2022年4月19日1,918 View

Qノミ・ダニの予防薬って本当に必要なの?【ブヒの健康Q&A】

「病院に行くまでもないかな…? でも気になる」といった症状について、獣医師の小泉しずかさんが解説する連載『かゆいところに手が届く!ブヒの健康Q&A』。今回は、ノミ・ダニの予防薬について。「毎年病院で勧められるので、なんとなーく飲んでいるけど…。けっこう高いし、必要なのかな?」なんて一度は思ったことありませんか? その疑問についてお答えします。

ブヒの健康Q&A

 

春らしく、暖かい気温になってきましたね。

少し遠くまでお散歩してみたり、川沿いにいってみたり、

また、GWには遠方へのお出かけを考えている方も多いのではないでしょうか?

 

行楽日和な今の時期、気になるのはノミ・ダニの予防。

狂犬病のワクチン接種などで病院に行った際、予防薬を勧められた方も多いと思います。

 

今回は、ノミ・ダニ予防薬の必要性、予防期間、予防薬の種類などについてお話していきたいと思います。

 

ノミ・ダニ予防薬の必要性

フレンチブルドッグ

Tienuskin/Shutterstock

 

自然に囲まれた場所に住んでいたり、キャンプが趣味だったりというライフスタイルでない場合、本当に予防薬が必要なのかと疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし実は仮に、全くお散歩にいかない“完全室内飼い”であっても予防は必要です。

 

それは、私達家族の服や靴にノミ・ダニがくっついてくることがあり、知らず知らずのうちに家に持ち込んでしまうから。

 

もちろんお散歩の際に、犬自体にもノミ・ダニはくっついてきます。特に草むらなどにはノミ・ダニが多くひそんでいると言われるため、より注意が必要。

 

また、ノミ・ダニは体にくっつくだけではなく、吸血や咬むことにより病原体を媒介します。その結果、犬が病気にかかってしまうことがあるのです。

 

時には人間に病気を媒介してしまうこともあるため、ノミ・ダニ予防は動物だけでなく、私達人間を守るためにも必要な行動なのです。

 

ノミ・ダニが関与する病気・病態

フレンチブルドッグ

Vikafoto33/Shutterstock

ノミ・ダニによって引き起こされる犬の病気・病態には以下のようなものがあります。

 

ノミによるもの

・ノミアレルギー

・ノミの吸血による貧血

・瓜実条虫感染

ダニによるもの

・ダニ寄生による貧血、皮膚炎

・SFTS(重症熱性血小板減少症候群)

・バベシア症

・ライム病

・エールリッヒア症

 

これらのどの病気・病態であっても、重症化すると、最悪の場合は死に至る可能性があります。

 

なかでもマダニに刺されることで感染するSFTS、正式名称“重症熱性血小板減少症候群”は、とても恐ろしい病気。

 

SFTSウイルスを保有するマダニに刺されると、6日〜2週間の潜伏期を経て、発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)などを引き起こしますが、有効な薬やワクチンなどがないため、対症療法を行うことしかできません。

 

また動物だけでなく、人間でもSFTSウイルスを保有していたマダニに刺されたことによる死亡報告はとても多く、人では感染症法の四類感染症に分類されているほど怖いもの。

 

四類感染症に分類されている病気は他に、発症するとほぼ致死率100%の狂犬病をはじめ、デング熱、日本脳炎、マラリア、ウエストナイル熱などがあります。

 

これらと同じ分類ということからも、どれほど危険か理解できますよね。犬にとっても人間にとっても、最も注意すべき疾患なのです。

 

しかしただ怖いだけで終わる病気ではありません。正しいノミ・ダニ予防さえ行っていれば、回避することができる病気でもあります。

 

ですので予防薬は必ず飲むようにしましょう。

 

予防の期間

フレンチブルドッグ

Lined Photo/Shutterstock

 

寒い時期はノミ・ダニの活動はやや低下しますが、室内は暖房などで暖かいので、室内に入った場合は活動的になります。

 

居住地域や飼育環境にもよりますが、一般的には1年を通してノミ・ダニの予防や駆除が必要です。

 

予防薬の種類

フレンチブルドッグ

135pixels/Shutterstock

 

予防薬には、大きく分けて、食べるタイプと垂らすタイプがあります。

 

他の動物が家にいてお互いの体を舐めあってしまう場合や、皮膚が弱い子には食べるタイプがおすすめ。

 

過去に垂らすタイプで皮膚がかぶれてしまった、という場合には食べるタイプを処方してもらいましょう。

 

逆に、垂らすタイプがおすすめなのは、食物アレルギーがあったり、うまく食べずに吐き出してしたりしまう子。

 

ノミ・ダニにのみ効果があるものだけでなく、フィラリアやお腹の寄生虫も同時に予防、駆除してくれるタイプもあります。

 

様々な種類がネットなどでも販売されていますが、効果や安全性がしっかり証明されている、動物病院で取り扱っている予防薬がおすすめです。

 

予防薬は体重ごとに必要量が異なるため、体重の変動があった場合には、病院で新しいお薬を処方してもらいましょう。

 

使用できない年齢や動物の状態もあるため、必ず病院で相談の上、処方に従って、適切な期間、タイミングで投薬を行ってくださいね。

 

ノミ・ダニによる健康被害は想像よりも多いのが現状です。これからも動物と人間が互いに健康に、かつ安全に暮らしていくために予防の徹底を心がけましょう。

 

獣医師:小泉しずか

獣医師:小泉しずか

2018年 日本獣医生命科学大学卒業。埼玉県内の動物病院にて勤務後、アイデックスラボラトリーズ株式会社にて臨床病理医として勤務。

 

 

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