「寂しいよ…」無駄吠えの増加や破壊行動など『愛ブヒが愛情不足を感じているサイン』
国際的なドッグトレーナーライセンスを取得している大久保羽純さんに、愛ブヒを正しく守り、導き、固い信頼関係を築くための方法を学ぶこの特集。今回は、犬が愛情不足を感じているときに出すサインについてご紹介します。独立心が強い和犬と違い、甘えん坊が多いブヒ。実は寂しい思いをしていても、飼い主さんが気づいてないケースもあるかもしれません。愛しい我が子が幸せに暮らすために、寂しいときに出すサインについて学びましょう。
目次
うちの子は幸せかな?
とあるブヒオーナーさんから、こんな質問がありました。
それは「寂しさを感じている、愛情をもっとかけてほしいと思っている犬なりのSOSサインがあれば教えてください」というもの。
みなさんは、愛犬が寂しがっていたり、愛情不足になっているときに、どんなサインで気づくでしょうか?
「毎日大切にして、可愛がっているつもりだけど、満足してもらえているのかな…?」と思っているみなさんも、「最近ちょっと愛犬に時間をかけてあげられていないかも」と心配なみなさんも、一緒に“寂しいとき・愛情不足を感じているときのサイン”をチェックしておきましょう!
これってもしかして、寂しい・愛情不足のサイン?
言うまでもありませんが、愛犬たちは寂しいときに「もっとかまってよ」とか、「さみしいよ」と言葉で表現できません。そのため、私達が彼らのサインに気づく必要があります。
まずはそのサインをいくつか紹介していきましょう。
・体調不良
下痢、嘔吐、食欲不振等など、心のストレスが体に影響を及ぼします。
・執拗な後追い
オーナーさんにやけについて回っていたり、トイレや風呂などで少しでも離れると吠えたり、パニックになることもあります。分離不安にも見えるかも知れません。
・無駄吠えの増加
寂しさのストレスから、音や様々な刺激に過敏になって、吠えが増えることがあります。
・攻撃的になる
寂しさのストレスから、物を守ろうと威嚇する行動が増えたり、ちょっとしたことにも唸ったり、噛もうとしてくる行動が増えることがあります。
・トイレの失敗
家中にマーキングをしたり、留守番中にトイレを違う場所で失敗したりすることもあります。大事な補足ですが、犬にとって排泄は、オーナーさんへの嫌がらせではありません! 自分の匂いをいろいろな場所につけたり、排泄のすっきり感によってストレスを解消するための行動の1つなのです。
・物の破壊
家具など家にあるものをかじることで、寂しさを解消しようとすることもあります。
・自傷行為
足など、体の一部をなめ続ける行動が増えることがあります。なめていると毛の色が変わって来るだけでなく、ひどい場合には皮膚がめくれてしまうほどの傷になることもあります。
・常同行動
常に同じ場所をぐるぐる動き回ったり、何度も繰り返ししっぽを追い回したりなど、目的の不明確な繰り返し行動が増えることもあります。
・無気力
好きなはずの遊びや散歩に誘っても、反応が悪かったり、愛犬側からオーナーさんに接触しようとする機会が減ることもあります。
これらのサインが見えたら、すぐにでも対処を考える必要があります。
例えば、健康に関係するものなら、まずは病院で診てもらう必要があります(きっと寂しいからよね…と病気を見逃しては大変です!)。
「問題行動だから」と、罰を与えるしつけで行動を改善させようとしても、原因が解決しなければ、解消されず愛ブヒが可哀想なだけ。
愛犬側に問題を見つける前に、家族の生活を1度見直す冷静な視点が、オーナーさんには必要です。
サインの多くは、微妙で分かりづらいもの
上記で紹介したようなサインは、比較的わかりやすい行動だったり、心のストレスが高いときに現れてくるようなサインです。
しかし、実際の“寂しいと感じているときのサイン”の多くは、もっと繊細で、微妙で、分かりづらいもの。
いつもラブラブなオーナーさんとブヒが、数日間オーナーさんが忙しくて、あんまりかまってあげられなかったりする場合、もっと、もーーーっと“小さなサイン”が出たりします。
例えば我が家の愛犬は、私が出張で数日間留守にすると、戻ってきた私に対してやや“そっけなく”なります。
いつもより、なんとなーく距離を感じます。私に向ける目線も、キラキラ度が下がります。
「寂しかったのなら、戻ってきたオーナーにぐいぐい来るはずだ」と言うのは思い込みで、寂しさからスーッと距離を置いてしまうタイプもいるのです。
人間でも「もう! 寂しかったんだから! プンプン」とわかりやすく表現するタイプもいれば、「私は別に気にしてませんよ。大丈夫ですって(本当は大丈夫じゃないけど…)。ツーン」と分かりづらい表現になってしまう人っていませんか?
犬も人も、個性がありますよね。
我が家では、不在だった時間を詫び、たっぷり一緒に時間を過ごしながら、お互いの溝を埋めていく数日を経ることで、日常の距離感が戻ってきます。
“そっけない”以外にも、微妙なサインの出方として、“なんかムカムカしている”というタイプの子もいます。
散歩に出ようとリードを付ける際にも、いつも以上にドタバタ動き回ったり、散歩中にも変に興奮して好き勝手歩いたり、おもちゃ遊びも日頃より荒っぽかったり。なんだかちょっと、ぷりぷりモード。
他にも、沈んでいくような表現になる子もいますし、イライラした様子で表れるパターンの子もいます。
人間でも、ガーッと表面に出るタイプと、静かに溜めていくタイプがいるように、犬たちもみんな同じようにサインが出るわけではないようですね。
心の栄養不足は気付きづらい
繰り返しますが、多くのサインは地味で見逃されやすいものです。
食事が足りなくて痩せていくような“身体の栄養不足”の場合は、体重が減っているとか、見た目の変化でわかりますよね。
しかし、寂しさを感じている愛犬の“心の栄養不足”の状態は、とても気付きづらいものです。
蛇足になりますが、少し前までの動物園では、身体の栄養不足には気をつけていたので、動物たちの病気を防いだり、寿命を延ばせてはいました。
しかし、長生きは出来ても、なんの刺激も無いコンクリートの檻の中で過ごすだけの寂しい日々は、動物たちを精神的に追い込み、うつ状態のようにしてしまっていたのです。
近年では、動物福祉の研究も進み、身体だけでなく、心の健康状態も保つための取り組みが動物園内でも盛んになってきています。大変嬉しいことですよね。
愛犬たちに対しても、オーナーさんによる日々の観察と研究が大切です。
ドッグドッグなどで身体には問題がないとわかっても、心の健康状態は計れません。病院で診断できないからこそ、オーナーさんが心の健康状態も保つことが大切なのです。
ストレスが溜まりすぎて、明らかすぎるサインが出てしまう前に、「ちょっといつもと違うな」というほんの少しの空気の変化を、オーナーさんが感じていけるようになることが理想です。
小さな変化を見逃さないためにも“愛犬の理想的な状態”を記憶しておくことが大切です。
愛情がたっぷりチャージされて、ごきげんな愛犬の状態を目標値として、常にイメージしておきましょう。
よく寝て、よく食べ、よく遊び、キラキラした目でオーナーさんを見つめる愛犬は、きっと満たされた生活を送れているはずです。
人生も犬生も、毎日同じではありませんから、ずーっと変わらずMAXラブラブ状態とはいきません。お互いの心身のアップダウンに合わせて、その都度軌道修正をしながら、一緒に歩んでいきましょう。
こんなときは、専門科に相談
愛犬の行動に変化があったとき、寂しいと感じているからなのか、それとも他になにか問題があるのか、それを見分けることは難しいことです。
そして、どのようにアプローチしていけば、みんなが笑顔で暮らせるのかを考えることも、とても複雑なことです。
どうか一人で悩まずに、ドッグトレーナー、獣医師、トリマーなど、身近にいる専門家に相談をしてみましょう。
ドッグトレーナーに依頼をする場合も、複数人と面談するようにしましょう。
そして、そのトレーナーが、生活環境の設定に関しての知識と豊富な経験を持っているか、学術的、科学的知識をもって動物福祉と動物への倫理に基づいた指導を安全に行える人材かどうか、オーナーさんが確認をするようにしましょう。
PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純
PERRO株式会社 代表取締役
SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純
米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー
日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。
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