2021年4月23日12,179 View

掃除機にギャン吠え!どうすれば改善する?「慣らし方」を間違えるとトラウマになり悪化する危険も…!?

国際的なドッグトレーナーライセンスを取得している大久保羽純さんに、愛ブヒと固い信頼関係を築く方法を学ぶこの特集。今回は、掃除機に向かって吠える、噛み付くブヒたちに悩むオーナーさんへ、その解決策をレクチャーします!

フレンチブルドッグ,しつけ

愛ブヒが掃除機とうまくいかないとき、どうする?

フレンチブルドッグ

Marina Kadyrova/shutterstock

 

皆さんの愛ブヒは、掃除機が平気ですか? 苦手ですか? 

 

苦手な子なら、掃除機が出てきた途端に身体は緊張、興奮してギャン吠え。

 

はたまた、掃除機を破壊してしまうブヒもいます。

 

オーナーさんからは、「日常的に掃除機はかけないといけないし。掃除機を気にせず、お昼寝を続けているブヒに憧れるわ」なんて声を聞くこともあります。

 

そこで今回は、掃除機が苦手な愛ブヒとの暮らし方のアドバイスをご紹介していきます。

 

刺激をたくさん与えれば「慣れていく」という都市伝説 

フレンチブルドッグ

Galina V/shutterstock

 

まず初めに、皆さんにクイズです。

 

「掃除機が苦手なら、掃除機にガンガン触れ合わせればいいのよ! ほら、愛ブヒに向かって掃除機を動かして!」というアドバイスは正しいと思いますか?

 

これは他の犬が苦手なブヒに対して「犬だらけのドッグランに入れて、ガンガン触れ合わせればいいのよ!」というアドバイスとも似ていますね。

 

確かに、たくさんの刺激に触れさせたら慣れてくれそうな気もしますが…。

 

クイズの答えは「✕」! このアドバイスは非常にリスクが高く、おすすめできません。

 

この方法は「洪水法(フラッディング)」と言われるもの。

 

苦手な刺激を洪水のように浴びせ慣れさせようという方法です。

 

たとえば虫が苦手な人を虫だらけの部屋に入れるのも洪水法。聞いただけでゾッとしますね。

 

洪水法で愛ブヒに掃除機を押し付け続けた結果、掃除機に反応しなくなる可能性は0ではありません。

 

しかし、それ以上に掃除機への恐怖が増大、トラウマになり、今まで以上に敏感になる可能性があるのです。

 

余談ですが、私自身も洪水法で苦手なゴキブリを克服出来ないかやってみました。

 

結果は、もちろんダメ。まず、大量のゴキブリを見るトレーニング時間、それ自体が地獄です。

 

結局、ゴキブリが平気になるどころか、黒い物を見るだけで反射的にのけぞるようになりました(一時期、皮付きの揚げナスが食べられなかったほど)。

 

私達にとって掃除機はなんの危険も感じない物です。

 

しかし愛ブヒにとっては、突然現れて家中を大きな音を立てながら徘徊する“不審物”。

 

オーナーさんがどんなに「大丈夫だよ」と言えども、イヤなものはイヤなのです(私にとってのゴキブリのように…)。

 

どうか「無理矢理にでも刺激に触れ合わせれば慣れる」というデマカセ都市伝説に騙されて、愛ブヒを地獄に突き落とすトレーニングを試みるのはやめてください。

 

基本の考え方は「避ける」または「トレーニングをする」

フレンチブルドッグ

Southworks/shutterstock

 

では、どのように掃除機と暮らしていけばいいのでしょうか? 

 

掃除機に限らず、愛ブヒの苦手なものとの付き合い方は“避ける”か“トレーニングをする”の2択で考えることが基本。

 

トレーニングをして苦手なものを克服してもらえるのが理想ではありますが、時間には限りがあります。苦手なものを避ける道だってあるわけです。

 

私達にだって、どうしても好きになれない人の1人や2人いませんか? 

 

そんな相手に慣れるトレーニングに時間を費やすより、可能であればその相手を避け、楽しいことに時間を使ったって良いわけです。

 

私はトレーナーとして、この避ける方法を活用するのが大好きです。

 

なぜなら、すぐに効果が出ますし、ブヒを怖いものやキライなものに直面させなくて済むからです。

 

愛ブヒとの問題に直面したら、まずは避けることができるのかを検討しましょう。

 

その上で、もし今後一生にわたって避けられないもの(身体のケアや、クレートに入ることなど)は、積極的にトレーニングをしていきます。

 

掃除機の場合はどうでしょう。ここから掃除機を避ける方法とトレーニングする方法を紹介していきます。

 

避ける方法ってどんなもの?

フレンチブルドッグ

Tanes Ngamsom/shutterstock

 

掃除機を避ける方法(掃除機と接触させない方法)をいくつか紹介していきます。

 

1:掃除機をかける間は、他の家族と散歩に行ってもらう。

 

2:散歩に行っている間に、ロボット掃除機に掃除をしてもらう。

 

3:掃除機をかける間は、愛ブヒに別の部屋に行ってもらう。

別の部屋にいるとはいえ、掃除機の音や気配に気づいて興奮する可能性があります。そこで、別部屋ではたくさんの大好きな食べ物を入れた知育玩具で遊んでおいてもらうと、なおGOOD! 

 

4:掃除機をかける間は、ベランダで日向ぼっこや、知育玩具で遊んでもらう。

 

5:掃除機を諦めてほうきで掃除をする(これで解決したお宅もあるんですよ!)

 

ちなみにサークルやハウスの中にいてもらったり、抱っこをしながら掃除機をかけるというスタイルもありますが、この方法は✕ではないけれど「△」。

 

ブヒ自身が掃除機と自由な距離を保てない、逃げることが出来ないため、愛ブヒにストレスが掛かってしまう可能性が除外できません。

 

「え、そんなやり方?」と思った方もいるのではないでしょうか。「愛ブヒが掃除機を大丈夫になるようにしたいんだけど(怒)」とツッコまれた方もいるかと思います。

 

しかし、考えてもみてください。愛ブヒを変えるよりも、人間の暮らし方を変えるほうがよっぽど楽なこともあるのです。

 

トレーニングをする方法を考えてみよう

フレンチブルドッグ

Alexander Penyushkin/shutterstock

 

避ける方法と比較するためにも、ここからはトレーニング方法の一例を紹介してきましょう。以下の手順で進めていきます。

<1:掃除機との「距離」に慣れてもらう> 

(1)愛ブヒが興奮しない距離に掃除機を置く。同時に愛ブヒは大好きな食べもの(小さくちぎったオヤツなど)を食べ続ける。

 

節分の豆まきのように床に食べ物をばらまいてもいいし、オーナーさんが手からあげ続けてもOK。

 

(2)少しずつ掃除機と愛ブヒの距離を近づけていく。もし愛ブヒが食べ物を食べなくなったり興奮してきたら、掃除機との距離を遠ざける。

<2:掃除機の「音」に慣れてもらう> 

(1)愛ブヒが興奮しない距離に掃除機を置き、ほんの一瞬(1秒程度)スイッチを入れる。

 

同時に愛ブヒは大好きな食べものを食べ続ける。 床に食べ物をばらまいてもいいし、オーナーさんが手からあげ続けてもOK。

 

(2)掃除機のスイッチを入れる時間を少しずつ伸ばしていく。1秒でオンオフに慣れたら、2秒で、3秒でといった具合に。

 

もし愛ブヒが食べ物を食べなくなったり興奮してきたら、掃除機のスイッチを切り、そのあとはまた短い時間でのオンオフから始める。

<3:掃除機の「動き」に慣れてもらう> 

(1)愛ブヒが興奮しない距離に掃除機を置き、ほんの数センチ掃除機を動かす。興奮する子なら持ち手を持ち上げるだけでも十分。

 

同時に愛ブヒは大好きな食べものを食べ続ける。床に食べ物をばらまいてもいいですし、オーナーさんが手からあげ続けてもOK。

 

(2)掃除機の動きを大きくしていく。数センチ動かして止めて、大丈夫そうならまた数センチ。

 

愛ブヒが気にしなくなってきたらもう少し動かしてみる。もし愛ブヒが食べ物を食べなくなったり、興奮してきたら、掃除機の動きを止め、また小さな動きから始める。

<4:掃除機の「距離」「音」「動き」の組み合わせに慣れてもらう>

1〜3までが出来てきたら「距離」「音」「動き」を組み合わせていく。

 

例)愛ブヒと掃除機が3mの距離で、5秒だけスイッチをオン、1m動かす。

 

もし愛ブヒが食べ物を食べなくなったり興奮してきたら、刺激の組み合わせを小さくしてリトライ。

 

※愛ブヒをリードで引っ張って逃げられないようにしたり、愛ブヒが食べるのを止めたり興奮しているのに、そのまま推し進めようとするのは絶対にNG。逆効果です。

 

トレーニングするのか避けるのか

フレンチブルドッグ

Patryk Kosmider/shutterstock

 

いかがですか? トレーニング方法の例を見て、できそうかなと思う方もいれば、「うえっ、面倒くさそう!」と思う方もいるのではないでしょうか。

 

そうです。トレーニングは、少なからず時間がかかるものなのです。

 

「3秒で吠えない犬の出来上がり☆」なんて魔法みたいなものはありません。

 

だからこそ、“避ける”または“トレーニングをする”の考え方が大切なのです。

 

他の犬が出来ているのに愛ブヒができないと、少しプレッシャーを感じてしまうこともあるかもしれません。

 

でも、愛ブヒは他の犬のことを気にしてはいません。愛ブヒとオーナーさんが笑って暮らせればそれで良いのです。

 

できればフリーにさせているときに、ゆったり掃除機をかけたいものですが、そのために時間をかけてトレーニングをするくらいなら、さっさとロボット掃除機を家に導入して、愛ブヒとオーナーさんは散歩に出た方が早いかもしれません。

 

こんなときは、専門科に相談

フレンチブルドッグ

Tienuskin/shutterstock

 

なんだかんだとお話してきましたが、トレーニングをしないほうが良いといっているわけではありません。

 

愛ブヒの状態や家族の状況で、みんながみんな、こうしたら良いという正解はないのです。

 

たかが掃除機、されど掃除機。お家の家族構成や状況、愛ブヒの状態などで、掃除機に慣れる練習でも100万通りの選択肢があります。

 

初めてブヒを迎える方、飼育経験はあっても不安がある方は、どんどんプロに相談しましょう。

 

トレーニングをするならば、プロのサポートを受けながらやったほうがスムーズです。

 

トレーナーから学び、やり方を理解してしまえば、今後いろいろなものに応用が効くオーナーさんの糧となります。

 

ドッグトレーナーに依頼をする場合も、複数人と面談するようにしましょう。

 

そして、そのトレーナーが、生活環境の設定に関しての知識と豊富な経験を持っているか、学術的、科学的知識をもって動物福祉と動物への倫理に基づいた指導を安全に行える人材かどうか、オーナーさんが確認をするようにしてください。

 

PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純

PERRO株式会社 代表取締役 
SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純

米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー

日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。

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