2023年2月16日2,506 View

【愛犬をわがままにするオーナーのNG行動 Part.2】コマンド、指示を無視!その原因と対策は

国際的なドッグトレーナーライセンスを取得している大久保羽純さんに、愛ブヒを正しく守り、導き、固い信頼関係を築くための方法を学ぶこの特集。前回よりシリーズでお届けしているテーマ“愛犬をわがままにしてしまうオーナーさんのNG行動”ですが、第2回目となる今回は、飼い主さんの指示を無視する原因とその対処方法についてお送りします!

フレンチブルドッグ,しつけ

「わがまま」は犬側の問題? 

French Bulldog

Ashley Reams Mistretta/Shutterstock

 

可愛くて大切な愛犬。しかし、ときには「わがまま言わないで!」と困ってしまうこともありませんか? 

 

大切に、しかししっかりとしつけて育てたつもりなのに…と心配する声もあります。

 

「うちの子はわがままな性格だから、もうどうしようもない」と思っている方、大丈夫です。人間から見たらワンちゃんが“わがまま”を言っているように見える行動も、実はわがままだからではありません。

 

わがままに見える行動が出ざるをえない環境の中に、その子が置かれているだけで、わがままなわけではないのです。

 

そこで、前回より数回にわたり、よくある“わがままに見える行動”と、その理由について、例をあげて解説をしています。今回はそのPart.2です。

 

初回はこちら「【愛犬をわがままにするオーナーのNG行動 Part.1】おやつをもらえないと吠え続ける!その原因と対策は」をご覧くださいね。

 

なかなか指示を聞かない原因

フレンチブルドッグ

Serhii Yushkov/Shutterstock

 

今回はよくある「わがまま」に見える行動は「指示をしても、なかなか聞かない、無視する」というケースです。

 

例えば、犬友に会ったとき、オーナーさんが飛びつくのをやめさせようと「オスワリと」言っても聞かずにジャンプし続けたり、ドッグランで「オイデ」と呼んでも無視して遊び続けるなんて話、よく聞きませんか? 

 

これを愛犬の「わがまま」と言えるでしょうか? みんなで考えてみましょう!

 

このような、犬がオーナーさんの指示を聞かない行動の原因は大きく分けて2つ。

 

1:指示の内容をよくわかっていない。

2:指示の内容はわかっているが、指示よりも優先したいことがある。

 

指示を聞かない理由その1:よくわかっていない

フレンチブルドッグ

Pixel-Shot/Shutterstock

 

これは、オーナーさんの指示が明確でなかったり、指示の練習不足が原因。犬は何を求められているのか理解できず、指示を行動に移せないのです。

 

「いやいや、うちの子、指示されたことくらい、ちゃんとわかっていますって。そもそも、ちゃんとわかっているかなんて、どうやって判断すんのよ?」とお思いの皆さんもいるでしょう。

 

そんな時、指示がちゃんとわかっているかチェックする方法があります。

 

例えば、「オスワリ」のコマンド。以下の方法で確認してみてください。

 

1.オーナーさんは、愛犬の前で直立します。

2.そのまま身体は動かさず、1度だけ「オスワリ」と言ってみてください。

 

1発で愛犬がオスワリをしたら、「オスワリ」の指示を理解している可能性が高いでしょう。

 

しかしオスワリをせず、キョトンとした顔で見つめてくる子も少なくありません。

 

なぜなら、多くの犬たちは「オーナーが前かがみになって、オーオーと叫んでいるときは、座っておくといいみたいだぞ」程度の、その場の雰囲気でオスワリをしているからです。

 

あとは、「オスワリ」という単語ではなく、「オスワリ! ねぇ、オースーワーリーしてっ!」なんて文章を、1つの指示として認識している子もいます。

 

要するに、指示を理解しているというより、その場の雰囲気を読んでいるのです(ちなみに、「フセ」の指示は「オスワリのあとに、ワーワー言われたら、フセをしておけばいいっぽいぞ」なんて覚え方をしている子達も結構います)。

 

もちろん、ちゃんと練習を重ねれば、どの子だって「オスワリ」を指示として理解出来るようになります。

 

しかし、練習が不十分なまま、なんとなく「出来ているっぽいまんまの子」もたくさんいるのが現状です。

 

こう考えると、「指示を聞かないわがままな子」ではありませんよね。いっそ、オーナーさんとのトレーニングが不足しているのに、空気を読むことでカバーしてくれている、おりこうさんにすら思えませんか?

 

指示を聞かない理由その2:指示が最優先にされていない

フレンチブルドッグ

MR.SOMKIAT BOONSING/Shutterstock

 

ふたつ目の原因も紹介します。

 

指示の内容はわかっているが、本犬なりに優先すべきことが目の前にあるため、指示を無視するというケースです。

 

このケースの場合、こうなってしまう理由が2つ挙げられます。

1.過去にちゃんと指示を聞いたのに、報酬がいまいちだった経験が繰り返された

例えば、「オイデ」と言われて行ったのに、嫌いな服を着せられるなど“嫌なこと”をされり、美味しくないご褒美だったり。もしくは、ご褒美すらもらえなかったり…。

 

指示は理解できても、指示を聞く優先度がだだ下がりの状態です。

 

2.指示を聞いたことでもらえる報酬より、目の前のやりたいことの方が報酬レベルが高い

例えば、大好きな犬友との追いかけっこ中に「オイデ」と言われたって嫌でしょうし、すごく眠いときに「オモチャを持って来い」と指示されたって嫌ですよね。こういうときは、指示は無視されがちです。

 

みなさんだって、給料未払い続きの会社になんて、働きに行きたくないですよね。自分の大事な用事がある日に、バイトを変わってと言われたって嫌ですよね。

 

愛犬に指示を聞いてほしいなら、聞いてもらったあとに十分なご褒美が必要です。それも、“毎回”必要です。

 

さらに、どんなご褒美を与えたとしても、指示を聞けないだろうと予想できる状況のときには、指示をして動かすことを諦める気持ちも大事です。

 

例えば、病院が苦手な子に診察台の上で「オスワリ!」と叫んだって、怖くて出来ません。

 

やれたとしても、良い気持ちにはなりませんから、日常のオスワリの指示に対しての印象も悪くなります。やらせるだけ損! 

 

犬は絶対に指示を聞いて、服従しなきゃダメなの? 

フレンチブルドッグ

Chekyravaa/Shutterstock

 

「えー、でも、犬はどんな時もオーナーの命令には絶対従うべきじゃないの?」とおっしゃる方もいます。

 

もしオーナーさんが「俺様はオーナー様なんだから、すべて従えい! ぶん殴るぞ!」なんて横暴でぶっ飛んだ恐い人なら、犬は命令をパッと聞くかも知れません。だって、言うことを聞かないと、もっと嫌なことをされそうですから。

 

その犬の行動選択の最優先事項は“ぶん殴られないこと”になるので、指示は聞いてもらえます。

 

しかしこれだと、パワハラ上司との共同生活のようなもの。

 

犬は日々オーナーさんにぶん殴られないかを心配しながら暮らすことに。こんなものは、幸せな家族の心理状態ではありませんよね。

 

指示を聞かないのには、理由があるんです

フレンチブルドッグ

Olga Kri/Shutterstock

 

つまり、指示を聞かない犬はわがままなのではありません。犬だって、わからんもんはわからん。嫌なもんは嫌なのです。

 

まとめると、要点は以下のふたつ。

 

・指示を聞いてもらうには、日頃からの練習と報酬の積み重ねが大切。

・どんな仲の良い家族でも、指示を聞いてもらったら、それ相応の報酬を与え続けることが必要不可欠。

 

「私のこと大好きなんだから、タダで指示を聞いてくれるよね!」は、今の時代はもうNG。犬にも断る権利、報酬を得る権利がありますから。

 

「言うことを聞かないなんて、日頃世話してもらっているくせにわがままだぞ!」なんて言って、タダ働きをさせたり、弱い立場の相手に命令を強要しちゃったら、ブラック企業社長まっしぐらです。

 

大事なことなので繰り返します! 

 

指示を聞いてもらうには、本人が「指示を聞いたほうが得だ!」と思う経験の積み重ねが必要です。

 

決して、オーナーが偉いからとか、オーナーを好きだからだけで動くわけではありません。人間も犬も、同じです。指示を聞くには、それ相応の報酬が欠かせないのです。

 

今回は、犬がわがままに見える行動2つ目として、指示を聞かない、無視してくる犬のケースを紹介しました。

 

引き続き、他の“わがままに見える行動”の理由も解説していますので、Part.3も是非ご覧ください。 次回は、<お散歩で好き勝手に歩く、引っ張る>について紹介します。

 

PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純

PERRO株式会社 代表取締役 
SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純

米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー

日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。

 

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