2024年8月12日2,451 View

ペットオーナーのあなたに『膀胱腫瘍』という病気を知ってほしい

今回記事にするのは、犬の発生率は全体の2%に満たないくらいと決して多くはない膀胱腫瘍。フレンチブルドッグが特に好発犬種というわけではないけれど、とにかく見逃しがちな病気なうえ、その多くが命に関わる危険性が非常にもの。あえて記事にしたのは、現在この病と闘病中の愛犬をサポートする友人の「とにかく見逃しがちな病気だから、多くのペットオーナーさんに知ってほしい」という言葉でした。

膀胱炎だと思い込みがち

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MARCHPN/Shutterstock

 

現在闘病中の友人の愛犬はフレンチブルドッグではありませんが、食欲もあり元気で明るい女の子。

 

11歳の時に急に頻尿になり尿に血が混ざっていたのが気になって病院へ行くも、診断結果は膀胱炎とのことでお薬を処方されました。

 

そこからしばらくの間は薬の効果か症状は治ったのだけれど、しばらくするとまた同じ症状が現れるように。

 

再び病院へ行き、膀胱炎の再発だろうと言う先生に食い下がってエコーなどを撮った結果、膀胱に腫瘍ができていることが発覚したのです。

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Tienuskin/shutterstock

 

その間もその子は食欲も抜群で元気いっぱい。

 

オシッコの回数が多い以外に特に普段と変わるようなことはなかったけれど、心配性の友人の念入りな検査が功を奏し、膀胱炎の影に隠れていた病気が見つかりました。

 

そこからは二次診療専門の病院の腫瘍科にかかり、それが悪性のものだと確定する検査をしてから抗がん剤での治療を頑張っています。

 

ちなみに友人は年に3回程度血液検査やエコーを含めた健康診断を愛犬に受けさせていましたが、病気が発覚する直近の検査では特に異常はなかったそう。

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ni_ninan/Shutterstock

 

さて、この膀胱腫瘍がなぜ怖いのかというと、そのほとんどが膀胱移行上皮癌であることが多いから。

 

この病気は治療をせずにいると生存期間中央値が6ヶ月から11ヶ月というもので、特に腫瘍が尿管を塞ぎオシッコが排泄されなくなるとわずか数日で命に関わるものです。

 

それほど怖い病気なのに、初期に目に見えるのは膀胱炎のような症状。

 

それゆえに動物病院でも膀胱炎と診断されることが多く、気づいたときにはすでに転移していたというケースがとても多いのです。

 

だからこそ、まずこの病気を知り、もし愛ブヒに膀胱炎の疑いがある場合は念のため膀胱腫瘍の有無を調べるべきだ、と思いました。

 

何が原因でどんな子がなりやすいのか

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Juri82/shutterstock

 

最初に知っておいてほしいのが、犬の膀胱に発生する腫瘍はその大部分が悪性だということ。

 

悪性腫瘍=癌なので、放っておけば増殖や転移します。

 

フレブルは好発犬種ではないものの、全犬種がかかるリスクがあるもの。

 

なお、10歳前後の避妊手術を実施した女の子に発生しやすいとされており、殺虫剤や除草剤などの薬剤にさらされることと発生リスクとの関連が示唆されていますが、原因は不明。

 

膀胱腫瘍は腎盂、尿管、膀胱、尿道といった尿路粘膜にできる悪性腫瘍のうち、膀胱にできる腫瘍を指し、血尿や頻尿、排泄困難などの症状が出ます。

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Aleksandra Baranoff/shutterstock

 

なお、友人の愛犬は最初に行ったかかりつけ医で最初は膀胱炎、次に慢性膀胱炎だと診断されました。

 

そこでCTを撮るも、膀胱腫瘍の疑いはあるものの確定診断まではつかなかったのです。

 

しかしその後通い始めた腫瘍科の先生が経験上膀胱腫瘍を疑うべきだと進言してくれたこともあり、3度のCT検査と細胞検査を経て確定診断がつきました。

 

けれど、ここまで念入りに調べることなく膀胱炎だと思い込むオーナーさんは決して少なくないはず。

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Amam-ka/shutterstock

 

膀胱腫瘍は早期だと手術で腫瘍を切除しますが、広がり具合によっては症状を緩和するため内科治療を行います。

 

検査は一般的にエコー検査と尿検査ですが、これらの検査で何らかの影があった場合、より詳細に調べるためCT検査をすることになります。

 

原因がはっきりとわかっていない病気なので予防は難しいけれど、日頃から血尿や頻尿といった症状があった場合、念のためエコーを使って検査してもらう。

 

これが早期発見につながる一番の方法なのです。

 

QOLを保てる治療法を

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Firn/shutterstock

 

膀胱腫瘍(膀胱移行上皮癌)と診断された場合、治療の選択肢は外科的処置か内科的処置科の2つ。

 

筆者はかかりつけ医、二次診療病院の両方に付き添っているのですが、先生の意見は真逆でした。

 

かかりつけ医は「すぐに手術」、二次診療の先生は「QOLを保つことを考え内科治療を」というもの。

 

確かに腫瘍が取り切れる可能性があれば外科手術が優先ですが、CTを見る限り尿管の方にも広がっている、かつ、手術中に膀胱の神経を傷つけやすいため後遺症リスクがあること。

 

また、膀胱を全摘すると尿の出口を別の場所に作り(人間でいう人工肛門のような状態)、尿が垂れ流しの状態になるので細菌感染しやすいそう。

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Andreea Mihaela Rosca/shutterstock

 

なお、アメリカでは犬のQOLを保つため手術は最後の手段のようです。

 

友人は悩んだ結果内科治療を選択し、いざという時の手術に備え心の準備もしていますが、今こうして治療ができるのは膀胱炎の診断時に繰り返す症状に疑問を持ったから。

 

その愛犬は無事12歳の誕生日を迎え、現在もおいしくご飯を食べ、お散歩にも行っています。

 

おわりに

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Tienuskin/shutterstock

 

膀胱炎になる犬は多いけれど、膀胱腫瘍を患う子は少ない。

 

膀胱腫瘍にかかるのは犬の2%に満たないため、最初に膀胱炎だと診断されたのもこういうデータがあったからでしょう。

 

かかる子が少ないからこそ診察した経験も少なく、獣医師が膀胱炎だと判断するのも無理はありません。

 

ただ、見逃していれば必ず命に関わるもの。

 

だからこそこんな病気があることや、膀胱炎の症状に酷似していることを知っておいてほしいのです。

 

 

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