【取材】3歳から幾多の病気を乗り越えて…最高に親孝行な14歳。 #23 はいぢ
10歳を超えても元気なブヒを、憧れと敬意を込めて“レジェンドブヒ”と呼んでいるFrench Bulldog Life。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドブヒの肖像』です。
今回は、北海道に暮らす14歳のはいぢちゃんが登場します。3歳のころからたくさんの病気と闘い、そのたびに負けることなく乗り越えてきた強い女の子です。
目次
はいぢちゃんプロフィール
年齢&性別:
14歳の女の子
体重
6kg(最高時は10kg)
大好きなこと
ストーブの前で寝ること、人間観察
既往歴
3歳頃から後足が弱くなり始める。
6歳で子宮蓄膿症になり子宮摘出。
7歳で耳血腫(じけっしゅ。耳が内出血して腫れる病気。外耳炎等で耳に痒みが出て、掻いたり頭を振ったりして発症することが多い)に。
11歳でマラセチア外耳炎(常在菌のマラセチアが増加して起こる。外耳炎の主要な原因の一つ)に。
12歳頃から耳が聞こえなくなる。
13歳のとき、歯周病が原因と思われる鼻血。
14歳になった頃から、てんかん発作を起こすようになる。
同じく14歳。前足の力が入らなくなり歩行困難に。肺に問題があり、一時は危険な状態になるも回復。
野菜が好きな「お父さんキャラ」
マイペースで、人にも犬にも媚びず“お父さんのような雰囲気を持つ愛されキャラ”というはいぢちゃん。
どんな風に育てられたのか、オーナーの吉崎さんにお話を伺いました。
「生まれた頃は、北海道の実家で5頭が一緒に暮らしていました。ミニチュアシュナウザーが2頭に、チワワとブリンドルのフレブル、そしてはいぢです。
5頭の中でもどっしりと構えていて、お父さんみたいな雰囲気を出していましたが、2歳頃、千葉に引っ越したときに他のわんことは離れてしまいました。
北海道に戻ってきた今は、10歳になる私の娘と暮らしています。
気が付くとお尻をくっつけて落ち着いていたり、娘の遊びをじっと観察していたりと、仲良くしてくれています」
落ち着きがあって面倒見もよく、頼れるお父さんのような女の子だったんですね。
しかも、病院や注射も怖がることなく、本当に手のかからないお利口さんだったそう。
それは愛さずにはいられませんよね。
そんなはいぢちゃんですが、どんなものを食べて育ったのでしょう。
「食事は、ドッグフードに野菜などを加えたものをあげてきました。
仔犬から成犬期は『アイムス』、シニア期は『シュプレモ』と『ウェルネスコア』です。
野菜は基本的に茹でたもので、自分たちの食事の調理途中(味付け前)のものをあげています。
でも調理中の熱い視線に負けたときは(笑)、キャベツなんかをそのままあげたりして、バリバリ食べていました。一番多かったのは、ブロッコリーとゆで卵ですね。
それから、脱水気味になりがちなので、水分の多いキュウリなどをおやつによくあげています」
キャベツをバリバリ、おやつはキュウリ…、食べ物までお父さん!
それはさておき、ベーシックなフードと野菜の組合せ、そして適切な水分補給が、はいぢちゃんのご長寿ボディを作ってきたんですね。
可愛さと風格でドッグショーも席巻!?
環境の変化にも動じず、仔犬の頃からお父さんのような風格を持つはいぢちゃん。
なんと、ドッグショーに参加したこともあるそうです。
「ブリーダーさんの希望もあって参加していました。
ドッグショー自体は賛否両論あると思いますが、練習がしつけにも繋がったり、一緒に歩くことの楽しさを感じられたり、私たちにとっては、とても良い経験になりました。
長時間の“待て”や、人と歩調を合わせて歩くことなどを練習したのですが、歩くときは“愛犬とダンスを踊るように”と教えられました。
大会では、犬種別に、健康であることや犬種のスタンダードに近いことなどが審査されます。
審査では身体や歩様(歩く様子)などをチェックされ、数えきれないほどの犬の中から、その日1番の子が決まります。
その後、選ばれた各犬種の1番が会場にズラリと並び、その中からさらに全犬種の女の子と男の子の1番を選ぶのですが、その光景は圧巻でした!
やるからには真剣に、と頑張ってベストパピー賞をいただいたりもしましたが、勝敗にはこだわらず、小さい頃の楽しみとして参加していました」
可愛さと風格を併せ持つ、ニクいパピーだったんですね。ドッグショーに限らず、人と犬が力を合わせて一つのことに挑む姿には胸を打たれます。
幾多の病気を乗り越えて
どっしりと構えるはいぢちゃんの犬生にも、やはり多くの病気を乗り越えた歴史がありました。
まず3歳頃に、後ろ足が弱くなり始めます。
「腰椎と仙骨の未発達とか、馬尾症候群(腰椎と仙尾椎の中にある神経の束が圧迫されて起こる症状)かもしれない、とも言われました。
ですが大がかりな検査ができなかったので、正式な診断はつきませんでした。
この症状のせいで徐々に筋肉が落ちていき、足を引き摺るため靴を履いてないと足が血だらけになったり、排泄にも問題が出てきました。
踏ん張りが利かなくなり、寝ている間や歩きながら、無意識に排泄してしまうんです。
本人が途中で気付いて、慌ててトイレに向かったり、踏ん張り始めることもあったのですが、その時は何だか切ない表情をしていましたね…。
体重も最高で10kgあったんですが、痩せた体つきになってしまいました」
6歳のとき、子宮蓄膿症に
「元気なうちにいつか避妊手術をしよう、と思っていたのですが、その前に子宮蓄膿症になってしまいました。
緊急手術で子宮を摘出したのですが、受診がもう少し遅かったら危なかったそうです。
術後は毎日の点滴と手作りフードで回復してくれましたが、かわいそうなことをしてしまいました。
出産の予定がないオーナーさんには、早めの避妊手術をお勧めしたいです」
早めの避妊や去勢で防げる病気は多いので、やるやらないは別にしても、まず調べてみることが大切だと思います。
7歳のとき耳血腫、11歳でマラセチア外耳炎と耳の病気が続く
「それから7歳のとき耳血腫になりました。痒みを止めるための抗生剤注射と内服薬で経過観察し、症状は改善しましたが、後遺症で左耳が垂れています。
プレートを挟んで固定する方法もあったのですが、血腫が大きくなかったのと、できるだけ苦痛のない治療をと思い、それはしませんでした。
11歳のときにはマラセチア外耳炎になり、洗浄と薬で治療しました。薬は『ミミーナ』というものを使っていました。
油断すると再発してしまうので、今も定期的に耳掃除をして観察しています」
他にも、12歳頃から耳が聞こえなくなったり(家のチャイムなどに反応しなくなったので気付いたそうです)、鼻血やてんかん発作などが続きます。
死を覚悟した14歳
そして14歳。最大のピンチが訪れます。
「14歳になって、前足に力が入らなくなり歩行困難になりました。
それから数日で元気がなくなり、呼吸も荒くなったので病院に行きました。
レントゲンを撮ると肺が真っ白で腫瘍の可能性があるとのことでしたが、エコーでは大きな所見がなく、採血の結果も悪くありませんでした。
そこで、薬を飲み、酸素ハウスの中で過ごすという治療法を選びました。
一時は危険な状態になり、娘と泣きながらお別れの覚悟をしました。
ですがその後状態が良くなって、現在は時々呼吸が荒くなるものの、酸素ハウス無しで生活できています。
調子が良いときはヨタヨタ歩くこともあるんですよ」
吉崎さんと娘さんの祈りが通じ、14歳での復活!
はいぢちゃん、本当に頑張りました。
現在の暮らしは
これだけのケガや病気を乗り越えてきたはいぢちゃんと吉崎さん。
今はどんな暮らしをされているのでしょうか。
「当たり前ですが、わんこも歳をとるんだな~と実感しています。
気づけばオモチャにも興味がなくなり、遊び方もわからなくなったようです。
その分、抱っこしたり話しかけるコミュニケーションは増えました。
今は自分で食事もできず私が食べさせていたり、調子が悪いと排泄も手伝うことがあります。
元々介護士をしていたこともあって心構えがあったせいか、大変だと思うことより、お世話できる時間があることへの感謝や、愛しい気持ちの方が大きくなっています。
娘は“はいぢにいつでも笑顔を見せるといいんだよ”と私に教えてくれました」
喉が詰まりやすくなってしまったはいぢちゃんのために、ゆっくり観察しながら食事を与え、水はシリンジ(注入器)を使って飲ませたりもされているそうです。
そんな手厚いお世話をされている吉崎さんにも、やっぱり「もっとこうしておけば良かった」と思われることがあります。
「歯磨きが不十分だったのが大きな後悔ですね。
それから、もっとあちこち連れて行ってあげたかったんですが、車のない時期が長かったので叶えられていません。
そして今回の記事のために過去の写真を探したのですが、一緒に撮った写真がほとんどないことに気づきました。これはやっぱり寂しいですね」
もちろん、やっておいて良かったこともありました。
「耳が遠くなる前からアイコンタクトを意識してきたので、聞こえなくなった今も私の言っていることが通じます。
また、オーバーアクションで表現すると、より伝わっている気がします。
それと、娘が使っていたベビーカーを取っておいたのは良かったですね。
はいぢは大人しく乗ってくれるので、ペット用でなくても大丈夫でした。
若い頃から散歩にはあまり行きたがらず、それでも外に出れば生き生きと歩いていましたが、去年の冬から散歩拒否犬になり、仕方なくトボトボ歩いている感じでした。
そして今では歩けなくなってしまったので、このベビーカーのおかげで日光浴散歩に出掛けられています」
娘さんのベビーカーに揺られるはいぢちゃん。大事な娘二人への想いが重なって、吉崎さんの目にはどれほど愛おしく映ることでしょう。
ずっと親孝行で…
最後に、長寿の秘訣を伺いました。
「私が特に何かしてきたということはありません。親孝行な子です」
何という短い秘訣でしょうか。
でもこの一言に、吉崎さんとはいぢちゃんのすべてが込められている気がして、すっと納得してしまいました。
“子どもが健康で元気に暮らしていることが最高の親孝行”。
人間界では聞かれる優しい親御さんのセリフですが、吉崎さんのはいぢちゃんへの想いも、まったく同じなのだと思います。
今の暮らしから想像しても、これまで吉崎さんがはいぢちゃんのためにやってこられたことは、膨大なエネルギーや時間を必要としたに違いありません。
でも、そんなことは吉崎さんの中で負担や苦労という形では存在せず、ただはいぢちゃんが元気で長生きしてくれているという光だけが、心の中に温かく灯っているのだと思います。
散歩に行きたがらず、今では歩けなくなってしまったはいぢちゃんに「14歳を越えていくための体力温存でしょうか」と笑う吉崎さん。
共に生き、芯から理解し合おうとする家族だから持てる、何でもポジティブに笑えてしまう心持ち。
吉崎さんには、はいぢちゃんからもらったものの方が、よほど特別なものばかりに感じられるのでしょうね。
14歳も15歳もマイペースで乗り越えて、まだまだ親孝行を続けてね、はいぢちゃん!
取材・文/橋本文平(メイドイン編集舎)
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