2022年5月26日2,985 View

【歯磨きができない】失敗の原因は飼い主の焦り!暴れるブヒも「歯磨きが上達する」5ステップ

国際的なドッグトレーナーライセンスを取得している大久保羽純さんに、愛ブヒを正しく守り、導き、固い信頼関係を築くための方法を学ぶこの特集。今回は、歯磨きができるようになるための方法をレクチャーします。ほとんどの成犬が歯周病だと言われていますが、歯周病が重度になると命に関わる病気を引き起こすことも。歯磨きができるように練習して、愛犬の健康を守りましょう!

フレンチブルドッグ,しつけ

歯磨きができないとどうして困るの? 

フレンチブルドッグ

praditkhorn somboonsa/Shutterstock

 

現代の犬たちは、随分と寿命が延びてきました。幸せなことですよね。しかしその分、歯の状態がシニアになってからの健康に大きく影響するようにもなりました。

 

「虫歯になって歯が抜けると、食べ物が食べづらくて不便だから歯磨きをしようね☆」な〜んて、シンプルな話ではありません。

 

人間同様、犬も歯周病になると以下のような状態に。

・歯茎が炎症を起こす。

・あごの骨が溶ける。

・菌が全身に回って内臓に悪影響を引き起こす。

つまり、口内環境が全身の体調不良につながるのです。

 

歯磨きガムやガーゼじゃダメなの? 

フレンチブルドッグ

Africa Studio/Shutterstock

 

歯磨きの重要性はわかっていても、愛ブヒが歯を触らせてくれない、歯ブラシをガジガジ噛んでしまうなどの理由で、結局歯磨きガムをたまにあたえるだけ…というご家庭も少なくありません。

 

もちろん、ガムやガーゼも何もしないよりは良いです。しかし、人間で考えてみてください。なぜ歯磨きには、歯ブラシを使うのでしょうか? 

 

それは“歯周ポケット”と言われる、歯と歯茎の隙間をお掃除する必要があるからです。

 

歯磨きに苦戦している人には、少々耳の痛い話かも知れませんが(かつて私もそうでした…)、ガムやガーゼで歯の表面だけを磨いても不十分。

 

歯周病菌が歯周ポケットからズンズンと体内に侵入していき、顎の骨を溶かします。

 

歯周ポケットに入ったカスを掻き出すには、どうしても歯ブラシが必要なのです(いつか歯周ポケットの食べカスや歯垢を、すべて掻き出してくれるガムやガーゼが発売されるまでは…)

 

いっぺんに完成形までやらないで

フレンチブルドッグ

stalk/Shutterstock

 

では、どのようにすれば歯ブラシでの歯磨きが上手くいくのでしょうか?

 

歯磨きが上手くいかない大きな原因の1つが、“オーナーさんの焦り”とも言われます。

 

「しっかり歯磨きをせねば!」と焦り、押さえるなどして無理やり歯ブラシをしてしまいます。

 

その気持ち、よくわかります。愛ブヒの歯を想うばかりに、先走る親心。私もかつてそうでした…(そして、上手くいきませんでした)。

 

無理やり押さえつけても、未来はありません。

 

数年かかっても良いのです。「今日は左上を少しブラシでこすっただけで終わっちゃった…」なんて日が続いても良いのです。

 

大切なのは、愛ブヒが嫌だと思わない範囲を少しずつ広げていくこと。愛ブヒのペースで「歯ブラシ、イヤじゃないよ♪」と感じてもらえれば、自然と上達していきます。

 

要するに、はじめから気合を入れて“歯ブラシでしっかり歯磨き”では、刺激が強すぎるのです。

 

・拘束されるストレス

・口周りを触られるストレス

・デリケートな口の中をいじられるストレス

・謎の道具、歯ブラシを近づけられるストレス

・歯ブラシを口に入れられるストレス

 

これらのストレスを一度に与えてしまったら、愛ブヒに嫌がられるのも当然ですよね。

 

歯磨き上達のためには、この1つずつを分解。

 

それぞれを「ストレス」と感じなくて済むように、1つずつ慣らしていくことで歯磨きが出来るようになります。

 

歯磨きが上手く出来るようになるまでにかかる時間は、それぞれの愛ブヒで違います。

 

数ヶ月ですむかもしれないし、数年単位でかかるかも知れないという、ゆったりした心構えをしておきましょう。

 

歯ブラシ練習ステップの例

フレンチブルドッグ

Unchalee Khun/Shutterstock

 

では“焦らない心”を準備したみなさんと、具体的な歯ブラシ練習ステップの例を見ていきましょう。現在あなたと愛ブヒは、どのステップまで出来るでしょうか? 

 

ステップ1

拘束された状態で、リラックス。

ステップ2

拘束された上で、“口周り”を“手”で触られてもリラックス。

ステップ3

拘束された上で、“口の中”を“手”で触られてもリラックス。

ステップ4

拘束された上で、“口周り”を“歯ブラシ”で触られてもリラックス。

ステップ5

拘束された上で、“口の中”を“歯ブラシ”で触られてもリラックス。

 

ステップ1の“拘束された状態(愛ブヒを仰向けにした抱っこでも、オスワリの愛ブヒを後ろから抱く形でも、歯磨きがやりやすく、愛ブヒも快適な姿勢でOK)”が難しいペアも多いです。

 

1の段階で愛ブヒがストレスを感じる場合、まず拘束されることに慣れる必要があります。それが出来てから次のステップに進まないと、ステップ2も愛ブヒに嫌がられて終わるだけ。

 

拘束に慣れてもらうには、まずは比較的苦手意識のなさそうな拘束姿勢を探します。

 

仰向けが苦しいブヒもいますから、そういう場合はオスワリの状態にしてから膝立ちのオーナーさんが後ろから抱く形でもいいでしょう。

 

そして拘束した状態で、小さくちぎった大好物の食べ物を与え続けてください。

 

“拘束される=美味しくて幸せ”と印象づけるのです。

 

拘束された状態でも「ぼく大丈夫♪」と体が緩みリラックスできるようになったら、ステップ2のトレーニングに移ります。

 

ステップ1に、数ヶ月かかったって大丈夫。まずは、歯磨きの姿勢に慣れることが第一です。

 

ステップアップしていこう

フレンチブルドッグ

Pau Novell Aran/Shutterstock

 

ステップ1の拘束された状態でリラックスが出来るようになったら、次は拘束した姿勢のまま、手で口周りを触ります。

 

このときも、ご褒美はお忘れなく。ご褒美が歯に詰まって心配という方は、ドッグフードなどのカリカリではなく、ヨーグルトなどドロドロした液体のオヤツを使うオーナーさんもいます。

 

口周りを触るのは、ちょんちょんと軽く、ほんの数秒。慣れてきたら、刺激も時間も増やしていきます。

 

手で口周りを触れたら、次に口の中。次は、歯ブラシを使って…と1つずつステップアップをしていきます。

 

ステップアップだけが目標になり「早く出来るようにさせたい!」と思ってしまうと、愛ブヒのストレスサインに気付きづらくなり、歯磨きが苦手な犬に戻っていってしまいます。

 

大切なのは、愛ブヒが「大丈夫♪」な気持ちを感じ、歯磨きに良い印象を持つこと。愛ブヒにペースを合わせるのが一番です。

 

毎日コツコツ、ほんの数分の練習を積み重ねてください。

 

うまくいかなければ、1つ前のステップに戻って練習しましょう。どうにも上手くいかないときは、数日間練習をお休みしましょう。

 

焦りは禁物です。

 

ステップは愛ブヒ次第でアレンジ

フレンチブルドッグ

ni_ninan/Shutterstock

 

ここで紹介したステップは、あくまで一例。例えば、ステップ3と4の間に、“ガーゼ”での練習段階を入れても良いでしょう。

 

日常的に歯ブラシをオモチャにして一緒に遊んだり、歯ブラシの先端に美味しいペーストを塗って、ガジガジさせながら歯磨きに慣らせたオーナーさんもいます。

 

散歩中に外で歯磨き練習をしたら上手くいった方もいますし、歯磨きの後にオモチャで一緒に遊ぶご褒美を与えたら上手くいったオーナーさんもいます。

 

繰り返しますが、大切なのは愛ブヒが歯磨きに良い印象を持つこと。

そのための愛ブヒに合った仕掛けを考えていきましょう。

 

愛ブヒと自分を褒めつつ、気長に取り組もう

フレンチブルドッグ

Juri82/Shutterstock

 

長期戦になりやすい歯磨き練習は、くじけそうになることも多々あります。しかしそこで諦めずコツコツ取り組むことが、歯磨き上達の一番のコツです。

 

SNSなどでは、すっごく自然に上手に歯磨きをしているブヒを見かけることもあります。「うらやましー!」と叫びたくもなりますよね。

 

もちろんその中には、なんの練習もなく上達した子もいるでしょう。しかし、実際のところ多くの子とオーナーさんは、舞台裏でコツコツコツコツコツコツ… 練習を積み重ねて上達していきます。

 

オーナーさん自身も、愛ブヒも、あせって挫けないように、ゆっくりお互いを褒めつつ、歯磨き練習を続けていきましょう。

 

こんなときは専門科に相談

フレンチブルドッグ

Lee waranyu/Shutterstock

 

たかが歯磨き、されど歯磨き。口周りを触られることがかなり苦手になってしまっているブヒの場合、ご褒美があろうがコツコツ進めようとしようが難しい場合もあります。

 

また、歯磨きをしようとすると唸ったり、咬んだりする場合もあるでしょう。そんなときには、どうか一人で悩まず、獣医さんやプロのドッグトレーナーなどに相談を。

 

皆さんを支える仲間は、身近にたくさんいます。

 

ドッグトレーナーに依頼をする場合も、家庭犬の歯磨き練習に関する行動修正の豊富な経験を持っているか、学術的、科学的知識をもって動物福祉と動物への倫理に基づいた指導を安全に行える人材かどうか、オーナーさんが確認をするようにしましょう。

 

PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純

PERRO株式会社 代表取締役

SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純

米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー

日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。

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