2021年7月20日3,901 View

【かゆみ・炎症に悩むオーナー必読】犬アトピー性皮膚炎が根治する可能性も!最新治療「減感作療法」を実例とともに紹介【獣医師&製薬会社監修】

フレンチブルドッグがかかりやすい病気、犬アトピー性皮膚炎。その画期的な治療法が登場しました。それが「減感作療法」です。

この治療法をいち早く取り入れている皮膚科のスペシャリスト『泉南動物病院』の横井院長にその治療法について詳しく話を伺いました。

犬アトピー性皮膚炎の画期的治療法「減感作療法」

フレンチブルドッグ

sherwood/shutterstock

遺伝的に犬アトピー性皮膚炎にかかる子が多いフレンチブルドッグ。

 

これはハウスダストマイト(ダニ)や花粉など環境中のアレルゲンに対する過剰な免疫反応によって起こる皮膚炎で、フレブル以外にも柴犬やトイ・プードルといった犬種に多い病気です。

 

犬アトピー性皮膚炎は治ることがなく、生涯かゆみと付き合っていかなくてはなりません。しかも毎年、少しずつ悪化するもの。

 

実際にこの病気を患うブヒオーナーさんにとっては、日々我が子のかゆみとの闘いなのではないでしょうか。

 

しかし、そんな犬アトピー性皮膚炎に対し画期的な治療法が登場しました。それが「減感作療法」というもの。

 

今回はこの治療方法をいち早く取り入れている『泉南動物病院』の横井院長と、日本で唯一承認された減感作療法薬を扱うZENOAQ(日本全薬工業株式会社)さんに、この治療法について詳しく教えていただきました。

 

横井院長は特集『もしものときの名医図鑑』でも登場いただいた皮膚科のスペシャリストでもあります。

 

横井院長のもとで治療し、症状が改善したフレブル・アポロくんのオーナーさんのリアルな声もあわせてご紹介します。

 

「減感作療法」とは?

フレンチブルドッグ

MeBream/shutterstock

「犬アトピー性皮膚炎の主なアレルゲンはダニ(ハウスダストマイト)。

 

本来は無害であるダニや花粉に過剰反応してしまうことで、フレンチブルドッグは特に目や口周り、顎、前足に強く症状が出ます。

 

また、食物アレルギーを併発している症例が多く見られます」(横井院長)。

 

減感作療法はダニアレルゲンを少しずつ投与し、徐々に体を慣れさせて体質を改善、症状を和らげるという治療法。

 

人間の医療でもアレルギー性鼻炎や気管支喘息などへの治療で減感作療法が行なわれています。

 

この治療法は唯一、犬アトピー性皮膚炎が根治する可能性があるのが何よりの特徴です。

 

なお、泉南動物病院ではこの治療を行なうにあたり、現在日本国内で承認されている犬アトピー性皮膚炎の減感作療法薬である『アレルミューン(R)HDM』という治療薬を用いています」

 

これまで根治することがないとされてきたアトピーが、根治の可能性を秘めている、まさに大きな希望と言える治療法なのです。

 

メリットとデメリットは?

フレンチブルドッグ

Andy Gin/shutterstock

犬アトピー性皮膚炎の一般的な治療法では、かゆみ止めの薬を飲ませ続けることに加え、スキンケアや皮膚サポートの食事、サプリメントなど、重症になればなるほど費用や手間が発生します。

 

しかし若いうちに減感作療法を行なうことで投薬が不要になれば、ブヒ自身の体の負担はもちろん、オーナーさんの負担をも軽減できます。これがこの治療最大のメリット。

 

ただし誤解してはいけないのが、減感作療法を行なった全ての症例が100%治るわけではないということ。

 

ZENOAQさんによると、日本での臨床試験では、実際に治療した症例のうち70%に有効でした。

 

薬が全く不要になるくらい改善する例もあれば、薬を少し減らせる程度の改善具合の症例もあり、幅があるのが現状です。

 

一方でデメリットは、『アレルミューン(R)HDM』が注射薬のため、最初6回の投与が終わるまでは、頻繁に通院する必要があること。

 

そして費用がかかることが挙げられます。

 

また横井院長の経験では、一時的に症状やかゆみが悪化する副作用が出ることも。

 

ただしこれは『アレルミューン(R)HDM』の投与と同時にかゆみ止め薬を使うことで2~3日で改善するそう。

 

「最初、費用と来院回数の点ではご家族の負担にはなるけれど、愛犬の体質を変えてあげることができ、生涯続く投薬や自宅でのお手入れを減らせる可能性がある。

 

その可能性に賭けてみるだけの価値はあると思います」(横井院長)。

 

どんなブヒでも受けられる治療なの?

フレンチブルドッグ

Kittibowornphatnon/shutterstock

愛ブヒを常時苦しめるかゆみから救える可能性のある減感作療法ですが、どんなフレブルでも受けられるのでしょうか。

 

「治療を始める前に、犬アトピー性皮膚炎の疑いがあるかどうかが重要です。

 

似た症状が出る病気に食物アレルギーがありますが、犬アトピー性皮膚炎の症状は季節性があるのに対し、食物アレルギーの場合は現在の食事に対して症状が出るため、1年中かゆみがあり、かゆみ以外にも軟便や下痢といった消化器症状を認めることも。

 

フレンチブルドッグは犬アトピー性皮膚炎と食物アレルギー両方を持っているケースが多い。

 

そういう子の場合は食物アレルギーの治療をせず、減感作療法だけを行なっても効果が見えにくいため、犬アトピー性皮膚炎と診断する前に食物アレルギーの有無を診断し、治療しておく必要があります」

減感作療法早見図

減感作療法適応早見チャート

 

「また、減感作療法を実施する前に、その子がダニに対してのアレルギーがあるかどうかを診断するため採血をしてIgE抗体検査をする必要も。

 

陽性であれば減感作療法が適応となります」(横井院長)。

 

なお、横井院長の治療では、週に1回×6回の投与を最低限行ないます。

 

その後は皮膚状態を見ながら、定期的な追加接種の必要性を検討するそう。

 

「うちでは効果を維持するために、オーナーさんと相談しながら間隔を空けて2〜3年の投与を行なっています」(横井院長)。

 

犬によって減感作療法に適しているタイプ、適していないタイプも分かれるのでしょうか?

 

「減感作療法は若い犬の方が効果が高いとの報告があるようです。

 

しかし私の印象では、高齢だから効果がないというわけではないと思います。

 

ただし、ダニの特定アレルゲンにアレルギーがない子、つまりIgE抗体検査で陰性の子は治療に適していません。

 

また、ダニアレルゲンによる注射で副作用が強く出てしまう体質の子には、治療を続けるかどうかご相談させていただく場合もあります。

 

あと、何か他の病気にかかっているから減感作療法ができないということもありません。

 

減感作療法の実施については、今使っているお薬やその子の体調等も含め、まずは獣医師にご相談ください」(横井院長)。

 

費用は? どこで受けられる? 知っておきたいアレコレ

フレンチブルドッグ

Ezzolo/shutterstock

減感作療法がどんな治療なのか理解できたところで、いくつか気になる点についても伺いました。まずは費用について。

 

この治療薬は、フレンチブルドッグの体重によって金額に差が出ることはありません。

 

ただし感染症を伴っていたり食物アレルギーを併せ持っているなど、他の病気との兼ね合いで治療費が異なります。

 

また、診察・検査費用についても病院により変わるとのこと。

 

次に、この治療が受けられる病院について。

 

現在、全ての動物病院で実施されている治療方法ではないので、減感作療法を希望する場合は対応している動物病院を探す必要があります。

 

なお、減感作療法には今回ご紹介した注射薬の他に経口投与ができる舌下免疫療法もありますが、現在日本で承認されているものは注射薬の『アレルミューン(R)HDM』のみ。

 

舌下免疫療法の薬は現時点では未承認です。

 

「『アレルミューン(R)HDM』は日本の犬を対象に開発された薬であり、私自身も効果を実感しているのでお勧めできます」(横井院長)。

 

アポロくんのケース

フレンチブルドッグ

アポロくんプロフィール

7歳の男の子(クリーム)。5歳3ヶ月になった夏、ひどいかゆみの症状が出たため皮膚科で有名な泉南動物病院へ通院を開始。

 

実際に減感作療法を受け症状がかなり改善したというアポロくん。今回はアポロくんのママさんにもお話を伺いました。

フレンチブルドッグ,アポロくん治療前

治療する前の口周り。真っ赤で痛々しい。

 

「1歳頃から症状が始まり、当初は夏だけだったかゆみが次第に通年になり、ステロイドやアポキルも一時しか効果がなくて……。

 

排便も1回目は正常ですが、2回目以降は下痢気味でした。

 

5歳の夏には手足をかゆがって眠れず、エリザベスカラーを装着しても手を擦り合わせている状態に。

 

そのころは顎下や口周りが真っ赤になっていて、肛門周辺も擦り付けるせいで尻尾の毛がはげていました」。

フレンチブルドッグ

治療前。脇や尻尾の付け根、指の間などにも強く症状が出ていた。

 

そこで皮膚科の専門医を探して泉南病院を訪ねることに。

 

「まず先生は、アポロの症状から食物アレルギーを疑われ、自宅でできる食物アレルギーの除去食試験をすることに。

 

時間をかけて原因物質を特定・排除したら赤みが引き、お腹の調子も良くなったんです」。

 

食物アレルギーの症状はなくなったものの、翌年の梅雨ごろから脇の下に赤くて大きなブツブツが出て、手足のみを痒がるように。

 

それで犬アトピー性皮膚炎も持っていると診断。IgE抗体検査をすると【1+】の陽性でした。

 

この結果を受け、“アポロには体に優しい治療法を”と希望していたママさんのため、横井先生が以下3つの選択肢を提案。

 

・アポキルの服用

・サイトポイント注射を打つ

・減感作療法で体質を改善する

 

この選択肢で、ママさんが選んだのが減感作療法でした。

 

「アポキルは過去に何度も服用して一時的に痒みが収まるものの、終わりの見えない薬をいつまでも服用させたくない。

 

サイトポイント注射は有効率が70%であることと、高価格なこと。そして副作用はほぼないものの、この先何年も注射を打たせたくない。

 

それにハウスダストマイトを家から完全に排除することは不可能なのでこの先も共存するしかない。

 

これが減感作療法を選んだ決め手でした。

 

また、効果を感じられなければ1クールで中止できる点や治療回数が明確なのも安心できた理由です。

 

アポロ自身が病院や注射が苦手ではなく、過敏な体質ではないのも背中を押す一因になりましたね」。

 

症例写真で紹介! アポロくんに起きた変化

フレンチブルドッグ

左が注射2回目、右が3回目のあと。すでにだいぶ赤みが引いている。

 

治療を受ける前に不安だったことはあったのでしょうか?

 

「当初、減感作療法は唯一の根治療法と聞きましたが、アレルギーは根治しないとも聞くので迷いはありました。

 

また、費用が高額なのと長期間を要すること、有効率が70%という点が不安でしたね」。

 

しかし実際治療を始めると手足をかじらなくなり、エリザベスカラーを装着せず過ごせるように。

 

またかゆさで眠れないこともなくなったそう。

フレンチブルドッグ

左が5回目、右が6回目。顎の赤みが消え、掻くこともなくなった。

 

「脇の下などにできていたブツブツもおさまり、今年の春はかゆみ止めを飲むことなく調子よく過ごせています。

 

現在も定期的な追加接種を行なっていますが、とても状態が良いんですよ」。

フレンチブルドッグ

10回目の接種後。1週間経ってもまったくかゆがらない。

 

「もちろん、アポロもまだ根治したとは言えません。

 

でもこの治療によって、大切な我が子がかゆみで苦しまず暑い季節を過ごせていること。この事実にとても喜んでいるんです」。

フレンチブルドッグ

最近のアポロくん。アポキルを服用せずとも、今ではすっかり赤みもブツブツもなくなり、すべての部位でかゆみが出なくなった。

 

つねにかゆみがある状態というのは、とてもつらいもの。しかも自分ではどうすることもできない犬にとって、それは大きなストレスでしょう。

 

今回取り上げた減感作療法は、もしかしたら今後、相棒をかゆみから解放してあげられる可能性を持つもの。

 

もし現在、愛ブヒの犬アトピー性皮膚炎に悩んでいるのなら、減感作療法を試してみるのもよいのではないでしょうか。

フレンチブルドッグ

今ではかゆみから開放され、毛並みもピカピカに。よかったね、アポロくん!

 

 

泉南動物病院

HP http://www.sennan-ah.com/

横井愼一院長

大阪府泉南郡熊取町紺屋2-1-3

072-453-0298

*院長の皮膚初診枠は1時間、完全予約制。

来院の際には必ず予約をお願いします。

HPから皮膚科問診票をダウンロード、記入のうえ来院することをおすすめします。

 

犬アトピー性皮膚炎に関する情報サイト (ZENOAQ)

https://www.genkansa.jp/

 

取材・文/横田愛子

 

 

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