何よりも大切な愛犬を見送るということ
フレンチブルドッグたち生き物と暮らしていると、蓄積した時間の先に必ず別れの日が来ます。それ自体はとても悲しく辛いことだけれど、その一方で看取りや見送りができるというのは幸せなことであるとも感じるのです。別れを覚悟すること、その瞬間のために備えること、その喪失を乗り越え再び日常に踏み出すこと。これらはどれも、看取りや見送りを経験するからこそ、ひとつの区切りを私たちに与え、優しく背中を押してくれるものではないでしょうか。
行方不明の猫の話
昼間は12月とは思えないほどの暖かさだったけれど、日が暮れると途端に冷え込むある夜のこと。
夕刊を取りに郵便受けを覗きに出た筆者が目にしたのは、懐中電灯を片手にあちこちの路地の間を行き来するご近所さんの姿でした。
聞けばそのお家で飼っている生後半年ほどの仔猫がその日の朝から行方不明らしく、ずっと探しているとのこと。
翌日にはすぐに猫探しのプロに依頼したようで、路地に動くものがあると反応するカメラを複数設置したり、猫の特徴や名前、見つけた時の連絡先が記されたチラシが郵便受けに入るように。
筆者夫婦も心配してはいたのですが、いかんせん我が家の愛ブヒに大きな病気が見つかった時期と重なっていたため、頭の片隅でその猫のことを気にしながらも愛ブヒの病と向き合うのに精一杯でした。
そこから数日が過ぎ、いつの間には路地に設置されていたカメラは取り外されていました。
まだ見つかってはいないそうですが、きっと猫探し業者との契約期間などもあるのでしょう。
筆者の手元にはまだ、その猫の行方を探すチラシが残っています。
そうこうしている間に我が家は愛ブヒを看取り、見送ることになったのですが、この時に件の行方不明の猫のことが頭をよぎりました。
希望を捨てられない、諦めきれないというのは、とても辛いことだろうと。
まるで、本を読み終えるようなもの
行方不明というのは、その存在を探し、待つ者にとっては非常に苦しい状態です。
どこかで生きているかもしれない、再び戻ってくるかもしれないという希望と同時に、そのまた逆を常に意識し、希望があるが故に諦めきれないんですよね。
生き物と暮らすのは1冊の物語を読むことに似ています。
序章から始まり、ストーリーが進むに従って紆余曲折や大きな山場があり、徐々に終章に差し掛かる。
命という名の一冊の大作を読み終え本を閉じた時、私たちはその物語の感想や感動を胸に、時にはその思い出話を糧とし、また歩き出せるのでしょう。
けれどもその物語を読み終えることなく、途中のページに栞を挟んだままの状態だとしたら。
その先を読み進めることもできず、新たな本を手に取ることもできないままに行間の間に取り残されるのではないか。
そんなふうに思います。
見送るということは、迎えた命の最後までを責任を持って愛し抜き、こときれたのちに供養することで、いっときの期間、鼻ぺちゃの神様から借りていた愛すべきその存在を再びその手に返すようなもの。
責任を果たしたという安堵やこれでさよならだという区切りがあってはじめて、愛した存在を思い出にできるのかもしれません。
だから見送れることは、ある種ポジティブなことですらあります。
だからこそ、行方不明に注意を
今この瞬間も、大切な家族や相棒を必死で探している人はたくさんいます。
迷子犬というキーワードで検索すれば、日本中のあらゆる街や町で、こんなにも多くの子たちがどこかを彷徨っているのかとその数に驚きます。
愛ブヒが迷子になるきっかけはどれも些細なこと。
日常でよくある私たちのうっかりや一瞬の隙をついて、好奇心のままに彼らは駆け出してしまうから。
筆者も過去に何度が閉まりきっていなかった自宅ゲートの隙間を縫って愛ブヒが脱走し、死に物狂いでその後を追いかけた経験があります。
その都度心臓が潰れる思いをしましたが、気をつけていても起こり得ること。
ただ、なるべく油断をしないよう、屋外ではリードと目を離さないように注意を怠らないでくださいね。
うちの子は大丈夫と過信し過ぎず、少しの時間だからとお店の軒先に繋いでおかないこと。
行方不明の子の中には、人気犬種だからと連れ去られる子だって少なくないのです。
私たちは別れの時を恐れ、なるべく先延ばしになるように願いますよね。
けれどそれは、この手の中にその存在があることが大前提。
その存在そのものがどこかへ行ってしまったなら、別れを告げることすらできなくなるのですから。
おわりに
生き物の命を送り出すことは、繰り返しページをめくり、時にはハラハラドキドキし、笑ったり泣いたりしながら没頭した物語を読み終えるのと同じ。
あなたの特別な物語を最後まで大切にしながら読み終え、いつの日かその本をそっと本棚に仕舞い、時々手に取って読み直すためには、ちゃんと見送ることがとても大事なのです。
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