【取材】皮膚型リンパ腫と闘う14歳。支えるのは「なるべく一緒に」と寄り添う愛と下町人情 #38 咲
10歳を超えても元気なブヒを、憧れと敬意を込めて“レジェンドブヒ”と呼んでいるFrench Bulldog life。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドブヒの肖像』です。
今回のレジェンドは、タレ目のベビーフェイスがなんとも愛らしい14歳の咲ちゃん。12歳で皮膚型リンパ腫を発症、3度もの大きな手術を経験しています。咲ちゃんに大病と闘う気力をくれたのは、パパママはもちろん、近所のみなさんから注がれた愛でした。
目次
咲ちゃんのプロフィール
年齢&性別
14歳の女の子
体重
8.6㎏
大好きなこと
夕方、近所の酒屋さんで、角打ちメンバーに参加すること。ボールを見つけること。見つけたら絶対に離さない!
既往歴
・2歳ごろストルバイト結石。投薬とロイヤルカナンの食事療法で、約2週間で完治。
・3歳ごろ足首のあたりに脂肪腫。悪性の疑いとの検査結果に、一時は足を切断するべきか悩むも、再検査で良性と判明。次第に消滅。
・10歳ごろから足の震えがあり、膝蓋骨亜脱臼のステージ2と判明。
・11歳で誤嚥性肺炎。
・12歳で皮膚型リンパ腫との診断。13歳目前で摘出手術、抗がん剤の投与を開始。
・13歳4カ月で再発し、摘出手術。積極的な治療から、やや緩和方向への投薬に切り替え。
・13歳9カ月で再々発し、摘出手術。完全な緩和ケアへのステロイド投薬を開始。
悪性だから一刻も早く手術を! と決断

術後2日目、13歳のバースデーにて。
ちょっぴりたれた瞳がチャームポイントの咲ちゃんは、14歳の女の子。
オーナーの市瀬(いちのせ)隆弘さん、真理さんご夫妻と、東京の下町で暮らしています。
もうすぐ13歳を迎えようとしていた、1年前の12月。市瀬さんは、咲ちゃんの脇腹にあずき大のできものを見つけました。
1週間でみるみる大きくなったので、病院で細胞診をしたところ、結果は皮膚型の悪性リンパ腫と判明。
これは血液中のリンパ球ががん化して、皮膚に湿疹や脱毛が見られるがんです。

あずき大だった腫瘍は、みるみる大きく。
先住ブヒがお世話になっていた大きな病院へ連れて行くつもりでしたが、ちょうど年の瀬。
ご夫妻は、「年末年始休暇を挟んで年明けに検査をしていたら、手術は1カ月先になってしまうかも。
間違いなく悪性なのだから、一刻も早く手術をしたほうがいい」と判断します。
かかりつけの病院で腫瘍専門の先生を紹介してもらい、12月28日に摘出手術をしました。
切除したとき、腫瘍はすでに直径5cmくらいになっていて、傷口も20cmと大きかったそうです。

術後すぐのとき。大きな傷跡が痛々しい。
「なるべく全身麻酔はしたくない方針の先生で、部分麻酔での手術にチャレンジしてくれました。
咲は手術中も大人しくしていたので、よくがんばった! とほめていただきました」(隆弘さん)。
2度の再発で、3度の摘出手術を経験

2021年1月。14歳とは思えないパピーのような愛らしさ。
しかし、13歳4か月で、おへその辺りに再発し、摘出手術。
さらに13歳9カ月のころに、今度は耳の後ろに再々発。合計3回の摘出手術をしました。
2回目の手術後には、積極的な治療から、やや緩和方向への投薬に。
3回目の手術後は、完全に緩和ケアへのステロイド投薬へと切り替えたそうです。
11歳のころには12.6Kgあった体重は、このとき8.6kgまで減っていました。

2021年1月。副作用が辛い抗がん剤の投与より、穏やかな余生を選択。
「3回目の手術後は、抗がん剤を投薬したほうがよかったのかもしれないけれど、抗がん剤を使うとぐったりしちゃうので。
余生を楽しく過ごしてもらいたいと思って、がんの活動を抑えるステロイド剤の投薬に切り替えました」(真理さん)。
先住犬の死を経験して

市瀬さんご夫妻と菊次郎くん(ブリンドル)、咲ちゃん(クリーム)。
ご夫妻には、先住ブヒの菊次郎くんがいました。
「菊ちゃんがいなくなったら生きていけない」と思った真理さんは、隆弘さんと相談して、菊次郎くんと暮らし始めて約1年後に、咲ちゃんを迎えました。
そんな菊次郎くんは、10歳を目前にした9歳10カ月のとき、甲状腺がんで虹の橋を渡りました。
「やっぱり菊が亡くなったときは悲しかったし、2頭いるから悲しみが減るというものではありませんでした」(真理さん)。

ブヒレスする菊次郎くんと咲ちゃん。
菊次郎くんのこともあり、“年を重ねると、いずれはがんになるんじゃないか”と想定はしていたという市瀬さん夫婦。
「とうとうこのときが来たか」との思いと同時に、咲ちゃんのためにできることをスタートさせます。
夫婦で協力し、生活サイクルも咲ちゃんファーストに

GOLFを楽しむ市瀬さんと、その様子をじっと見守る二頭。
病気が再発してからは、咲ちゃんをなるべくひとりぼっちにさせないよう、ご夫婦で協力してサポート。
介護士をしている真理さんは、職場に相談して、なるべく夜勤中心のシフトに切り替えてもらったそうです。
夜勤の真理さんが夕方に出勤し、しばらくすると隆弘さんが会社から帰宅。
翌朝、隆弘さんが出勤した後に真理さんが帰宅……と、お留守番の時間を極力減らす努力をされました。

旅行はいつも咲ちゃんと一緒に行けるところだけ選び、年に2回ほど行っていたそう。この写真は鬼怒川温泉に向かう東武鉄道・特急スペーシアの個室にて。
「すべては咲ちゃんのため」と、友人たちと海へクルージングに出かけるときも、隆弘さんの趣味であるクレー射撃場に行くときも、休日はいつも一緒。
「小さいころから雷や花火大会の大きな音も怖がらない子で、どこに連れて行ってもおとなしいので、人気がありました(笑)」と、隆弘さんの目尻が下がります。

ハッピ姿で角打ちに参加することも。
いつものお散歩コースの途中にある酒屋さんのおばさんにも可愛がってもらっていたそう。
愛されキャラの咲ちゃんは、いつの間にか酒屋さんの店内で立ち飲みを楽しむおじさんたちに混ざって、常連の“角打ち”メンバーに。
おじさんたちにも可愛がられ、すっかりアイドル的存在になりました。

いつものメンバーと角打ち中。
「見た目は優しくて女の子らしいとよく言われますが、本当は気が強くて。
うちではわがままなのに、外面がいいんですよね。私は“外面良子(そとづらよしこ)”って呼んでます(笑)」と真理さんは愛嬌たっぷりに話します。
お豆腐屋さんのおからが腸活に役立った

おからを混ぜたごはん。
特に食物アレルギーはない咲ちゃん。
健康のために食事で工夫していたことといえば、パピーのころからフードにブリーダーさんに勧められた酵素パウダーを混ぜてあげていたことくらい。

パピーのころから酵素パウダーごはんを食べて育ちました。
またお豆腐が好きで、近所のお豆腐屋さんで買うおからも定番のトッピングです。
「数年前からおからを混ぜてあげてみたら、便がいい状態になったんです」(隆弘さん)。
先住ブヒの菊次郎くんがフードを食べなくなったことから、一時は咲ちゃんにも手作り食をあげていましたが、災害時に備えて再び少しずつフードに戻してきました。

おから入りのフードを一口ずつ丸めて食べさせます。
「東日本大震災があったとき、“災害が起きたときに食べられるものがないと困る”と思ったんです。
シニアになってからは食べるのが下手になってきたので、いまは手で食べさせています。
最近は免疫力アップのためにとヨーグルトを混ぜているのですが、おからも混ぜるとヨーグルトの水分を吸ってくれるのでまとまりやすくて、ひと口ずつあげやすくなりました」(真理さん)。
一緒にいて寄り添ってあげたい

自宅で補液をしながら、復活を目指して闘病中の咲ちゃん。
今現在、咲ちゃんのように病気と闘っているブヒと暮らすオーナーさん達に、市瀬さん達が伝えたいのは、「なるべく一緒にいてあげてほしい」ということだそうです。
「寄り添ってあげる以外にないよね」と言う真理さんに、ご主人もうなずきます。
「治せるわけじゃないからね。歩けないけど、近所の人に会わせてあげると、ちょっと元気を取り戻す。日常を作ってあげるってことかな」(隆弘さん)。
調子が悪い日でも、いつもの酒屋さんに顔を出し、おばさんや角打ちメンバーに会うと元気が出るのだそうです。

いつもの酒屋さんにて。
「みんなが心配するから、長い間、病気のことは秘密にしていたんです。
“咲ちゃんが元気ないと俺たちも元気出ないよなぁ”なんて言ってもらいました。
初めてがんの宣告をされたときは涙に暮れたけど、病気をきっかけに知り合ったお友達や、インスタで知り合ったお友達に励まされました。
悪いことばかりじゃないですね」(真理さん)。

三浦半島の立石公園にて。
長寿の秘訣は、「申し訳ないくらい何もないんです。歯磨きもしていないけど、歯は丈夫で全部生えそろってます。
神経質になりすぎずに適当だったのが、咲ちゃんに合っていたのかもしれませんね」。
そうご夫妻は話します。
しかしお留守番の時間を減らすために、仕事のサイクルまで変えるという努力はなかなかできることではありません。
献身的なサポートを受けながら闘病していた咲ちゃんですが、この取材を進めている途中、虹の橋を渡りました。
パパママからはもちろん、ご近所のみなさんからも深く愛されていた咲ちゃん。
きっとその犬生は、誰よりも幸せに包まれていたことでしょう。
咲ちゃんのご冥福を心からお祈りいたします。

角打ちメンバーみんなが14歳のお誕生日をお祝いをしてくれました。たくさんの愛に包まれて、14歳という偉大な年齢を迎えられたことは、咲ちゃんにとってもこの上ない幸せだったことでしょう。
取材・文/都丸優子
★「#レジェンドブヒ」で投稿お待ちしています!
フレンチブルドッグライフでは、取材にご協力頂けるレジェンドブヒを探しております!
10歳を超えたブヒたちは、「#レジェンドブヒ」をつけてInstagramに投稿してみてくださいね。
編集部から取材のお声がけをさせて頂くかも!?
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