【猫がいるけど犬も飼いたい】突然ブヒを連れ帰るのは言語道断!犬と猫を「仲よく同居させる方法」とは
国際的なドッグトレーナーライセンスを取得している大久保羽純さんに、愛ブヒを正しく守り、導き、固い信頼関係を築くための方法を学ぶこの特集。今回は多頭飼いは多頭飼いでも、猫との異種多頭飼育について。猫のいる家庭に犬を迎えたいけど迷っている…という人に向けた、正しい犬の迎え方についてお伝えします。
目次
猫のいる家に新しく犬を迎えるときのオーナーさんの役割
先住猫さんがいる家に、新しくワンちゃんを迎える場合、お互いがストレスにならないようにどのようなことに気をつけたら良いでしょうか?
「犬と猫は、一緒にいれば勝手に仲良くなる」なんて考え方は、少々楽観的すぎますよね。
先住猫ちゃんは「犬を連れてきて」なんて言っていません。
猫ちゃんによっては、あまりのストレスに家の中で隠れたまま出てこなくなったり、嘔吐や下痢など体調を崩してしまう場合もあります。
もちろん、猫と犬の相性というものがありますから、同居が絶対に上手くいくわけでもありません。
しかし、少しでも両者の関係が良いものになる可能性を上げるために、オーナーさんが出来ることはたくさんあります。
今回は、猫ちゃんがいるご家庭が、新しくワンちゃんを迎える際の事前準備と、当日以降の流れを紹介していきます。
「ワンちゃん、来ちゃった♪」は絶対NG!猫と犬が一緒に暮らす前に必ずやるべき事前準備
もし先住犬がいる家に新しく犬を迎える場合でも、はじめの2週間はとても大きなストレスになります。体調不良になる犬も少なくありません。
先住者が猫ちゃんだった場合は、さらにストレスが大きくてもおかしくありませんよね。
先住猫ちゃんにとって、家の中は“世界の全て”と言っても過言ではありません。そんな中に、望まぬ侵入者(犬)が現れたら、もうびっくり仰天!です。
ですから、「ワンちゃんを衝動買い&連れて帰ってきちゃった♪」なんてことは言語道断。
猫ちゃん側のストレスを少しでも小さくするために、少なくとも数ヶ月前から以下のような準備が必要です。
犬が入れず、猫だけが滞在できる別室を作る
別室に、トイレ、ご飯、水、ベッドなどを用意しておく。猫に別室で過ごしてもらう時間を作り、別室でも問題なく日常生活を送れるようになるまで慣れておいてもらう。
猫と犬が一緒に過ごす部屋の中に、猫が逃げられる高い休憩所を数カ所作る
好きなときに、猫が自分で避難できるように練習しておく。
この2つがとても大切です。
みなさんも、自分の部屋に知らない人が24時間住みはじめたら結構キツイですよね…。
新しく犬が来ても、猫ちゃんの日常生活の安全が守られていることで、猫ちゃんのストレスを軽減出来ます。
新しく家に来たワンちゃんも、猫ちゃんのご飯を食べてしまったり、猫ちゃんのトイレを荒らしたり、トイレ砂を食べてしまったりすることがあります。
ワンちゃんが家に慣れるまでは、猫ちゃんのための別室があることが、お互いの安全のためにとても重要な措置なのです。
ついにワンちゃんが家にやってくる!いきなり対面させずに段階を踏んで
ワンちゃんが家に来る当日は、オーナーさんのお見合いコーディネーターとしての腕の見せ所です。焦らず猫ちゃんのペースを守って、以下の手順を参考に進めましょう。
(1)ワンちゃんを自宅に連れ帰ったら、ワンちゃんに家の中を紹介
リードを付けた状態や抱っこで、家の中の匂いを嗅いでもらいます。その間、猫ちゃんには、準備しておいた別室で過ごしてもらいましょう。
(2)次に猫ちゃんにワンちゃんを紹介
といっても、フリーで対面はさせません!
ワンちゃんはサークル内にいてもらい、猫ちゃんを別室からワンちゃんのいる部屋に案内。
ワンちゃんに邪魔されることなく猫ちゃんが自由に部屋の中やワンちゃんの様子を観察できるようにします。
このとき、事前準備で用意しておいた高いところにある休憩所を使う猫ちゃんもいるはずです。
<ポイント>
猫ちゃんによっては、犬の匂いや気配に警戒する子もいます。無理に部屋に連れて来ずに、自由に猫ちゃんがワンちゃんのいる部屋にアクセスできるようにしておけばOK。
(3)(2)の間、ワンちゃんにはサークル内でオモチャ遊びをしたり、おやつを食べたりしながら、猫ちゃんが同室にいる状態に良いイメージを持ってもらう
なにもしないと、ワンちゃんは猫ちゃんを見て興奮するばかりになってしまいます。もしこの時点で猫ちゃんへの興奮が強過ぎるなら、散歩に行くなど、まず別のことでエネルギーを発散させましょう。
<ポイント>
猫ちゃん、ワンちゃんともに同じ空間にいるときの印象をよくするために、オモチャやおやつ、ポジティブな声がけはどんどんしていきましょう。
<ポイント>
1回のお見合いは、ほんの数分から始めます。数分から数十分のお見合いを1日に数回繰り返します。
<ポイント>
次のステップまで数週間かかる子もいます。ただ闇雲に一緒にいれば慣れるというものではありません。
お見合い以外の時間は、猫ちゃんは別室でOK。
別室にいても、ワンちゃんの匂いや音などの刺激が猫ちゃんに影響を与えます。焦らず猫ちゃんのペースで進めることが肝心です。
(4)猫ちゃんワンちゃんともに、同室でリラックスしていたらワンちゃんを紐でつなぎサークルから出す
リラックスとは、体がゆるんでいる状態です。リラックスしているように見えたら、ワンちゃんを紐でつないだ状態で外に出します。
サークルにいるときよりも、ワンちゃんの行動範囲が広がります。
(5)(4)の状態でもお互いがリラックス出来ていれば、リードを付けたまま部屋の中を散策
すぐにでもワンちゃんのリードを外したくなるかも知れませんが、焦りは禁物。
ワンちゃんを自由にさせてあげたいときは、猫ちゃんは別室で休憩してもらいましょう。
(6)(5)の状態でもお互いがリラックス出来ていれば、リードを外して同部屋で過ごしてもらう
リードを外しても、油断は禁物。もしトラブルが起きたときにすぐに助けられるよう、常にオーナーさんが一緒に滞在していましょう。
大切なのは、お互いが自由な距離を保てる状況を保つこと。そのうえで、一緒に穏やかな時間を過ごせるようにしていきます。
上記のステップを進める中で、時にはどんどん進み、時には前のステップに戻ることもあるでしょう。全ては、猫ちゃん、ワンちゃんのお気持ち次第です。
お見合いコーディネーターであるオーナーさんに出来ることは、気持ちの良い環境を演出することだけですから。
慣れるまでの時間は、とっっっても個体差が大きい
すべての猫ちゃん、ワンちゃんが同じステップの進み方ではありません。
その子の性格、今までの経験によって、慣れ方はぜんぜん違います。
数日で慣れる子もいれば、数ヶ月、数年必要な子もいます。何年経ってもどうしても犬と一緒に暮らすことが受け入れられない子だっています。
犬と猫は時に親友になることもありますが、初めからそうではないことを家族全員で覚悟しておきましょう。
出会いを幸せなものにするために
先述の手順を見て、「ホントにここまで慎重にならなきゃ駄目なの?」と思った方もいるかも知れません。そうなんです。慎重になる必要があるのです。
それは、恐怖や危険の体験は後から消すことが難しいから。
犬猫を含む動物にとって、危険を避けることは、命を守るために重要な行動。
そのため、危険や恐怖を感じた経験は、なかなか忘れてくれません。根に持つことは、優秀な動物の証拠です。
だからこそ、これから一緒に過ごしていく家族にネガティブな印象がつかないように、慎重さが大切なのです。
これから一緒に過ごす年月の長さを考えれば、このお見合い期間の数ヶ月なんて、とても短いものです。どうか焦らず、慎重になり過ぎてください。
よく個人のSNSやネット情報で「すぐに慣れて、超仲良し♪」とか、「猫と犬だけで放っておいたら勝手に添い寝していた」などの耳ざわりの良い情報に流されないでください。
真似して失敗しても、誰も責任はとってくれません。あなたの愛猫、愛犬を守れるのは、あなただけなのです。
こんなときは専門科に相談
新しく子犬を迎える場合は、その子犬の親元であるブリーダーさんに、事前に相談をしてみましょう。
もし新しく保護犬を迎える場合は、団体の方がそのワンちゃんの特性を把握しているので、猫ちゃんと暮らせそうなのか、どういうペースで慣れていってもらえばいいかなど、相談に乗ってもらいましょう。
先住猫がいる場合も、いない場合も、新しく犬を迎えたら色々な壁にぶつかります。
そんなときには、どうか一人で悩まずに、獣医さんやプロのドッグトレーナーなどに相談しましょう。皆さんを支える仲間は、身近にたくさんいます。
ドッグトレーナーに依頼をする場合も、そのトレーナーが猫と犬の同居に関しての知識を持っているか、先住猫と暮らし始めた犬に関する行動修正の豊富な経験を持っているか、学術的、科学的知識をもって動物福祉と動物への倫理に基づいた指導を安全に行える人材かどうか、オーナーさんが確認をするようにしましょう。
PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純
PERRO株式会社 代表取締役
SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純
米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー
日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。
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