2023年5月29日2,382 View

ギャンギャン、ガブガブは1歳まで!?「犬は2歳になったら落ち着く」という都市伝説は本当? 

国際的なドッグトレーナーライセンスを取得している大久保羽純さんに、愛ブヒを正しく守り、導き、固い信頼関係を築くための方法を学ぶこの特集。今回は、巷でよく耳にする“わんぱくな犬も、2歳になれば落ち着いてくれる”という都市伝説について。パピーを迎えたばかりのオーナーさんの中には、「今はノイローゼになりそうなほどてんてこ舞いだけど、2歳までの辛抱だ…」と自分を励ましている人も多いのでは? この都市伝説、果たして本当なのでしょうか!?

フレンチブルドッグ,しつけ

「犬は2歳になったら落ち着く」ってホント?

フレンチブルドッグ

Zayats Svetlana/Shutterstock

 

あるブヒオーナーさんから、こんな質問がありました。

 

「うちの犬が落ち着いているからか、ワチャワチャしている犬の飼い主さんに“うちの子も2歳を過ぎたら、こんな風にのんびり落ち着いて過ごせますか? よく2歳を過ぎたら仏のようになるって言いますよね?”などと聞かれます。 うちは子犬のときから大人しかったので、なんとも答えようがありません。この“2歳で落ち着く説”って、本当ですか? 

 

皆さんはどう思いますか? 時間が経てば、ワチャワチャ、ドタバタ犬も、落ち着いた犬になるのでしょうか? 

 

最初に結論から言っておきますね。

 

2歳で落ち着くという都市伝説は、大ウソです。

 

パピーや1歳頃の元気が有り余って暴れん坊になっている犬を育てるのに疲れ切っているオーナーさんに向けて、気休めの言葉として使うには耳障りが良いですが、そんな甘い話はありません(甘い話にすがりたくなるほど、子犬育ては疲れますよね。気持ちはよーく、わかります!)

 

とはいえ、この都市伝説が全く見当違いかと言うと、そうでもありません。

 

“子犬を迎えてから、しっかり継続的にトレーニングを重ねていけば、”2歳ころには大分落ち着いた生活ができるようになってきますよ」と補足をすれば、ある程度正しいと言えるでしょう。

 

その子、本当に「落ち着いている子」なの?

フレンチブルドッグ

Ezzolo/Shutterstock

 

街中で落ち着いた犬を見かけると、「いいなぁ…」と思うこともあるかも知れません。

 

オーナーさんの横をゆったり歩く子、カフェでまったり過ごしている子、抱っこされてすやすや眠る子、他の犬と静かに挨拶を出来ている子…。落ち着いた子の姿を見る度に、「いつになったらうちも、ああいうふうになるのかしら?」と思う気持ちはよくわかります。

 

とはいえ、落ち着いて見える子にも、その裏にはいろいろな事情があるものです。外からは分からないその事情をいつくか紹介します。

パターンA

たまたま、ぼーっとしている瞬間だったため、落ち着いているように見えたが、その少し前は、大騒ぎをしていた。オーナーさんに話しかけると「全然落ち着いてなんていませんよ! この子の大暴れを見て欲しいくらい!」との返答。

パターンB

知らない人の前では、緊張して静かにしているが、家の中では、ドッタンバッタン! あだ名は「内弁慶」。

パターンC

数々の苦難とトレーニングを積み重ねた賜物。オーナーさんに話しかけると大体「いやぁ、うちも昔は大変だったんですよ」と言うリアクションが返ってくる。

パターンD

オーナーさんの抱っこが大好きなため、抱かれている間は落ち着いて見える。下に降ろそうもんなら、大騒ぎ。オーナーさんは年々マッチョになっていくらしい。

 

などなど。一見落ち着いて見えるワンちゃんたちも、24時間落ち着いているわけではなく、落ち着いている場面があるというだけのようですね。

 

SNSでキラキラの私生活を配信している人の中でも、実は深〜い悩みを抱えていたりするように、よそのワンちゃんの1場面を見ただけでは落ち着いた犬かどうかなんて、わからないのです。

 

落ち着いた愛犬にするには? 

フレンチブルドッグ

DuxX/Shutterstock

 

とはいえ、よその子で“素敵だなあ”と思う子がいれば、オーナーさんに話を聞いてみるのも良いと思います。「いや実は、うちも全然落ち着いていないんですよ」とか、「苦労したんですが、こんな風にして落ち着いてきました」とか、参考になる話も聞けるかも知れません。

 

とはいえ、犬の数ほど個性はあります。みんなが同じように育つわけではありません。ただただ“静かな犬”でいてほしいなら、ぬいぐるみを飼うしかありません。

 

ぬいぐるみではなく、感情を持った犬と一緒に生活したいなら、愛犬にTPOをわきまえてもらうトレーニングを繰り返していく必要があります。

 

とても根気と時間のかかるものですが、「生活の1場面ごとの、望ましい行動を学習してもらう」のです。

 

カフェで落ち着く練習の例

Valeriya Anufriyeva/Shutterstock

例えば、カフェで落ち着く練習をするなら、まず以下の条件をそろえましょう。

 

・愛犬が興奮させられてしまう刺激が、少ないカフェを探す。

・人や犬の動線になっている席は避けて、静かな席を選ぶ。

・カフェに行く前に、たーーーーっぷり運動をさせて、疲れ切った状態にしておく。

・落ち着ける座席(お気に入りのマットや、バギーの中など)を愛犬に用意しておく。

・はじめはほんの数分の滞在。落ち着いていられる時間を、少しずつ延ばしていく。

・興奮させてくる対象からは、距離を取る(挨拶してこようとする他の犬、なでようとしてくる店員さんなどは、落ち着く練習の始めには向いていない)

・もし興奮しそうな状況になったら、騒ぐ前に退店せよ。

 

…など、まずはオーナーさんが愛犬がカフェで自然に落ち着ける環境をセッティングします。「この環境なら、うちの子も絶対落ち着いていられるだろう」という万全の状態を用意した上で、愛犬を招待し、成功体験を重ねていくのです。

 

練習は、1回や2回では無理。何十回と成功体験を重ねることで、愛犬は「カフェではドタバタしないみたいだ。落ち着いていたほうが良さそうだぞ」と理解していきます。

 

現状打破できるのはオーナーさんだけ! 

フレンチブルドッグ

Lee waranyu/Shutterstock

 

間違った都市伝説を鵜呑みにしたせいで、犬が落ち着くような環境を作りもせず、練習もせず、「まだ若いから暴れているだけ。そのうちいい子になるわ…(祈)」と、遠い目をしながら呟くオーナーさんも少なからずいます。

 

そして、我々ドッグトレーナーのところには、都市伝説にすがり続けたオーナーさんたちからのSOSがたくさん寄せられます。

 

昔々なら、犬たちも7歳未満で亡くなる子が多く、オーナーさんが我慢し続けて一生を終えることも出来たかも知れません。しかし、今の犬たちは長寿です。犬種によっては20歳以上の子だっています。我慢して過ごすには、長すぎます。

 

だからこそ、現時点で困っていることがあれば、今から改善させていきましょう。トレーニングには時間がかかります。少しでも早く動き出したほうが、少しでも早い平穏が訪れるもの。それに、若ければ若いほど、トレーニングも進みます。

 

とはいえ、成犬になったって、できることはたくさんありますので、いくつになってもトレーニングにチャレンジしましょう。

 

「愛犬にこうなって欲しいのに、うまくいかない」と辛くなってしまうときは、どうか一人で悩まずに、ドッグトレーナー、獣医師、トリマーなど、身近にいる専門家に相談を。愛犬と一緒に快適に過ごせる生活スタイルを、共に見つけていけるはず。

 

ドッグトレーナーに依頼をする場合も、複数人と面談するようにしてください。そして、そのトレーナーが、生活環境の設定に関しての知識と豊富な経験を持っているか、学術的、科学的知識をもって動物福祉と動物への倫理に基づいた指導を安全に行える人材かどうか、オーナーさんが確認をするようにしましょう。

 

放っておけば、落ち着いた犬に……ならないよー! 

フレンチブルドッグ」

MARCHPN/Shutterstock

 

というわけで、「犬は2歳になったら落ち着く」は、気休めのウソ。なんにも訓練せず放っておいたら、いつまで経っても変わりませんというのが結論です。 

 

逆に、日々この場面ではどう振る舞えば良いのかを、オーナーさんから学び続けた愛犬たちは、周りの人から見ても素敵なワンちゃんになっていくはず。

 

そして、オーナーさんも、愛犬も、世間からあたたかく受け入れられることで、人間社会で快適な生活が送れるのではないでしょうか。

 

おまけ:犬生の終わりに近づけば、願わずとも落ち着いてしまうよ

フレンチブルドッグ

KarinR/Shutterstock

 

最後に、お時間の許す方は蛇足ですが読んでいってください。我が家の愛犬の話です。うちの子が「いつから落ち着いたのか?」という質問に答えるなら、うちの愛犬は、10歳くらいから本当に落ち着きました。足腰にガタが来て、動きがゆっくりになっただけと言うだけですが。

 

もちろん、家に来て3〜4年経つ頃には、TPOに合わせた行動を取れるようになりました。落ち着いていられる場面も増えました。

 

しかしその頃も、騒いでもいい場所では、それはもう大はしゃぎ。口に咥えたおもちゃをなかなか離してくれないこともありましたし、オイデと声をかけても状況次第でスルーすることだってありました(ドッグトレーナーの犬だからって、完璧に指示に従えるわけではありません)。

 

しかし、10歳を過ぎ、前のように大はしゃぎ出来なくなってきた愛犬を見たときには、なんとも切ない気持ちになりました。

 

とはいえ、犬の心は永遠に子供のまま。はしゃぎ方や、活発さの表現が変わっただけ。その証拠に、多少弱くなった力でも引っ張りっ子は大好きですし(持続時間は短くなりましたが)、家の中での宝物(オヤツ)探しではフンフン鼻を鳴らしながら捜索してくれます。

 

しかし、興奮していられる時間も、パワーも、以前とは比べ物にならないほどに落ちていきました。遊べ遊べコールも減り、ゆったりとした時間が流れていくようになりました。

 

&愛犬が若い頃は、あんなに「どんだけ遊べば気が済むんじゃい!」と心のなかで叫ぶ日々だったのに、この頃には「愛犬よ、もっと遊ぼう! 前みたいにさ」と願うようになったのは人間のエゴですね。

 

つらつらとお話させていただきましたが、何をお伝えしたいのかと言うと、「犬生の終わりに近づけば、願わずとも落ち着いてしまうよ」ということです。

 

静かで、寝てばかりで、反応もどんどん鈍くなっていく愛犬。「トレーニングなんかしなくても、いつかは落ち着いた犬になる」は真実なのかも知れません。しかしその願いの叶い方は、多分オーナーさんが望む形ではないはずです。

 

犬たちは、一生、遊びます。一生、無邪気です。一生、いたずらっ子です。

 

24時間落ち着いた犬を望むなんて、まず無理。落ち着いた行動も取れるけど、ちゃんとはしゃぐべきときには、はしゃげる犬を目指して育てていきましょう。

 

長いようで短い犬生。少しでもたくさんの笑顔と思い出が、あなたと愛犬に訪れますように、心から願っています。

 

PERRO株式会社 代表取締役 大久保羽純

PERRO株式会社 代表取締役 
SUNNY Dog Training Partner代表 大久保羽純

米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー

日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「犬と人の心をつなぐトレーニング」を広めている。「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、しつけ方教室を始め、各種ドッグイベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の暮らしを楽しいものにする活動を行っている。

 

 

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