2021年11月3日4,416 View

Q なんだか鼻水が垂れているような…。犬も風邪をひくの?【ブヒの健康Q&A】

愛ブヒの健康こそ一番の願い。だから他人に「心配しすぎ」と笑われても、ちょっとした体調の変化にも心がザワザワ…。そんなオーナーさんも多いのでは? そこで今回より、「病院に行くまでもないかな…? でも気になる」といった症状について、獣医師の小泉しずかさんが解説する新連載『かゆいところに手が届く!ブヒの健康Q&A』がスタートします。あなたの“もうひとつのかかりつけ医”として、不安やモヤモヤを解消するお手伝いになりますように。

Q なんだか鼻水を垂れているような…。犬も風邪をひくの?

犬の鼻は通常、少し濡れていますが、鼻水が垂れているとなると心配になってしまいますよね。

 

「放っておいてもいいの?」それとも「病気の可能性もある?」と疑問が出てくるかと思います。

 

本記事では鼻水が垂れているときにチェックすべきポイントと、鼻水を起こす病気について解説していきます。

 

「鼻水が出ているから病気!」とは限らない

フレンチブルドッグ

Vikafoto33/Shutterstock

犬の場合、鼻水は健康なときでも鼻の粘膜から分泌されています。人間のように「鼻水が出たから病気!」というわけではありません。

 

しかし、心配になるほどたくさん垂れているときは注意深く観察する必要が。愛ブヒが鼻水タラタラの場合、以下の3つに注目して観察してください。

 

(1)色や粘性がある?

透明でさらっとしている鼻水は、緊急性が低い場合が多いです。

 

逆に、血が混ざっていて赤い、ドロッとしていて黄色いなどは炎症を起こしている可能性が高いので、早めに動物病院へ行きましょう。

 

(2)長期間続いている?

散歩後すぐに治る場合や、1日だけなど短期間であれば少し様子をみてOK。

 

しかし元気がない、食欲がないなど他の症状も一緒に出ているなら要注意。他の症状の程度にもよりますが、3日以上続く場合や日々悪化傾向にある場合は、早めの受診をおすすめします。

 

(3)片側か両側か

 一般的に片側だけの場合、腫瘍などの鼻腔内の病変が原因となっている可能性が高いです。

 

また両側でも鼻出血がある場合には、鼻以外の問題による病気も考えられるので、より注意が必要。

 

つまり、“透明でさらさらの鼻水が短期間であれば様子を見てOK”、しかし“食欲の低下など他の症状がある場合は早めに動物病院へ”と覚えておいてください。

 

なぜ鼻水が出るの? こんな病気の可能性も!

フレンチブルドッグ

Patryk Kosmider/Shutterstock

では、鼻水が出る原因にはどんなものがあるのでしょうか。可能性は大きく分けて4つあります。

 

1.異物が入った

 お散歩のときに植物を吸引してしまったり、嘔吐や食事の際、興奮で食べ物の破片が逆流し鼻腔に異物が詰まってしまうと鼻水が出ます。

 

犬が違和感を感じている場合、頭を振ったり、くしゃみをしたりすることも。

 

2.ウイルスなどに感染した

ウイルスなどに感染している場合、体の炎症反応の結果、黄色く粘りけの高い鼻水が出ることが多くみられます。

 

炎症が長く続くと粘膜が傷つき、鼻からの出血があることも。

 

鼻水が出る感染症には、以下のようなものが例として挙げられます。

 

ウイルスによるもの

・犬ジステンパー

・犬伝染性肝炎

・犬伝染性喉頭気管炎

・犬パラインフルエンザウイルス感染症

・犬ヘルペスウイルス感染症

・ボルデテラ症

リケッチア(微生物)によるもの

・サケ中毒(サケの生食で犬に感染します)

真菌によるもの

・アスペルギルス症

・クリプトコックス症

・リノスポリジウム症

寄生虫によるもの

・イヌハイダニ症

 

“鼻水が出る感染症”と聞くと、「ヒトの風邪みたいなもの?」と思うかもしれませんね。

 

しかし人間の風邪は、主に上部気道(鼻腔、咽頭、喉頭)に起こる感染症全般を指しますが、獣医療ではこれに該当するものが定義されていません。

 

その代わりに、犬伝染性気管気管支炎、通称『ケンネルコフ(犬の風邪)』と呼ばれるものがあります。

 

ケンネルコフは、上記の犬パラインフルエンザウイルスや犬アデノウイルス、犬パラインフルエンザウイルスなどの複数の病原体が関与している病気です。

 

また、口腔内に細菌が感染する歯周病が悪化し、歯根膿瘍という病気になって膿が鼻水として出てくる場合もあります。

 

3.腫瘍ができている

腫瘍が原因で鼻水が出ることもあります。鼻腔にできる腫瘍には、例として以下のようなものがあります。

 

・腺癌

・軟骨肉腫

・骨肉腫

・扁平上皮癌

・移行上皮癌

・線維肉腫 

・未分化癌

・リンパ腫

など

 

4.その他

様々なアレルゲン物質、刺激物などで鼻水が出ることも。人間の花粉症や鼻炎などと同じですね。

 

はっきりとした原因を特定することは困難ですが、季節や発症のタイミング(大掃除をした、タバコを吸う部屋でのみ起こるなど)から推測できることがあります。

 

「そういえば鼻水が出る時は、きまって掃除のあとかも」など、環境と関連がないかを確認してみてくださいね。

フレンチブルドッグ

Patryk Kosmider/Shutterstock

 

このように、鼻水の原因にはじつに様々。

 

しかし、腫瘍なのか炎症なのか、見た目だけではわかりません。また、腫瘍に伴い炎症も起こっていたり、異物に伴い炎症が起こっていることもあります。

 

そのため、血液検査、画像検査(レントゲン検査、CT検査、MRI検査、内視鏡検査)、細菌や細胞の検査などを総合して診断します。

 

愛ブヒとともに暮らす皆さんが、日々のコミュニケーションを大切にし、ちょっとした異変にいち早く気づいてあげることが病気の早期発見に繋がります。

 

少しでも気になることがあれば、早めにお近くの動物病院でご相談してみてくださいね。

 

 

獣医師:小泉しずか

獣医師:小泉しずか

2018年 日本獣医生命科学大学卒業。埼玉県内の動物病院にて勤務後、アイデックスラボラトリーズ株式会社にて臨床病理医として勤務。

 

 

こちらの記事も合わせてチェックしてみてくださいね。

【皮膚】関西屈指の皮膚のスペシャリスト!アトピーなどのアレルギー性皮膚炎に最先端薬で挑む【泉南動物病院・大阪】

いいなと思ったらシェア

おすすめ記事

特集

特集一覧