Q.去勢、避妊の手術をすると性格が変わるって本当?【ブヒの健康Q&A】
「病院に行くまでもないかな…? でも気になる」といった症状やささいな疑問について、獣医師の小泉しずかさんが解説する連載『かゆいところに手が届く!ブヒの健康Q&A』。今回のテーマは、去勢、避妊手術でまことしやかに囁かれる、あの都市伝説(?)について!
1日が長くなってきて春の訪れを感じる今日このごろ。新しくご家族を迎えようと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
家族として生活していく上で考えなければならないこと一つとして、去勢・避妊手術が挙げられますよね。
以前、「Q将来、子供を産ませる予定は無いけど…去勢や避妊手術はしなくても問題ない?【ブヒの健康Q&A】」という記事で、手術の必要性やメリット、デメリットなどについてお話しました。
今回は、去勢・避妊手術によって性格が変わってしまうのか?というテーマについてお話していきたいと思います。
去勢手術とはどんなことをする手術?

Hryshchyshen Serhii/Shutterstock
去勢手術とは、男の子の場合に行う不妊手術のことで、精巣を摘出します。
精巣は、精子を作り、男性ホルモンであるアンドロジェンを産生・分泌する役割を担っている臓器。そのため、精巣を摘出するとアンドロジェンが産生・分泌されなくなります。
アンドロジェンとは、いくつかのホルモン物質の総称で、主なものはテストステロンとデヒドロエピアンドロステロン。
中でもテストステロンは、性行動および攻撃性の発現に関与しています。
つまり、去勢手術でテストステロンが分泌しなくなるので、性行動および攻撃性が低下するのです。
去勢後に考えられる性格の変化

katyapulka/Shutterstock
過去の報告では、去勢後に
・穏やかな性格になった
・咬傷事故数が減った
・マーキングが減った
・マウンティングをしなくなった
など、多数の良好な変化がみられています。
実際に私が以前飼っていた子も、去勢後にはより穏やかに、友好的な性格になりました。
ただし、すべての子に対して良好な効果が出るとは限りません。なぜなら、犬の行動はすべてホルモンだけで決まるわけではないからです。
飼育環境、習慣、過去の経験、他の犬との接触条件など、様々な要因が行動の変化に関与しています。
例えば、マーキングに関しては、すでに習慣化されている場合は、ホルモンの分泌に関わらず、行動が続くことがあります。
また、攻撃性に関しても、例えば嫌な思いをした場所に行くと攻撃的になる、ある特定の他の犬にだけ攻撃的になってしまう、などです。
去勢手術さえすれば、必ず穏やかになるとは限らないということを覚えておきましょう。
避妊手術とはどんなことをする手術?

Tyler Olson/Shutterstock
避妊手術は、卵巣と子宮を摘出する手術を指します。卵巣は主に、エストロジェンというホルモンの分泌を行っています。
最近では卵巣のみの摘出でも十分な効果が得られるという報告もあり、卵巣のみの摘出を行う場合も。
エストロジェンは、発情に作用するホルモンですが、犬の場合、発情は、発情前期、発情期、発情後期、発情休止期の4つの時期に分けられます。
前期では出血や陰部の腫れ、排尿回数の増加などがみられ、食欲減退や落ち着きがないといった行動の変化もみられることがあります。
避妊後に考えられる性格の変化

katyapulka/Shutterstock
エストロジェンの分泌により発情が起こらなくなるため、発情時期の不安定さがなくなると考えられています。
例としては、
・発情による出血や陰部の腫れがなくなることで陰部を舐めるようなストレス行動がなくなる
・食欲減退がなくよく食べてくれる
・攻撃性の低下
などが挙げられます。
ただし、雄犬のように顕著な行動の変化があまりない場合が多いため、性格の変化としては認識されないことがほとんどです。
去勢手術、避妊手術を行うと、穏やかな性格になる子もいるのも事実。ですが、性格を反映する行動には、ホルモン以外の要因が大きく関わっています。
そのため、手術による性格の変化には個体差があります。
必ず性格や行動が良い方向に変化するとは言い切れないため、性格の変化を期待して不妊手術を決定するのはやめましょう。
子供を望むかどうか、将来の病気のリスクを下げる策を講じるかどうかといったポイントを踏まえて、不妊手術を行うかどうかの決断をしてください。
獣医師:小泉しずか
2018年 日本獣医生命科学大学卒業。埼玉県内の動物病院にて勤務後、アイデックスラボラトリーズ株式会社にて臨床病理医として勤務。
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