2020年8月21日4,950 View

「先住犬から見て学ぶから、2頭目はしつけがラク」はウソ?ホント?多頭飼いにまつわる噂・謎に対してプロが回答!【Vol.3】

愛ブヒを本当の意味で幸せにするには、オーナーが犬にとって頼れるリーダーになることが何より大切です。
そこで、国際的なドッグトレーナーのライセンスを取得している大久保羽純さんに、“愛ブヒから信頼されるリーダーになる方法”を学ぶのが、この特集。

今回は、巷にあふれる多頭飼いの噂について、その真偽のほどを解説する第三段です!

“社会化、犬世界のルールは先住犬を見て学ぶから、2頭目はしつけがラク”という噂について、その真相と理由を徹底解説します。 

フレンチブルドッグ,しつけ

 

ブヒ業界にはびこる、さまざまな都市伝説や噂ってありますよね。

 

その中でも、多頭飼いに関するいろいろな噂に焦点を当てたのが、今回のコラムシリーズです。

 

こちらは第三弾なので、以前の記事<「ごはんは先住犬から」はウソ?ホント?多頭飼いにまつわる噂・謎あれこれに対してプロが回答!【Vol.1】>からお読みいただくと、より一層わかりやすいですよ♪ 

 

今回も、愛ブヒオーナーさんから寄せられた多頭飼いの謎を紹介しながら、それが“ウソ”なのか、“ホント”なのか、紐解いていきます。

 

Q:社会化、犬世界のルールは先住犬が教える、もしくは先住犬を見て学ぶから、2頭目はしつけがラクって本当? 

フレンチブルドッグ

Marina Kadyrova/shutterstock

 

Q2.社会化、犬世界のルールなどは、先住犬が教えてくれる。またトイレの場所など家庭内でのルールも先住犬を見て勝手に学ぶから、しつけがラクって本当? 

この噂、よく耳にしますね。さあ、どうなのでしょうか? 

 

A2.

はじめにはっきり言っておきます。“2頭目だからラク”…なんてことは、全く、ありませんよ! 

 

2頭目を迎えたら、オーナーさんが2頭目を、イチから育てることになります。

 

さらに、オーナーさんが、先住ブヒと後輩ブヒの関係づくりをしていく必要もあります。

 

「犬同士で、なんとかやってくれるかも♪」なんて、甘い見込みで多頭飼いを始めて、えらいこっちゃ状態になってしまった家庭が、世界中にたくさんあるのです!!

 

甘い話を、鵜呑みにしちゃいけません。

 

愛ブヒを取り巻く「環境」の中で、愛ブヒは学習する

フレンチブルドッグ

Ksenia Raykova/shutterstock

 

先輩ブヒが、後輩ブヒを指導してくれたら……確かに、それは嬉しい話かもしれません。

 

そういう体験をした方も、なかにはいるかも知れません。

 

しかし、これはちょっと人間目線の誤解。

 

その理由を知るために、後輩ブヒが新しく家に迎えられてきてから、どのように行動を学習していくのかを考えてみましょう。

 

ブヒの行動を変化させるのは、ブヒを取り巻く“環境”です。

 

環境とは、ブヒを取り巻くすべてのもの。

 

オーナーさんの行動も、家のレイアウトも、お散歩の方法も、先住犬の行動も、愛ブヒが感じる世界の、すべてが環境です。

 

新しく家族に加わった後輩ブヒは、その家族との生活の中で、自分の置かれている環境からたくさんのことを学習していきます。

 

環境が変われば、行動も変わる 

フレンチブルドッグ

mala_koza/shutterstock

 

よく、“訓練所に預けていた時は出来ていたことが、家に帰ってきたら元に戻ってしまった”という話を聞きませんか? 

 

それは、訓練所では、家と違う行動を起こす“環境”が設定されていたから。

 

オーナーさんの家が以前と変わっていなければ、愛ブヒがその環境に合わせて、元の行動に戻っていくのは当然です。

 

後輩ブヒは、先輩ブヒと同じ環境にいれば良いところも似てくるかもしれませんが、悪いところも似てきます。

 

なぜでしょう? 先輩ブヒが、後輩ブヒに、こっそりイタズラを教えたからでしょうか? いいえ、そうではありませんよね。

 

家の環境に合わせて行動を学習した結果、後輩ブヒが先輩ブヒと同じ行動をとっているだけです。

 

例えば、散歩中に他の犬に吠えてしまう先輩ブヒがいます。

 

オーナーさんは、他の犬を避けつつ、愛ブヒが安心できる距離を保ち散歩をするとします。

 

こういう家なら、先輩ブヒだけでなく、後輩ブヒが他の犬に吠える可能性も減るでしょう。

 

だって、愛ブヒたちが吠えなくても安心できる“環境”を、オーナーさんが設定できているわけですから。

 

愛ブヒをどのような環境に置くかが、行動を決める大切なポイントです。

 

世界中に、悪い犬なんて1頭もいません。

 

オーナーさんが、“望ましくない行動を起こす環境”に、愛ブヒを置いてしまっているだけなのです。

 

環境設定をするのは、誰?

フレンチブルドッグ

Jordan Goochshutterstock

 

では、後輩ブヒの環境を作れるのは、誰でしょうか? 

 

先住ブヒでしょうか? いいえ、結局は、オーナーさん次第ですよね。

 

もちろん、環境の中には“先輩ブヒ”も存在します。

 

しかし、山ほど存在する環境要因の中の、たった1つである先輩ブヒだけでは、後輩ブヒの教育なんて無理な話。

 

後輩ブヒに、家族として望ましい行動を教えられるのは、他でもない、オーナーさんです。

 

そもそも、「先輩が後輩を指導」するっていうのが、人間目線

フレンチブルドッグ

bozsja/shutterstock

 

そもそも、先輩ブヒに後輩ブヒの教育係を任命しても、それは難しいでしょうね。

 

だって、先輩犬には、後輩犬の将来を見据えて教育をするメリットがあります? 無いですよねー。

 

人間が勝手に連れてきた、謎の新しいブヒの行動に、迷惑さを感じれば、先輩ブヒは自分を守るために、攻撃したり威嚇したりするでしょう。

 

それを、人間が“先輩ブヒから後輩ブヒへの教育だ”と都合よく解釈してしまい、こういう噂が立ったのでしょう。

 

実際は、先輩ブヒが“自分を守るための行動”をしているに過ぎません。

 

つまり、ただの自衛です。

 

皆さんだって、急に自宅で他人が暮らしはじめて、自分の生活を妨害されたら一生懸命抵抗しませんか? 

 

でも、正直「やり返されるのは嫌だな」とか、「怖いな」とか、思いますよね。

 

ここがポイントなのです。

 

オーナーさんが自分の都合で新しく犬を増やしたのに、なぜ先住犬が危険を感じて、リスクを負ってでも、自衛の攻撃行動を取らなければいけないのでしょうか。

 

本来は、新しい犬を迎えて生活を整えるときには、先住犬にやらせるのではなく、オーナーさんが全面的に環境設定をする必要があるのです。

 

先住犬は、むしろオーナーさんが一生懸命守るべき対象なのです。

 

後輩ブヒから逆襲されてしまうリスクを先輩ブヒに丸投げにして、オーナーさんが後輩ブヒの教育を放棄したなら……。

 

先輩ブヒを孤立無援の状態にしてしまいます。

 

2頭目がラクだとしたら、オーナーさんの経験値アップの成果かも

フレンチブルドッグ

Tienuskin/shutterstock

 

とはいえ、2頭目は1頭目よりもラクに育てられたという方も、実際にはたくさんおられます。

 

そういったファミリーを見てみると、例えばこんな特徴があります。

 

・お家の中のレイアウトが、問題行動を予防できるような、愛ブヒ仕様になっている

 

例:

誤飲やイタズラをしないように、ブヒの届くところにものを置いていない。

入ると危ないところにベビーゲートがあるなど、未然に予防できている。

 

・1頭目を迎えたときに、家族が犬の行動に関する知識をたくさん学んだため、何かあってもすぐに解決案が浮かび、対処できている。

 

・家族全員で、愛ブヒへの生活のルールが、愛ブヒにわかりやすく設定できている。

 

・先住ブヒのことをよく理解できているため、新しい犬という“刺激”が家に入ってきても、先住ブヒの心と体の安全を守れている。

 

・オーナーさんが、ブヒのボディランゲージをよく観察できているため、ブヒたちの心の変化をよくキャッチできて、それに対して上手に対応ができている。

 

要するに、オーナーさんが2頭目を少しでもラクに感じることがあるならば、“オーナーさんが、1頭目を育てる間に学んだことが、2頭目に活用できている”ということでしょう。

 

人間の子育てだって、初めての子供の時よりは、2人目のほうが経験したことの分だけ見通しが立ちますよね。

 

1頭目でたくさん苦労した経験が活きているのでしょう。

 

そんなときには、「私も頑張ってきたのね」と自分を褒めてあげてくださいね。

 

新しく犬を迎えるのは、誰だって大変!  

フレンチブルドッグ

DiegoGoyeneche/shutterstock

 

私はドッグトレーナーですから、1,000頭以上の犬との関わりがあります。

 

さらに、一般の方よりはたくさんの知識があるはずです。

 

でも、それだって新しい犬が家族に加わるとなったら、決して簡単なことではありません。

 

家族みんなが、穏やかに笑って暮らせる日々まで、たくさんの時間と労力がかかります。

 

すべての犬が同じではありませんし、1頭ごとに、行動や感じ方や、学習してきたことが全然違うのです。

 

新しい犬と出会う度に、新しい発見があるのです。

 

だからこそ、2頭目を迎えて、大変なときがあれば「2頭目のブヒよ、私に勉強の機会をくれてありがとう!」と思いましょう♪ 

 

もしラクに感じることがあれば、「先住ブヒよ、きみが私に教えてくれたことが役立っているよ。ありがとう!」と感謝しましょう♪

 

愛ブヒたちは、いつだってオーナーさんに、ブヒの世界を教えてくれる先生です。

 

偉大なるブヒ先生の元、オーナーさんが無限に成長していきましょう!

 

こんなときは専門家に相談

フレンチブルドッグ

katamount/shutterstock

 

今回お話したテーマでも、オーナーさんだけでは解決が難しいケースがたくさんあります。

 

“出来ないから諦める”だけでなく、“出来ないから無茶をする”でもなく、出来ることの選択肢を増やすことを目指しましょう。

 

どうぞ一人で悩まずに、獣医さんやドッグトレーナーなどの専門家に、心の内をお伝え下さい。皆さんを支えるプロは、身近にたくさんいます。

 

ドッグトレーナーに依頼をする場合も、そのトレーナーが行動修正の豊富な経験を持っているか、学術的、科学的知識をもって動物福祉と動物への倫理に基づいた指導を安全に行える人材かどうか、オーナーさんが確認をするようにしましょう。

 

PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純

PERRO株式会社 代表取締役 
SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純

米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー

日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。

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