【取材】この子と生きる、かけがえのない日常。〜穏やかな日常を取り戻せるまで前を向き続けられたのは【BUHI愛の話】
「この子を残して先には逝けない」 自らのがん治療の渦中にあった2020年の秋、ちゃおつなぐママ・松下さんは、 その静かな決意を『BUHI』誌上で語ってくれた。
あれから5年、穏やかな日常を取り戻せるまで前を向き続けられたのは、 愛犬つなぐと先代犬ちゃおの存在があったから。
つなぐの大病もあり、今に至るまでの道のりは、決して平坦ではなかった。
だからこそ「当たり前の日々」の尊さを抱きしめて、 松下さんはつなぐと共に、今日を歩んでいく。
愛すべき、当たり前の日常
朗らかで、ハリのある響き。
温かな関西のイントネーションを帯びた松下さんの声は、陽光のようにまっすぐで明るい。
その笑顔の下、胸元には、愛しい子のかけらを宿した小さなカプセルが光る。
「これは、ちゃおです〜」と語るママの声を聞き、つなぐがやってきて膝に乗る。

松下さんとつなぐちゃん
今回お話を伺ったのは偶然にも、つなぐ10回目のうちの子記念日の前日。
「毎年旅行に行っていましたが、今年はつなぐが手術して間もないので自宅でお祝いです。この子が好きな果物を用意するつもりなんですよ」と、松下さんの声がはずむ。
何気ない、いつも通りの日常。
『BUHI』2021年冬号(2020年12月発行)での取材時、松下さんはこの「日常」を守るため、闘いの只中にあった。
この子のため、絶対に生き抜く
当時、松下さんは55歳。
2代目のフレブル、つなぐをシングルで育てていた同年7月、卵巣がんが見つかった。

6時間に及ぶ手術で子宮と付属器を全摘出したが、他の臓器にも転移があり、医師に告げられた5年生存率は60パーセント。
手術後も3週間に1回、全6クールの抗がん剤治療を続けていた。
前回のインタビューは、まさに抗がん剤治療の真っ只中だったのだ。
身体的、精神的、経済的にも、非常に負荷のかかる抗がん剤治療。
それでも「受けるのが嫌だと思ったことは一度もなかった」のは、他でもなく、5歳の愛犬つなぐの存在があったから。
「つなぐがいてくれたから、頑張れたんです。もし私がいなくなったら、両親も高齢ですし、この子を見てくれる人はいない。
『絶対にがんをやっつけるんだ!』という気持ちが、苦しさを打ち消してくれましたね。
再発の覚悟もしていたので、気分が落ち込む日もありました」
そんなときでも、つなぐは明るく『遊んで』と無邪気に訴えてくる。

「その可愛さに何度も救われたんです」
幸いなことに、抗がん剤治療を無事に終える頃には、がんは消え、以降は3ヶ月に一度の卵巣と乳がんの検診のみを継続。
そして今年、主治医からついに「卵巣の検査は終了しますか?」との提案があったとのこと。
なんて希望に満ちた、うれしい報告だろう! 入院中、つなぐはご両親が預かって世話をしてくれた。
誰にも預けたことがなく不安もあったが、「今では両親によく懐いています。
預かってもらったのがいい機会になって、お互いに行き来するようにもなりました。
安心して治療に専念させてもらえて、本当にありがたかったです」とほほ笑む。

その一方で、つなぐには意外な変化が。
以前は社交的で、子どもたちの人気者だったつなぐが、人にも他の犬にも吠えるようになったそう。
「違う環境で、何か感じるところがあったんでしょうか」と、松下さんも首をかしげる。
突如襲った免疫介在性好中球減少症
抗がん剤治療を終え、再発や転移もなく、再び平穏な日々を送っていた松下さんとつなぐ。
だが、その2年後のクリスマス、つなぐに生命の危機が訪れる。
「前日まで元気だったのに、翌朝は急にぐったりしていて。
食欲もなく高熱もあったので、すぐに病院へ向かいました」
血液検査の結果、炎症のサインとされるCRPが高値、白血球に含まれる好中球が0に近い状態と判明。
特に、3000〜11800/μLが基準値とされる好中球の低値は深刻な事態だった。

かかりつけ医の尽力により、免疫介在性好中球減少症との診断がついたのは、約1ヶ月後。
免疫介在性好中球減少症とは、自己免疫反応により好中球数が大幅に減少する疾患で、感染症等に対する抵抗力が弱まるため、放置すれば命にも関わる。
大学病院でも検査を受けたが同様の診断となり、かかりつけ病院での治療の日々が始まった。
「ステロイドと免疫抑制剤を併用して、数値は安定するようになりました。
ステロイドは徐々に減らし、半年ほどで離脱しましたが、離脱作用が重くて数日はしんどそうで。
免疫抑制剤も徐々に減らし、今は最低容量を隔日で飲んでもらっています。
先生から寛解と告げられたときは、うれしかったですね」
穏やかな時間の尊さ
つなぐの命を守るため、懸命に体調と向き合い続けた松下さん。
自身とつなぐの闘病を経て、共に穏やかに過ごすひとときを、いっそう特別に感じるようになった。
「当たり前が当たり前じゃなくなる日を経験しましたから。いてくれるのが当たり前じゃないんだって、思い出させてもらいましたね。

つなぐが気持ちよさそうに眠っていたり、横で転がっていたり、冬には寝床に入ってきたり、そういう時間がすごく大切なんです」
休日の散歩も、ふたりにとって特別な時間だ。
毎回必ず、車でいつもと違う公園まで出かけ、じっくり散歩を楽しむことを心がけている。
「普段と違う場所だと、歩くお尻がプリプリ弾んでうれしそう。
楽しげな姿を見ると頬がゆるみます」

散歩は、以前は1日2回でしたが、ステロイドの影響で多飲多尿になってからは朝2回、昼1回、夕方から寝る前にかけて3回の計6回。
この子は何回でも楽しいみたい。
3歳で発症したヘルニアの影響もあり、つなぐは闘病中に後ろ足が立たなくなっていましたが、筋肉がついたのか、また歩けるようになったんですよ」
一日の大半を占める散歩も、そのために仕事の昼休憩に帰ってくるのも、全く苦ではない。
「自分が楽しいから続けられるんです」と、軽やかに松下さんは笑う。

「散歩も記念日の旅行も、してあげてると思っていたけど、本当は自分の方が楽しませてもらっていると気づいたんです。
一人ではできない経験をさせてくれて、いつも一緒にいてくれて、つなぐには感謝しかないです」
ちゃおの導き
闘病中に断っていたお酒も再び楽しめるようになった松下さんだが、つなぐと過ごせるよう、すっかり家飲み派に。
「横で寝ているつなぐが、つまみ替わりですわ」と快活に笑いながら、「ちゃおのときは自分のことも楽しんでいたんですよね」
仕事が忙しい時期に迎えてしまったので、留守番も多くて」とぽつり。フードやおやつの選び方、遠くの病院へ通っていたこと、最期まで治療で負担をかけてしまったこと。
松下さんの笑顔の裏には、ちゃおへの愛情と後悔が今も流れている。だからこそ、あの子が教えてくれたことを、つなぐのために生かしたい。
松下さんのつなぐファーストのライフスタイルには、その想いが込められているのだ。

「つなぐを迎えたのは、ちゃおを見送り、日が経つにつれ悲しみが増して途方に暮れていた頃。
この子は太陽が昇ったみたいに、静かだった部屋を一気に明るくしてくれたんです」
ちゃおと同じ日に生まれた、つなぐ。
偶然にも、お迎え記念日も同じ日付という。
これは何かの導きなのだろうか。
「入院時は実家に、ちゃおのぬいぐるみも預けていたんです。
そのちゃおに、つなぐは寄り添って寝ていたと聞きました。
ちゃおが守ってくれていたのかな、なんて考えるんですよね」
楽しい時間が続くように
実は取材の2日前、つなぐは腫瘍摘出の検査を受けていた。

手術は無事成功し、しばらくは病理検査の結果を待ちながら過ごすことになる。
「結果がどうあっても、つなぐが苦しまないように、ちゃおとは違う治療方法を考えるかもしれません」と話す松下さんの声は優しく、静かだ。
「私も10歳を迎えたつなぐも、揃って還暦になりました。
このまま変わりなく、美味しいも楽しいも嬉しいも、一緒にたくさん経験させてあげたい。つなぐのそんな顔が見られると、私も幸せなんですよ」
この子の体調に合わせて、ゆっくりと、いつも通り過ごしていきたいです」 当たり前の毎日が、いちばんかけがえのないもの。
その瞬間の一つひとつをかみしめながら、ふたりは共に、これからも愛しい今日を歩いていく。

写真・SUMiCO 文・林雅子
フレンチブルドッグ専門誌『BUHI』(オークラ出版)は、フレンチブルドッグの愛らしさの奥にある本質まで掘り下げる雑誌。日々の暮らし、健康、行動学、歴史、カルチャー、愛護の現場までを横断し、「フレブルとともに生きる人生」に本気で向き合う、愛情たっぷりの一冊です。 定価:1,640円(税込)
BUHI
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