまってはよくありません。またこのケースではドッグトレーナーにも相談を。

・オーナーさんがハーネスの装着がうまく出来ない場合

以前、一緒に暮らす高齢のおばあさまが何回かに一度はハーネスに足を通し忘れ、散歩中にハーネスが取れるケースががありました。

・ハーネスがすっぽ抜ける場合

ハーネスから器用に手足を抜き出して脱走する子もいます。この場合は、抜けづらいハーネスを探すとともに、ハーネスと首輪の両方をリードにつけるようにしましょう。

 

ハーネスと首輪を繋げる金具(ネットで「ハーネス」「首輪」「ジョイント」で検索)もすっぽ抜け防止に活用できます。

 

首輪、ハーネス論争は世界で起こっている

フレンチブルドッグ

Lux Et Umbra Studio/Shutterstock

 

動物愛護先進国と言われるドイツをはじめヨーロッパや北欧では、とても多くのハーネスわんこを見かけます。日本もこの10年で、本当にハーネスわんこが増えました。

 

しかし「首輪のほうが言うことを聞く」というイメージで、いまだハーネスに抵抗がある方もいるのが現状です。

 

トレーニングでも、まだ罰を多用するプロもいることでしょう。

 

しかし、人類もトレーニングも進化しています。今はムチを使わなくても、アメ(ご褒美)を使って十分トレーニングができるという技術革新が進んでいます。

 

オーナーさんたちの考え方も、昔の「犬は人間より下なんだから、ムチでしっかり命令を聞くようにしつける」から「犬は家族。アメで笑顔を増やそう」と言う方向に変わってきていますよね。

 

「そう言われても、うちの子の場合は何が正解なのか…」と悩まれている方は、どうか一人で悩まずに専門家に相談してください。

 

ドッグトレーナーに依頼をする場合も、複数人と面談するようにしましょう。

 

そして、そのトレーナーが、生活環境の設定に関しての知識と豊富な経験を持っているか、学術的、科学的知識をもって動物福祉と動物への倫理に基づいた指導を安全に行える人材かどうか、オーナーさんが確認をするようにしましょう。

 

PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純

PERRO株式会社 代表取締役 

SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純

米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー

日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。

 

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