2022年5月18日2,045 View

Q将来、子供を産ませる予定は無いけど…去勢や避妊手術はしなくても問題ない?【ブヒの健康Q&A】

「病院に行くまでもないかな…? でも気になる」といった症状について、獣医師の小泉しずかさんが解説する連載『かゆいところに手が届く!ブヒの健康Q&A』。今回は、全オーナーさんがフレブルを飼いはじめあと、必ず抱くであろう疑問“避妊手術って絶対しないといけないの?”についてお伝えします。

フレンチブルドッグ,ブヒの健康Q&A

 

一般家庭での繁殖があまり行われない犬猫にとって、一般的な不妊手術。

 

麻酔を使い体にメスを入れるため、手術することに不安を感じるご家族の皆様から「本当にこの手術は必要なのですか?」と聞かれることは少なくありません。

 

そこで今回は不妊手術のメリット・デメリットなどについてお話していきたいと思います。

 

はじめに

フレンチブルドッグ

GH Studio/Shutterstock

 

不妊手術とは、自分のペットに子供を産ませる予定がない場合に、生殖器を手術で摘出するというものです。

 

当たり前のことですが、手術をしてしまうと子供を作ることはできません。ご家族でよく相談した上で、手術を行うかを検討してください。

 

■手術時期

手術を行う時期は、一般的に性成熟前の生後6ヶ月頃が推奨されています。

 

ただし、家に迎え入れてから間もない場合や、治療中の疾患がある場合、体調がすぐれない場合などは手術時期を遅らせる場合もあります。

 

メリット

フレンチブルドッグ

Hryshchyshen Serhii/Shutterstock

不妊手術を行うメリットは大きく3つあります。

 

(1)望まない妊娠を避けることができる

例えば、多頭飼育や、ドッグランなどで少し目を離した隙に交尾してしまった、などというケースも想定できます。

 

望まない妊娠の場合は、生まれてきた子達をどうするかが決まっていないことがほとんど。結果として保健所等に相談されることもあります。

 

そのため、安心してドッグランなどで遊ばせたい場合には、自分だけでなく他のご家族への配慮としても、不妊手術を行うことが望まれます。

 

(2)将来的な病気の予防ができる

不妊手術を行うことで、性ホルモンに関連する病気の発生率を抑えることができます。

 

男の子の場合は、精巣腫瘍、前立腺肥大症、会陰ヘルニア、肛門周囲腫瘍など。

 

女の子の場合は、乳腺腫瘍、子宮蓄膿症、子宮水腫、膣過形成、膣脱、膣腫瘍などが、不妊手術によってかかるリスクを大幅に減らせます。

 

特に腫瘍や子宮蓄膿症は発生頻度が高く、かつ生死に大きく関わる病気。

 

また、高齢になってから発生することが多いため、いざこれらの治療をするというときに麻酔をすることがリスクを伴ってしまったり、他の病気も併発していたりすることが考えられます。

 

長期的に見ると、これらの病気の発生率を下げることができるのは大きなメリットと言えるでしょう。

 

(3)性格や行動の変化が期待できる

性ホルモンに関連する行動、特にマウンティングや攻撃性の低下などが期待されます。

 

ただし、個体差はあるので、絶対に攻撃性がゼロになります、などとは言い切れません。

 

デメリット

フレンチブルドッグ

GH Studio/Shutterstock

 

デメリットは個体差があるので、一概には言えませんが、可能性があるものは以下の通りです。

 

(1)太りやすくなる

全く体重の変化がない子も居ますが、代謝が落ちるので太りやすくなることが多いです。

 

中には、手術後一週間である抜糸時に、既に体重増加がみられる子も。

 

これまでと同じご飯を食べていても太ってしまうので、量を減らして対処することもあるようですが、生後1歳までは成長期。

 

体を作るのに必要な栄養素をしっかりと摂りたい時期でもあるので、太りやすくなった場合は、必要な栄養素は摂取でき、かつ体重管理ができる“不妊手術後用の療法食”へ切り替えるほうがおすすめです。

 

市販のものもありますが、手術前に病院で不妊手術後用フードの取り扱いがあるかを確認するのが良いでしょう。

 

(2)排尿障害が出る可能性がある

男の子ではときおり尿失禁を伴うことがあると報告されています。

 

(3)縫合糸によるアレルギー

犬種にもよりますが、手術に用いた糸にアレルギー反応を起こしてしまう場合があります。

 

反応によってはコブのようになってしまったり、痒みや赤みが出てただれてしまったりすることも。そうなった場合、再度麻酔をかけて糸を外すこともあります。

 

(4)麻酔のリスク

一般に不妊手術は長くて30分ほどで終了します。そのため、若齢で健康、手術前検査をクリアしていれば、麻酔のリスクが問題になることはほとんどありません。

 

ただ、フレブルさんは短頭種ですので、麻酔をかける際のリスクは他の犬種よりも高くなります。

 

しかし、不妊手術を行わなかったことで、あとあと重大な病気が発生してしまった場合に、その病気を治療するために麻酔が必要になることがあります。

 

高齢になってからだと麻酔リスクは高まりますし、また、健康ではなく病気があるときも麻酔リスクは高まります。

 

このように、メリット・デメリットをよく比較し、呼吸状態などを含め、病院の先生とよく相談してから手術の実施を決定しましょう。

 

まとめ

フレンチブルドッグ

Teerawut Bunsom/Shutterstock

 

不妊手術は、家族に迎え入れてからすぐの大きな決断。なんの病気もしていない体にメスを入れることに抵抗を感じたり、麻酔によるリスクで最悪の自体を想像してしまったりと、迷って当然のことですよね。

 

ただし、不妊手術を行うかどうかは、最終的にご家族の意志です。

 

どちらを選ぶにしてもしっかりと納得して決断ができるよう、ご家族内で、また病院の先生とよくご相談いただくことをお勧めいたします。

 

獣医師:小泉しずか

獣医師:小泉しずか

2018年 日本獣医生命科学大学卒業。埼玉県内の動物病院にて勤務後、アイデックスラボラトリーズ株式会社にて臨床病理医として勤務。

 

 

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