【シニア犬とパピーの多頭飼い】ストレスで体調を崩すことも!「老犬の幸せな生活」を守るために飼い主がすべきこと
国際的なドッグトレーナーライセンスを取得している大久保羽純さんに、愛ブヒを正しく守り、導き、固い信頼関係を築くための方法を学ぶこの特集。今回は、先住の老犬がいる家に新しくパピーを迎えるケースの注意点について。老犬にとっては体調を崩すほど大きなストレスになることもある、パピーの加入。お互いが楽しく暮らすために、どのようなことに気をつけるべきかをお伝えします。
目次
犬同士だから大丈夫?そんなの嘘!
先住の老犬がいる家に新しくパピーを迎える場合、お互いが幸せに暮らすために、どのようなことに気をつけたら良いでしょうか?
「年齢は違っても、犬同士だし勝手に仲良くなるでしょ」なんて思う方もいそうですが、それはちょっと楽観的過ぎかも知れません。
年齢差がある場合に限らず、多頭飼育が大変なことになってしまうケースは、世の中に山ほどあります(それを犬友達に言わなかったり、インスタにUPしていないだけで…)。
老犬によっては、ストレスで体調を崩したり、今までなかった問題行動が出る場合も。
先住の老犬は「子犬と暮らしたい」なんて言っていません。あくまでオーナーさんの意向でパピーを迎えたにもかかわらず、なにも準備や対処をせずに老犬を苦しめることになってしまったら悲しいですよね。
ワンちゃん同士の相性もありますから、絶対に上手くいく出会いなんてありません。
しかし、少しでも両者の関係が良くなるように、オーナーさんが出来ることはたくさんあります。
今回は、老犬がいるご家庭が、新しくパピーを迎える際に気をつけることを紹介していきます。
あなたの愛犬は、犬が苦手じゃないですか?
新しく犬を迎える前に、まず考えるべき大事なことがあります。それが大前提として、先住犬が犬が苦手だったら計画自体を見直す必要があるということ。
他の犬を見る度、興奮して攻撃行動が出たり、恐怖で硬直するような“犬が苦手な犬”もいます。
いつかはパピーに慣れるかも知れませんが、老犬の長くない余生に余計なストレスはいりません。
老犬になってまで苦手な犬と言う生き物を迎え入れて、無理に慣らす必要は無いのではないでしょうか?
シニアにストレスは大敵。子犬と同じで、老犬もストレスで体調を崩すと大事に繋がります。
愛犬が子犬をどう思うのかわからない場合は、一度、子犬がいるところに老犬と遊びに行って、老犬の様子をよく観察してみましょう。
そして子犬を迎えることが老犬のプラスになるのか、家族でよく話し合ってみましょう。
老犬の代理人として最終決定権をするのは、オーナーさんなのですから。
若くても大変なのに、老犬のストレスは計り知れない!
あるオーナーさんから、こんな質問がありました。
<知人が老犬のいる家にパピーを迎えました。
家に遊びに行くと、のんびり寝ている老犬にパピーがしつこくちょっかいを出したり、それまで老犬の定位置だったママの膝をパピーが占領したり…。さらに、お気に入りの玩具までパピーに奪われていました。
「老犬にとってはストレスなのでは?」と感じましたが、それは私が心配し過ぎなのでしょうか?>
みなさんはどう思いますか? そうです、この質問者さんが心配し過ぎているわけではなく、老犬にはストレスです。
みなさんだって、見ず知らずの子供が家に来てやりたい放題やられたら、結構ストレスですよね?
先住犬がたとえ若くても、子犬相手だと悪戦苦闘、疲労困憊に。シニア犬にパピーを丸投げしては、あまりにも酷です。
重要なのは、オーナーさんが2頭の間に頻繁に介入し、老犬の日常を守ること。その上でパピーを家族の一員に加えていきましょう。
老犬の生活の守り方
老犬に限らず、先住犬の生活を守りながらパピーを家族に加えることについては、多頭飼育のポイントを書いたこちらの記事「『ごはんは先住犬から』はウソ?ホント?多頭飼いにまつわる噂・謎に対してプロが回答!【Vol.1】」をご覧ください
上記記事にもある通り、新しくパピーが生活に加わっても、老犬の日常が崩れたり、おろそかにならないような対策が必要です。
例えば、寝場所。老犬が寝ている場所に子犬が入れてしまうと、老犬がベッドから追い出されてしまうこともあります。
オーナーさんが子犬に「このベットは老犬専用だから入っちゃダメだよ!」なんて叱っても通じません。
そのため、老犬が寝ているときにはドッグゲートを立てるなど生活空間を分離し、睡眠を邪魔しないよう環境を整えることが必要です。
さらに、子犬は常にパワフルで遊びたがりますが、老犬には休憩と睡眠が必要です。
暇な子犬は老犬をつつき回したり、オモチャにして遊び始めます。そうならないように、老犬が子犬に侵略されないスペースを与えてください。
子犬にはオーナーさんが十分な散歩や遊びを提供しましょう。
お散歩も一緒に行ける場合ばかりではありません。子犬はとにかく手がかかります。歩かず止まったり、ともすればダッシュし続けたり、ドタバタです!
老犬とオーナーさんの長年積み上げてきたペースは、即座にぶち壊し。パピーは赤ちゃんなので仕方ないですが、老犬からしたらたまりません。
パピーと老犬は別々に散歩に行く、もしくはパピーには1名つけておくなどお世話係の人数を増やす必要があるかも知れません。
要するに、先住の老犬の生活を守るには、オーナーさんの時間と手間が必要不可欠なのです。
老犬とパピーは、活動量が雲泥の差。その差を埋めるのはオーナーさん
若い先住犬とパピーであれば、まだ活動量が近いかも知れませんが、老犬は(その子にもよりますが)活動量が減っているもの。同じペースで生活するのは無理です。
その差を埋めるのは、オーナーさんの手間と時間。
私個人の考えとしては、オーナーさんと先住犬の信頼関係がしっかり構築されていれば、3歳以降6歳くらいまでに2頭目を迎えるのが比較的快適かな…なんて思ったりします。なぜなら、活動量が近いため。
ただし大型犬、小型犬で寿命が違うので、あくまで例だと思ってくださいね。
もちろん、先住犬が何歳であっても上手くいくケースもあるでしょう。
しかし、80歳のおじいちゃんに3歳児の世話を任せっぱなしにするような飼育環境にしたら、おじいちゃんがいつか身体を壊しちゃいますよ。
もちろん、パピーの元気さから良い影響を受けて、若返りする老犬たちもたくさんいます。そういった家族のハッピーなエピソードの裏には、オーナーさんの涙ぐましい努力があるのです。
例えば、散歩はパピー5回、老犬3回の1日8回という方も!
この方の場合は、子犬は1度に長時間行けないものの社会化をさせる必要があるため、小分けで散歩に行き、さらに、老犬と子犬は一緒に歩けないので別々で行くそうです。
パピーが少し落ち着いてくる2〜4歳くらいまで(全然落ち着くどころじゃない子もたくさんいますが!)、そういう生活が続く可能性を覚悟しておく必要があります。
介護や通院の未来も見据えて
老犬のいる家に新しく子犬を迎えると大変なこととして、他には介護や通院の問題があります。中には長い闘病と介護の日々を送る子も。
その場合、オーナーさんは昼も夜も通院や介護に大忙しですから、子犬への十分なケアをするのが難しくなってきます。
手がかかる老犬介護と手がかかる子犬育てが重なってしまうと、それはもう大変。
人手やお金が十分にあれば、家族と世話を分担したり、シッターさんを長時間、複数名雇ったり出来ますが、そうではない場合、身体一つで2頭以上をケアするのは、本当に大変なことです。
人間もそうですが、シニアになるということは、赤ん坊に戻るようにケアが必要になるということ。
パピーを迎えず、もし老犬一頭だったら、先住犬は家族の時間を独り占めできるぶん、手厚い介護を受けられたかもしれません。
老犬の体調や寿命など、未来のことは誰にもわかりませんが、長く共に暮らしてきた愛犬の未来を守るための十分な時間、十分な人手、十分なお金が準備できているのか、家族全員で意見を出し合ってからパピーを迎えるかどうか決断しましょう。
こんなときは専門科に相談
家族計画は未知数なことが多く、しかし失敗も出来ないため、非常に難しい決断を迫られます。
どうか一人で悩まずに、獣医さんやプロのドッグトレーナーなどに相談しましょう。皆さんを支える仲間は、身近にたくさんいます。
さらに、新しく犬を迎える際には、その子犬の親元であるブリーダーさんや、保護団体のスタッフさんにも事前に相談を。
保護犬を迎える場合、団体の方がそのワンちゃんの特性を把握しているはず。先住の老犬ちゃんとどうやったら快適に暮らせそうなのか、どういうペースで慣れていってもらえばいいかなどを相談しましょう。
先住犬がいてもいなくても、新しく犬を迎えたら色々な壁にぶつかります。そんなときには、プロのドッグトレーナーに相談を。
ドッグトレーナーに依頼をする場合も、そのトレーナーが多頭飼育の知識を持っているか、先住老犬と暮らし始めたパピーの行動修正の豊富な経験を持っているか、学術的、科学的知識をもって動物福祉と動物への倫理に基づいた指導を安全に行える人材かどうか、オーナーさんが確認をするようにしましょう。
PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純
PERRO株式会社 代表取締役
SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純
米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー
日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。
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