【取材】5年の間に8度の手術を経験した12歳。病に打ち勝った小さな勇者 #51 虎次
10歳を超えても元気なブヒを、憧れと敬意を込めて“レジェンドブヒ”と呼んでいるFrench Bulldog life。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドブヒの肖像』です。
今回登場してくれた12歳の虎次くんは7歳の妹ブヒと暮らすおっとりボーイ。けれどその優しい表情からは想像できないほど度重なる病を乗り越え、穏やかな今があるのです。
目次
虎次くんのプロフィール
年齢&性別
12歳の男の子(2009年11月28日生まれ)
体重
13kg(若い頃は12kg前後)
大好きなこと
ドッグランで仲良しの犬友と遊ぶこと。食べること。好物はお肉系。
既往歴
・2014年3月に急性膵炎で入院、12月に両耳が外耳炎に。
・2015年2月に右後ろ足できたしこりを除去。4月に右耳にポリープ切除手術、10月にポリープが再発、右耳の全耳道切除手術を受ける。同時に再発した右後ろ足のしこりも切除。
・2016年1月に頸部椎間板ヘルニアを発症し手術。4月に角膜びらんになり計3回の手術を受ける。
・2018年に扁平上皮癌のため人差し指の切除手術を受ける。
南相馬市で一緒に東日本大震災を経験。離れ離れに暮らしたことも
運命の出会いがあったのは、柴犬を飼いたくて覗いたペットショップ。
“何だか憎めない顔の犬がいる”とママさんのハートを鷲掴みにした虎次くんは、大きな瞳と優しい表情が印象的なおっとり系ブヒです。
お迎えした翌年、虎次くんがまだ1歳の時に東日本大震災が発生。
その時、南相馬市で暮らしていたママさんですが、当時のことは今も深く心に残っているのだとか。
「その時私は、仕事の関係で昼夜逆転生活だったのですが、震災の日は一緒に暮らす弟がたまたま休みで、虎次の世話をしていてくれました。
大きな大きな揺れのあと家中の家具が倒れ物が落ち、“もし兄弟が一緒でなければ虎次はどうなったのだろう”と思うと怖くて。
その後の津波や原発の影響で散歩も行けず、けれど私も仕事をしなくてはいけないのでひと月ほど秋田県の実家に預けていたんです」。
その頃のママさんは愛犬のそばにいてあげられない罪悪感から自分に犬を飼う資格があるのかと落ち込むことも。
「突然環境が変わり、当時実家には日本犬の雑種がいたので気も使ったはず。
迎えに行った時は喧嘩っ早くなりストレスですっかり痩せていました。
この時に“犬の寿命を考えたら、この子にとって飼い主と過ごす時間は何より貴重なはずだ”と思い、できる限り一緒の時間を増やそうと決心したんです」。
5歳頃から次々に襲ってきた病魔
再び一緒に暮らし始めたママさんと虎次くん。虎次くんが5歳になった頃には妹ブヒのまる子ちゃんがやって来ます。
この頃、突然体調に変化が。
「2014年3月、夜中急に体が動かなくなり、話しかけても無反応。まる子が来たばかりでストレスがあったのか、下痢や嘔吐も続いていたので、救急病院へ駆け込みました。
しかしその日原因はわからず、翌日行ったかかりつけ医で急性膵炎と診断され、即入院に。あと少し遅ければ命取りだったと聞いて焦りました」。
その9ヶ月後、12月に今度は両耳が外耳炎に。投薬治するも改善せず、2015年4月に麻酔をして耳の検査を受けたところ、右耳に炎症性転移性増殖物というポリープが見つかります。
「悪性ではないけれど専門の病院での除去したほうが良いと言われ、翌日耳鼻科へ行くと、診察時に虎次が頭を振った瞬間にそのポリープが耳から飛び出してしまい緊急手術をしたんです」。
この時は日帰りで帰れてホッとしたママさん。しかし虎次くんの病魔は、実はとてもしつこい病魔だったのです。
繰り返す耳と目のトラブル、そして脚には悪性腫瘍
耳の緊急手術から半年後、眼振やふらつきなど、虎次くんが前庭疾患を疑う症状を発症します。
CTを撮影すると、右耳に新たなポリープを発見。しかもこのポリープは何度除去しても再発する可能性があるものでした。
そのため、全耳道切除術を受け、右耳の穴を完全に塞ぐという手術を決心。
この手術の麻酔を利用し、右後ろ足に出来ていた3cm程度の良性のしこりも同時に除去することに。
塞いだ耳の内側に膿が溜まる可能性もあるので、経過は今も観察中です。
「“これで一応、足も耳も大丈夫”とホッとしたのも束の間。翌年1月に、今度は体が硬直したんです」。
原因は頸部椎間板ヘルニアでした。
「あまりに続くから、なんでうちの子ばかりと辛くて。けれど、虎次が文句ひとつ言えず頑張る中、私が下を向いてはいられない!と思いました」。
麻酔によるリスクは心配だったものの、「きっと耐えてくれる」。そう信じて、再び手術に送り出していたそう。
そして虎次くんは、今回の手術も無事成功し、完治してママの元に帰ってきたのです。
再び襲う病魔にも負けず、何度でも不死鳥のように
何度も病気に打ち勝ってきた虎次くんですが、神様はなぜか、再び彼に試練を与えます。
2016年の4月、今度はドライアイから角膜びらんになってしまい眼科に通院。角膜から剥離した上皮を除去する手術を結局3回受け、今も目薬は欠かせません。
「この時点ですでに満身創痍なのに、翌年には右前足の人差し指に扁平上皮癌が見つかりました。
右前足の人差し指の変形にトリマーさんが気づき、すぐかかりつけ病院で消毒や投薬をしたんですが、しだいに悪化して…」。
2018年にセカンドオピニオンをと、改めてヘルニア手術を受けた病院の皮膚科へ行くと、扁平上皮癌という悪性腫瘍だと判明します。
「それで、今度は右前足の人差し指を切除する手術を受けました。
切除後しばらくは歩く時のバランスが取り辛そうでしたが、今は普通に歩き、よく食べ元気です」
これで2014年から2018年の間に計8回もの手術を経験した虎次くん。しかし何度辛い経験をしても、そのたびに打ち勝ってきました。
そして今は「何もなさ過ぎて逆に不安」とママさんが笑うほど元気。その秘訣は愛がこもった毎日にありました。
膵炎をきっかけに食を見直し、弱かった皮膚も改善
かつては缶詰フードなど高カロリーなものばかり与えていたそうですが、急性膵炎をきっかけに食事を見直したそう。
「今はロイヤルカナンのフレブル用フードにボイルした鳥のささみや胸肉、野菜、旬の果物などをトッピングしています。
おやつにはまとめ買いした鶏肉を薄切りにして自家製ジャーキーを作るなど、もともと胃腸が弱い虎次に合ったヘルシーなご飯を心がけました。
すると弱かった皮膚の状態も良くなり、妹のまる子はニキビダニも完治。食は大切だと実感しました」。
食欲旺盛な虎次くんのため、消化をよくするよう回数を小分けにして時間をかけて食べさせることも意識しているそう。
「あと気をつけているのは、ストレスをかけないこと。
今は結婚し、自営業の夫を手伝っているため、私も基本家にいます。同居している夫の両親もいるから、前のように寂しくはないはず」。
シニア以降はベッドを布団にし、階段は抱っこ移動、そして毎日同じリズムで過ごすことも重視しています。
「それに時々一緒に旅行して好奇心を刺激することが、元気の秘訣かな。虎次はまだ12歳。まだまだこれからです!」。
そう語るママさんはとびきりチャーミングな笑顔の持ち主。
虎次くんが何度もの手術に耐えて生還した理由はきっと、まだまだママさんの笑顔を見ていたいからなんでしょう。もう、ではなく“まだ”12才。これからも虎次くんの日々は続きます。
撮影/サワカズタカ 取材・文/横田愛子
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