【さよならの後】愛犬を見送って49日が過ぎました。
愛ブヒを見送っていつの間にか49日が過ぎ、喪失の痛みよりもただただ目の前に伸びる空白が辛いなと実感する日々。思えば今まで愛ブヒと過ごした年月の中で、1日の相当時間を愛すべきまあるい毛玉に注いでいたため、当初はぽかりと開いた空白に何度も飲み込まれそうになりました。しかしその空白を仕事はじめ日常の些事で埋め、ようやくここまで来たのだなと振り返れば。ええ、振り返ってみれば! ここだけの話ですが、結構予想外のことにダメージを受けたな、そして現在受けているなとと気づくのです。それは多分、悪気のない善意によって。
一番キツかったこと

Tanya Consaul Photography/shutterstock
愛ブヒを見送って以降、本当に多くの方に救われました。
日々届く花の数々、愛ブヒを描いてくれた絵、似せて編んでくれた愛らしい人形たち。
これらに癒され、囲まれ、それらを遺骨に供えることで「彼は間違いなくここにいた」という事実を噛み締めることができたから。
この感謝の気持ちは、言葉にし尽くすことができません。
ただ、その一方で「キツい」と思うこともありました。

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もちろんね、わかっているんです、それら全部は善意だということを。
ただ、もしあなたが誰かの喪失を思いやる際に、できれば避ける方がベターだと思うことを実際に体感した者としてお伝えしたいなと老婆心が疼きました。
正直、筆者にとって一番辛かったのは、知っている他人からのお悔やみでした。
ここで「知っている他人」を定義する必要がありますが、例えば友人や犬友達以外の人。
筆者の場合はとにかく愛ブヒがお散歩命だったこともあり、散歩中に出会うウォーキング中の人、よく見かけて挨拶を交わす人などがこれに該当します。
名前は知らない。
けれどすれ違うと必ず挨拶を交わす程度に顔見知り。
こういう人は会うと必ず「今日ワンちゃんは?」と尋ねてくれます。

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そこで旅立ったと伝えると、「え!どうして。元気だったじゃないの、あなたは大丈夫なの」と心配してくださいます。
ただ、その都度旅立った経緯を話すたび、別れを思い出してものすごく辛いのです。
近所を歩くたびに遭遇する知っている他人の方々の問いに答え、何度も愛ブヒとの別れを反芻せざるを得ない状況に、筆者は心折れました。
で、結果として近所を歩かなくなったのです。
善意がはらむ見えない棘

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知っている他人からの言葉に心折れた筆者。
我が家の愛ブヒはいつも近所の煙草屋でおやつをもらっていたので、私も煙草を購入する際は必ずそこに行っていました。
けれど今、そこに買い物へ行くと必ずや店主のマダムが悲壮な表情で「あなた、もう大丈夫なの。次のわんこちゃんはどうなの」と問いかけられ。
都度なんだか苦しくなり段々と足が遠のく始末。
200m手前のコンビニで煙草を購入し、ちょっぴり罪悪感に苛まれながら帰宅する日々。

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でもね、自分の中で別れを消化し、ヨタヨタとでも前進し始めていたところなのに、いきなり喪失当時のスタートラインへと押し戻される感覚は相当にキツいです。
何度も言いますが、わかってはいるんですよ。それが善意だということは。
けれど、やっぱり苦しい。
100%の善意なのだろうと頭では理解していても、心のどこかで「もうそこに押し戻さないでくれ」と思う自分もいます。
きっといつの日か、そういう人たちに「辛かったけれど今はもう大丈夫です、ご心配おかけしました」と笑って返せる日が来るはず。
でもそれはまだ、もう少し先の話。
今はまだ、ただただそっとしておいて欲しい。

Oyls/shutterstock
自分の中で愛ブヒが思い出に変わるまでの期間は、あの喪失を二度と反芻したくないという思いでいっぱいなのです。
けれどふと視座を変えれば、筆者も同じことをしてしまうかもしれないなと。
良かれと思いかける言葉、心配からくる問い、喪失の痛みを言葉で補いたいという気持ち。
それら全部がわかるだけに、結果として辛さだけが残ります。
もしあなたが今、喪失を経験した誰かに何か言葉をかけるなら、ただ、いつも通りの挨拶を。
結果それが一番、寄り添うことになると思うのです。
得た自由、これからのこと。

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愛ブヒを見送ってしばらくの間、何をして良いのかわかりませんでした。
ただ空白の時間を埋めるべく、今まで以上に仕事をし、本を読み、映画を観ました。
犬がいない生活は、よく言えばとても自由です。
特に筆者のように夫婦二人だけの暮らしをする人間にとって、責任という荷物を降ろしたに等しかったかもしれません。
仮に災害があれば、何よりも守る必要のある存在がそこにいる。
この重責から解放されるのは、本来の意味で自由だなとも思いました。

bozsja/shutterstock
自分一人逃げられるところまで走ればいい。これに勝る自由はあまりないと思います。
守るべき存在を失った今、解放感がないと言えば嘘になるでしょう。
ただ、こうも思います。
私たち犬に魅了される人間は、きっとまた必ず犬を相棒に迎えます。
例えば今のこの気持ちが完全に思い出になった時、新たな命と一緒に生きたいと願うから。
その時に、今手にしている自由は失せるかもしれないけれど、私たちは知っています。
自由と引き換えにしてもお釣りがぐるくらい、その経験が素晴らしいことを。
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