天国に行ったきみへ~新たな家族を迎えることについて
急な体調不良で、前触れもなくいなくなってしまった我が子。フェアリー期を精一杯生き抜いて、旅立っていった我が子。
突然の出来事だった場合はもちろん、覚悟はしていたつもりでも、どんな別れ方をしても、残された家族は、すぐには愛ブヒの死を実感できないものです。
そして、昨日までそこにいた姿を見ることができない、触れることもできない日々が訪れて、次第に経験したことのない悲しみに飲み込まれてしまいます。
そんなとき、ふと新しい家族を迎え入れることを考えて、迷うこともあるでしょう。
でも、新しい子を迎えたいという気持ちは、悲しみを忘れたいからではなく、旅立ってしまった我が子の、その死にきちんと向き合いたいからなのではないでしょうか。
新たな子を迎えて、亡くなった子の死を受け入れられることも
空を見上げて、天国へと昇っていく我が子を送り出して、部屋に戻ると、昨日まであの子が寝そべっていたベッドやソファーは空っぽの状態。
いつもだったら帰宅して、ドアを開けたとたん、大喜びで出迎えてくれるあの子がいない。そのときはじめて「ああ、旅立ってしまったんだ…」という現実に向き合うことになります。
夜になっても、いつまでたってもお布団に潜り込んでこない。うるさいくらいの「ブーブー」という寝息も、もう聞こえてこない。
存在がなくなることは、静かすぎて、家の中に空いたスペースの分だけ、心にもぽっかりと空間ができてしまうこと。
そんな、いつまで続くかわからない悲しい日々の中、家族で「新しい家族を迎え入れようか」という会話になるのは、ごく自然なことでしょう。
それは、たまたま見かけたフレブルのブリーダーのサイトで、幼いころの我が子に似ている子を発見したり、偶然新しい飼い主を募集している保護犬がいることを知ったり。
特に積極的に動いているわけではないのに、「運命かも」と思える、不思議な縁が訪れることがあります。
そうした縁に導かれるように、「まだ、ちょっと早すぎるかな?」と思いながらも、その子に会いに行き、魅かれて、我が家に迎え入れることになったとき。
そのときやっと「あの子」はもう本当にいないんだ……ということを、素直に受け入れられるようになるのです。
家族が増えれば、楽しい思い出も増えるから
ある日、私がいつものようにフレブルを連れて散歩をしていたら、洗車をしていた50代と思われる男性に話しかけられました。
「うちもね、犬を飼っていたんだけど、2カ月前に13歳で亡くなったんだ。そうしたら奥さんが毎日泣いて、その子の名前を呼ぶんだよね。その話を友人にしたら、『知り合いのブリーダーが同じ犬種でオーナーを探している』って教えてくれて。サイトを見たら、うちの子にそっくりなんだよ。実は来週、空港までその子を迎えに行くんだ。ちょっと早い気がするけれど、また家の中が賑やかになりそうだよ」
その男性は嬉しそうで、でも少し寂しそうな表情で、これから始まる新しい家族との生活を待ち望んでいることが、伝わってきました。
いままでぽっかりと空いていたそのスペースに、新しい相棒がちょこんと座り、また家族の笑い声が戻ってきます。その姿を見ていると、お空に旅立ったあの子を重ね、ふと涙が出てきてしまうかもしれません。
もしかしたら「新しい子を迎えてごめんね」という申し訳なさもあるかもしれません。でもそれは、悲しさのあまり、強張っていた心が、少しずつほぐれてきたからなのではないでしょうか。
いなくなってしまった悲しみは消えることはないけれど、かけがえのない幸せな生活を共に過ごしてくれたことへの、感謝の気持ちと愛しさが、強くあふれてきます。
そう、可愛いあの子は、ずっと家族のまま。そして新しい家族が増えて、楽しい思い出も増え、あの子の昔話を懐かしく話せる日々が、またやってくるのです。
愛犬が教えてくれた「大切なこと」は色あせない
いまはまだ、あえて新しい子を迎えるのはやめておくという家族もいます。また、「もうこんな悲しい想いはしたくないから」と、飼わないという選択をする家族もいるでしょう。
新しい子を迎える、迎えないかは、「命を預かる」というとても大きな問題なので、飼い主が納得して決めること。なにが正解かということはありません。
人にとっては、愛ブヒが亡くなったという悲しみは、ゆっくりとはいえど、いずれ時間が解決してくれます。
そして、悲しみが癒えたときには、あの子との楽しい思い出と、フレンチブルドッグと一緒に暮らしたからこそ知ることができた、大切な「何か」を、愛しむことができる日がやってきます。そしてその大切な何かは、ずっと色あせることはないのです。
そのとき、自然とこんな言葉が出てくるでしょう。
「あのときすごく頑張ったよね。家族でいてくれてありがとう。これからもずっと家族だよ」。
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