Q犬も花粉症になるって本当?【ブヒの健康Q&A】
「病院に行くまでもないかな…? でも気になる」といった症状について、獣医師の小泉しずかさんが解説する連載『かゆいところに手が届く!ブヒの健康Q&A』。今回は、春先の悩み“花粉症”について。“人間だけでなく犬も花粉症になる”というウワサ、一度は聞いたことがあるのでは? このウワサ、本当なのでしょうか? また本当であれば、どんな対策が必要かをお伝えします。
Q.犬も花粉症になるって本当?
立春が過ぎ、日が伸びてきたこの頃、花粉症の症状に悩まされている方も多いことでしょう。
実は動物にも花粉症があることをご存知ですか?
今回は“犬の花粉症”について、人との違いや日頃みておくべきポイント、対策などについてお話していきたいと思います。
花粉症とは
一般的に人における花粉症とは、“スギやヒノキなどの植物の花粉に対する免疫反応により、鼻炎などの症状を引き起こす病態”のことです。
飛んでくる花粉の種類によって発症時期が異なりますが、スギ花粉が大量に飛ぶ春先に症状が出るという方が多いですよね。
「花粉症」人と犬の違い
犬の場合、実は“花粉症”という明確な定義はありません。
犬アトピー性皮膚炎の中の原因のひとつとして、植物の花粉が考えられる場合に用いられる言葉なのです。
つまり、主な症状は鼻水やくしゃみではなく、痒みなどの皮膚炎として出てくることが多く、「うちの子、なんか痒そうで…」と診察にいらっしゃる方がほとんど。
しかし、少数ですが、結膜炎やくしゃみなどの人の花粉症と似た症状を示す子もいます。
また、犬の場合も、花粉症を引き起こす花粉の種類は人とほぼ変わらないと言われています。
本記事では、植物などの花粉によるアトピー性皮膚炎のことを“犬の花粉症”としてお話していきます。
具体的な症状
痒みというと、後ろ足で耳を掻いている様子を想像する方が多いかもしれません。
もちろんそれも痒みのサイン。しかし、他にも以下のようなものがあります。
・舐める
・噛む
・擦りつける
・頭を振る
何気ないちょっとした動作も「いつもより多いかも?」「長いかも?」と気づくことが、病気発見の第一歩に繋がります。
アトピー性皮膚炎と似た症状を示す病気
実は、痒みを伴う病気は花粉症以外にもたくさんあります。
・食物アレルギー
・ノミアレルギー
・膿皮症
・マラセチア症
・ダニ
・疥癬
・腫瘍
など
上記の中でも、ノミ、ダニなどによる痒みは、適切な予防薬の使用で回避することができます。
少しでも病気のリスクを減らすために、できる予防はしっかりしておくことが重要です。
チェックポイント
痒みという症状だけで、どの病気なのかを見分けることは困難です。
そこで、病院に行く前に是非チェックしておいていただきたいポイントをご紹介いたします。
(1)季節性があるか
春~夏にかけ悪化するなど季節性がある場合は、花粉などの環境による要因が考えられます。
逆に、通年で痒みがある場合は他の原因や別の病気が考えられます。
「フードを変えてから悪化したかも」「特定の部屋にいるときに痒がる」など、きっかけがありそうな場合は把握しておいてください。
フードを変えたことが原因なら、花粉によるアトピーではなく食物アレルギーかも、特定の部屋にいるときに痒がるならハウスダストがアトピーの要因かも、と言った具合に原因を探るヒントになります。
(2)痒みの場所
体のどこをよく掻いているかを確認しましょう。
例えば、ノミアレルギーの場合は腰背部に多く、ハウスダストマイトでは腹部に多いなどがあります。
また、フレンチブルドッグの場合は、アトピー性皮膚炎のときに脇、下腹部、足先、顔に症状が出やすいと言われています。
どこを掻いているかを把握しておくことは、他の感染症や腫瘍が原因による痒みとの見分けに重要です。
(3)初発年齢
原因に関わらず、アトピー性皮膚炎は遺伝的要因が関連していることが多いため、一般的に6ヶ月から3歳未満で発症することがほとんどです。
フレンチブルドッグは他の犬種よりもやや早期に発症するという報告もありますので、幼少期からよく観察しておきましょう。
このようなポイントは診察でも聞かれることが多いと思いますので、事前に確認しておくことが大切です。
意外と自分以外の家族は違う印象をもっていることも多いもの。また散歩ルートや過ごす部屋などによって症状が変わることもあります。
どうぞご家族全員で愛ブヒちゃんの様子を話し合ってみてください。
対策
花粉に対する対策は人間と同じ。基本的には接触を避けることが重要です。
具体的に家庭でできることは、
(1)散歩後に体を拭いて花粉を払う
(2)花粉の少ない散歩ルートを選択する
(3)洋服を着用する
(4)普段よりシャンプーの頻度を上げる
(5)空気清浄機を使用する
などが挙げられます。
(4)のシャンプーの頻度を上げることについては、ただ洗えばOKというわけではなく、皮膚のバリア機能を保つことも重要。
ペット用には様々なシャンプーがあり、種類によって効果大きくが異なります。
飼い主さんの勝手な判断で使用頻度を変えたり、効果のないようなシャンプーを使ってしまったりすると、皮膚炎の治療がうまくいかないことも。
ご自身で判断せず、かかりつけの病院さんでシャンプーの種類や頻度をご相談されることをおすすめします。
動物と人の花粉症の違いを知ることで、愛ブヒのためにご家庭でできることもご理解いただけたのではないでしょうか。
アトピー性皮膚炎は花粉意外の原因や複数の原因が組み合わさっていることも多いもの。
「うちの子痒そうかも?」と思ったらなるべく早く病院にてご相談くださいね。
獣医師:小泉しずか
2018年 日本獣医生命科学大学卒業。埼玉県内の動物病院にて勤務後、アイデックスラボラトリーズ株式会社にて臨床病理医として勤務。
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